「逆転姉妹 (2)」

“逆転姉妹”の改訂作業は、“初めての逆転”の執筆と並行して進めました。
改訂のテーマは、『全身全霊』。

“おもしろくない”と言われたのが本当に大ショックだったので、その反動がモロに現れました。
とにかく、物語を盛り上げるために思いつくかぎりのネタを全部ぜんぶ、ぜーんぶ詰め込んで、あふれてもまたギュウと押し込んで、まさに“この1本に賭けた!”の意気込みで書きあげました。

冷静になってから、読み返してみてのスナオな感想。
‥‥どう考えてもコレ、最終回っぽいな。

まあ、書いちゃったものはしかたありません。
チームのメンバーに相談したら、
「ワシはアリやと思うで」
と言ってくれたし。
それに、書き終えた瞬間は“これで悔いなし!”とホンキで思ったものです。
ただし、3話以降のエピソードを書くときになって
“‥‥なんであんなにネタ使っちまったんだよ!”
と、さんざん後悔することになるのですが‥‥。

さて。前回予告したとおり、執筆中にアタマがスパークした話をしましょう。

“逆転姉妹”の頃はまだ、構成の重要性がわかっていませんでした。
大ざっぱに犯人の背景を決めただけで、無造作に書き始めます。
ラストで犯人につきつける書類の内容も未定のままという、今考えると、むしろすがすがしいほどの無計画さです。

問題は、成歩堂が留置所で真宵に会うところで発生しました。
成歩堂、なにげなく質問。
「ご両親は?」
ハタ‥‥、と手が止まりました。
そういえば、この子の両親はどうしてるんだろう‥‥?

実は、この瞬間まで、まったく考えていなかったのです。
とりあえずここは、なるべく真宵をカワイソウな状態にしたい。
‥‥じゃあ、天涯孤独にでもしとくか。

そこで、おかあさんの物語を考えてみたのですが‥‥そのとき!
クドいようですが、アタマの中が一瞬、まっ白になりました。

‥‥霊媒師だったおかあさん。千尋が犯人を調べていた理由。それが最終話の、あの親子の事件と結びつき、さらには成歩堂がなぜ弁護士になったか、その理由に結びつき、そしてラスト。プロローグのあの人物の、小さな罪を暴き出して‥‥幕。

‥‥各エピソードの断片的なイメージが連鎖的につながっていって、物語全体のアウトラインが、いきなり完成形として目の前にあったのです。

こんなことは初めてだったので、本当にビックリしました。
あんまり驚いたので、その日はそれで執筆を切り上げて帰ってしまったほどです。

帰り道。脳裏に、誰かの優しい笑顔とコトバがよぎります。
「4つのエピソードにつながりを持たせたらええのんちゃうん」
そのコトバは、“ええのんちゃうんちゃうんちゃうん‥‥”
と、いつまでもアタマの中でエコーしていたのでした。