「逆転姉妹 (1)」
2000年9月。
“ゲームでムジュンを指摘するんだあ!”と連呼したところで、なかなかイメージはみんなに伝わりません。
‥‥というか、そもそも自分でもよくわかっていない。
そこで、とりあえず雰囲気をつかむために、練習シナリオを書くことになりました。
“逆転姉妹”の原型となったバージョンです。
なにぶん初めてなので、ストーリーなんてどう作っていいかわかりません。
そのかわり、トリックは使いほうだいです。
“ムジュン”というコトバから思いつくネタの一番オイシイところをふんだんに使って、さっそくプロットを作りました。
現在の“逆転姉妹”法廷シーンの、トリックだけを抜き出したようなシロモノです。
「さて。プロットもできたし、とりあえず書くかー」
ワープロの前に座って、いきなり硬直。
‥‥登場人物の名前がないと書けねえ‥‥。
オレは早くシナリオを書きたいのだ! 名前なんか、考えてられるか!
‥‥ということで、反射的に出てきた名前が‥‥
爽果 なるほど :主人公
可鳴 美女(かなりみお):被害者
小中 大 (こなかひろし)
松竹 梅世(しょうちくうめよ)
ま、あとで変えればいいや。仮だし。‥‥当時はそう思っていました。
‥‥できたシナリオを印刷して、答えの部分を折り曲げてできあがり。
チームのメンバーを1人ひとり呼びだして、ぼくが読み上げて、実際に
「異議あり!」
と、やってもらいました。
これをゲームにしたのが、コラム《年末敗訴》で紹介した“完全敗訴バージョン”だったのです。
このシナリオには、実にさまざまな敗因が含まれていました。
●裁判が始まる前に説明するべきことが多すぎる
●物語としてのおもしろさが、まったくない
●プロローグにしては長すぎる
●その上で、システムが極悪
そこで、もっとシンプルな、別の物語を書くことになりました。
それが“初めての逆転”です。
‥‥さて。
今回シナリオというものを書いてみて、個人的にビックリするような経験をしました。
なんの前ぶれもなく、突然アタマの中がまっ白にスパークして、次の一瞬、今まで考えもしなかったアイデアが、いきなり完成形になって天から降ってくる‥‥そんな経験です。
そういうユメのような瞬間が、全編を通じて2回だけありました。
次回は、その1回目の話をしたいと思います。