「ごあいさつ」
こんにちは。
逆転裁判チームの巧 舟(たくみしゅう)です。あやしげな名前ですが、断じて日本人です。このゲームでは、企画とシナリオ、ディレクターを担当しています。
"いつか、誰も経験したことがないような、新しい探偵ゲームを作りたい"‥‥、
それが入社以来、6年間の夢でした。
チャンスが巡ってきたのは、1年前。2000年8月のこと。
6年も待って、ヘボいモノを作るわけにはいきません。推理モノのおもしろさとは何か? また、それを"ゲーム"として表現するには、どういう方法を採るべきか? ‥‥トコトン考え尽くしました。
最初は、ウソを見抜くのが得意な私立探偵の物語でした。
ところが、ある日ふと、"探偵ゲーム"だからといって、何も"探偵"にこだわることはないんじゃないか‥‥? そんなことを思ったのです。
その瞬間、いきなりあるイメージがアタマに浮かびました。
舞台は法廷。ウソを見破られまいとオドオドしている証人。
その気の毒な男に指をつきつけて、
「異議あり! あなたは大ウソつきだ!」
と、大声でキメつける弁護士。追いつめられた証人は、苦しまぎれに、さらにトンでもないウソを繰り出し、事態は予想もつかなかった方向へ展開してゆく‥‥。
推理小説の世界では、1つのジャンルにまでなっている《裁判》。
あんなスリリングな世界が、なぜゲームにはないんだろう‥‥?
‥‥すべてはこの日の、一瞬のヒラメキから始まりました。
さて。この思いつきが、いかにして『逆転裁判』になっていったのか‥‥?
これから、お話ししていきたいと思います。どうぞ、よろしくおつきあいください。