←前へ  次へ→    『真言天台勝劣事』
(★446n)後
 
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     真言天台勝劣事   文永七年  四九歳
 
  問ふ、何なる経論に依って真言宗を立つるや。答ふ、大日経・金剛頂経・蘇悉地経並びに菩提心論、此の三経一論に依って真言宗を立つるなり。
  問ふ、大日経と法華経と何れが勝れたるや。答ふ、法華経は或は七重或は八重の勝なり。大日経は七八重の劣なり。
  難じて云はく、驚いて云はく、古より今に至るまで法華より真言劣ると云ふ義都て之無し。之に依てっ弘法大師は十住心を立てゝ法華は真言より三重の劣と釈し給へり。覚鑁は「法華は真言の履取りに及ばず」と釈せり。打ち任せては密教勝れ顕教劣るなりと世挙って此を許す。七重の劣と云ふ義は甚だ珍しき者をや。答ふ、真言は七重の劣と云ふ事珍しき義なりと驚かるゝは理なり。所以に法師品に云はく「已に説き今説き当に説かん、而も其の中に於て此の法華経最も為れ難信難解なり」云云。又云はく「諸経の中に於て最も其の上に在り」云云。此の文の心は法華は一切経の中に勝れたり 此其の一。 次に無量義経に云はく「次に方等十二部経摩訶般若華厳海空を説く」云云。又云はく「真実甚深甚深甚深なり」云云。
 
平成新編御書 ―446n―