「リストラ」

リストラクチャリング=再構築。
“裁判”には、それ自体“ムズカシイ”というイメージがあります。
まず何よりも、そのイメージをひっくり返すような、わかりやすいゲームシステムを確立しなければなりません。
前回の失敗を見なおして、法廷を全面的に再構築しました。

●《証言開始》《尋問開始》を入れて、“今が考えどきだよ”と教える
●矛盾点に気づかないかぎり、先に進めないようにする
●画面にコマンドを表示して、何ができるかを示す
●矛盾の根拠となる情報を、証拠品(1個につき30文字)に凝縮する

シナリオを書く人間としては、最後のポイントはまさに一大決心でした。そんな少ない情報量で、全法廷をまかなう大量の“ムジュン”を作れるのか?
その答えは‥‥ゲームを遊んでくれたみなさんに判断してもらいましょう。

次に、チームのみんなが感じた問題点をそのまま列挙して、片っ端から答えを探していく作業。
朝メシ前のものから晩メシ後のものまで、おなかいっぱいの意見がブチまけられました。

「‥‥事件が起こるまでが長いですねー」
「じゃあ、前半をバッサリ、カットしようか」
「‥‥ていうか、裁判から始まったほうが」
「う。じゃあ、いっそ別のシナリオを用意しようか」
「‥‥なんか最初に、グッとくるシーンが欲しいなあ」
「じゃあ、最初に犯行シーンのデモを入れようか」
「‥‥このゲームならでは! の特徴も欲しいッス」
「じゃあ、そのデモで犯人のカオを見せちゃおうか」
「‥‥キャラクターにミリョクがないなあ」
「じゃあ、依頼人を親友にして、ムチャクチャなヤツにしようか」

‥‥《逆転姉妹》を2話目にまわして、大急ぎで新しいエピソードを作ることに。
裁判シーンから始まる、チュートリアルも兼ねた物語。
すでに《逆転姉妹》のプロットはできていたので、それに向けた伏線も何本か、埋め込んでおきます。

みんなが何か言うたびに、ゲームのクオリティが確実に上がっていくのをヒシヒシと実感。‥‥それは本当に、とても感動的な経験でした。

ただし。このやり方は、ちょっと歯車が狂うと、
「‥‥みんなの意見は聞くのに、なんであたしのだけ‥‥」
「いやいや。だって、ハムスターはマズいだろ!」
「もう、いいです。あたしなんて‥‥」
‥‥果てしなく噛み合わないという事態になりかねないので、注意が必要です。

こうして、2月末。ついにプロローグは完成しました。