傷痕が疼く。今夜も眠れない。 ざわり、血が疼く。魔の囁きか、それとも魔を討てとの囁きか。 どくん、胸の刻印に背中の傷痕に熱が溢れ出していても立ってもいられなくなって。 そっと、窓から身を乗り出して、飛び降りる。 ああ、今夜はいい夜だ。 ああ、今夜はなんて、月が綺麗だ。 ぼうっ、身体中に力が満ち満ちて。ぞくり、首筋に、背中に、刻印に冷たい鋼の感触が満ちて。 生ぬるい血は冷たく凍えて。生ぬるい身は熱く燃え落ちて。 ああ、今夜はいい夜だ。 ああ、今夜はなんて、月が綺麗だ。 ああ、ああ、なんて、綺麗だ。 影がくっきりと映し出されて。人ならざる姿で細く長く低く吼える自らの影。 ああ、ああ、ああ……… 今夜は、なんて…月が、綺麗、だ……