【 禁断の壷 2.5.5.6 
】 
Powered by QRかきこ
■掲示板に戻る■ 関連ページ 
全部 1- 101- 
201- 
301- 
401- 
最新50 
げんしけんSSスレ11 
  - 1 :マロン名無しさん 
  :2006/11/01(水) 06:48:24 ID:??? 
  
- 「第11回げんしけんSSよかった会議〜。今回の特別ゲストは荻上千佳さんです〜」 
 「どうも、荻上です。」
 「どうですか、荻上さん、前スレのSSの感想は。」
 「特にないです。」
 「え〜〜、あれ、おもしろくなかった〜〜?」
 「いえ、普通です。」
 「あ、もうちょっとこうなんかないすか?甘々笹荻SSなんてどうっすか〜?」
 「興味ないです!」
 「ちょちょちょっとまとうよ〜、コレじゃSSよかった会議の意義が〜。」
 「妄想垂れ流しは苦手です。」
 「そそそそんなバッサリ〜。」
 
 というわけでマターリ第11弾。
 未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
 荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
 本編はもちろん、くじアンSSも受付中。←けっこう重要
 
 ☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評のうちに連載終了。
 ☆単行本第1〜8巻好評発売中。9巻は12月下旬発売予定。 オマケもすごい!
 ☆作中作「くじびきアンバランス」漫画連載&アニメ放映中!けっこういい出来かも!
 
 
- 2 :マロン名無しさん 
  :2006/11/01(水) 06:49:43 ID:??? 
  
- 前スレ 
 げんしけんSSスレ10
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1155491189/
 
 げんしけん(現代視覚文化研究会)まとめサイト(過去ログや人物紹介はこちらへ)
 http://ime.nu/www.zawax.info/~comic/
 げんしけんSSスレまとめサイト(このスレのまとめはこちら)
 ttp://www7.atwiki.jp/genshikenss/
 げんしけんSSアンソロ製作委員会(SSで同人アンソロ本を出そうという企画・第二弾鋭意製作中!)
 ttp://saaaaaaax.web.fc2.com/gssansoro/top.htm
 
 エロ話801話などはこちらで
 げんしけん@エロパロ板 その3(21禁)
 http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1144944199/
 
 
 
- 3 :マロン名無しさん 
  :2006/11/01(水) 06:50:39 ID:??? 
  
- 前スレ 
 げんしけんSSスレ9
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1150517919/
 げんしけんSSスレ8
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1146761741/
 げんしけんSSスレ7
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1145464882/
 げんしけんSSスレ6
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1143200874/
 げんしけんSSスレ5
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1141591410/
 げんしけんSSスレ4
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1139939998/
 げんしけんSSスレその3
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1136864438/
 げんしけんSSスレその2
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1133609152/
 げんしけんSSスレ
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1128831969/
 
 げんしけん本スレ(連載終了により作品名は外されました)
 木尾士目総合スレ6
 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/comic/1158225782/
 
 
- 4 :マロン名無しさん 
  :2006/11/01(水) 06:53:56 ID:??? 
  
- とりあえず立て直しましたぁ。 
 前スレ落ちちゃいましたね。
 いやぁ、ここまで一回も落ちなかったほうがすごかったのかも。
 今後は落ちないように気を使わんと・・・。
 
 では、くじアン面白かった会議第四回いきます。
 前スレでの感想、ありがとうございました。
 朽木君ですが、予告で出てくるまで出しませんw
 コレは最初から決めてました。
 いつになったら出てくることやら・・・。
 では、3レスほどで投下します。
 
 
- 5 :第四回くじびき〜以下略 
  :2006/11/01(水) 06:55:52 ID:??? 
  
- マ「え〜、第四回くじびきはーとアンバランス、略してやっぱりくじアンよかった本会議〜。」 
  
 ベ「今回はネ申回でしたね!」
 マ「うおっ・・・と。なに興奮してんるンだよ。」
 ベ「いやぁ、会長やっぱいいですね!今後、少しづつ心の中が見れたらいいなぁ!」
 マ「このヤロウ・・・自分の好きキャラがあまり変わってないのをいい事に・・・。」
 梟「そうか?会長もけっこう変わってると思うけどね。」
 K「き、キリっとしてる感じが強いせいかな。前よりも強い女性な感じがするな・・・。」
 ト「あー、そうですね。」
 マ「しかしなんだ・・・あの「夢落ち」って・・・。」
 ト「いやぁ。」
 梟「コレで夢落ちだったら暴動が起こるぞ!?」
 ト「でもありえそうじゃないですか?また最初から〜みたいな。」
 ベ「そんな「奇面組」はやめようよ・・・。」
 マ「確かに、興ざめだわな。」
 梟「まぁ、今回は、確かにいい回だったな。」
 K「く、空気感がいいんだよね。て、天候の変化に合わせて湿度が変わってる感じ・・・。」
 ベ「ところどころ細かい描写があってすごいですよね。
 天気予報で晴れのち雨って予報してたり・・・。」
 ト「会長が判を押してる書類も、全部違うんだよね。
 中には三話の事件についての書類もあったね。」
 マ「全体的に細かすぎだわ。水族館とか、生物準備室とか、ボーリング場とか。」
 梟「作画レベルでいえば、今期No.1かもしれんな。」
 K「よ、予算は多いってワケじゃないのにね・・・。」
 マ「コレがジャパニメーションじゃい!
 予算が多くて動きまくってもつまらん作品もある!
 逆に予算が少ないからって妥協しすぎてるアニメもある!
 しかしだ!このアニメは本来はここまで出来ることを証明してくれているなっ!
 素晴らしいぞ!亜細亜堂!」
 
 
- 6 :第四回くじびき〜以下略 
  :2006/11/01(水) 06:58:58 ID:??? 
  
- ベ「で、ストーリーですが・・・。」 
 マ「ヤヴァイよな。時乃がこんなにかわいいとは思わないよな。」
 梟「今回は完璧に時乃と会長が持っていっちゃったな。」
 K「ま、まぁ、メイン回だしね。そ、そういう描写多いに決まってるよね。」
 ベ「会長の心が少し覗けましたね。
 まぁ、俺としては、最終話で千尋と時乃がくっついてるのを眺めながら、
 副会長に何かいわれて、『二人が幸せなら何も・・・』。」
 マ「はいはい、妄想はその辺にしてだな。」
 ベ「ひ、ヒドイっす!」
 梟「いや、でもその展開はありそうだな。二人の幸せを眺め、身を引く会長か。」
 K「い、いいかもね。あ、ありがちだけど。
 ち、『千尋も好きだが、時乃ことも好きだ。』とかいいそうだな。」
 べ「そうなんですよ!いやぁ、たのしみだなぁ。」
 マ「まぁ、何はともあれ。副会長とかリサの様子も伺えたな。」
 梟「けっこう巫女設定はいいな。あれはコスプレも作りがいのある・・・。」
 神「いいですね〜。私には副会長の魂が宿ってますし〜。」
 梟「於木野さんもやる?」
 於「やりません。」
 梟「なんだ・・・せっかく漫画verの白衣コス用意しようと思ってたのに・・・。」
 マ「おお〜。あのネコミミverか。」
 K「あ、あっちもかわいいよね。」
 ベ「かわいいですね〜。漫画も二話まで進んだわけですけど・・・。」
 マ「あっちはあっちでアニメよりも細かくていいな。
 しかし、少々テンポが悪いかもしれんな。」
 梟「確かに、一気にあそこまで一話で読めたらよかったとは思ったな。」
 K「あ、あれ、描ききれなかったのかね。」
 ト「どうでしょうねえ。小梅がけっこう忙しそうでしたからね。」
 マ「まぁ、なに、これからだな、あれはあれでエロイしな。」
 ト「パンチラしまくりでしたしねえ。」
 
 
- 7 :第四回くじびき〜以下略 
  :2006/11/01(水) 07:09:57 ID:??? 
  
- マ「話を戻そうか。さっきも出たが、旧校舎での空気感というか、 
  
 二人が見詰め合ったシーンはキューンときたなぁ。」
 K「に、似合わない事いうなよ・・・。」
 マ「う、うっさいわ!」
 ベ「あそこはいいシーンでしたよね。」
 ト「幼馴染のいい距離感というか、よかったですよね。」
 梟「これは幼馴染がいるだけによく分かるってか?」
 ト「いやぁ、僕らは小学生以降は離れてましたしねえ。」
 マ「・・・まぁ、ああいう関係って言うのは憧れるよな。はは。」
 ベ「確かに、ああいう小さい頃の思い出が共有されてて、分かり合ってる・・・。
 でも、新しく見えてくる表情に戸惑う・・・そういうのっていいですよね。」
 K「お、幼馴染萌え、って言うけど、か、簡単な関係じゃないよね。
 そ、それをうまく描写できてると思う。」
 梟「いい感じだよなぁ。うむ。」
 マ「そこから生徒会室に移動するわけだが・・・。」
 梟「そこからもまたいいな。過去の思い出をフラッシュバックしながら、
 三人の関係が徐々に戻っていく様子が伺えて・・・。」
 ベ「最後の傘を貸すシーン、最高によかったですよ。
 少し口調が変わってるのは、わざとですかねえ。」
 K「そ、それもそうだし、千尋が会長を車まで送る為に相合傘で向おうとするのを眺める時乃が、
 徐々に表情を変えていくシーン。す、すごいよね。」
 ト「あれはどういう感情なんでしょうね。寂しさ?」
 ベ「変わってしまう恐怖とか?」
 マ「そのあたりは難しいなぁ。三人で仲良くはしたいけど、
 二人でいられるのはイヤ?うーん、ヤキモチとはまたちがうような・・・。」
 梟「どこか遠くへ行ってしまうように感じたのかもな。
 なんか言い知れぬ不安が浮かんだのかもしれないな、あの二人の背中に。」
 
 
- 8 :第四回くじびき〜以下略 
  :2006/11/01(水) 07:10:45 ID:??? 
  
 マ「何はともあれ、4話はネ申回というのは概ね反論はなさそうだな。」
 ト「今後、この回を上回る泣き回はあるんでしょうか?」
 K「さ、三話とのギャップも確実にあったよな。だ、だからっていうのもあるし。」
 ベ「あ、でも、「ミロ」・・・。」
 マ・梟・K「そこは流せ。」
 ベ「あい・・・。」
 マ「まぁ、高い羊羹とか頼むとか生意気な餓鬼じゃなぁ、とかは思ったわい。
 何はともあれまた次回じゃ!またな!」
 
 
- 9 :アトガキ :2006/11/01(水) 
  07:11:49 ID:??? 
  
- くじアンの第四話はネ申回です。 
 とか言い過ぎると見た時にギャップは大きいかも知れんので
 あまり言わんでおこう・・・。
 
 
- 10 :アトガキ 
  :2006/11/01(水) 07:12:25 ID:??? 
  
- くじアンの第四話はネ申回です。 
 とか言い過ぎると見た時にギャップは大きいかも知れんので
 あまり言わんでおこう・・・。
 
 
- 11 :マロン名無しさん 
  :2006/11/01(水) 07:13:02 ID:??? 
  
- 何二回投稿してんだ・・・ 
 テンパってますね・・・
 もう寝よう・・・。
 
 
- 12 :マロン名無しさん 
  :2006/11/01(水) 08:49:47 ID:??? 
  
- >>1乙だから、恋をした。 
 
 さて。
 >>第四回くじびき〜以下略
 いや4話すごかったすね。ちゅうか4クールシリーズならまだしも、12回しかないのにこんな話やっててきっちり終わるのかというのは笹原と同意見でございます。
 それとも手ごたえ掴んでもう1シリーズやれそうになってるとか?んで当初予定していたげんしけん第二期がお蔵とか?
 ・゚・(つД`)・゚・ソレジャアホンマツテントウダアァ
 まあ3人の関係性をいろいろ想像させる回だったのでストーリー上も必要なことはできていた、と思いましょうか。
 ちなみに俺は洗濯物が心配です。……SSの感想ではないと思いながら書いてるけど違和感がない……いっか、そんじゃ。
 
 山田萌え班としては彼女大活躍(っつうか大爆発してましたが)の次回に超期待だ!
 スレ落っことさないよう俺も頑張ります。光明が……もちょっと先に光明が。
 
 
- 13 :マロン名無しさん 
  :2006/11/01(水) 19:30:46 ID:??? 
  
- >>1乙 
 数日書き込みないだけで落ちるのかサロンは…
 
 
- 14 :マロン名無しさん 
  :2006/11/01(水) 19:39:55 ID:??? 
  
- >1お疲れ様ですた!!SSスレは何度でも読みがえるっ! 
 テンプレフイタwwwww
 自分も、マイペースで今後も投下していく所存です。
 
 >>くじあん会議
 やーやっぱ、まだアニメ見てないけど、このSS好きですわ。
 
 >旧校舎での空気感
 ううむ、アニメでのそういう描写好きだ…やっぱみとかないといかんなあ。
 
 …あと、マの人のちょっと複雑な気持ちがSS内でかかれてますね。
 せつねえ…。こういうことホント言いそうだもんなあ…。
 
 
- 15 :マロン名無しさん 
  :2006/11/01(水) 21:13:59 ID:??? 
  
- >>1 
 まずはスレ立て乙です。
 単に容量がオーバーして前スレ終わったと思ってたのですが、落ちたのですか?
 最新の書き込みから、ほんの4日ぐらいしか経ってませんが、それぐらいの空きは前々から何回もあったと思うのですが…
 それともやはり容量オーバーでしょうか?
 過去のスレに比べてえらい早い番号で終わってますが、長文の作品が続いてるせいでしょうか?
 実は俺今書いてる話、最終的には100レス超えるかも知れないのですが、大丈夫かなあ…
 
 >第4回くじびき〜以下略
 何かこういう会議を読んでると、木尾先生が「くじアン」の新作作った意図が分かるような気がします。
 「くじアン」は作品そのものを楽しむというより、げんしけんのみんなと一緒に同時進行で「くじアン」を体験しようという、一種のイベントなんだと思います。
 (もちろん独立した作品としても十分に楽しめる出来ですが)
 何と言うか、ウルトラの星が見えたら君もウルトラ兄弟だ、みたいなノリというか、まあそんな感じだと思います。
 
 
- 16 :マロン名無しさん 
  :2006/11/03(金) 00:57:33 ID:??? 
  
- >1乙です!よもや落ちるとは… 
 そして、くじvアンへの熱意が感じられますw
 
 >第四回くじびき〜以下略
 アニメ観れて無いのに楽しみですよ。今後ともよろしくお願いします!
 DVD買った人が読み返す日が来るはず…。
 
 
- 17 :1 :2006/11/03(金) 06:01:31 ID:??? 
  
- たぶん、ずっとsage進行でだいぶ順番が下がってたんだと思うんですよね。 
  
 立ったのが8月中旬だから、2ヶ月半くらいもってたわけですしね。
 今までは落ちきる前に使い果たしてましたからねえ・・・。
 
 
- 18 :マロン名無しさん 
  :2006/11/03(金) 15:21:08 ID:??? 
  
- >>1さん乙です〜 
 よもや落ちるとは……
 
 >>第四(ry
 いいなぁ。楽しそうだなあこいつら。
 しかしアニメ1クールで本当にまとめられんのかな……
 
 
- 19 :マロン名無しさん 
  :2006/11/03(金) 18:38:47 ID:??? 
  
- ようかん・・・ 
 ナニ?律子の好物って羊羹?
 しかも、「とらや」の次が「おざさ」の羊羹
 かなりのツウだな。(ヒント=吉祥寺)
 
 
- 20 :マロン名無しさん 
  :2006/11/03(金) 22:36:36 ID:wsAXL9W3 
  
- 保守 
 
 攻殻パロを執筆中だけど、もしかして今の主流はくじアン…?
 
 
- 21 :マロン名無しさん 
  :2006/11/04(土) 16:10:23 ID:??? 
  
- まだ主流というほどでは無いような… 
 好きなの書いてください!!
 
 
- 22 :マロン名無しさん 
  :2006/11/05(日) 07:30:09 ID:??? 
  
- ですねぇ。 
 書いてて楽しくなきゃねw
 
 
- 23 :マロン名無しさん 
  :2006/11/06(月) 19:19:33 ID:??? 
  
- バッチこーい 
 
 
- 24 :マロン名無しさん 
  :2006/11/08(水) 02:26:46 ID:??? 
  
- 新作期待保守 
 
 
- 25 :マロン名無しさん 
  :2006/11/09(木) 01:53:00 ID:??? 
  
- 書く時間がー時間がーorz 
 とりあえず保守
 
 
- 26 :うすびぃ(13歳) 
  :2006/11/09(木) 01:56:23 ID:??? 
  
- 落ちたのか・・・ 
 残ねん
 個人的にげんしけんは同人かっても外ればっか引かされて
 脳内であまり盛り上がってない
 ローゼンメイデンのSSは何個か描いたけど
 9巻買ったらまた書くよ
 
 
- 27 :マロン名無しさん 
  :2006/11/09(木) 03:57:23 ID:??? 
  
- まだまだ盛り上がってる最中だけどアンソロ2の原稿がですね…orz 
 
 
- 28 :マロン名無しさん 
  :2006/11/09(木) 20:04:28 ID:??? 
  
- がんがれ、まだ時間はある。 
 
 
- 29 :うすびぃ(13歳) 
  :2006/11/10(金) 03:12:32 ID:??? 
  
- 冬コミに追われて書く時間がああ 
 
 
- 30 :マロン名無しさん 
  :2006/11/10(金) 03:58:00 ID:??? 
  
- >>29 ローゼンSSイラネ 
 
 
- 31 :うすびぃ(13歳) 
  :2006/11/10(金) 17:25:10 ID:/G0PFxi2 
  
- 田中「おーぅ」 
 笹原「ドモっす。久我山さんつかまりませんでした」
 ダラ「まっしょーがねーやな」
 田中「女性陣は?」
 笹原「春日部さんのショップの手伝いに借り出されてるみたいです。遅れてくるそうです」
 ダラ「ほんじゃ、ま男性陣で先にカンパーイッ」
 笹原「ほんと久しぶりですね」
 ダラ「で?どーなのよ。笹原最近ずっと顔だしてなかったみたいだけど、研修のほうは」
 笹原「ええ。まだ実感わいてないんですけど ああ編集者になるんだなってことくらいで」
 田中「なんだ お前けっこう部室に顔出してるのか?イヤだねぇ大学近くに就職したやつぁ」
 ダラ「違ええよ!・・それに」
 朽木「最近ちょくちょくマダラメさんは春日部女史の卒論の手伝いさせられてますにょ〜」
 ダラ「こっコラ!・・・・・あーーーまーーーその・・・」
 田中「・・・・・相変わらず茨の道だな」
 ダラ「ちっちげーーーよ!そ/////そんなんじゃねえって・・」
 田中(ぽん)「マダラメ・・・俺らはある意味尊敬してるんだぜ」
 笹原「そそーですよ」
 田中「俺たちはオタクだ。道端でいちゃついているような奴らを見下している反面
 うらやましくも思っている。でも俺たちにはそんなことは無理だ。だからオタクに
 逃げ込んでいるってのもある。そこに春日部さんみたいな縁遠いと思われた人が
 来た。今じゃ当たり前の関係になったけど、どっかで俺なんかは非難や否定されるのが怖い
 部分もある。同じ趣味の子と付き合ったほうが楽だって・・」
 笹原「大野さんに聞かれたら怒られそうですね。でもそれ当たってると思いますよ。」
 田中「お前は俺たちから見たら希望の星なんだよ」
 ダラ(う〜ん・・お前ら彼女いるし・・)「ははは、まっまあ確かに茨の道だな。
 イメージ的にいうとベルバラのOPみたいなもの。全裸でバラのトゲに囲まれた感じかなww
 あはっあははははは」
 咲 「な〜に盛り上がってんの?なにが茨の道だって?」
 ダラ「いっ・・・ももしかして聴いてた?」
 大野「田中さ〜〜ん・・ちょっとお話が」(マスク装着)
 荻上(全裸? 茨? まだらめ・・・)うーん
 
 
- 32 :うすびぃ(13歳) 
  :2006/11/10(金) 17:26:43 ID:/G0PFxi2 
  
- その晩 荻上の家にて 
 
 荻上 「マダラメ!・・・ゼンラ!・・イバラ!・・・ワレ・・・萌エル!」
 
 笹原 (な・・なぜ三国無○の魏延口調)
 
 
- 33 :マロン名無しさん 
  :2006/11/10(金) 19:15:03 ID:??? 
  
- GJ!!どこで精進してきたんだw 
 読みやすい上に面白くなってる。あんたすごいな!
 
 あと荻上さんの壊れっぷりに萌へ。どんなすごい妄想してるんだか。
 ゴッソサン
 
 
- 34 :マロン名無しさん 
  :2006/11/10(金) 20:55:25 ID:??? 
  
- 草むらーにー名も知れずー咲いているー花ならばー 
 
 
- 35 :マロン名無しさん 
  :2006/11/10(金) 23:07:52 ID:??? 
  
- >>31 
 いいねえ、バラのトゲでハアハアな荻上さん…
 
 >>30
 俺は読みたいな、ローゼンSS。
 現視研の部室に、外務大臣が乱入してくる訳ですな…
 
 
- 36 :マロン名無しさん 
  :2006/11/11(土) 01:05:03 ID:??? 
  
- ひゃはっ、連投じゃなくなってる! 
 >>31
 おもしろかったですよ〜。
 茨の道も一歩から・・・。
 
 んで、キッズで6話が放送されてる裏で5話の面白かった会議行きます〜。
 3レスでよろしく〜です。
 
 
- 37 :第五回くじびき以下略 
  :2006/11/11(土) 01:05:45 ID:??? 
  
- マ「え〜、第五回くじびきはーとアンバラン・・・。」 
  
 ク「にょほほっ!!今回は参加していいのですねいえいぇえええい!!?」
 マ「・・・うるさいよ。あー、もうこうなりそうだからいないときにやりたかったんだが・・・。
 え〜、はーとアンバランス、略してやっぱりくじアンよかった本会議〜。」
 べ「今回は・・・どうでしょう?」
 梟「詰め込みすぎだな。正直二回ぐらいに分けて欲しかったかもしれん。」
 K「テ、テンポが速すぎてちょっとよそ見すると、
 な、なにがなんだかわからなくなるんだよね・・・。」
 ト「二、三回見ると、『ああ、こういうことだったんだ。』ともなるんですけどね。」
 マ「むぅ、たしかに、感情の変化は表情でしか見て取れなかったしな。」
 ベ「時乃派と蓮子派に遺恨を残す結果になったかもしれませんね・・・。」
 梟「まぁ、しっかり見ればどちらにも非があるんだけだどな。」
 K「び、ビンタは時乃が悪いとも見れるし、れ、蓮子のやりすぎとも見れるし・・・。」
 ク「NO!小雪の好意を無駄にした蓮子死すべし!!フゥウウ!!」
 ベ「それは言いすぎじゃない?あの後しまった、という表情もしてるし、
 悪い事だって言うのは分かっててもやっちゃう性格なんだろうね。」
 マ「そうそう、頭に血が上るとついやってしまう。
 しかし、反省はして、果物とって来るとかいい描写じゃったわい。」
 梟「その後すぐに山田が来てその辺の話しが終わっちゃうのが残念でな。」
 K「も、もう少しじっくり描いて欲しかったね〜。も、もったいない。」
 ト「テンポが速いのは悪くはないんですが、
 ながら見してると見落とすシーンが多くて・・・。」
 マ「ながらって・・・。・・・突っ込むのはやめておこう。」
 ベ「前から細かいところにギミックか仕掛けられていてるんですが、
 今回はソレが顕著だった気がしますね。」
 梟「本題までそういう描写に近くなってては、批判も集まるってなもんだろう。」
 K「あ、あの4話の後って言うのも大きいかもね。」
 マ「まぁ、比較してしまうのは仕方がないことだがな。」
 ベ「Bパートがキュウキュウでしたからねえ。」
 ト「両親の出てくるシーンも、唐突で、しかもなんか急だったし。」
 マ「描写的に軽くなってる気はするな。尺の短さが惜しく思えるわい。」
 
 
- 38 :第五回くじびき以下略 
  :2006/11/11(土) 01:06:31 ID:??? 
  
- ベ「内容的には時乃と蓮子の関係性がメインでしたね。」 
  
 梟「お互いに自分の嫌な所を自覚しつつ直せない自分が嫌いな二人。
 両極端にいながら似た二人なのかもしれんな。」
 K「と、時乃は無意識に他人に飛び込んでしまうタイプで、
 れ、蓮子は他人をすぐに否定してしまうタイプか。」
 ベ「いい対比になってると思いますよ。お互いがお互いに意識してると思います。」
 マ「むう、なんかむず痒い青春じゃのう。」
 梟「そんな時期あったのかよ、お前に。」
 マ「はははははは!あるわけないわっ!わしは昔からこの道一筋じゃ!」
 K「じ、自慢げに言うことでもないし、か、かえって引くぞ。」
 マ「・・・うう。」
 ベ「ま、まあ、そのへんはおいといて。」
 ト「山田ですが、公式では『人間』言われてる彼女ですが・・・。」
 マ「あー、その辺は流したほうがいいんじゃね?」
 梟「だな。今後山田回がないとも限らんし、どっちにしたって山田は山田だし。」
 K「は、話の種にするのはいいけど、け、結論はつかないだろうからな・・・。」
 ク「あの描写ではどう考えてもロボットですぞ!これはDVD修正もありうる・・・。」
 ト「それはない。」
 ベ「まぁ、今後の展開で出てくることに期待ですか。」
 梟「千尋は相変わらずいいところで強気な発言するな。」
 K「いやぁ、ち、ちゃんと主人公やってるよね。」
 マ「まー、最近のアニメの主人公にしてはまっすぐな奴だな。」
 ベ「時乃の頭を軽く叩いて慰めたりとか、いいですね。」
 ト「そういえば、出だしの終業式の帰りの5人の距離が、
 最後、始業式の登校で縮まってるのはうまいな〜、と思ったんですよね。」
 梟「あれはよかったなぁ。完全に分かり合ったわけではないけど、少し歩み寄った・・・と。」
 K「そ、そういうところ見逃すと、ま、全く内容がわからなくなる、と。」
 ベ「むずかしいところですねえ。あんなの一瞬ですからねえ。」
 
 
- 39 :第五回くじびき以下略 
  :2006/11/11(土) 01:07:25 ID:??? 
  
- マ「んで〜、今回ついに小雪の超能力が・・・。」 
 ク「YES!YESYESYES!ついに小雪の時代ですぞ〜!」
 梟「かわいい描写が多いな。こんな信者がつくのも判る気もする。」
 K「こ、『小雪、こどもじゃないもん・・・」は反則だよな。」
 ト「一番、製作者が見せたがっているのは小雪ではないかという気もしてきますね。」
 マ「確かに、毎回おいしいシーンがあるからな。
 一話の「おねえちゃ〜ん」、二話「あの、爆弾が・・・」、三話「食べて・・・」
 四話のゴミ掃除、必ずかわいいシーンがあるからなぁ。」
 ベ「蓮子が毎回パンチラするようなものですかね。」
 マ「お約束か。むう、ロリスキーとしては小雪は見逃せないのう。」
 ク「HUUUU!!小雪は渡しませんぞぉ!!」
 マ「あー、そういうのはネットの中だけにしてくれ。次回は小雪回、見逃せんぞ!」
 梟「相変わらず作画はよかったな。」
 K「く、空気アニメっていわれるけど、た、確かに動画見てるだけでも面白いからな。」
 ベ「無理にストーリーを追わず、動いてるのを見て楽しむのもいいかもしれませんね。」
 ト「そういう楽しみ方が出来る稀有なアニメだよね。」
 マ「今回は確かに詰め込みすぎであったし、見かたによってはダメかもしれんが、
 十分楽しめる回であったのは間違いないわな。」
 梟「及第点、って奴か。たまに全話及第点も取れてないアニメもあるからなぁ・・・。」
 K「そ、そういう意味じゃ、すごいのかもしれないけどね。」
 ト「今回に限っては複数回見て欲しいですね〜。」
 ベ「そういうのははまったオタクだけがするから、なかなか難しいかもね。」
 マ「何を言う!わしはもうすでに全話10回以上みてるぞい!!」
 梟「まぁ、10回は言い過ぎとしても、3、4回は見てしまう不思議な魅力のあるアニメだな。」
 べ「そうですね〜。あ、ビデオ持ってきたので、みんなで見ましょう、5話。」
 マ「OKじゃ!では今回はこの辺でお開き!またなっ!」
 
 
- 40 :第五回くじびき以下略 
  :2006/11/11(土) 01:10:10 ID:??? 
  
- ってワケで連投がいやでぎりぎりまで待ってたんですが、 
 よかったよかった。
 
 感想くれた方有難うございます〜。
 こいつらの会話書くだけで楽しすぎます。
 
 明日の6話たっのしみだな〜。
 クッチーに同調した第五回でした。
 
 
- 41 :うすびぃ(13歳) 
  :2006/11/11(土) 01:28:41 ID:1hd63yA2 
  
- ベルバラOP 
 http://ime.nu/www.youtube.com/watch?v=qx2sla154Y0
 
 
- 42 :マロン名無しさん 
  :2006/11/11(土) 04:55:59 ID:??? 
  
- >ベルばら 
 荻上さんの台詞フイタwwwwww
 うまいなあ。
 
 >くじアン会議
 毎回思いますが、げんしけんキャラ一人一人の台詞がうまいっす。
 「こういうこと言いそーー!」と。
 今回クッチー出てきたのが個人的に好きw
 ちょっと空気読めてないとこが、全体のスパイスになってるwww
 
 
- 43 :マロン名無しさん 
  :2006/11/11(土) 12:41:31 ID:9UwtIlYi 
  
- 高坂がコスしたとき、それをみた咲は「もしコー」で台詞きれちゃったけど 
 なんていおうとしたのかなあ?
 もしコーサカ…に続くことばがわからないっ
 
 
- 44 :マロン名無しさん 
  :2006/11/11(土) 14:39:06 ID:??? 
  
- ずっとしっくりくるセリフが分からなかったんですが 
 「もしコーサカでなかったら張り倒してるね/殴ってるね」
 とかどうでしょ
 
 そのあとクッチー蹴りまくってるし
 
 
- 45 :マロン名無しさん 
  :2006/11/11(土) 22:11:45 ID:??? 
  
- 「もしコーサカに何かあったらどうするつもりだ」 
 かと思ってました
 
 
- 46 :マロン名無しさん 
  :2006/11/11(土) 22:20:11 ID:??? 
  
- つ「もしコーサカが女装趣味になったらあんたらのせいだからね」 
 
 
- 47 :26人いる! 前書き 
  :2006/11/12(日) 16:25:23 ID:??? 
  
- 長々と書き続けた今年の夏コミのSSがようやく…すいません、実はまだ完成してません。 
  
 ですが何時までも置いとくのも何なので、途中ですが投下することにしました。
 もし先に投下したい方いたら待ちますのでお先にどうぞ。
 5分待ってレス無ければ投下開始します。
 44レスほどの予定です。
 (くどいけど未完です)
 
 
- 48 :26人いる! 前書き 
  :2006/11/12(日) 16:32:32 ID:??? 
  
- この話を初めて読む方の為に、オリジナル設定等のまとめ 
  
 @今年の新1年生は、男子5人女子6人の計11人、さらに秋にはスー&アンジェラも合流します
 A部室が手狭になったので、サークル棟の屋上にプレハブ製の部室を新設しました
 B斑目は相変わらず部室に昼飯食いに来てますが、4月以降は外回りの仕事も手伝っているので、昼休み以外の時間帯にも時々部室に来ます
 C斑目は1年生女子からシゲさんと呼ばれています
 Dクッチーは去年の秋頃から空手を習っています
 E諸々の事情で、クッチーは児童文学研究会にも掛け持ちで入会してます
 児文研会長の勧めにより、普段は大人しくなりましたが、イベントになると必要以上に大騒ぎします
 F荻上会長は巷談社主催の春夏秋冬賞という漫画コンクールに応募して審査員特別賞を獲得し、それがきっかけで今年の秋に「月刊デイアフター」で新連載開始の予定です
 
 
 
 
- 49 :26人いる! 新1年生女子一覧 
  :2006/11/12(日) 16:37:15 ID:??? 
  
- 神田美智子  
 両親と兄1人の4人家族だが、家族全員がオタなので幼少の頃よりコミフェスに参加していた。
 ノーマルなカップリング中心だが、最近ヤオイも始める。
 
 国松千里
 元々は特撮オタで、アニメや漫画のオタとしては初心者。
 垂れ目ながら大きな瞳のロリ顔美少女。
 
 豪田蛇衣子
 腐女子四天王(クッチーが命名した、新1年生の腐女子4人組の通称)のリーダー格。
 小学生の頃から少女漫画を描いている。
 大柄で肥満体のゴッグのような体格。
 
 沢田彩
 四天王の1人。
 元々はジュニア小説を書いていた、ショートカットで色白の文芸少女。
 
 台場晴海
 腐女子属性はむしろリーダーより濃い、四天王の参謀格。
 見た目秀才っぽい、スレンダーなメガネっ子。
 
 巴マリア
 四天王の1人で、元ソフトボール部の体育会系腐女子。
 巨乳でなかなかの美人だが、夏ミカンを握り潰せるほどの握力の持ち主でもある。
 
 
 
 
 
- 50 :26人いる! 新1年生男子一覧 
  :2006/11/12(日) 16:40:05 ID:??? 
  
- 日垣剛    
 元野球少年の初心者オタ。
 身長185センチの肉体派オタだが 
  気は弱く温厚で大人しい性格。
 初心者同士のせいか、国松と仲がいい。
 
 有吉一郎
 高校時代は漫研。
 いかにも理屈先行型オタという感じの、細面のメガネ君。
 伊藤とは同じ高校出身でよく一緒にいるので、それを腐女子四天王にネタにされている。
 
 伊藤勝典
 高校時代は文芸部。
 脚本家志望だが、ラノベやSSも書く。
 猫顔で、動作も猫に似ていて、喋る時も語尾に「ニャー」と付ける。
 
 浅田寿克
 高校時代は写真部。
 神経質そうなメガネ君で、1年生会員たちの会話ではツッコミ役になりがち。
 岸野と一緒にいることが多い為、有吉×伊藤同様、腐女子四天王にネタにされている。
 
 岸野有洋
 浅田と同じ高校出身で、部活も写真部だった。
 リーゼント風のひさしの目立つ髪型以外に取り立てて特徴が無く、あまり目立たない。
 浅田と共に、様々な雑用で縁の下の力持ちとして力量を発揮する。
 
 
 
 
 
- 51 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その1 
  :2006/11/12(日) 16:44:22 ID:??? 
  
- 「笹原君、君、ヤオイっちゅーもんを知ってるか?」 
  
 漫画家のA先生が笹原にそう声をかけて来たのは、笹原が新たに担当になってから1週間ほど経った、ある日のことだった。
 漫A「君確か自己紹介で、学生ん時に何たらいうオタクのサークルに居った言うてたな?そしたらそういうことにも詳しいやろ?」
 笹原「ヤオイがどうかしたんですか?」
 漫A「君、すまんけどわしにヤオイっちゅーもんについて、いろいろ教えてくれんかな。先ずは何でヤオイって言うかからやな。やっぱり八尾の朝吉とかが関係あんのか?」
 笹原「八尾の朝吉?」
 笹原はA先生に、そもそもヤオイという言葉の語源から、順を追って丁寧に説明を始めた。
 (注釈)八尾の朝吉
 映画「悪名」シリーズで勝新太郎が演じていたやくざの名前で、本編とは特に関係ない。
 ヤオイに縁の無いオッサンの一般的な認識と流して下さい。
 
 A先生は、主に中高年やブルーカラー層を購読者とする、実話系雑誌でやくざ漫画を描き続けてきた、この道30年のベテランである。
 実話系雑誌とは、芸能・スポーツ・風俗・賭博・政治・犯罪など、スポーツ新聞的なネタに加えて、普通のマスコミがあまり扱わない暴力団関係の記事が充実している雑誌のことである。
 非オタ系漫画の極北のポジションに居たこの先生を、笹原は失礼ながら担当が決まるまで知らなかった。
 
 A先生は推定年齢55〜60歳で、笹原の両親より多分年上だ。
 顔付きは強面で、体付きは大柄でいかつく、喋り方も柄の悪い関西弁だ。
 経歴は公式には不明とされているが、裏社会にしっかりした情報網を持っていることから、裏社会の住人だった時期があったと思われる。
 正直言って苦手なタイプであった。
 そのA先生が、無骨な外見に似合わず凄まじいスピードで丹念にメモを取りつつ、矢継ぎ早に質問を次々とぶつけてくる。
 
 
 
 
 
 
- 52 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その2 
  :2006/11/12(日) 16:48:24 ID:??? 
  
- ヤオイから派生したオタク関係の質問が次々と出て、話題は夏コミへと移って行った。 
  
 漫A「ほな君、今年もその夏コミっちゅーのに出るんか?」
 笹原「ええ、上手く休み取れたら3日とも顔出そうと思ってるんですが、まだ決まってません」
 漫A「よっしゃ笹原君、その件わしが編集部に話つけたるわ。3日とも休みにしたるから、行ってきい夏コミ」
 笹原「えっ?」
 漫A「その代わりスマンけど君、その3日間で夏コミについて可能な限り取材して来てくれんかな。ひとつ頼むわ」
 笹原「取材…ですか?」
 漫A「せや。デジカメでええから、ようけ写真撮って、君のサークルのもんとか他のお客さんから話聞いて、それをレポートにまとめてわしに提出してくれたらええ」
 笹原「まあ、それはいいですけど…」
 漫A「あ、それからな、資料として同人誌っちゅうのを買うて来てえや」
 懐から分厚い札入れを取り出し、無造作に万札を十数枚掴み出して笹原に渡す。
 笹原「こっ、こんなにいいんですか?これだとさすがに、物凄い量になりますよ」
 漫A「かまへん。どのみち君の話聞く限りでは、そんだけ出しても会場で売ってる本、全種類は買えんやろ?」
 笹原「それはそうですが…」
 漫A「ええか、何の話でも話を書く時にはなあ、可能な限り最新の情報を仕入れるのが基本中の基本や。どんな絵空事な話でも、その土台にはリアルな現実の情報が要るんや」
 さらにA先生は、今考え始めている企画について話し出した。
 A先生が現在「実話鉄拳」で連載している任侠漫画がもうじき終わる。
 次の作品の連載も決まっているのだが、その内容に編集部から注文があった。
 最近雑誌の部数が落ちているので、新しい読者層を取り込めそうな話を描いてくれというのだ。
 そこでA先生が目を付けたのはヤオイブームだった。
 彼の得意なヤクザ漫画にヤオイネタを絡め、腐女子を新たな顧客にしようと考えたのだ。
 
 
 
 
 
- 53 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その3 
  :2006/11/12(日) 16:52:04 ID:??? 
  
- 漫A「まあ具体的な話を言うとや、昔は漫画家を目指してた絵の上手いテキヤがヤオイブームに目え付けて、ヤオイ同人誌を新しいシノギにしようとする、まあそんな感じや」 
  
 笹原「あの先生、ひとつ伺いたいのですが、今先生が描いてらっしゃる絵柄でそれ描かれるお積りですか?」
 笹原が憂慮したのは、A先生の絵柄だった。
 先生の描くやたらと無骨な顔立ちのキャラは、任侠漫画ならともかくヤオイには不向きだ。
 漫A「君の言いたいことは分かるわ。つまりヤオイやったら…」
 そう言いかけ、A先生は先程まで使っていたメモ帳に、何やら絵らしきものをサラサラと描き込む。
 そして描き終わると、それを笹原に差し出しつつ言った。
 漫A「こういう絵を描かなあかんねんやろ?」
 笹原「ひへっ?!」
 思わず自分の彼女のような驚き方をする笹原。
 先生が描いたのは、普段描いてる作品のような無骨な顔ではなく、最近のヤオイ漫画にありがちなレディコミ風の端正なイケメンだった。
 笹原「先生、これはいったい?」
 漫A「わしこれでも下積みの時は少女漫画のアシスタントやっとったからな、こういう絵えでも描けるんや」
 一抹の不安を覚えつつも一応納得した笹原、もうひとつ疑問をぶつけた。
 「それに先生、いくら何でもヤオイだと、腐女子以外の人からは拒絶される危険が大きいと思います」
 だが先生は意外な返答をした。
 「その点は大丈夫や。君は知らんやろけど、実は極道もんには、その手の趣味のもんが意外と多いんや」
 笹原「(意外そうに)そうなんですか?」
 漫A「今の大卒の経済ヤクザはともかく、昔のヤクザもんが出世しよう思たら、ヤバい仕事やってムショで何年か修行して来なあかんかったんや」
 笹原「?」
 
 
 
 
- 54 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その4 
  :2006/11/12(日) 16:55:13 ID:??? 
  
- 漫A「まあ君みたいな真面目な子には想像しにくいかも知れんけどな、そうなると女抜きで何年か暮らさなあかんから、どうしてもこっち系で代用することになる訳や」 
  
 先生は「こっち系」のところで、手の甲を頬に当てた。
 オカマを示すジェスチャーだ。
 漫A「そんでムショ出た後も、そのまんまそっち系の趣味続けるもんもけっこう居んねや」
 笹原「そういうもんなんですか?(汗)」
 思わず後ずさりしてしまう笹原。
 漫A「安心しい。わしにはその気は無いから」
 
 その後A先生は鷲田社に電話して、笹原の夏コミ3日間の休みの確約を取ってくれた。
 そして細かい打ち合わせを終えた頃、もう1人の担当編集者が来たので、笹原はその担当氏に後を任せてA先生宅を辞することにした。
 ヤオイに関する疑問から派生して、コミフェスその他のオタク趣味にも深い興味を持ったらしいA先生に対し、帰り際に笹原は大真面目にこんな誘いをかけた。
 笹原「あのう先生、取材はやりますけど、1度ご自分でも夏コミに参加されてはどうですか?知識や情報はともかく、あの独特の雰囲気や空気は、あの場所でしか体感出来ませんから」
 マジ顔で誘う笹原に、A先生は笑って応えた。
 漫A「堪忍してえや、笹原君。君の話聞く限り、この歳ではキツイで、夏コミデビューは」
 
 この後笹原は、他に担当している漫画家の所も回る予定だ。
 現在笹原は先ほどのA先生の他に、キャリア15年ぐらいになるB先生と、今年デビューしたばかりで椎応の漫研の3年生でもあるC先生の、3人の漫画家を担当していた。
 もっとも担当と言っても、笹原1人でその漫画家についての仕事を全てこなしている訳ではない。
 A先生とB先生には元々メインの担当者が付いている。
 (つまり先ほど来た編集者がメインの担当者だ)
 笹原の仕事は、その担当者たちの補佐であった。
 まあ早い話が雑用係である。
 編集者という仕事には、いろいろな雑用が伴う。
 その雑用の大半を笹原が引き受ける訳だ。
 
 
 
 
 
- 55 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その5 
  :2006/11/12(日) 16:58:40 ID:??? 
  
- ひと口に雑用と言っても本当に様々である。 
  
 資料を集めて来たり、ちょっとしたお使いを頼まれたり、時には家事をこなすこともある。
 そんな雑用の合間に、先輩の仕事ぶりを盗み見しながら仕事を覚える。
 感覚的には落語家や相撲取りの新弟子に近い、今日的には前時代的な感じの教育方針だが、真面目な男笹原はめげること無く働いた。
 
 笹原はC先生と打ち合わせをすべく、椎応大学のサークル棟に向かった。
 漫研の現役会員であるC先生は、今日は部室でネームを書いているのだ。
 その後夜になってからB先生の所にも顔を出す予定だ。
 B先生は、それなりに作品は売れているのだが、「分かる人にだけ分かる」ネタと作風の為に今ひとつメジャーになり切れずにいた。
 その為ベテランでありながら業界の評価は、前座プロレスラーや2番バッターみたいな中堅扱いであった。
 そのせいか、精神構造はネガティブ思考でメンヘル気味で時々発作的に自殺を図る。
 (実は半分狂言気味で、本音は止めて欲しいらしいのだが)
 そこで〆切が迫ってなくても定期的に顔を見に行くように、もう1人の担当者に厳命されているのだ。
 
 漫研の部室でC先生のネームをチェックすると、笹原はGOサインを出した。
 この先生に限って笹原は単独で担当していた。
 作品の人気やレベルはそこそこだが、とにかく真面目で仕事が速い。
 編集にとっては手の掛からない漫画家なので、編集部が笹原1人でOKと判断したのだ。
 B先生宅に寄る予定の時間には間があったので、笹原は現視研の部室に寄ることにした。
 
 屋上の床には、ブルーシートが敷かれており、その上に何かが立っている。
 さらにその傍らに、こちらに背を向けてしゃがみ、体を丸めて何かしている人影があった。
 その周囲には、塗料の入った小皿や缶がいくつか並べられていた。
 笹原が近付いてみると、立っていたのは何かの体だった。
 いや正確には、逆さまにされて、材木を組んで作ったらしいスタンド状の器具に固定されていた。
 
 
 
 
- 56 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その6 
  :2006/11/12(日) 17:02:44 ID:??? 
  
- 灰色がかった茶色のそれには、鋭い爪の生えた手足があり、腹のあたりが蛇腹状になっていた。 
  
 腕や脚の中にも材木が通してあるらしく、四肢はピンと張っていた。
 首を切って逆さ磔にした、ヒューマノイドタイプのモンスター、そんな風に見えた。
 
 笹原の気配に気付いたのか、しゃがんでいた人影が振り返りつつ顔を上げた。
 人影の正体は、筆を持った国松だった。
 「あっ笹原先輩、こんにちは」
 「こんちわ…わっ?!」
 驚いて声を上げてしまう笹原。
 国松の足元に、不気味な顔があったからだ。
 脳を肥大化させて露出したような感じの頭でっかちな頭部に、細く吊り上った瞳の無い目と、牙とギザギザの歯の生えた口があった。
 よく見ると見覚えがあった。
 笹原「それってもしや、ベム?」
 国松「そうです、妖怪人間ベムの変身後です」
 笹原「(先程の胴体と顔を見て)これってフィギュアなの?」
 国松「いえ、コスです」
 笹原「コス?ってことは…」
 国松「着ぐるみです。今度の夏コミのコスプレで『妖怪人間ベム』やりますんで」
 笹原「へえー。しかしこれ、よくできてるね」
 思わず胴体に手を伸ばす笹原。
 国松「あっダメです!まだ乾いてません!」
 数ミリ手前でピタリと笹原の手が止まり、サッと引っ込める。
 笹原「ごっ、ごめん。これってどうやって作ったの?何で出来てるの?」
 国松「ラテックスです。石膏で型作って、それにラテックス塗って剥がして原型を作りました。今日はそれに色塗ってるとこです。塗り終わったら今日はここまでです」
 笹原「まだ続きがあるの?」
 国松「色塗ったのが乾いたら、中にウレタン貼って形整えます。そして朽木先輩に実際に着てもらって、体に合わせていろいろ調整します」
 
 
 
 
 
- 57 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その7 
  :2006/11/12(日) 17:06:14 ID:??? 
  
- 笹原「朽木君がやるの?」 
  
 国松「はい。万が一朽木先輩が来れない時に備えて、日垣君でも着れるように少し大きめに作ってあるもんですから、ちょっと念入りに調整しなきゃいけません」
 日垣はクッチーより5センチほど背が高く、肩幅や胸囲なども少し大きかった。
 国松「まあ朽木先輩が着る分には、かなり余裕があると思います。あんまりピッタリ過ぎたら動きにくいし、汗の逃げ場が無くなって余計に暑いし、第一皮膚呼吸が出来なくなります」
 笹原「へえ、本格的だね」
 国松「まあ技術レベルはともかく、基本的な作り方は本物の着ぐるみと同じですから。機電も一応仕込みますし」
 笹原「きでん?」
 国松「機械の機に電気の電で機電です。まあ簡単に言うと、機械で着ぐるみの一部を動かす仕掛けのことです。まあ今回は、目を電球で光らせるだけですけど」
 笹原「凄いね」
 その後笹原は、国松の溢れんばかりの、いや溢れ過ぎでダム決壊状態の怒涛の着ぐるみ愛を延々と小1時間ばかり聞かされる破目になった。
 普段はどちらかと言えば無口で大人しい国松だが、こと特撮の話になると垂れ気味の大きな目をキラキラ輝かせて、楽しそうに話し続ける。
 笹原『まるで漫画描いてる時の荻上さんだな』
 愛する人と同じ種類の目の光を見てしまった以上、すげなくすることは出来なかった。
 
 ようやく部室に笹原が入ると、こちらはコスの山だった。
 2つの机の上には、同様のデザインの制服らしきコスが数着ずつ、4種類ほど見られた。
 肩ビラの色が紺色のものと水色のものと2種類のセーラー服、青のブレザーに黒いズボンの男子用らしき制服、そして紺色のロングコートタイプの軍服らしき制服。
 さらにその他にもさまざまなコスが並べられている。
 その片隅で斑目は遅い昼食を食べており、日垣は一心不乱に(多分田中が持ち込んだのであろう)ミシンに向かっていた。
 あとはやや困り顔の荻上会長、田中、恵子、クッチー、そしてただひとり上機嫌な大野さん、という面子だった。
 
 
 
 
 
 
 
- 58 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その8 
  :2006/11/12(日) 17:09:22 ID:??? 
  
- 互いにひと通り挨拶と近況報告を終えると、話題はコスプレのことになった。 
  
 笹原「外で国松さんに『妖怪人間ベム』のコスやるって聞いたけど…何かいろいろいっぱいあるね」
 大野「(にこやかに)はいっ!」
 田中「今回は大野さん、学生として参加する最後の夏コミだからね、3日間目いっぱいコスするんだよ」
 大野「3日とも違うんですよ」
 笹原「凄いね」
 大野「1日目と2日目は、私が会長だった代の会員中心でやるんです。で、1日目が『妖怪人間ベム』で、主役のベムは朽木君にやってもらいます」
 朽木「あの、大野さん、何故わたくしだけ変身後なのでありますか?」
 田中「コミフェスは長物禁止だからだよ。変身前のベムでステッキ無しだと、さまにならないだろ?」
 大野「それに変身後の方が、目立つし、ウケるし、かっこいいじゃないですか。主役だから立ててあげたんですよ」
 目立つ、ウケる、かっこいい、主役、クッチーの好きそうなキーワードを並べ立てる波状攻撃作戦は、見事に功を奏してクッチーは納得した。
 でも芸に生きる男クッチーは、お約束も忘れない。
 朽木「早く人間になりたいにょ〜〜〜!!」
 笹原「てことは、荻上さんもやるの?」
 荻上「私がベロで、大野先輩がベラです」
 笹原「ベロかあ…」
 大野「何ですか笹原さん。もっとロリロリなのとか、露出の多いの見たかったんですか?」
 笹原「(赤面し)ちっ、違うよ。よく荻上さん承知したなあと思って」
 田中「これでも知恵しぼったんだよ。大野さんの代のメンバーで出来るコスで…」
 大野「荻上さんがコスやってくれる条件に出した、ロリロリじゃなくて露出の少ないキャラってことで、荻上さんのキャラから逆算して考えたんですから」
 荻上「何かそれじゃあ私が我がままみたいじゃないですか。どっちかと言えば…」
 大野「ええそうですとも。我がままなのは私ですよ」
 胸を張ってにこやかに開き直る大野さんだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
- 59 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その9 
  :2006/11/12(日) 17:12:31 ID:??? 
  
- 荻上会長は先程の続きに話題を戻す。 
 荻上「それとあと、恵子さんがキラやります」
 笹原「キラ?」
 ガンダムのパイロットや、ノートに名前書いて殺人するインテリ君を連想する笹原。
 荻上「新シリーズに出てくる新キャラですよ。ベロの友だちの女の子です」
 笹原「ベロの友だちってことは…小学生?恵子が?」
 大野「ええ、最後だからってことで頼んだら、快く承諾してくださいました」
 コスの山の中から、キラの小学校の制服を取り出して見せる大野さん。
 ブレザーにミニスカートにベレー帽という格好だ。
 恵子を見る笹原。
 笹原「そうなのか?」
 手招きする恵子。
 笹原「?」
 笹原が恵子に近付くと、恵子は腕を掴んで部室の隅に笹原を連れて行き、顔を寄せた。
 恵子「(小声で)しゃーねーじゃん。あの暑苦しい巨乳の大女に涙目で迫られたら、断れねーじゃん」
 笹原「まるでアームストロング少佐だな」
 恵子「まあその代わり、バイト代もらえるけどね」
 笹原「バイト代?」
 恵子「2日目に何とかいう金髪のキャラやる代わりに、タダで金髪に染めれる美容室の券もらったんだよ」
 笹原「お前今度は金髪かよ」
 恵子「1回やってみたかったんだ。さすがに春日部姉さんいる間は遠慮してたけどね」
 こいつがそういう気の使い方をするようになったのかと、笹原は妹の人間的な成長に少し感心した。
 そして同時に、春日部さんに対する恵子の尊敬や親愛の情を微笑ましく思った。
 
 
 
 
 
 
 
- 60 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その10 
  :2006/11/12(日) 17:15:42 ID:??? 
  
- 再びみんなの方に2人が戻ると、さらにコスについての話は続いた。 
 笹原「それで2日目は?」
 大野「荻上さんの希望を入れて『ハガレン』にしました」
 荻上「私がエドで、朽木先輩がアル。大野さんがラストで、田中さんがグラトニーです」
 朽木「わたくし2日連続で着ぐるみであります」
 笹原「大変だね」
 恵子「そんで私が…何だっけ?」
 荻上「ホークアイです。いい加減覚えて下さい」
 斑目「そして俺がヒューズさ」
 食事の途中の斑目が割り込むように言った。
 笹原「斑目さんもやるんですか?」
 斑目「ああ。今年は土日休み取れたし、それにまあ俺も大野会長期の、部室の備品みたいなもんだからな」
 そう言いつつ手招きする斑目。
 笹原が近付くと、斑目は顔を寄せてきた。
 斑目「(小声で)しょうがねえだろ。あの胸近付けて凄え力で肩掴んで涙目で(以下略)」
 笹原「犠牲者その2ですか」
 斑目「お前は今年はどうよ?」
 笹原「3日とも出ますよ。上手く休み取れましたんで」
 笹原は、A先生用レポート作成の為に、3日とも休みを取れるようになった顛末を話す。
 斑目「半分仕事で夏コミか…それはそれで大変そうだな」
 ふと嫌な視線を感じて振り返る笹原。
 大野さんが赤面でニヤニヤし、荻上会長は意識が亜空間飛行中だった。
 笹原は、斑目から見えない角度で「それは無し!」という感じで手をヒラヒラさせつつ2人に近付く。
 そして荻上会長の筆を激しくシビビビする。
 荻上「はっ、ここは誰、私はどこ?」
 苦笑する笹原。
 荻上「(赤面)すっ、すいません」
 
 
 
 
 
 
 
- 61 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その11 
  :2006/11/12(日) 17:23:22 ID:??? 
  
- 再び嫌な視線を感じる笹原。 
 振り返ると同時に、大野さんに右肩を左手で、物凄い力で掴まれた。
 笹原「えっ?」
 大野「笹原さん、3日とも出れるんですね」
 笹原「うん、出るけど…」
 大野さんは右手で「ハガレン」の軍服を1枚掴み、笹原の方に差し出した。
 大野「ちょうどここに、笹原さんのサイズの軍服があるんですよ」
 笹原「何であるの?(汗)」
 大野「田中さん、例のものを」
 田中は傍らの自分のリュックから白い手袋を出して、笹原に差し出す。
 笹原「その模様はもしや…」
 手袋には魔法陣みたいな記号の模様があった。
 田中「錬成陣だよ」
 助けを求めるように、荻上会長の方を見る笹原。
 あきらめて下さいと言わんばかりに、片手拝みのポーズの荻上会長。
 笹原「犠牲者その3か…」
 結局笹原は、2日目にロイ・マスタング大佐のコスをやる破目になった。
 考えてみればコスプレ初体験である。
 A先生用のレポートのネタが増えたし、まあいいかと笹原は1人納得した。
 笹原「で、3日目は何やるの?」
 大野「まだ何するかは未定なんですけど、私はアンジェラとペアでやる予定です」
 笹原「やっぱり今年も来るんだ、あの2人」
 大野「まあ秋からは正式にここの会員ですからね。で、実はそれと別班でもうひと組やるんですけど、遅いな神田さん…」
 笹原「神田さん?」
 傍らで食事していた斑目の食べるペースが、何故か急に速くなった。
 神田「遅くなりました!」
 晴れやかな笑顔を浮かべ、神田が部室に入ってきた。
 
 
 
 
 
 
 
- 62 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その12 
  :2006/11/12(日) 17:31:20 ID:??? 
  
- 神田「あっ笹原先輩こんにちわ。(大野さんに)遅くなってすいません」 
  
 神田は手に持った風呂敷包みを机に置いて開ける。
 包みの中身は、袴と井の字模様の羽織という組み合わせの着物だった。
 笹原「これは?」
 神田「お祖父ちゃんの着物です。亡くなってからもう20年ぐらい経つ上に、お祖母ちゃん物忘れがひどくなっちゃって、なかなか見つからなくて…」
 笹原「???」
 神田「前にお祖母ちゃんに写真、見せてもらったの覚えてたんです。で、似てるなあと思って、お祖母ちゃんに出してもらったんです」
 笹原「あの、それで何のコスプレなの?」
 神田「今試着してもらうのを見れば分かりますよ。お祖母ちゃんの話だと、お祖父ちゃんの背5尺8寸だったそうだから、多分あまり調整しなくて済むと思いますよ」
 荻上「5尺8寸って、どれぐらいなの?」
 神田「およそ175〜176センチってとこです。明治の人としては長身だったみたいですよ。私が生まれる前に亡くなったんで、会ったことは無いんですけど」
 斑目がそろそろとドアの方に向かう。
 その腕を「ムズンパ」と擬音が聞こえそうなタイミングで神田が掴む。
 神田「どこ行くんですか、シゲさん?」
 斑目「いや、そろそろ会社に戻んないと…」
 神田「大丈夫ですよ、あそこの社長さんイージーだから、少々遅れても怒られませんよ。それよりさっそく寸法合わせましょうよ。さあ、みなさん向こう向いて下さーい」
 
 数分後、斑目は神田の持ってきた着物を着込んだ。
 カッターシャツの上から着たので、袖口からカッターの袖が見える。
 神田「わーピッタリ!」
 それを見た笹原が呟いた。
 「絶望先生…」
 恥ずかしい一方で、斑目のキャラ作り魂が目覚めた。
 「知ったな!うわああああああ!」
 絶叫しつつ部室を飛び出して行く斑目。
 
 
 
 
 
 
- 63 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その13 
  :2006/11/12(日) 17:35:00 ID:??? 
  
- コミフェスという非日常のハレの場ならともかく、日常的な部室で身内相手にコスするのは却って恥ずかしいものらしい。 
  
 いつか荻上会長が部室でコスした時に逃げようとしたのも、単に露出が激しいコスだからというだけでなく、そういう心理もあってのことだったのだと笹原は改めて理解した。
 神田「ねっ、大野さん、私の言った通りでしょ?」
 大野「そうですね、あそこまで似合うとは予想出来ませんでしたね」
 笹原「あの、これはどういう?」
 荻上「今のコス、言い出したの神田さんなんです」
 神田「シゲさんも絶望先生も総受けキャラだから、絶対似合うと睨んでたんです」
 笹原『1年の女子の間でも、斑目さん総受け認定なのか…』
 大野「それでそこから発展して、斑目さんと1年生の女子で『さよなら絶望先生』のコスやることになったんです」
 神田「でも実は、他にもちょっとしたサプライズを用意してるんですよ」
 悪戯っぽく笑う神田。
 笹原「へー、どんな?」
 神田「(唇に人差し指を当て)秘密です」
 大野「どうですか笹原さん、なかなかの名プロデューサーでしょ、神田さん?」
 笹原「何やら嫌な予感が…」
 
 笹原「とすると、あっちのセーラー服とブレザーは?絶望先生のとは違うみたいだけど」
 荻上「あれはハルヒの学校の制服です」
 笹原「それもコスプレするの?」
 荻上「うちの同人誌の売り子用なんです」
 笹原「…ということは、同人誌のネタってハルヒなの?」
 荻上「そうです。『涼宮ハルヒの憂鬱』です」
 笹原「またえらく男性向けなのを題材に選んだね」
 荻上会長は、その経緯を説明し始めた。
 
 
 
 
 
 
 
- 64 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その14 
  :2006/11/12(日) 17:44:04 ID:??? 
  
- 7月も後半に入り、印刷所への入稿〆切まで残り10日を切ったある日のこと。 
  
 その日も部室では、サークル参加の同人誌のお題についての議論が続いていた。
 参加者は腐女子四天王の豪田、台場、巴、沢田、ヤオイは最近始めたばかりの神田、ただ1人の男性の絵描きの有吉、そして荻上会長という面子だ。
 部室の外では、国松が妖怪人間ベムの着ぐるみコスを作っていた。
 今日の作業は、溶かしたラテックスを石膏の型に塗りつける作業なので、さすがに部室の中ではやり辛い。
 ちなみに日垣は田中、大野と共に資材の買出しに出ている。
 クッチーは就職活動中だ。
 そして浅田と岸野の2人は、ここ数日夏コミ用の軍資金を稼ぐべくバイトに精を出し、部室にはあまり姿を見せていなかった。
 
 海水浴効果(「17人いる!」参照)でわだかまりが無くなり、みんな我を通さなくなったものの、今度はそれが逆に足枷となって議論を長引かせていた。
 例えばAさんがaという案を主張し、Bさんがbという案を主張していたとする。
 やがてAさんがbという案もいいなと言い始める。
 ところがその頃には、今度はBさんがaという案(あるいはCさんのcという案)もいいなと言い始める。
 その一方で、Dさんがdという案を捨てて、新たにddという案を出したりする。
 そんなことの繰り返しで、結局のところ1つの案に賛同者がなかなか2票集まらないという状態が続いた。
 
 もっともここまで議論が長引くのには、もうひとつ理由があった。
 それはコミフェスへの出品が、必ずしも毎年出来るとは限らないということだ。
 毎年必ず出品する枠が設けられている大手と違い、現視研のような無名の弱小サークルは次はいつ出品出来るか分からない。
 くじ運が悪ければ、今回が彼女たちの大学での最後のサークル参加になるかも知れない。
 そう考えると、どうしても今回最高の本を作らねばという思いが過剰になってしまう。
 テーマひとつ選ぶのにもついつい慎重になり過ぎてしまうのも、ある意味仕方ないことかも知れなかった。
 
 
 
 
 
- 65 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その15 
  :2006/11/12(日) 17:52:39 ID:??? 
  
- 強権発動して決めてもよかったのだが、荻上会長は敢えて1年生だけで納得行くまで話し合わせて決めさせることにした。 
  
 今回の同人誌の件については、荻上会長はオブザーバーに徹し、暴走した時だけ止め役に回る程度以上には介入しないと決めていた。
 彼女たちを信頼しているというのもあったが、もうひとつ別の目的があった。
 それは次期会長に誰を推すか選定することだった。
 順調に原稿が上がれば、10月末に出る「月刊デイアフター」12月号から荻上会長の作品は連載開始する。
 8月中に第1回の原稿を上げ、以降月に約20Pずつ原稿を上げていかなければならない。
 編集部の担当の人は「学生さんなんだから、1回や2回原稿落としても大丈夫だから、気楽にやりなさい」と言ってくれてはいるが、その言葉に甘える積りは無かった。
 やるからには絶対に原稿は落とさない、当たり前のことだがそう決心していた。
 ただそうなると、やはりどうしても会長としての職務はおろそかになるかも知れない。
 現に今でも、3年生は荻上会長1人きりで手が回らないので、会計は台場(簿記の資格を持ってたので)に任せてるし、書記や様々な提出書類は神田(ペン習字1級で字が上手いので)に任せていた。
 とりあえず今考えてるのは、秋頃に誰かを会長代行(あるいは名称は副会長でもいいかも知れない)に任命して、半年近いテスト期間を経て決めるという方法だ。
 あるいは男女ほぼ半々で2桁の人数なのだから、体育会系のクラブみたいに男子リーダーと女子リーダーを1人ずつ選んでもいいかも知れない。
 ただそれにしても、今年の1年生は人数が多い上に、リーダー候補が多過ぎた。
 先ず腐女子四天王にはリーダー格の豪田がいる。
 彼女は決して押しの強さと口数だけでリーダーぶってる訳ではない。
 小学生の時から少女漫画を描いてて、経験に裏打ちされた知識や技術には、各自それなりに敬意は払っていた。
 それに世話好きで面倒見のいい一面もあった。
 四天王の参謀的な役割の台場は、ヤオイ方面の知識と情報量と理論では誰にも負けない。
 口数は少なく前に出ることは少ないが、巴は高校時代ソフトボール部のキャプテンの経験がある。
 さらに高校時代の経験で言えば、有吉は漫研の会長、伊藤は文芸部の部長だったそうだ。
 
 
 
 
 
- 66 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その16 
  :2006/11/12(日) 18:04:02 ID:??? 
  
- その一方で、荻上会長は逆のことも考えていた。 
  
 と言うのも斑目会長のように、どっちかと言えばリーダーっぽくない押しの弱そうな人が会長やって上手く行った(そうか?)例もあるからだ。
 今の1年生たちの代のリーダー候補たちは皆個性的なので、役職と責任で縛るより好き勝手やらせてやり、別のリーダーが止め役として制御した方がいいかも知れない。
 その意味でどっちかと言えば大人しそうな、沢田、神田、国松、日垣、浅田、岸野という目もあるかも知れない。
 その辺を見極める為の試金石、荻上会長は今年の夏コミをそう捉えていた。
 
 ケンケンガクガクの議論の末、台場が妥協案を出した。
 まず各々が描きたいと思うお題をメモ用紙に書く。
 そのメモを四つ折りにして、ちょうど空になったティッシュの箱に入れる。
 そしてよく振って荻上会長に1枚引いてもらい、当たったものを今回のお題とする。
 まあ早い話がくじ引きである。
 台場「最も公平で民主的で、そして神聖なる方法よ」
 豪田「でもここまでモメて、くじ引きってのも…」
 台場「慌てないで、その辺のフォローも考えたから」
 台場が考えたのは、次のような方法だった。
 くじで外れた者は、当たりの原稿を手伝う一方で、自分の書いたお題のコピー本を作れる。
 ただしコピー代は自腹なので、作る作らないは各自の判断に任せる。
 そしてコピー本は、印刷所で刷った方の同人誌に「おまけ」として付けるのだ。
 おまけを付けるか付けないかは、お客さんの希望に従う。
 おまけ付きの特装版も、おまけ無しの通常版も値段は同じにするので、どっちにしてもお客さんには損は無い。
 あくまでもお客さんの好みや都合で選んでもらえばいい。
 捨て身の「損して得取れ」商法だ。
 
 
 
 
 
- 67 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その17 
  :2006/11/12(日) 18:15:10 ID:??? 
  
- 巴「値段均一はちょっと無理が無い?」 
 沢田「本体の値段に、おまけ分上乗せ出来ないの?」
 台場「本体は基本20ページぐらいで1冊500円の予定だから、上乗せ分は殆どないわ」
 豪田「てことは、完全に自腹?」
 台場「だからこの方法は強制にしない方がいいと思うの。自腹でも自分の本出したい人は出す、うちの同人誌に全力つぎ込むって人は出さない、そんな感じでいいんじゃない?」
 しばし考える一同。
 豪田『うーん、今度の同人誌は200部刷る予定だから、仮に半分おまけ付けるとしても100部、全部に付けたら200部か…』
 巴『おまけコピー本を仮に10ページ程度として、2ページ並べてコピーすれば、コピー代は1部50円』
 沢田『仮にコピー代1部50円ぐらいなら、100部なら5000円、200部なら10000円か』
 有吉『普段なら5000円や10000円ぐらいなら出せるけど、夏コミを控えたこの時期にそれだけの出費は痛い』
 一同『うーむ…』
 ちなみに彼女たちに、パソコンのプリンターを使うという選択肢は無かった。
 「昔プリンターで大量にコピーしたら、途中で壊れてえらい目に遭った」
 「コピー本をコピー機以外で作るのは邪道」
 「パソコンで原稿描く場合以外で、プリンター使うのは邪道」
 理由はいろいろだが、何故か全員プリンターに対して禁忌意識を持っていた。
 
 金がネックになって議論が膠着したので、荻上会長は助け舟を出すことにした。
 荻上「ねえ台場さん、コピー代ぐらいはうちの予算で出せない?」
 台場「今回はコスプレで相当使ってるから、印刷代までで赤字なんです。それにこの方法、僅かな金額とは言え自腹がかかってるからこそ真剣になるし、燃えるんです」
 
 
 
 
- 68 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その18 
  :2006/11/12(日) 18:19:25 ID:??? 
  
- 台場の瞳に怪しい光を見て荻上会長は少したじろいだが、それでも金でもめるのは避けたかったので別の財源を提案した。 
  
 荻上「いざとなれば、初代会長が好きに使ってくれっておっしゃってたOB会費も預かったままだし、私も春夏秋冬賞の賞金残ってるし…」
 台場「(大声で)それは絶対ダメです!」
 凍り付く一同。
 台場「…すいません、大声出して」
 荻上「何でそんなに無理に自分たちだけでやろうとするの?そりゃ同人誌についてはみんなに任せたけど、こういう問題ぐらい私に相談してもいいじゃない?」
 台場「こういう問題だからこそ自分たちで解決しなきゃいけないんです。だって荻様…会長もうすぐ本格的に漫画家としてデビューされるから」
 はっとなる一同。
 台場「大野先輩は9月で卒業するし、恵子姉さんは来年専門学校卒業だし、朽木先輩も来年卒業です。残るのは私たちと、秋に来る外人さんたちだけになってしまいます」
 一同「…」
 台場「来年には、もう私たちがこの現視研の主力になるんです!私たちで現視研守っていかなきゃいけないんです!だから、何時までも会長に甘えてちゃいけないんです!」
 荻上『台場さんがこんなに長々と熱く語るの初めて見たなあ。意外と熱血だったんだ、この子…』
 熱くなったせいか、台場の演説は脱線し始めた。
 台場「地球の平和は、我々地球人の手で守り抜かなければならないんです!俺たちの翼で!」
 一同「俺たちの翼?」
 台場「(赤面し)すっ、すいません、今のは無しです。最近千里に薦められて『ウルトラマンメビウス』見出したもんで、つい…」
 
 
 
 
 
 
- 69 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その19 
  :2006/11/12(日) 18:24:19 ID:??? 
  
- 豪田「ウルトラマンってことは特撮?」 
  
 台場「そうよ。特撮っていうと畑違いみたいに思えるかも知れないけど、我々腐女子にとっては宝の山よ」
 巴「そうなの?」
 台場「まあ戦隊シリーズとか仮面ライダーシリーズがネタになること多いけど、メビウスは凄いわよ」
 豪田「そんなに?」
 台場「だってどう考えても、私たちみたいな視聴者層を狙ってるとしか思えない台詞とか状況がバンバン出てくるのよ。例えば、男同士で『僕たちの思い出の場所』とか…」
 巴「マジ?」
 台場「だから千里にヤオイの何たるかを教え込むのには、絶好のテキストになったわ」
 有吉「国松さんまで引っ張り込むの?」
 台場「引っ張り込むというより、本来の姿に戻すだけよ」
 有吉「本来の姿?」
 台場「(右拳を握り)ホモが嫌いな女子はいません!」
 女子一同「(首を前後にコクコクしつつ)うんうん」
 その後も特撮とヤオイに関する議論がしばらく続いた。
 ひと区切り付いたところで、荻上会長は軌道修正を図る。
 荻上「さあみんな、本題に戻るわよ」
 
 先程まで殆ど発言していなかった神田がポツリと言った。
 「あの…うちのコピー機使えば、そんなにお金かからないと思うけど…」
 一同「うち?」
 荻上「神田さんの家って、コピー機あるの?」
 神田「ええ、ありますよ」
 豪田「ミッチーの家って、文房具屋さんかコンビニなの?」
 神田「ううん、普通の一戸建て」
 巴「じゃあ家が設計事務所か何かとか?」
 神田「ううん、パパただの会社員よ。ママ専業主婦だし」
 沢田「それじゃあいったい…」
 
 
 
 
 
 
- 70 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その20 
  :2006/11/12(日) 18:31:04 ID:??? 
  
- 神田「みんなの家って、コピー機無いの?」 
 一同「(首を横に振りつつ)無い無い無い!」
 神田「そうなんだ…案外コピー機ある家って少ないのかなあ?」
 有吉「いや普通ある家の方が少ないから」
 神田「そうなの?昔小さい時、パパやママのお友達の家によく遊びに行ったけど、どこもあったわよ。だからコピー機って、どこのご家庭にもあるもんだと思ってた」
 一同「(首を横に振りつつ)無い無い無い!」
 台場「ミッチーそんなもん、何時から家にあったの?」
 神田「何時からって…昔からあったからなあ。買ってもらったのは中学入った時だけど」
 一同「買ってもらった?!」
 神田「うん、小学生の間はママの借りてたんだけど、中学入って私も欲しいって言ったら、パパが買ってくれたの」
 巴「ママのって?」
 神田「ママのが1番機能充実してるのよ。パパのだと白黒しか出来ないし、お兄ちゃんのはA4までしか使えないから」
 一同「はい?」
 有吉「あの、神田さん、それはもしや、家族全員がそれぞれ1台ずつコピー機を所有している、という意味?」
 神田「普通そうじゃないの?」
 一同「(首を横に振りつつ)無い無い無い!」
 荻上「つまりそれって、もしかして神田さんのご家族って、全員同人誌作ってるってこと?」
 神田「はいっ、毎年1人7〜8冊は作ってますよ。私も今回は現視研の分と別に、うちの家族の知り合いのサークルに委託で置いてもらう分作るし…」
 神田一族のDNAに戦慄する一同。
 荻上『ある意味この子、1番現視研の会長に向いてるかも知れない…』
 
 
 
 
 
 
- 71 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その21 
  :2006/11/12(日) 18:35:07 ID:??? 
  
- 神田のコピー機提供により、くじに外れた者のコピー本も費用は紙代オンリーとなって気楽になったので、台場の案は採用された。 
  
 荻上会長がくじを引く。
 くじを開いてみると「涼宮ハルヒの憂鬱」と書かれていた。
 ブーイングが起きた。
 豪田「ちょっと待ってよ!それじゃあカップリング1つしかないじゃない!」
 台場「そうよそうよ、古泉のニヒル攻めとキョンの逆切れ受けしかないじゃない!」
 豪田「ちょっと、それは逆でしょ?キョンの強気攻めに古泉の冷静解説受けじゃない!」
 ケンケンガクガクのカップリング論争が続く。
 荻上「もうみんな、その辺にしなさい!それよりハルヒって書いたの誰なの?」
 有吉「僕です」
 一同「有吉君?何で?」
 有吉「みんなハルヒ好きだし、ハルヒならカップリング出来るキャラ限られてるから、あんまり揉めないかなと思ったんだ。結局揉めたけどね」
 荻上「うーん…あのね有吉君、例えば男の子が18禁同人誌作る時、まず気に入ったキャラにあれこれすることが主眼になるでしょ?」
 有吉「そうですね」
 荻上「でも女の子の場合は、そういう人もいるけど、先に状況設定とかストーリーとかがあって、その必然としてカップリングが出来るのよ」
 有吉「なるほど…」
 荻上「だからあれこれ議論になるのは、それぞれの頭の中の設定やストーリーがそもそも違うからなのよ。それをまとめるには、納得いくまで話し合うしか方法は無いのよ」
 巴「まあ結局のとこは、どっちかが折れないと決まらないのが実情だけどね」
 豪田「でもその話し合いがまた楽しいのよ、女の子は」
 有吉「そんなもんなんですか」
 荻上「そんなもんなのよ。とは言っても、そろそろ〆切も迫ってるから、今回は有吉君の意見採用すべきだと思うの。みんないい?」
 筆のひと声、もとい鶴のひと声で同人誌のお題は「涼宮ハルヒの憂鬱」に決まった。
 
 
 
 
 
- 72 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その22 
  :2006/11/12(日) 18:41:33 ID:??? 
  
- 有吉「僕が編集でいいかな?」 
 豪田「自分がメインで描きたくないの?」
 有吉「何と言っても時間が無いから効率最優先にすべきだと思うし、サークル参加なんだからみんなの総力で本作りたいんだ」
 豪田「まあ確かに、同人誌って本来そういうもんだし」
 有吉「それに女性向けで18禁なら、やっぱり妄想力こそが作品を作る原動力だよ。僕が理屈で話書いてもいいんだけど、それじゃ妄想力半減でしょ?」
 豪田「そうねえ…みんなもそれでいい?」
 一同「さんせーい」
 有吉「まずプロットは台場さん。みんなの中で、1番ヤオイ関係の知識と経験と情報量は豊富みたいだからね」
 台場「問題は組み合わせだけね。キョンが攻めか古泉が攻めかの二者択一かあ…」
 「リバ可や!」
 突如大声の関西弁が轟く。
 漫研会員であり、サークル「やぶへび」主催者の藪崎さんが乱入してきたのだ。
 荻上「ヤブ!」
 藪崎「まいどオギー!話は外で大体聞いたで!そういう場合はなあ、前半キョン×古泉にして後半古泉×キョンにしたら全て丸く収まるし、1冊で2度おいしいやろ!」
 一同「なるほど…」
 台場「ありがとうございます、藪崎先輩!それで行きます!」
 荻上「ありがと、ヤブ。でも何時から聞いてたの?」
 藪崎「もう30分ぐらい前からずっとや」
 台場「そんな長いこと立ち聞きしてたんですか?」
 藪崎「アホ、こっちかて忙しいから、はよ入りたかったわ。そやけど部室の前で何かゴム塗ってた子に、延々と怪獣の縫いぐるみの話聞かされとったんや」
 「着ぐるみです!」
 突如ドアを開け、国松はそのひと言だけ言ってまたドアを閉めた。
 藪崎「なっ、あの調子やから、なかなか話終わらへんかったんや。そんであの子の言うこと聞き流しとったら、自然に部室の中の話が聞こえてきたと、まあそんな訳や」
 
 
 
 
- 73 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その23 
  :2006/11/12(日) 18:47:42 ID:??? 
  
- その後藪崎さんは、ハルヒ以外の作品についてもカップリングについて延々と1年生たちと議論した末に、本来の目的であった荻上会長所蔵のイラスト集を借りて部室を後にした。 
  
 有吉「それで割り当ての続きだけど、シナリオやネームは沢田さん」
 豪田「確かに台詞回しは彩が1番上手いもんね」
 有吉「で、コマ割りと絵コンテは豪田さん」
 台場「確かに小学生の時から漫画描いてる、蛇衣子のコマ割りセンスは1番いいわね」
 有吉「で、原画は巴さん、神田さんと僕はペン入れから仕上げまで、これを基本に各工程で残りみんながメインの人の仕事を手伝う、こんな感じでいいかな?
 巴「あの、私が原画でいいの?私はどっちかと言えば、汗や筋肉ばっか過剰に描く方なんだけど」
 有吉「そういうスポ根系の絵の方が、キョンと古泉には案外似合う気がするんだ。何と言っても短気な熱血漢とクールな優男って、スポ根系ヤオイの基本だから」
 台場「いいんじゃない?マッチョな美少年も」
 神田「私もそういう絵描いてみたいから賛成!」
 巴「分かった、やるわ」
 豪田「決まりね」
 沢田「あの、私それもやるけど、それと別にハルヒのSS書きたいんだけど、どうかな?」
 台場「いいわね、それ。みんな、どう?」
 一同「さんせーい!」
 そこへ伊藤が入って来た。
 伊藤「こんちニャー。ハルヒのSSなら僕も書きたいですニャー!」
 高校の時は文芸部で、脚本家志望の伊藤だが、SSも数多く書いている。
 ただこの男、シナリオでは説明的な台詞やナレーションが過剰になりがちな傾向があった。その結果字数が規定オーバーしてしまい、コンクール用の原稿を〆切までに書けずに挫折した経験が数多くあった。
 ちなみに伊藤はそういう原稿を書き直して、ラノベとして完成させて別のコンクールに応募していた。
 そんな安直な作りにも拘らず、あるコンクールで佳作をもらったことがあるそうだから、話そのものは面白いものを書けるみたいだ。
 
 
 
 
 
- 74 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その24 
  :2006/11/12(日) 18:52:25 ID:??? 
  
- 以前にそういう話を聞いていた台場は、やんわりと釘を刺した。 
  
 「あんまり長いのはダメよ。印刷代高くなっちゃうから」
 伊藤「かしこまりましたニャー。それにしてもリバ可で2度おいしいとは、なかなか考えましたニャー」
 荻上「伊藤君、あなた何時から聞いてたの?」
 伊藤「多分30分ぐらい前からですニャー」
 豪田「そんな長いこと立ち聞きしてたの?」
 伊藤「そんな人聞きの悪い、国松さんに捕まって着ぐるみの話を…(以下略)」
 荻上「あれ完成するまでは、当分あの子部室の門番状態ね」
 
 こうして今回の夏コミ出品作品は、全部で20ページほどになるヤオイ漫画1本とSS2本の同人誌となった。
 しかも希望者にはコピー本3冊(執筆は豪田、台場、神田)を特別付録に付ける豪華版だ。
 ちなみに絵のメインである巴、SSも書く沢田、それに編集を兼ねる有吉は今回はメインの同人誌1本に絞った。
 
 笹原「それにしても田中さん、今回はいっぱい作りましたね」
 田中「さすがにしんどかったけど、国松さんと日垣君が頑張ってくれたからね」
 笹原「そう言えば、田中さん以外の人がコス作るのって初めてですね」
 田中「去年はそこまで考える余裕無かったけど、今年は1年生11人もいるから、本格的にコス作りのスキルを現視研に残して行こうと思ったんだ。俺も来年卒業だからな」
 笹原「そりゃいいですね」
 田中「とりあえず着付けや採寸の問題もあるから男女1人ずつ欲しいと思って、絵描き属性の無い国松さんと、1番器用そうな日垣君に仕込むことにしたんだ」
 笹原『(日垣をチラリと見て)そう言えば日垣君、俺が来てから挨拶した以外ひと言も喋らずに、ずっとミシン動かしてるな』
 田中「国松さんは造形はまだ甘いけど、とにかく熱心だよ。日垣君は彼女に比べりゃ消極的だけど、真面目だし何と言っても器用だ。2人とも将来が楽しみな逸材だよ」
 
 
 
 
 
 
- 75 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その25 
  :2006/11/12(日) 18:58:19 ID:??? 
  
- 大野「もっとも、絶望先生の方のセーラー服と、ハルヒの方のブレザーは有り物の流用ですけどね」 
  
 田中「そう、セーラー服は豪田さんの高校の制服、ブレザーは伊藤君と有吉君の高校の制服を借りてきて、後で直せるようにちょっとだけ手を加えたんだ」
 笹原「やっぱりさすがに、この数作るのは無理ですか」
 田中「作れないことは無かったよ。たださあ、台場さんと国松さんに怒られたんだよ」
 笹原「怒られた?」
 田中「今台場さん、うちの会計やってるんだけどさ、過去4年間の会計状況と今回の予算の見積もり見た彼女に、予算使い過ぎだって大野さんと2人揃って散々説教されたんだ」
 荻上「台場さんは簿記の他に珠算でも級持ってるから、凄くお金には細かいんです」
 笹原「国松さんは何で?」
 大野「ある意味彼女の方が、台場さんより予算の問題にはシビアなんです」
 田中「特撮の世界では、着ぐるみや特撮シーンの使い回しは日常茶飯事だからね。バラゴンの進化論を引用して、延々説教されたよ」
 笹原「バラゴン?」
 バラゴンとは、東宝の特撮怪獣映画「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」に登場する怪獣だ。
 この怪獣の着ぐるみは、その後テレビ特撮番組「ウルトラQ」のパゴスに改造された。
 さらに後番組「ウルトラマン」のネロンガ、マグラ、ガボラと改造され続け、さらにアトラクション用のネロンガに改造された後に東宝に返却された。
 そしてオールスター怪獣映画「怪獣総進撃」で再びバラゴンに戻された。
 笹原「えらくマニアックな説教ですね」
 田中「とは言っても、本人は本来なら作る気満々なのに、敢えて苦渋の選択をした訳だから、こちらも文句は言えんさ」
 笹原「国松さん、普通のコスの方も作ってたんですか?」
 田中「最初は普通のコスも一緒に作ってたんだ。もっとも着ぐるみが予想以上に手間だったんで、今は殆ど着ぐるみオンリーだけど」
 笹原「もう1着のアルの方は、もう出来たんですか?」
 田中「俺の部屋にあるよ。基本的な設計と本体制作は国松さんが済ませたから、後は俺が外側の装飾をやるだけさ」
 
 
 
 
 
 
- 76 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その26 
  :2006/11/12(日) 19:04:26 ID:??? 
  
- 笹原「田中さんが仕上げるんですか?」 
  
 田中「ああ、外側はプラ板だから、等身大のアクションフィギュアみたいなもんだ。ほんとはそっちも彼女が最後までやりたかったんだけど、予想以上にベムが手間だったからな」
 その時、日垣が声を上げた。
 「田中先輩、出来ました!」
 田中「お疲れさん。これで着ぐるみ系以外はほぼ揃ったな。」
 日垣「国松さんの方、様子見てきます」
 部室を出る日垣。
 荻上「あの2人も、熱心さでは同人誌組に負けてないわね」
 そんな様子を見ていた荻上会長、次期会長問題について少し考えた。
 『国松さんも思ったよりしっかりしてるし、あの子と日垣君をそれぞれ女子と男子のリーダーにして、2人会長体制ってのも有りかも知れないわね』
 
 その夜、荻上会長宅に笹原が訪れた。
 メンヘル気味のB先生は今日は何故か機嫌が良く、原稿も順調に仕上がっていた。
 この調子なら、B先生も世間一般よりは短いが盆休みが満喫出来そうだ。
 それで思いがけず時間が出来たので、荻上会長に連絡して会ったのだった。
 笹原は改めてA先生からの依頼について詳しく話した。
 荻上「それじゃあ笹原さん、純粋に夏コミ楽しむって訳には行かないんですね」
 笹原「そりゃ仕方ないさ。こういう仕事だからね」
 荻上「まあ私も似たようなもんだから、いいですけどね」
 笹原「えっ?」
 
 
 
 
 
- 77 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その27 
  :2006/11/12(日) 19:16:36 ID:??? 
  
- 荻上会長は、「月刊デイアフター」で秋から連載開始する予定の原稿を、絵コンテの段階まで仕上げて編集部からOKをもらっていた。 
  
 あとは本格的に仕上げるだけの状態だった。
 タイトルは「あきばけん」と付けた。
 ちなみに内容は前作「傷つけた人々へ」の主人公(つまり彼女自身)の後日談、つまり「げんしけん」荻上編そのまんまだった。
 これは後の話になるが、おかげで荻上会長は第1回の原稿を〆切までにかなりの余裕を持って入稿出来た。
 後日時間的に余裕が出来たので、現視研同人誌の原稿も仕上げは手伝ったほどだった。
 荻上「まあ私にとっても、今度の夏コミは次の原稿の為の取材も兼ねてる状態です。ネタ探ししながら参加する点では笹原さんと一緒ですよ」
 笹原「お互い大変だね」
 
 その夜、笹原は荻上宅に泊まった。
 寝る前にふと思い出したことを尋ねた。
 笹原「ねえ荻上さん、今日あれから斑目さんって部室に戻って来たの?」
 荻上「…そう言えば、戻って来なかったですね」
 笹原「斑目さん役に入り過ぎ!大丈夫か、あの人?」
 
 こうして前日までに全てのコスは完成した。
 同人誌の原稿も納期に間に合った。
 わざと徹底的にありがちなシチュエーションでシンプルにまとめた台場のプロットに基づいて、沢田が凝りに凝った妖しい台詞の応酬のネームを書き上げた。
 それを豪田がまた凝りに凝ったコマ割り構成でコンテを描き、巴が剛腕で劇画のごとく筋肉質で汗まみれの裸体(バキの格闘シーンの寝技展開を想像してもらえれば、雰囲気を理解してもらえると思う)を描く。
 そしてそれを神田と有吉の、長年鍛え抜いた職人芸で仕上げる。
 仕上げは荻上会長や他のみんなも手伝ったので、ページによって多少仕上がりのタッチにバラつきがあるのが難点だが、逆にそれがいかにも同人誌という趣を醸し出した。
 
 
 
 
 
 
- 78 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その28 
  :2006/11/12(日) 19:24:26 ID:??? 
  
- 同人誌に掲載するSSも〆切に間に合った。 
 沢田の書いた話は、男体化した長門とキョンという変則ヤオイ話だ。
 長門の上司(と言うのか?)の情報統合思念体が何故かヤオイに興味を持ち、具体的なデータが欲しいからと長門に指示した為という、少し不思議系のSFとして仕上がっていた。
 一方伊藤の書いたのは同人誌の定番、人格入れ替わりものだった。
 長門が情報統合思念体の命令で宇宙に一時帰還し、その隙に世界のバランスが崩壊。
 その影響でキョンとハルヒ、みくると古泉の人格が入れ替わる。
 肉体がキョンと化したハルヒは、いい機会だからとヤオイを体験してみようと、肉体が古泉と化したみくるに迫る。
 必死で止めようとする肉体がハルヒと化したキョンに対し、それなら我々も百合をやってみようと、肉体がみくると化した古泉が迫る。
 そして各々がいよいよことに及ぼうとしたその時、地球に戻った長門が世界のバランスを修正、全員人格が元に戻る。
 必死で逃れようとするキョンとみくるに対し、「これはこれでなかなか」とそのまま続行しようと迫る古泉とハルヒというハチャメチャな図で物語は終わる。
 
 コピー本も仕上がった。
 各自の題材だが、豪田は元々王子様や貴族フェチなので、その流れを汲むセレブ系ということで「桜蘭高校ホスト部」にした。
 台場はヤオイの基本はやっぱりジャンプ系ということで、「NARUTO」にした。
 そして神田は「ガンダムSEED」だった。
 あくまでも種ガンダムであり、種死ではない。
 さすがのアスラン好きの神田でも、種死ばかりは黒歴史と認識していた。
 
 これで物的な準備は整った。
 だが荻上会長には、もうひとつの懸案事項があった。
 
 
 
 
 
 
- 79 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その29 
  :2006/11/12(日) 19:32:12 ID:??? 
  
- それは集合時間だ。 
  
 斑目が会長をやっていた頃までは、最終電車で都内に出て漫画喫茶で始発を待つというパターンが多かった。
 ただこの数年、この風習は廃れつつあった。
 女子会員の方が多くなり、男子ほどの強い執着は無い上に、体力的にあまり長時間並ぶのも問題があるということで、次第に始発には拘らなくなっていったからだ。
 だが今年の会員たちは違った。
 11人中コミフェス参加経験者は、神田(赤ん坊の時から両親に連れて来られている上に、売る方でも小学生から参加)、有吉(高校時代から年齢を偽って18禁男性向け同人誌を出品)、豪田(買う方のみだが小学生から参加)、台場(中学から出品している)の4人だ。
 この4人はさほどでもないが、あとの7人のテンションは高かった。
 はっきり言って、初参加で完全に舞い上がり、祭状態だった。
 彼らは本当は、前日からビッグサイト前で泊り込んで並ぶ、いわゆる密航系のイベントを望んでいた。
 だが初心者の彼らは、師父斑目の教えに従って(そしてそれを忠実に守っている荻上会長の指示により)それはするまいと決めていた。
 ならばせめて最終電車で都心部に出て、どこかで集まって始発を待って朝一番で出動、そういう形での参加を求めていた。
 だが男衆の多かった斑目たちの頃と違い、今は女の子の方が多い。
 忘れがちだが彼女たち1年生は、ついこの間まで高校生だった、法的には未成年なのだ。
 それを深夜、それも夏休み中の都心部という著しく治安の悪い地域に送り込むことに、荻上会長は難色を示した。
 と言うのも、古臭い考え方かも知れないが、彼女は1年生の女の子たちについて「嫁入り前の娘さんを親御さんから預かっている」という意識が強かったからだ。
 
 
 
 
 
- 80 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その30 
  :2006/11/12(日) 19:43:38 ID:??? 
  
- 結局いろいろ議論の末に決まったのは、次のような方法だった。 
  
 まず前日までに、コス関係やコピー本などの大荷物を全部、上野の田中宅に運び込む。
 そして前日の夜に各自上野まで来て、田中宅に程近いカラオケボックスに集合、ここで始発の時間まで夜を明かすのだ。
 何しろ当日の参加者は、前日に来日しているスー&アンジェラと、OBの田中と笹原を含めて19人もいる。
 この人数では漫画喫茶やファミレスでは手狭だ。
 カラオケボックスなら、ふた部屋取れば何とか全員納まる。
 あとは始発の少し前に男子会員たちと田中が田中宅の荷物を取りに行き、再び合流してから始発で全員出動という流れだ。
 今回異様に多いコスを円滑に運び、なおかつ1年生たちのお祭気分を暴走し過ぎない程度に満喫させる為には、この方法が最良と思えた。
 (田中にかける負担が大きいのが難点ではあるが)
 
 そろそろ世間では盆休みに入りかけた8月10日の日の落ちかけた頃、現視研の一行は各自上野へと向かった。
 最初に集合場所に来たのは荻上会長だった。
 同人誌制作(ちょっと手伝ったが)もコス制作も殆ど1年生たちに任せ、オブザーバーとして見守っていた荻上会長は、気が付くと当日1番フリーに近い立場になった。
 それならせめて場所取りぐらいはしておくかと、まだ日が落ちる前に早々に出かけたのだ。
 あまり早く場所を取り過ぎるのも場所代がかかり過ぎるが、夏休み中なので早目の時間に取っておくに越したことはない。
 狙い通りに大広間が取れた。
 店員に指定された部屋に入ってみると、かなり広い。
 これなら1室に全員集まっても、十分に余裕はありそうだ。
 とりあえず会員たちに連絡する。
 集まり出すのが日が落ちてからということを考慮して、数人ずつのグループでこちらに向かうように会員たちに指示してあるので連絡件数自体は少なく、ほんの十数分で終える。
 これからは会員たちが集まるまでの間、3日間のスケジュールの最終的な点検と、カタログのチェックに費やす予定だ。
 
 
 
 
 
- 81 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その31 
  :2006/11/12(日) 19:55:19 ID:??? 
  
- 「な〜く〜した〜約束はほ〜しに〜♪」 
 隣の部屋のカラオケの音が聞こえてきた。
 「ハチクロかあ…」
 やや調子っ外れだが、声質や舌っ足らずな感じは似ている。
 その後も隣の部屋のカラオケは時折聞こえてきたが、殆どがアニソン系の曲だった。
 「まあ今日は、私らとおんなし目的で集まってる人もいるのかもなあ…」
 
 やがて待ち合わせ場所に、会員たちは次第に集合し始めた。
 最初に来たのは、部室に残った最後の大荷物を持って一緒にやって来た、田中・クッチー・国松・日垣だった。
 でも田中と日垣はまたすぐ出て行く。
 大野さんと、彼女のところに泊まっているアンジェラ&スーを迎えに行くのだ。
 当初田中1人で行こうとしたが、荻上会長が日垣にも付いていくように指示したのだ。
 荻上「もし何かあった時に、女性3人を田中さん1人で守るのはキツイですから」
 朽木「あの荻チン、そういう理由なら僕チンが行こうか?」
 荻上「朽木先輩じゃ相手の被害が大き過ぎて、逆の意味でヤバイからダメです」
 
 その後は次のような順に集まっていく。
 腐女子四天王の豪田・台場・沢田・巴。
 (人数が多いし、豪田と巴が並みの男より強いので、女の子だけにも関わらず許可した)
 伊藤・有吉コンビ。
 都心に遊びに来てて、そのままやって来た恵子。
 休み前の仕事を終えて、そのままこちらに来た笹原。
 そして浅田・岸野コンビプラス神田という珍しい取り合わせだ。
 神田は現視研のとは別口のコピー本をギリギリまで作っていて、今日の夕方までかかったのだ。
 神田からその旨を聞いた荻上会長は、岸野と浅田に集合場所まで同行するように指示した。
 日が落ちてから女の子1人で行動するのは危険と判断したのだ。
 それにコピー本を運ぶ人手を確保する意味もあった。
 
 
 
 
- 82 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その32 
  :2006/11/12(日) 20:07:50 ID:??? 
  
- 残るは大野さんと、彼女の部屋に昨日から泊まっているアンジェラ&スー、それに3人を迎えに行った田中と日垣だけだった。 
  
 とりあえず一同は恵子が来た頃ぐらいから、自然発生的にアニソンカラオケ大会を始めた。
 
 荻上会長はトイレに立った。
 隣の部屋から、先程までの舌っ足らずなアニソンと打って変わって、地獄の底から響くようなハスキーな歌声が聞こえてきた。
 「花よ綺麗と〜おだてられ〜咲いて見せれば〜すぐ散らされる〜馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な女の〜怨み〜ぶ〜し〜♪」
 梶芽衣子の代表作である映画「女囚701号さそり」の主題歌、「怨み節」である。
 最近は映画「キル・ビル」のエンディングにも使われたので、若い人にも聞き覚えがある人は多いかも知れない。
 実は荻上会長は「女囚701号さそり」を見たことがあった。
 中学での例の一件の後の自殺未遂騒動の後、彼女は怪我が癒えてからも学校を休み、自室に引きこもっていた時期があった。
 その頃彼女は、1日中テレビを見ていることが多かった。
 実家はケーブルテレビの契約をしていたので、昔のアニメやドラマや映画をたくさん見た。
 その中のひとつに「女囚701号さそり」があったのだ。
 エロとバイオレンス満載の女囚映画は、ある意味単なるポルノ映画以上に男性専用のジャンルだ。
 だが冒頭の東映マークと同時に流れた「君が代」に気を取られ(戦争映画か何かだと思って、そのまま見てた)、気が付いたら最後まで見てしまったのだ。
 (ちなみに冒頭のシーンは、刑務所の所長が上から表彰されたことを朝礼で報告するに当たって、劇中で本当に吹奏楽団が演奏していた)
 決して女子中学生にとって面白い内容では無いが、映像や音楽や台詞のひとつひとつが妙に記憶に残り、ある意味トラウマのようになっていた。
 「でも確かあの映画って、30年ぐらい前の作品だよな。今時誰があんな歌歌ってるんだ?」
 チラリとドアの窓から部屋の中を見る。
 
 
 
 
 
- 83 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その33 
  :2006/11/12(日) 20:11:56 ID:??? 
  
- 歌っていたのは、スラリとした長身の長い黒髪の女性だった。 
 長い髪の為に横顔は隠され、顔までは見えなかった。
 「さそり」のヒロインの梶芽衣子のように、黒のマキシのスカートに黒いシャツ、そして部屋の中なのに黒いアコーハット(極端につばの広い帽子)を被っているという、明らかに「さそり」を意識した服装だ。
 若いオタクにとっては、赤屍蔵人が下半身ロングスカートにして女装したような感じ、と言えば想像しやすいかも知れない。
 とても先程までアニソン歌ってた女の子(今歌ってる女性と同年代とは思えなかった)の連れとは思えなかった。
 「まあ多分、もうお客さん入れ替わってるんだろうな。私が来てからだいぶん時間経ってるし」
 一方現視研の大部屋からは、隣の部屋の「怨み節」と正反対の、国松の「ウルトラマンメビウス」のこれ以上ないポジティブな歌声が響いていた。
 「悲しみなんか無い世界、夢をあき〜ら〜めたくない、ど〜んな涙も〜必ずか〜わく〜♪」
 そのコントラストが何となくおかしくて、笑みを浮かべつつ荻上会長はトイレに向かった。
 
 「き〜みのってっで〜、き〜りさっいって〜♪」
 トイレから戻り現視研の大部屋に戻る直前、今度は隣の部屋から「ハガレン」の主題歌が聞こえてきた。
 先ほどまでの舌っ足らずな女性の声とも、地の底から響くような女性の声とも、また違う女性の声だ。
 上手いが、思い切りこぶしが効いている。
 「何か演歌みてえな『メリッサ』だなあ」
 再び隣の部屋をのぞいてしまう荻上会長。
 思わずこけそうになった。
 歌っていたのは藪崎さんだった。
 
 
 
 
- 84 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その34 
  :2006/11/12(日) 20:14:53 ID:??? 
  
- 「あら荻上さん」 
 不意に、本当に不意に背後から声がかかった。
 「ひへっ?」
 驚いて振り返ると、そこには漫研の加藤さんが立っていた。
 先程「怨み節」を歌っていた女性と同じ服装だ。
 映画のラスト間際、自分を罠にはめた刑事に復讐しに行く時の梶芽衣子に似た格好だ。
 それが印象に残り過ぎて、トラウマと化している荻上会長は戦慄した。
 荻上「こっ、こんばんわ…加藤さん、なしてここに?」
 加藤「こんばんわ。あなた方と同じよ。ここで始発まで夜明かし。そちらもかなり賑やかにやってるようね」
 ちょうどその時、現視研の大部屋では「クックロビン音頭」をクッチーが熱唱し、みんなも手拍子しつつ一緒に歌っていた。
 荻上「(赤面し)朝まで体力温存しとけって言ったんすけど、みんなはしゃいじゃって…」
 加藤「年に2回のお祭りなんだから、しょうがないわよ。ちょっとうちの部屋に寄ってかない?」
 荻上「えっ、いいんすか?だって漫研の人…」
 表面上現視研と漫研は和解したものの、漫研女子の中に荻上会長を快く思ってない者も少なからず居た。
 荻上会長が憂慮したのは、「やぶへび」の3人以外の漫研のメンバーの反応だった。
 加藤「大丈夫よ。今日集まってるのは『やぶへび』の3人だけよ」
 荻上「『つー事は、やっぱりさっきの怨み節が加藤さんで、舌っ足らずな方はニャー子(仮名)さん?』今年漫研って、もちろん夏コミにもサークル参加しますよね?加藤さんたちは?」
 加藤「今年は『やぶへび』の方1本でやるわ。藪に漫研の原稿描かせたら、また誰も描かない。今の漫研の悪循環断つ為には、藪を別口で参加させて、残りの面子で本作らせるのが1番の荒療治だと判断したのよ」
 荻上「それってもしかして…」
 加藤「あなたが責任を感じることは無いわ。むしろきっかけを作ってくれて感謝したいぐらいよ。いずれこういう形で、私たちは漫研内独立部隊として動く積りだったから」
 
 
 
 
- 85 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その35 
  :2006/11/12(日) 20:21:19 ID:??? 
  
- 荻上「独立部隊?」 
  
 加藤「腐女子として賛同できる相手ならば、現視研はもちろんあらゆるオタクと公正に交流し活動する。そういう漫研内治外法権的サークルなのよ、『やぶへび』は」
 荻上「まるで公安9課ですね」
 そう言う荻上会長は、現視研が文化サークルの第2小隊と呼ばれてることを知らなかった。
 
 その後荻上会長は、加藤さんにやぶへび部屋へと連れ込まれ、「いなかっぺ大将」「紅三四郎」などド演歌系のアニソンを数曲、藪崎さんとデュオで熱唱する破目になった。
 どんな歌でも演歌調で歌う藪崎さんと、何故か演歌だと抜群の歌唱力を発揮する荻上会長のデュオということで、自然にそういう選曲になったのだ。
 荻上「ヤブんとこも1日目だっけ、同人誌売るの?」
 藪崎「せや、今回は『ハガレン』で行くで」
 荻上「前『ハチクロ』って言ってなかった?」
 藪崎「こないだ『ハガレン』見直しとったら、ヒューズもええメガネやて気付いてなあ、ギリギリで変えたんや」
 荻上「ヒューズさんって、愛妻家で親バカで世話好きで男気あって、あんましヤブの好みとは違うと思ってたけど」
 藪崎「いいや、ヒューズはことマスタングに対してだけは、とことん尽くすメガネや」
 荻上「そう言われてみれば、そうかも知れないけど…」
 藪崎「彼の言動は一見攻め的やけど、攻撃こそ最大の防御ちゅう言葉もある。ヒューズはオフェンシブなタイプの受けや。私はそこに惚れてロイ×マーズ本にしたんや」
 
 荻上「『ハガレン』と言えば、うち2日目に『ハガレン』のコスやるんだけど」
 藪崎「ほんまかいな?オギーもやるの?」
 荻上「エドやる」
 藪崎「まあその背丈やったらちょうどええなあ(笑)」
 荻上「誰が顕微鏡でないと見えないミジンコドチビか〜〜〜!!!」
 ニャー子「やる気満々ですニャ〜」
 荻上「(赤面)おっ、大野さんに頼み込まれたから、仕方なくやるだけです…」
 
 
 
 
 
- 86 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その36 
  :2006/11/12(日) 20:26:43 ID:??? 
  
- 藪崎「それよりロイとマーズは居るんか?」 
 荻上「マスタング大佐が笹原さんで、ヒューズ中佐が斑目さん」
 藪崎「斑目っちゅうたら、前に言うてたオギーが今の彼氏とカップリングしてもた先輩かいな。マーズやるんやったら、やっぱ総受けのええメガネやろな」
 藪崎さんは斑目と面識が無かった。
 1年生の時は、漫研女子と現視研が最悪の関係にあったので、殆ど接点が無かった。
 2年生以降は、斑目が卒業したのでこれまた接点が無かった。
 ちなみに藪崎さんは笹斑の1件について荻上会長から聞いていたが、さすがに絵の現物は見せてもらってなかった。
 最大出力で赤面する荻上会長。
 加藤「まあまあ。身近な男性でカップリングして、その1人と添い遂げるなんて、腐女子の本懐じゃない。荻上さん、もっと胸張りなさい」
 荻上「そっ、そっすか?(藪崎さんに)エッヘン」
 藪崎「勝ったと思うな!」
 ニャー子「見事にオチましたニャー」
 
 大野さんたちバイリンガルトリオと、迎えに行ってた田中と日垣が到着したのは、宴もたけなわ、沢田&豪田&神田という異色トリオが、ちょうど「ハレ晴レユカイ」(しかも振り付け有りで、意外と上手い)を歌い終わりかけた時だった。
 (しかも曲の終盤では、左右を浅田と岸野のぎこちない踊りのフォロー付き)
 一瞬一同に緊張が走る。
 各自外人さんの新入会員を迎撃、もとい歓迎すべく英会話の勉強をしていたものの、皆あまり自信は無いからだ。
 笑顔を浮かべるアンジェラの背中におぶさって、スーは眠っていた。
 ソファの空いたスペースに、アンジェラはスーを座らせた。
 
 
 
 
- 87 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その37 
  :2006/11/12(日) 20:31:44 ID:??? 
  
- 浅田「うわーすげー巨乳」 
 岸野「しかも美人だし」
 有吉「ちっこい方の子も可愛い…」
 豪田「本当、お人形さんみたい」
 沢田「凄い髪長い…」
 国松「何かいろいろ着替えさせたくなりますね」
 大野「じゃあみんな改めて紹介します。今ちょっと疲れて眠っている子がスザンナ・ホプキンス。スーとかスージーとか呼んで下さい。で、おぶって来た子がアンジェラ・バートンです」
 アンジェラ「ハーイ、どもみなさん初めまして、わたしアンジェラあるよ。どぞよろしくあるね」
 呆然とする一同。
 笹原「日本語喋れるようになったの?」
 アンジェラ「去年の冬コミの後ぐらいから、猛特訓したあるね」
 恵子「何で中国人みたいな喋り方なの?」
 アンジェラ「あれっ?わたしの喋り方変あるか?おかしいあるな」
 笹原「誰に習ったの?」
 アンジェラ「わたしの友だちの日系人に習ったあるよ。その友だちこう言ったあるね。日本語語尾難しいから、慣れるまではとりあえず『ある』付けとけば大丈夫あると…」
 大野さんを見る一同。
 大野「いやーどーも彼女、中国系の人に一杯食わされたみたいですね」
 アンジェラ「まあいいあるよ。意味通じれば問題無いあるね。今日のお客さん、ちょっとやりにくいある」
 浅田「何でゼンジー北京なんて知ってる?」
 アンジェラは次々と新1年生たちの間を回り、挨拶と共に握手する。
 照れる男子会員たち。
 一方女子会員たちの反応は様々だ。
 小柄で童顔な国松と沢田は、ハグのおまけ付きの挨拶で赤面する。
 普通に握手した台場と神田は、にこやかに「ナイストゥーミートゥー」などと返す。
 
 
 
 
 
- 88 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その38 
  :2006/11/12(日) 20:35:00 ID:??? 
  
- 豪田は握手と共に何故か食い入るようにアンジェラに見つめられ、赤面してしまう。 
  
 それと対照的に、巴は闘志のこもった目でアンジェラを見つめ、アンジェラも先程までと微妙にニュアンスの違う笑顔を浮かべていた。
 アンジェラが大野さんたちの方に戻ると巴が豪田に囁く。
 巴「どうしたの?」
 豪田「いや何か、凄く妖しい目で見られて、変な気持ちになっちゃった。マリアも何か変だったけど、何かあったの?」
 巴「あの子、凄い握力だったのよ。私の7割ぐらいの力の入れ方で、ちょうど釣り合うぐらいだった」
 豪田「あんたの7割って言えば…」
 巴「普通の人間なら手が痛くなる程度の力はあるわ。それをあの子、笑顔で受けた。ただもんじゃないわね」
 その時、眠っているスーが囁く。
 スー「ぱとらっしゅ、僕疲レチャッタヨ」
 一同「?」
 スー「デモ僕幸セナンダ、ダッテるーぺんすノ絵ガ…」
 大野「Sue(スー)〜〜〜〜〜!!!!!!それは死亡フラグ!!」
 笹原「何かまた腕上げたんじゃない」
 有吉「何すか、腕って?」
 アンジェラ「スーはアニメや漫画の台詞の物真似が得意技あるよ」
 一同「おー(感嘆)」
 目を覚まし、椅子から降りて立つスー。
 台場「スーちゃんが…立った!」
 神田「わーい、スーが立った〜!」
 伊藤「クララじゃないんだからニャー」
 目を覚ましたスーに、アンジェラが状況を説明する。
 周りを見渡したスー、ひと息置いて口を開いた。
 「やまとノ諸君、久シブリダナ」
 一同「お〜!」
 朽木「なかなか渋い挨拶ですな」
 
 
 
 
- 89 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その39 
  :2006/11/12(日) 20:38:17 ID:??? 
  
- 巴「ねえねえ、他にも何か出来る?そうだ、ローゼンメイデンなんて知ってるかしら?」 
  
 豪田「うわーローゼンだったらハマリ過ぎ!」
 しばし沈黙した後、スーは口の端を歪めて低い声で喋り始めた。
 スー「エエ、今ヤ日本ノ漫画ヤあにめハ、世界ニ誇ルベキ文化デアリマシテ…」
 一同「そっちかい!」
 浅田「つーか、何でそっちのローゼン知ってるの?」
 その後もスーは、そんな調子でいろいろ物真似のネタを披露した。
 
 そんな中、やぶへび3人娘に捕まってた荻上会長が帰ってきた。
 荻上「あっ大野さん、いつ来られたんです?」
 大野「今さっきですよ」
 アンジェラがダッシュで迫る。
 アンジェラ「ハーイ千佳、あっ今は会長と呼ぶべきあるね。お久しぶりあるよ」
 荻ハグするアンジェラ。
 荻上「(赤面して)日本語、喋れるようになったんですね」
 その様子を見ていたクッチーが、豪田をけしかけた。
 朽木「クリチン(クッチー限定の豪田の愛称。由来は豪田のペンネームのクリスチーヌ豪田)荻ハグですぞ」
 豪田「さすが外人さんですね。私もああいう風に自然に荻様ハグしたいなあ」
 朽木「そうじゃなくてクリチン、ここは先輩の威厳をビシッと見せて、荻ハグの見本を見せるにょー」
 巴「(ニヤリと笑い)それいいかもね、日米荻ハグ合戦」
 
 豪田「荻様お帰りなさ〜い!」
 荻ハグしようと迫る豪田。
 アンジェラ「私ももう1回ハグするあるよ〜!」
 アンジェラの割り込みと荻上会長のフットワークにより、豪田とアンジェラは互いに誤爆ハグする。
 
 
 
 
 
- 90 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その40 
  :2006/11/12(日) 20:41:15 ID:??? 
  
- しかしアンジェラはまるで気にせず、より力を込めて豪田を抱きしめる。 
 豪田「ぎえええええ!」
 アンジェラ「あなたなかなか可愛いあるね」
 アンジェラの目が妖しく光る。
 豪田「おっ、大野さん、これは?」
 大野「アンジェラって、実はポッチャリ型が好きなんですよ」
 豪田「ポッチャリって…私どう見てもデブでしょ?」
 大野「アメリカじゃあなたの倍近い人がゴロゴロしてますから、十分アンジェラのストライクゾーンですよ、豪田さん」
 アンジェラ「正確には女の子の場合はそうだけど、男の子の場合は細身のメガネ君が好きあるね」
 豪田「女の子の場合って…?」
 アンジェラ「私男女の違いには、あまり拘らないあるね」
 アンジェラの唇が豪田に迫る。
 豪田「やめれええええ!」
 迫るアンジェラの頭をガッシリと掴んで引っ張る手。
 巴だ。
 アンジェラ「NO〜!」
 思わず豪田から離れる。
 夏蜜柑をも握り潰す巴の握力で締め上げられては堪らない。
 アンジェラ「(ニヤリと笑い)あなたなかなか力持ちあるね」
 前屈みになってやや腰を落とし、両手を前に出すアンジェラ。
 巴「(ニヤリと笑って)面白い」
 アンジェラの意図が分かった巴、彼女の両手を自分の両手で、指を絡ませるように握る。
 2人はいわゆる手四つの体勢になった。
 2人とも全身に力がみなぎり、汗をかきながらブルブルと震え出す。
 固唾を呑んで見守る現視研一同。
 およそ1分近く経過したが、2人の手の位置は殆ど変わらない。
 互角の勝負だ。
 
 
 
 
- 91 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その41 
  :2006/11/12(日) 20:45:51 ID:??? 
  
- 荻上「アンジェラって、あんなに力あったんですか?」 
  
 大野「もともとテニスとか水泳とかやってましたけど、半年ぐらい前から護身術兼ねてレスリング習い始めたらしいですよ」
 やがて手四つ怪力合戦の2人の震えが止まった。
 互いに手を放す。
 しばし見つめ合う2人。
 2人の目が輝きを増したその時、互いに右手を差し出し、力強く握手した。
 荻上「?」
 大野「どうやら筋肉で友情が芽生えたみたいですね」
 何故か会員一同から、盛大な拍手が送られた。
 
 アンジェラ絡みの騒ぎが一段落すると、スーが荻上会長にトコトコと寄って行く。
 そして肩幅ぐらいに足を左右に広げ、腹の前で拳を握った腕を十字に合わせ、それを切るように肘を腰の後方に引きつつ挨拶した。
 「押忍(おっす)!センセイ荻上!」
 荻上「せんせい?」
 スー「押忍!私センセイ荻上に、ヤオイの道の何たるかを学ぶ為に日本に来たであります!」
 荻上「その喋り方は?」
 スー「押忍!外国人が日本人の先生に習い事する時、頭にセンセイと付けてお呼びし、喋る前に押忍と合いの手を入れる、それが日本で修行する者の作法と習いました!」
 荻上「それ誰に習ったの?」
 スー「押忍!センセイ梶原原作の空手漫画にそう書かれてたであります!」
 笹原「多分、『空手バカ一代』とか『四角いジャングル』とかを読んで参考にしたんだと思うよ」
 スー「押忍!センセイ梶原のおっしゃることは全部実話だから、その通りにすれば間違いないと、日夜修行に励んだ成果であります!」
 
 
 
 
 
- 92 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その42 
  :2006/11/12(日) 20:51:40 ID:??? 
  
- 実は梶原一騎先生が漫画の劇中で「これは実話である」と断言していることの半分ぐらいは梶原先生の創作なのだが、敢えて笹原はそのことにはツッコまなかった。 
  
 (参考)
 「兄ちゃんって、よく分かんないまま話書き始めちゃうんだよ」
 梶原一騎先生原作のある格闘技漫画について、先生の実弟の真樹日佐夫氏(空手家で漫画原作者でもある)の証言。
 
 朽木「ところで大野さん、前から疑問に思っていたのですが、スーちゃんって歳いくつなのでありますか?」
 大野さんに注目する一同。
 実は1年生たちが1番疑問に思っていたことだからだ。
 アンジェラの方は大野さんの友だちということで、自分たちより少し年上かもとおおよその想像は出来る。
 だがその2人と対等に話しているスーは、どうみても同い年には見えない。
 それによく見ると、2人のスーへの対応はお姉さん的でもある。
 その為スーの年齢を推測することは困難を極めた。
 その場にいる多くの者の総意の代弁という点では、ある意味クッチーのこの質問、彼の生涯で最も空気を読んだ発言かも知れなかった。
 大野さんが満面の笑みを浮かべた。
 だがその唇の端は微かに痙攣していた。
 次の瞬間、テレポートと見紛うばかりの俊敏な動きで、大野さんはクッチーの背後を取る。
 そしてこれまた音速に近いスピードで、クッチーの首筋に右腕を絡みつけつつ左手で後頭部を押す。
 スリーパー・ホールド、いわゆる裸絞めの体勢だ。
 クッチーの頚動脈は、大野さんの前腕部と上腕部で急激に絞め上げられ、瞬時に血流を停止した。
 
 
 
 
- 93 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その43 
  :2006/11/12(日) 20:55:50 ID:??? 
  
- 何が起こったのか分からぬまま、クッチーは落ちた。 
  
 それでも僅かに背中で大野さんの巨乳の感触を味わったせいか、クッチーの寝顔は安らかだった。
 大野さんの無言の笑顔は、まだ続いていた。
 冷や汗を流し、凍り付く一同。
 この大野さんの一連の動きが、スーの年齢についての話題が禁則事項であると雄弁に語ったからだ。
 一同『て言うか、いくつなんだよスー?』
 
 その後もカラオケ大会は続いた。
 1人で1曲歌うパターンは徐々に減り、全員で合唱するパターンが続いた。
 終盤の頃には、「やぶへび」の3人も乱入しての大騒ぎになった。
 夏コミ本番に差し支える為に、荻上会長は飲酒を禁止していた。
 だから全員シラフなのだが、それにも関わらず皆ハイになり盛り上がっていた。
 そうなると現視研一のお祭り野朗クッチーも復活し、歌うわ踊るわ脱ぐわ大野さんにどつかれるわ1年女子には意外にウケるわの大騒ぎとなった。
 いい加減みんなを大人しくさせることをあきらめた荻上会長も、開き直って笹原とデュオで熱唱して、藪崎さんに「勝ったと思うな!」を連発させた。
 (でも何故か演歌ばかり)
 最後はスーのリクエストで「宇宙戦艦ヤマト」をみんなで歌った。
 ヤマトはかつてアメリカでも放送されて人気番組となり、アメリカの古いオタには、ヤマトがきっかけでオタの深みにハマったという人が多数実在する。
 それは単にヤマトの良さにハマっただけではない。
 ヤマトを巡るパラレルな展開の真相を知るべくわざわざ日本語を勉強して来日し、調査の過程でガンダム等の数々の名作を発見した為でもあった。
 
 
 
 
 
- 94 :26人いる! 夏コミ前夜祭 その44 
  :2006/11/12(日) 20:59:37 ID:??? 
  
- 夜明け直前、田中と1年男子たちが田中宅に預けた荷物を取りに出かけた。 
  
 その帰りを待つ間、荻上会長は部屋の片隅で笹原が眠っていることに気が付いた。
 荻上「まあ昼間仕事やってからそのままこっち来たから、疲れが出たのね」
 恵子「なかなか可愛い寝顔してるじゃん。姉さん、キスして起こしてやったら?」
 荻上「(赤面しつつ)ぎっ、ぎりぎりまで寝かしといたげなさい!」
 そう言いつつも、可愛い寝顔というのには同意する荻上会長だった。
 
 田中たちの帰りが出発の合図となり、全員(「やぶへび」の面々を含む)外に出る。
 夜が明け始めていた。
 荻上「じゃあみんな、出発するわよ」
 一同「はいっ!」
 スー「地球ニ向カッテ、シュッパーツッ!」
 大野「Sue、それは帰りの時の掛け声だってば」
 いよいよと気を引き締める荻上会長。
 ふと見ると、クッチーが朝日に向かって柏手を打って手を合わせていた。
 朽木「今年はいいことがありますように!」
 荻上「初日の出じゃないんだから、止めて下さい!」
 朽木「何をおっしゃる!これは師父斑目より教わりし、お目当ての同人誌をゲットする為の伝統ある出陣の儀式ですぞ!」
 荻上「最近あの人、いい加減なこと教えてねえか?」
 1年生たちとアンジェラ&スー、それに大野・田中カップルや笹原兄妹、そして「やぶへび」3人娘までもが、同様に朝日を拝み、それを見て頭を抱える荻上会長。
 でも結局「まあいいか」と、会長自らも手を合わせて朝日を拝んだ。
 がんばれ荻上会長、本当の戦いはこれからだ。
 
 
 
 
 
- 95 :26人いる! 夏コミ前夜祭 後書き 
  :2006/11/12(日) 21:03:48 ID:??? 
  
- 看板に偽り有り! 
 未完なだけならまだしも、まだメインキャラ26人出てないし、そもそも夏コミ始まってない!
 すいません、本日はここまでです。
 続きは近々投下しますので、何とぞご容赦を。
 長時間スレ占領しちゃいまして、どうもすいません。
 
 
- 96 :マロン名無しさん 
  :2006/11/12(日) 21:42:28 ID:??? 
  
- 5時からリアルタイムで読んでしまった。 
 最近、げんしけんにハマって初めてこのスレに来たんだけど、
 ゆうきと久米田が好きなオレはひょっとしてオタの王道を歩いていたのか?
 たまたま作者さんと好みが合ってただけ?
 
 
- 97 :マロン名無しさん 
  :2006/11/12(日) 22:10:59 ID:??? 
  
- >>96 
 久米田さんとゆうきさんは王道というより魔道な気もする。
 これはいい意味で。
 かくいう私も大好きです。
 
 >>95
 あとでゆっくりよまさせていただきます!
 
 
- 98 :マロン名無しさん 
  :2006/11/13(月) 03:23:54 ID:??? 
  
- >>26人いる! 
 長編乙です!
 いやぁ、にぎやかですねえw
 現視研が超クリエイター集団となっているのに感動した。
 本番はどうなることやらw
 楽しみにしています!
 
 
- 99 :マロン名無しさん 
  :2006/11/13(月) 05:14:31 ID:??? 
  
- >26人いる! 
 まずなにより乙。なにはともあれ5時間もお疲れ様でした。
 コピペして通勤のとき読みます。感想はまた。
 
 
- 100 :マロン名無しさん 
  :2006/11/13(月) 18:04:29 ID:??? 
  
- 『26人いる!』投下分読了。 
 朝の通勤時間じゃ読みきれなかったよ。昼メシの間ずっと読んでたわ。
 
 たいへん面白く読ませていただきましたゴチ。
 やっぱりイベント話面白いね。新入部員がバリバリ仕事するストーリーの仕立ても理解しやすくていいし、書くほうも描写しやすかろうと思う。
 それぞれに見せ場を作らなきゃならないので確かに大変そうだがなかなかどうして、みなさん個性的に動いていて実に魅力的だ。
 新キャラの才能も絵的に見えているし、従来キャラたちのパワーアップも頼もしい。オギーの会長っぷりも板についてきて父さん嬉しいぞ。
 小ネタもいっぱい効いてて楽しい。個人的にはローゼン閣下のモノマネをするスーに作中人物と一緒にツッコんでしまい、思わぬ一体感が味わえたw
 
 ……えーとね、感想書ききれません。
 想いとしてはひとネタひとネタ全てに反応したいくらいだが、はしゃぎすぎてもなんなのでこの辺まで。
 作者氏ご本人の仰るとおりまだ本番始まってません。今後投下されるであろう後編だか中篇だか第2話だかを楽しみにしております。
 
 
 
- 101 :マロン名無しさん 
  :2006/11/13(月) 22:08:39 ID:??? 
  
- >26人 
 確かにネタ大杉。でも「お祭りがやってきた」っぽい楽しさに満ちてるので、おK!
 
 個人的にツボだったのは、スーの「閣下」ネタと、「女囚701号さそり」の主題歌「怨み節」、そして梶原一騎ネタ……、つうか真樹日佐夫の名前まで出るとは、作家氏の年齢が知りたい!
 
 
 
 「大野女史のスリーパーは腕の力もさることながら、巨乳がさらに圧迫を加えるので、私も危うく昇天しかけたことがあった。これを凌ぐのはアンドレ・ザ・ジャイアントのヒッププレスくらいだろう」(アントニオ猪木・談)
 
 
- 102 :マロン名無しさん 
  :2006/11/16(木) 00:35:35 ID:??? 
  
- スーパースター列伝乙 
 
 
- 103 :マロン名無しさん 
  :2006/11/16(木) 03:26:01 ID:??? 
  
- …ふはーーー!ようやく読めた! 
 読み始めると引き込まれて、ついつい読んでしまいました。
 
 つかまだ夏コミ@三日間始まってNEEEEEEE!!!!!www
 「クッチー純情派」以上の大作になる悪寒。本にしたらぶあつくなりそうなw
 続き楽しみにしてます。頑張ってください!
 
 …あと一言だけ言わせて欲しい。
 斑目の絶望先生コス見てえええええええ!!!!!www
 
 
- 104 :マロン名無しさん 
  :2006/11/16(木) 05:30:55 ID:??? 
  
- >>103 
 YOU描いちゃいなYO!
 
 
- 105 :マロン名無しさん 
  :2006/11/17(金) 21:50:52 ID:??? 
  
- 保守 
 
 
- 106 :アンの青春 
  :2006/11/18(土) 03:12:53 ID:??? 
  
- >26人いる! 
 いや、すごいな・・・。こんなに豊富なネタとオリキャラを自在に動かす
 の真似できない。大作乙でした〜 スーの年齢不詳私も気になってますw
 
 しばらく投稿してなかったのですが、以前書いたセカンドジェネレーション
 続編書きあげたので、投稿します。一万六千字の長作で、オリキャラも登場する
 んですが、今の流れならNGじゃないかな。
 ということで久しぶりの創作で脳味噌覚醒して目が冴え冴えなので、
 今から、十分ほどして設定説明と同時に投稿します。
 
 
- 107 :アンの青春 
  :2006/11/18(土) 03:21:01 ID:??? 
  
- ■セカンドジェネレーション設定■ 
  
 
 これは絵板起源の「セカンドジェネレーション」-双子症候群-の独自設定
 です。一応、「初期設定」とされるキャラクターの設定を拝借していますが、
 独自に改編した部分もあります。
 ここだけで完結されたバラレル設定ですので他のSS師さんたちや絵師さんた
 ちの設定との差異はご了承ください。
 
 □舞台設定
 げんしけん最終回から二十年後の世界の東京郊外の新興都市
 
 □登場人物設定
 旧世代の登場人物は斑目晴信、アンジェラ・バートン、スザンナ・ホプキンス
 のみの登場。その他メンバーは名指しも登場もしない方針。
 
 □物語設定
 物語はオムニバス形式で独立しており各自主人公が異なりますが、
 前作の設定を一部引き継ぐ場合があります。一応、時間系列順に列挙して
 おきます。
 :げんしけんSSスレまとめサイト 「その他」カテゴリー収録
 @「ぬぬ子の秘密」 主人公 服部双子(ぬぬ子) A.C.2026年
 A「斑目晴信の憂鬱」 主人公 斑目晴信 A.C 2026年
 B「アンの青春」 主人公 アンジェラ・バートン A.C 2010年
 続編未定
 
 
 
- 108 :アンの青春 
  :2006/11/18(土) 03:22:14 ID:??? 
  
- □登場人物 (○旧世代 ◎新世代 ☆オリジナル) 
 ○斑目晴信
 新世代たちの中学校に用務員として赴任。過去にアンジェラと短期間交際し
 ており、認知していない息子が一人いる。最近、その存在を知った。
 ○アンジェラ・バートン (アン、アンジェラ)
 米国にて社会心理学研究をしている。斑目との間に一子あり。
 ○スザンナ・ホプキンス 
  (スージー、スー)
 新世代の中学校に英語教師として赴任。容姿は昔と変わらない。
 ◎千里(ちさ) 十四歳以下同
 笹荻の娘。妹の万理と二卵性双生児。性格は積極的で物事に頓着しない。
 漫画、アニメ好き。
 美少女愛好趣味もある。どちらかというと消費系オタ。叔母や親友の春奈と
 ファッションやゲームの話題で気が合う。
 ◎万理(まり) 前作でうっかり万里の変換せずにいましたので他の方々の
 設定との区別の為に万理で通します。
 同じく笹荻の娘。性格は消極的で思慮深い。納得のいかない細事に拘る面も
 ある。腐女子趣味で創作もする。漫画、アニメ好き。創作系オタ。親友の
 千佳子と気が合う。
 
 
 
- 109 :アンの青春 
  :2006/11/18(土) 03:24:02 ID:??? 
  
- ◎千佳子  
 田大の娘。温厚で大人しい性格。父親に似て凝り性で几帳面な面も。漫画、
 アニメ好き。消費系オタ。腐女子趣味。コスプレは嫌い。
 思春期の難しい年頃で母親のコスプレ趣味には嫌悪感。その後何かの
 きっかけで目覚める可能性あり。
 ◎春奈
 高咲の娘。ボクササイズをしている。オタク趣味は無いが、父親の影響で
 オンラインゲームの格闘ゲームが好き。
 ファッションにも興味があり、アバターの服などのデザインを趣味にして
 いる。
 父親の天才性?は引き継いでいないが、母親のリーダーシップの素質の萌芽
 がありそう。
 ◎服部双子(ぬぬ子)
 突然、転校してきた厚底メガネのおさげの少女。メガネを取ると絶世の
 美少女という古典的設定。その他にも秘密が多そう。
 ☆アレクサンダー・バートン(アレック) 十五歳
 このパラレル設定での完全なオリキャラ。斑目とアンジェラの息子。
 無責任な父親を拒否。
 その反動でオタク趣味も寄せ付けない。しかし思いっきり素養がある。
 母親似のスポーツマンで格闘技を習得。
 オンライン格闘ゲームには興味がある。
 
 
 
- 110 :アンの青春 
  :2006/11/18(土) 03:27:37 ID:??? 
  
- うわ、久々なんで改行とか調整してなかったので少し間を空けて 
  
 投稿再開します。分割もしてなかったので投稿数も不明です
 
 
- 111 :アンの青春その1 
  :2006/11/18(土) 03:45:59 ID:??? 
  
- ○斑目晴信 
 
 (めっきり部室に顔を出す事も少なくなったな・・・)
 
 と斑目は秋足の早さを肌で感じながら、枯葉舞うキャンパスの大通りをゆっくりと歩いた。
 在学中の顔見知りはもういない。唯一、スージーだけが大学院から何かの研究室に残ってはいたが、
 すでにサークルには顔を出す事は少なくなっていた。
 
 当然、斑目ともスージーは顔をあわせる機会も少なくなった。部室に顔を出しても、現役の部員たちが
 最新のゲームやアニメの話題に興じていて、時々斑目にも話題についていけない時があった。
 
 「あれえー、斑目さん、また来たんですかあ〜」とからかうように現役の部員たちが笑いながら声をかける。
 
 「馬鹿言え、またとは何だ、またとは!! ほれ、お前ら差し入れだ!! 」と斑目も苦笑しながら、
 手に持っていた差し入れのジュースやお菓子を差し出す。
 
 「やったー。いつもすみませんねー、さすが社会人!! 高給取りですねー」
 
 「そんなわけないだろう。調子のいいやつらだな。」
 そう言いながらも斑目はまんざらではない気分だった。このくらいは格好つけさせてもらいたい。
 
 
 
- 112 :アンの青春その2 
  :2006/11/18(土) 03:46:34 ID:??? 
  
- (いや・・・手ぶらで来るのに気を使う年齢になったんだな・・・) 
  
 そして後輩たちに気を使うほどの隔たりを感じてもいた。
 「六年か・・・」と斑目はつぶやいた。最近はあいつらとも疎遠になってきた。仕事はそれなりに順調だ。
 最近は重要な用件も任されてくれるようになった。すっかり中堅扱いだ。だがしかし・・・。
 
 突然、部室の扉が開いた。この時間に部室を訪れる人はもういないはずだ。斑目と部員たちは同時に
 驚いて、扉の方を向く。そこには見知らぬ女性が、しかも金髪、碧眼の欧米人がきょとんとした表情で
 立っていた。意外な訪問者に皆声を出せずにいた。
 
 どこかで会った顔である・・・。ずいぶん会っていない。そうだ・・・。
 その女性はその深みのある澄んだ瞳を斑目のほうに向けて、ほっとしたように笑った。
 
 「アンジェラか!!」
 
 斑目晴信。二十八歳、踏ん切りをつける事のできない想いをいまだに抱き続けている男。
 アンジェラ・バートン 二十六歳 己の運命と闘い打ち克つ事を願う女性。
 
 
 
- 113 :アンの青春その3 
  :2006/11/18(土) 03:47:17 ID:??? 
  
- ○アンジェラ・バートン 
 
 (以前、日本に行ったのは何時のことだろう・・・。)
 
 スーが留学してそのまま日本に滞在するようになってから大分たつ。アンジェラもスーが
 日本に渡ってから自身の仕事の忙しさから、すっかり日本に来る事が少なくなっていた。
 もちろん日々、メール等でスーとは連絡は取り合っている。
 私たちの『絆』は人が思う以上に深いのだ。
 
 (今回は・・・特別・・・緊急だからね・・・)
 
 スージーからの連絡を聞いた時には耳を疑った。もう絶滅していないと思っていたのに・・・。
 『私たち』で『使命』は終わりだと思っていた。いや『使命』を果たす機会無く平穏に終わるのだと・・・。
 
 アンジェラは手配を済ませて飛び乗った飛行機の席で大きく息を吐いた。心臓がドキドキしている。
 むしろ今回の事はアンジェラには刺激的な出来事だと思った。
 大学の研究は楽しい。言い寄ってくるボーイフレンドとのデートや遊びも楽しい。
 
 (ああ、でも本当に楽しいなんて思ってなかったわ・・・。)
 アンジェラはその満たされぬ思いに気付いていた。
 飛行機の窓から見える雲間をぼんやりと眺めながら、物思いに耽っていた。
 
 (本当に損よね・・・。時々わずらわしいと思っちゃう・・・)
 
 アンはふと視線を自分の胸元に向けた。10代の頃からその大きすぎる胸は好奇の目の対象だった。
 学校の成績は良かったが、周りはそんな風に見てくれなかった。好色で軽薄な女と思われたくなくて、
 アンジェラは勉強もがんばったし、スポーツでも活躍した。それなのに周りの好奇の目は変わらなかった。
 
 
 
- 114 :アンの青春その4 
  :2006/11/18(土) 03:48:26 ID:??? 
  
- 日本から来た、気持ちを同じくし、そして趣味も共有できる親友と出会うまで、スーにすら(いや幼児体型の 
  
 スーには理解してはもらえない)悩みを共有できる人はいなかったのだ。
 
 その気持ちは今でも変わらない。言い寄ってくる男との付き合いにもどこか心を開く事が出来なかった。
 
 (いい年して馬鹿みたいよね、でもこの『使命』が終わったら、何か変わるかしら・・・)
 
 当ての無い期待を密かに抱いてアンジェラは日本に来た。
 
 そして二人は数年ぶりで再会した・・・。
 
 
 
- 115 :アンの青春その5 
  :2006/11/18(土) 03:49:13 ID:??? 
  
- ○邂逅 
 
 アンジェラが部室の扉を開けて、最初に目にしたのは昔とさっぱり変わらない部室の様子、
 そして驚きと好奇の目でアンジェラを見る学生たちの表情であった。
 だが知っている顔はもういない・・・。いや・・・一人いた。そう、『ソーウケ』のマダラメ。
 
 変わらないまん丸眼鏡の奥から、目を白黒させて相変わらずオロオロとしてキョトンとした表情。
 アンジェラは可笑しさと同時に何かホッとした気持ちになった。
 
 「マダラメ、嫌だ、あなたまだ学生やってたの?」とアンジェラは流暢な日本語で喋った。スーの影響で、
 この数年ですっかり日本語も覚えた。
 
 「な、なわけ無いだろう!! 後輩たちの面倒を・・・、ってアンジェラ、日本語上手くなったよな。」と斑目は
 驚いた表情で訪ねた。
 
 「まっ斑目さん!! こっこの巨乳の美人!! だっ誰ですか? まさか斑目さんの・・・」
 
 「違うわい!!」
 
 後輩たちが色めきだつ。そんな学生たちの様子に頓着せず、腕組みしながらアンジェラはニコニコ
 しながら辺りを見回す。
 「変わらないね。あれ・・・このゲーム・・・」とアンジェラはテーブルに無造作に置いてあるエロゲーを手に
 取ろうとした。
 
 「わわわわ」 学生たちは慌ててその手のゲームやら雑誌やらを片付け始めた。
 
 「フフフ、気にする事無いのに。」
 
 「急にどうしたんだい?」と斑目はアンジェラに尋ねた。
 
 
 
- 116 :アンの青春その6 
  :2006/11/18(土) 03:52:59 ID:??? 
  
- 「スーは? ここじゃないの? 携帯電話、あの子通じないのよね。」 
  
 
 「ああ、きっと研究室の方だろう。何の研究か知らないけど、あそこ携帯電話とか使用禁止なんだよね。
 案内するよ。」と斑目は咳き込みながら、細い肩を揺らしながら言った。
 「うれしい。優しくなったのね。意地悪な人って聞いていたけど。」とその様子を見つめながらアンジェラは
 答えた。
 「誰がそんな事を・・・。そんな事を言うのは・・・」と斑目は眉間にしわを寄せた。
 
 「フフ、蛇ですものね、前世は。」
 
 「かっ勘弁してくれよ、もう・・・」と斑目は顔を真っ赤にして答えた。
 二人は部室を出て、スーのいる研究室の方に向かった。
 
 アンジェラは斑目をからかいながら心が浮き立つ自分に気付いた。こんな事は久しぶりだった。
 (楽しい・・・からかい甲斐があるんだもの・・・。)
 
 そう思いながらアンジェラは斑目の横顔を見つめている。斑目はその視線に気付かないフリをして顔を
 こわばらせた。その様子がまた不自然でアンジェラには滑稽に見えた。
 
 (俺の顔・・・。何かついてるのか? 
  )とドギマギしながら適当な会話をして、その場をごまかしていた。
 アンジェラはその話を聞きながら静かに相槌を打っている。自分でも何喋ってるか分からない話題にだ。
 「少し雰囲気変わった?」
 「そうかあ?」
 二人はそんな会話を交わしながら並んでキャンパスを歩いていた。
 
 
 
- 117 :アンの青春その7 
  :2006/11/18(土) 03:55:31 ID:??? 
  
- ○違和感 
 
 二人はスーの研究室の前についた
 
 「つっ着いたよ!! たぶんここにいると思うよ。俺は退散するね。ここの担当教授、俺のゼミ担当だったんよ。
 卒業してからもウロウロしている所見られたら、嫌な顔されるからね。」
 
 「そう・・・ありがとう。」
 アンジェラの表情が何か言いたげだった。
 
 「何? まだ何かある? 」と斑目はつっけんどんに言った。
 
 「いえ・・・」
 
 「じゃじゃあ、これで!! また機会あったら!! あの二人にもよろしくね!!」
 間の悪さに耐え切れず斑目はそそくさと退散した。
 (何している? いい大人が!! 自意識過剰もはなはだしい。)
 斑目は自己嫌悪に近い感情に襲われながら立ち去った。
 
 斑目は部室に置いてきた弁当に気が付いた。腕時計に目をやると十二時四十分を過ぎていた。
 
 (駄目だ・・・。部室に戻って昼飯を食う時間は無いな・・・。しょうがない、会社に戻るか・・・。弁当はあいつら
 にくれてやろう。)
 
 斑目は後輩たちに電話しようと携帯電話を手に取った。その時、ふとキャンパスの影にスーがいるのに
 気付いた。研究室にはいなかったのだ。アンジェラが来たことを教えてやろうと声をかけようとした。
 だが建物の物陰に誰かいる事に気付いて、声をかけるのをためらった。
 その人物は斑目の所属ゼミの担当教授だった。
 (まずいな・・・。あの人、口うるさいんだよな・・・。)
 
 
 
- 118 :アンの青春その9 
  :2006/11/18(土) 03:57:35 ID:??? 
  
- 斑目はその教授が苦手であった。だからその場を立ち去ろうとした。 
  
 しかし教授の表情に驚いて足を止めた。主に喋っていたのは教授の方だったが、
 その顔は普段の嫌みったらしい人ではなく、まるで・・・そう・・・恋する少年のような表情だったのだ。
 
 『本当にあなたはお変わりない・・・。それに比べて私は・・・世故に長けているだけのつまらない大人に
 なりました・・・。』
 『そんなことはないよ・・・。』
 スージーは建物の白い壁に寄りかかりながら、頬を赤く染めて、はにかみながら、うつむいていた。
 『前任者との引継ぎは? 資料の方は私が管理保管しております。あなたの在学に関する手続き等も
 問題ありません。すべて私の方で手配済みです。』
 
 二人の会話はすべて英語で交わされていたので、斑目には二人の会話の内容が分からなかった。
 しかし二人の様子には何か違和感を感じた。その時、斑目の存在に教授の方が気付いて、
 ぎょっとした表情を浮かべた。そしていつもの嫌味な教授の顔に戻った。
 
 「君は確かずいぶん前に私のゼミにいた卒業生の・・・。OBとはいえ気軽に大学の構内を
 ウロウロするのは・・・」
 「すっすいません。あ、スー!! アンジェラが君を訪ねてきているよ!!」
 説教が長くなりそうだったので慌てて斑目は、スージーにアンジェラの来訪だけ伝えて、
 その場を立ち去った。
 
 
 
- 119 :アンの青春その10 
  :2006/11/18(土) 03:58:16 ID:??? 
  
- (いけねえ いけねえ) 
  
 
 斑目は慌てて駆け出した。そろそろ昼休みが終わる。その時、校門の後ろから聞き覚えのある声に
 声をかけられた。
 
 「よう、斑目!! 久しぶりだな!! 」
 
 (原口!! 今日は嫌なやつに二人も出会ったよ・・・)
 しばらく消息もしれなかったが、最近、はぶりのいい様子で斑目たちの前に現れる事があった。
 何をしているかは分からなかったが、高級時計や似合いもしないブランドに身を包んでは自慢げにして、
 周囲に不快感をばら撒いていた。
 
 「あいかわらず・・・しけてるな・・・。世の中、要領よく立ち回らないと駄目だぜ。」
 ニヤニヤしながら原口は斑目の野暮ったい姿をジロジロ見ていた。
 
 「ははっ、そうですね・・・。今日はすいません、会社の休憩時間が終わっちゃいそうなんで!!」
 斑目はそう言ってそそくさと立ち去った。
 (相変わらず、嫌な奴だ・・・。だが何か印象が変わったような・・・)
 
 
 
- 120 :アンの青春その11 
  :2006/11/18(土) 04:00:02 ID:??? 
  
- ○契約 
  
 
 『やっと会えた。携帯も通じないし・・・。研究室閉まってるじゃない!!』 とアンジェラは言った。
 
 『うん・・・S教授と「例の件」について相談してたから。』とスージーはぶっきらぼうに言いながら、
 研究室のドアの鍵を開けた。
 
 アンジェラはひんやりとした研究室の中に入り、あたりを見回しながら呟いた。
 『そうなの・・・マダラメに案内してもらったわ。』
 『私も会った。アンの事聞いた。』
 
 『そっそう!! 彼に世話になったのに礼もろくに言ってなかったわ!! お礼言わなくちゃ!!
 スーは彼の携帯電話知ってるわよね?』
 マダラメの名を口にして自分がドギマギしている事に気付いた。
 
 『? 
  もちろん。でもその前に・・・』
 『ええ、分かっているわ!! 間違いないのね。前任者の目をくぐり抜けて、一体いつ入れ替わったのかしら?』
 『たぶん、前任者の引退の前後に・・・。今も大学に来ている・・・。向こうも私に気付いた。』
 
 『そっそう・・・。間違いないのね・・・。』
 さっきの心浮き立つ心境から一転して、暗澹たる心境に変化した。
 
 『では・・・貴方は貴方の義務を果たしなさい。』
 急にスージーの口調が一変して厳格な口調に変わったことに、アンジェラは気付きハッとした。
 
 スージーは厳かに言った。
 
 『父祖から引き継がれし血の誓約を汝は今ここに遂行せよ。』
 
 『わが主、わが牧者、血の誓約に従い貴方の命に服します。』
 アンジェラは慌てて跪き、スージーの白い手を取り、接吻した。
 
 
 
- 121 :アンの青春その12 
  :2006/11/18(土) 04:00:40 ID:??? 
  
- 『ここは「問おう。貴方が私のマスターか?」って言ってくれなきゃ!!』とスージーは口を尖らしてぼやいた。 
  
 『スー・・・あのねえ・・・』
 その口を尖らせたふくれっ面は少女のようであった。紛れも無くその容姿は少女そのものであったのだ。
 見かけと内面とのギャップにアンジェラは可笑しくなった。
 
 『例の「物」はもう日本に?』とスージーはアンジェラに尋ねた。
 『ええ、抜かりは無いわ。空軍経由で空輸して、今日の夕刻までには「処理班」が私たちの所に
 届けてくれる。』
 アンジェラは頷きながら答えた。
 『では、それを回収次第、作戦開始ね。それまでここで作戦の細部を検討しましょう。』とスージーは言った。
 『そうね・・・。』
 
 
 
- 122 :アンの青春その13 
  :2006/11/18(土) 04:01:45 ID:??? 
  
- ○追跡 
 
 空が禍々しい赤色に染まり、ビルの壁の影がゆっくりと濃くなっていく頃、「それ」は動き出した。
 「それ」はその大きな体をユサユサと揺らしながら、あたりの様子を窺うようにキョロキョロとした。
 そして「地下鉄」へと降りていった。
 
 『尾行に気付いているのかしら。』とアンジェラはスージーに尋ねた。
 『気付いているでしょ。私が「ヤツ」に気付いているように。』とスージーは素っ気無く答えた。
 二人は「それ」の十数メートル離れた後方から「それ」の様子を窺っていた。
 冷たい風がビルの谷間から吹きつける。二人は行きかう人々と同様に身を縮まらせて震えた。
 厚着しているとはいえこの寒さは堪えた。アンジェラは中型のアタッシュケースを手に持ち、
 細長い筒状のケースを背負っている。
 
 『ねえ、スー! 何で私だけ荷物持ってるわけ!? 重い〜』
 『いいでしょ、アン、力持ちなんだから。』
 『都合のいいときだけ、か弱いふりするんだから、もう!! あ、地下鉄に降りちゃう。急がなきゃ!!』
 
 二人は駆け足で地下鉄の階段を降りていった。改札口を抜けてホームに出ると、
 ちょうど地下鉄が入ってきて、「それ」が乗り込むところだった。
 
 二人も慌てて地下鉄に乗り込む。息を弾ませながら、二人は隣の車両の「それ」の様子を窺う。
 「それ」は大股で席に座っている。混雑時にもかかわらず、周囲にお構いなしにスナック菓子を
 ボリボリ食べ始め、小さな丸めがねの下から、周囲をジロジロと覗き込んでいる。
 
 『わざとかな、それとも地でやってるのかな?』とアンジェラは「それ」の横柄で不快な態度に目を
 向けながら、スージーに聞いた。
 『たぶん、両方。』
 『ああ、なるほどね。格好の社会的擬態の対象を見つけたというわけね。』
 
 「それ」は急に地下鉄から降りて、郊外に向かう路線に乗り換えた。二人も尾行を継続して「それ」に
 ついていく。外は薄暗くなり怪しさを深めていった。
 
 
 
- 123 :アンの青春その14 
  :2006/11/18(土) 04:03:00 ID:??? 
  
- 『誘ってるのかしら?』とやはりアンジェラはスージーに聞いた。 
  
 『それもおそらく。自分の正体がばれて、擬態の社会的地位を無くすのが嫌なんでしょ。
 人気の無いところまで、私たちを誘導するつもり・・・』
 『それは・・・私たちにも都合がいいけど・・・罠じゃ? GPSで追跡している処理班と私たちを引き離すのが
 目的なんでしょうし。』とアンジェラは不安そうにスージーに向かって囁いた。
 
 『仲間がいると? 
  それは無いでしょう。もう最後の世代の感染、増殖力は低下してます。
 バイオセーフティーレベルからすれば、レベル3程度です。あれがおそらく最後の残党・・・』
 とスージーは言った。
 『だといいんだけど・・・。最後の第一世代「始祖」はベトナム戦争期以来発見されていないんでしょう?』
 『そう・・・あれが最後のバイオハザード。私たちの最強の「誓約者」が倒した。
 「誓約者」も私たちで最後・・・。』とスージーは寂しそうな表情を浮かべた。
 
 その表情をアンジェラは見つめた。そう「仲間」はもういないのだ・・・。
 
 そうした会話を交わしながら追跡していくうちに、「それ」は人気の無い廃屋に入っていった。
 
 『とうとう着いたね。ここがヤツの狩場・・・。』
 二人はその不気味な廃屋を見上げた。
 
 
 
- 124 :アンの青春その15 
  :2006/11/18(土) 04:04:36 ID:??? 
  
- ○聖槍 
 
 二人は意を決して廃屋に侵入した。スージーが感じた気配は「それ」一匹だけのものだった。
 他に仲間はいないはずである。ただ他の罠の可能性も否定できないので、
 二人は緊張して周囲の様子を窺った。アタッシュケースを開いて、
 アンジェラは赤外線暗視スコープを取り出して装着した。また小機銃を手早く組み立てた。
 『スー!! あなたも暗視スコープを!!』
 『いらない・・・。夜目は利くから・・・。』と言いながらスージーは周囲に注意を払っている。
 
 廃棄された工場跡は広いが、どす黒い闇に覆われていてとても肉眼で見えるものではなかった。
 天井の穴から僅かに差し込む月明かりだけが、漆黒の闇を切り裂くように差し込んでいる。
 
 不意に天井から声が聞こえた。
 
 「よう・・・。とうとう見つけたか。」
 二人がその声の方を向くと、漆黒の闇の中で赤い目だけが光っている。その声は続けて喋った。
 「なあ、もうやめねえか。俺たちもお前らも、感染力や免疫力は世代を繰り返すほどに落ちてきて、
 第一世代のような力はもうねえ。俺は細々と今の生活を続けられたらそれでいいんだ。
 大それた事は考えちゃいねえ。」
 
 「この狩場は何? あんたらのサガは危険なの!!」とアンジェラは叫んだ。
 
 「しょうがねえだろう。食わなきゃ生きていけねえんだから。お前らだけ社会に溶け込んで楽しんでズリイ
 じゃねえか。第一、エサには事かかねえしなあ。この擬態のヤツみたいなのとかなあ。」
 
 暗闇からゲフゲフという厭らしい笑い声が響いた。
 
 「話はこれで終わりね。」とアンジェラは銃を構えた。
 
 
 
- 125 :アンの青春その16 
  :2006/11/18(土) 04:06:32 ID:??? 
  
- 「そんなんで俺が倒せるわけがねえだろう。感染力はもう弱いが、戦闘力や再生力はまだ健在だぜ。 
  
 お前らの頼みの免疫力はもうねえだろう。」と「それ」はせせら笑った。
 
 「そう。私の免疫力は第一世代ほどの力は無い。体質だけ引き継いでいるだけ。
 でも切り札が私たちにはある。」とスージーはそこで初めて口を開いた。
 アンジェラはそれを受けて、背中に背負っていた長いケースから、細いチタン製の棒を取り出した。
 その矛先には古ぼけた槍が付いていた。
 
 「なんだそりゃ。そんな時代遅れの武器が切り札かよ。・・・いや、まさか・・・。」 「それ」の声は震えた。
 
 「そう・・・。一族最強の免疫力の持ち主にして最高の抗体の持ち主のわき腹を貫いた槍・・・。
 あまりに有名すぎて、名前を出すのも気が引けるあの聖遺物・・・。」
 
 「聖槍か!!」と、人間で無い者、「それ」、ヴァンパイヤは、叫んだ。
 
 
 
- 126 :アンの青春その17 
  :2006/11/18(土) 04:07:10 ID:??? 
  
- ○激突 
 
 闇を劈く咆哮と同時にそれは地上に降り立った。
 
 『ライカン型じゃなくてVIPね。ヴァンパイヤ型!!』とスージーは言った。
 『どこでそういう言葉覚えるわけ?』とアン。
 『ソード!!』と言ってスージーはアンジェラに向かって手を伸ばす。
 『ソードじゃなくて、スピアー!! またふざけて!!』と言いながらアンジェラはスージーに聖槍を渡した。
 
 「ゲヒヒ、いいねえ、いいねえ。それあのアニメだろ?」と「それ」は笑った。
 「オマエハモウシンデイルー」と叫びながらスージーは突進する。
 「キヒヒ、じゃあ俺もね。チョサイコー。」
 「ハラワタブチマケロー」
 
 アニメの名セリフを言い合いながら二人は凄まじいスピードで攻撃を繰り出しあったが、見た目、
 じゃれあっているようにも見えた。
 
 『ちょっと、ちょっと、二人とも!! 真剣に!!』とアンジェラが叫んだ。
 組み合っている二人は動きを止めて、アンジェラの方を振り向いた。
 
 「・・・・・・・・」
 
 いったん止まった動きが再び激しい動きに転じた。「それ」は速さも凄まじいが、パワーも尋常じゃ無かった。
 ものすごい破壊力で廃屋の資材を破壊した。それをかわしながらスージーは一定の間合いを取っていた。
 身体能力を極限まで引き出してはいても、所詮は普通の人間とそう変わりの無いスージーが一撃でも
 攻撃を食らえば一巻の終わりだった。