詩篇:1「天のぞむ命」 伝説はかく語りき。 時の流れに翻弄されし、若く、幼く、強き者たち。 想いを貫き、ただ只管に生き続けた、青年と少女を。 それは旧き時代。 争いの時の中で起きた別離。 焼けゆくは、人々のいとなみ、街並。 踏みにじられる無辜の想い、祈り。 祈りは天に届かず……されど天への階は、澄んだ蒼穹に続く。 少女は天への階を望み、青年はその階へと臨む。 少女は世の苦しみを、別離を嘆き、青年は自らの想いを貫く為に駆ける。 青年は少女の心を満たした。だが、青年は自分を曲げられず。 天へと臨む青年は、再び逢いに行くと告げ、階を望む少女は青年を待つ。 焔燃ゆる、血と命が失われゆく争いの中、青年と少女は別れゆく。 互いに揺らがぬ意志を、その胸に抱いて。 青年が臨んだ蒼穹に、少女が涙を流した時。 その胸を貫くは、死へと誘う一矢。 血と死が渦巻く争いの最中、少女が願うはただ一つ。 生きたい、と。 すべてを犠牲にしても、と問われど、少女は迷う事はなく。 そうして、少女は世界の礎になり、青年が臨んだ天への階に囚われる。 永劫の苦しみの中にあれど、その想いは朽ちず。 それより永き時が流れる。 かつて天へと臨んだ青年は、少女を探す。 風のごとく大地を渡り、しかし、揺るがぬ意志をそのままに。 されど囚われし少女は、青年が触れることあたわず。 青年は願いを徒人たちに託す。 徒人たちは青年の望みに応え、天への階へと挑む。 徒人たちは、血と怨嗟の中であれ意志を貫き、悪しき欲望を退け、ついに少女を救う。 そうして、青年と少女は、再び出会う。 二人は、徒人たちに見守られながら、その手を離さぬよう、共に天へと昇る。 伝説はかく語る。 かつて天をのぞみ、別たれた命は、再び出会い、共に天へと歩むと。