「一期一会 (1)」

2001年6月29日。
大阪梅田の某所にて、打ち上げがおこなわれました。
プロデューサーと部長を含めて、参加者は9名。

『逆転裁判』がこういう形に仕上がったのは、このチームだったからです。
ゲームの要素すべてに彼らの意見が宿っていて、その言葉の数々は今でも耳に残っています(もちろん、ツゴウの悪いヤツは別ですが)。
メンバーが違っていたら、そこにはまた別の『逆転裁判』があったでしょう。

このゲームはぼくにとって、ほぼ理想の形で完成しました。
こんなことは、初めてです。もしかしたら、もうないかもしれません。
というわけで‥‥、みんなには、とても感謝しています。
本当にほんとうに、どうもありがとう。

‥‥この日の打ち上げを最後に、逆転裁判チームは解散したのです。

さて。せっかくですから、このステキな連中を、みなさんに紹介したいと思います。人数も少ないことだし。
スタッフロールでもながめながら、読んでみてください。

まずは、キャラクターデザインとグラフィック担当から始めましょう。
逆転チーム紅一点のスエカネさんと、辰郎くん。
このゲームの映像素材は、すべてこの2人が描いています。

特に登場人物の設定面で、スエカネさんには言葉に尽くせないほど助けられました。
その中でも最大の功績は、御剣怜侍。
ぼくが設定した御剣検事は、40代のオヤジ。つかれ果てたドラキュラみたいなオトコでした。
彼を若返らせて、なるほどくんのライバルに仕立て上げたのは、彼女です。
これだけでも、3本の指に入る殊勲賞モノと言えるでしょう。
‥‥あぶなかったね、御剣検事。

「かわいい霊媒師と、その姉さん」
「トノサマンって名前のヒーロー」

‥‥ぼくの素っ気ない注文をもとに、あそこまで人のハートをワシづかみにするキャラクターを次々に生み出す彼女がいなければ、『逆転裁判』はあり得なかったでしょう。

辰郎くんは新人で、このゲームで堂々のデビューをかざりました。
特に、オヤジ系のキャラを描かせたら右に出るものはいません。
カツラを飛ばしたりユビワを光らせたり汁を飛ばしたり指を鳴らしたり‥‥と、そのあふれる才能を遺憾なく発揮しています。
特にカツラのネタは、いつのまにかこのゲームを象徴する地位にまで昇格してしまい、ちょっと悔しい。
これだけでも、やはり3本の指に入る殊勲賞モノと言えるでしょう。

ぼくは根本的に“キャラを立てる”というのがニガテです。
2人はその点に関して、徹底的にこだわってくれました。
スエカネさんにたしなめられ、辰郎くんにマユをひそめられながら、かなりの苦戦を強いられたのですが‥‥。
結果は、彼らが全面的に正しかったことが証明されました。