【第31章】 ー親友ー (タキン) 「……………」 正座中 (ベリフ)「――ではメノウ・サノーサンさん。何故ここに転送されたかおわかりになるでしょうか」専用修道服 (メノウ)「……いえ、その…。……はい。ごめんなさい…」 微妙な顔で (ベリフ)「なぜだか、おわかりになるでしょうか、と聞いているのですが。なんですか?共通語では不服ですか?」 (メノウ)「…あ、いえ…。…えっと…。………わからないです…。…すいません…」 微妙な顔で (ベリフ)「…わかりもしないのに謝る、というのは不義理であり、ただ謝れば済むという考えと取ってよろしいですね?ギルティ+1です」 (メノウ)「や、えと…、そういうわけじゃないんですが…。……ごめんなさい…」 (ベリフ)「…今回の事、いつから問題が発生していましたか?」 (メノウ)「………大体一月前です…」 (ベリフ)「はい。では、何故ずっと黙っていたのか、一応理由を聞かせてもらいましょうか」 (メノウ)「そ、それはぁ…。帰り道でも話したじゃない~…。言ったら皆が不幸になるみたいな呪いのせいで…」 (ベリフ)「はいそうですか。証言ありがとうございます」 (メノウ)「あ、あの…。ベリー?…ベリフさん…?ひょっとして、無茶苦茶怒ってます…?」 (ベリフ)「………で、どれぐらい辛かったですか?別に私が不要な位、かっるーい症状だったんですか?ですね?」 (ベリフ)「貴女に質問する権利があるとでも思っていますか?」真顔 (メノウ)「………ごめんなさい。正直めっちゃ辛かったです…」 (ベリフ)「はいそうですか。………なるほどなるほど、滅茶苦茶辛くても別に私は不要だったんですよね?」 (メノウ)「ち、ちがっ…!そうじゃないよ!違うよ!」 (ベリフ)「証言を許可しましょう。弁解をどうぞ」 (メノウ)「……あたしだって辛かったよ。…誰かに助けてほしくて…。でも、誰かに頼ったら、その人に呪いが移っちゃうから…」 (メノウ)「…だから、ずっと我慢して…、耐えて…」 尻すぼみに (ベリフ)「そうですか。なるほど、私の事を思ってやった、と。私の為にわざわざありがとうございます」 (メノウ)「…………」 ちょっと目逸らし (ベリフ)「では、追加でギルティ+1を進呈します」 (メノウ)「な、なんで!?」 (ベリフ)「前に言いませんでしたか、私は傍にいて、ずっと手を握っていると」 (メノウ)「……うん…」 (ベリフ)「別に言う事もなく、辛かったら傍に来て、ただやりきれない事を言ったり、何も言わずに過ごしてくれても良かったんですが」 (ベリフ)「それを、メノウさんは自分から私の手を跳ね除けました。勝手に離れていきましたね」 (メノウ)「そ、そんなつもりは…」 (ベリフ)「そんなつもりはなくとも、私にとっては"そう"に等しい事です」 (メノウ)「……だって、ベリーに気付かれたら、絶対何か無茶するじゃん…」 (ベリフ)「………私が気付いたのは、事が起こる数日前でした。一月近く、些細な違和感はあっても、気付くことができませんでした」 (メノウ)「…あたしは、いつものベリーと、ただ一緒にいたかったから。…だから…」 (ベリフ)「その無茶とは」 と、ここで自分の荷物漁って (ベリフ)「こういう事でしょう、か」ドン、と山ほどの資料を机の上に出して (メノウ)「…? これは…?」 (ベリフ) 『呪いの魔法について ~真語・操霊の構築から~』『術式の構築と改造 ~呪いの条件・内容の変更~』『魂に関わる異常 ~穢れに反応するもの~』 (メノウ)「………」 (ベリフ) 他色々、少なくとも数日でまとめられる量じゃない大量の資料がまとめて (ベリフ)「ちなみにこれら資料のベースはラウリィさんからの提供です。…ラウリィさんから、『メノウさんを支えてあげて下さい』と」 (メノウ)「……」 (メノウ)「……ラウリィさん、なんで…」 (ベリフ)「お笑い草ですね。ラウリィさんが気付けても、自称"親友"の私は、まったくもーって気付けてなかったんですから」 (タキン) サンボル撃ちたい (メノウ)「………」 (ベリフ)「私がそれを聞かされた時の心境を、少し考えてみてください。制限時間10秒」>メノウ (メノウ)「……わかってたよ」 (ベリフ)「はい、何がわかってたのか、どうぞ」 (メノウ)「…頼ってもらえ無い方が辛いって。ベリーのこと傷つけてるって、わかってたよ…」 (ベリフ) それぐらい頭に来てるのが一つ、「資料のソース元ぐらいはいいだろう」というのが一つ (ベリフ) そうともいう (メノウ)ウ、泣きっ面から復帰したと思ったら客席にビーンボール状態 (ベリフ)「そうですか、それはありがとうございます。ご理解いただけて嬉しいです」 (メノウ)「ベリーなら、あたしのために呪いを受けるくらい何とも思わないんだろうな…って思ってたけど…、だけど…」 (メノウ)「…、だから、じゃあ呪い受けてくださいね。って言えると思ってんの…!?」 (ベリフ)「言えないでしょうね」 (メノウ)「あたしは…、あたしは…!一か月ずっと、『あたしが皆の幸せを奪ってる』って言われ続けてたんだよ!?なのに、それなのに、ベリーを不幸にするようなこと、できるわけないじゃない!」 (ベリフ)「そうですか。…ですが、メノウさんは既に私を不幸にしてくれましたよ?人生で二番目、いや一番に匹敵するほど」 (メノウ)「……え」 (ベリフ)「メノウさん。…大切な人が辛い思いをしているのに、のうのうと私だけ笑っていた事を受け入れられる程、私は図太くないんですよ」 (ベリフ)「メノウさんが一月も何も私に察せようともせずにいた、というのを知った時、私がどう思ったか教えてあげましょう」 (メノウ)「……」 (ベリフ)「いろいろ頭ん中ぐっちゃぐちゃにさせられましたけど、まとめた結論としては」 (ベリフ)「『メノウさん自身によって、私がリルズ神官であることを否定させられた』。コレに尽きます」 (ベリフ)「リルズ様に神聖魔法剥奪された時以上にキツかったですね。間違いなく、人生屈指のダメージです」 (メノウ)「っ!…………!」 反論しようと口を開くも、すぐに俯き  (メノウ)「……そうだね。そうだよね…」  (ベリフ)「…リルズ神官の教義、"共生"。人生の喜びや苦しみを、大切な人と分かち合って生きる」 (メノウ)「…『ベリーにいつも通り笑っててほしい。その横にいたい』…こんなの、あたしの我儘だもんね。…ベリーのこと、傷つけてただけだよね…」 (ベリフ)「それを他ならぬメノウさんが、『分かち合わずそっちは笑っててくれ』『勝手に幸せになってくれ』、そうしてくれました」 (メノウ)「……うん」 (ベリフ)「…私は、神官失格です。どれだけ力を得ようが、"親友"一人にすら頼ってもらえない、支えることを許されない」 (ベリフ)「――私はメノウさんにとって、所詮は心配をかけるだけの爆弾で、その苦しみを分かち合えない存在だったんですよね」 (メノウ)「…………」 何も言わない (ベリフ)「………なんとか言ってみたらどうですか」 (メノウ)「……」 俯くのみ (ベリフ)「"そんなものベリーの勝手な考えじゃん"とでも、"私には私の思いがあるんだ、押し付けるな"とでも」 (ベリフ)「………メノウさん」 (メノウ)「……」 (ベリフ)「私って、本当にメノウさんにとって"親友"…違いますね、そもそも"友達"ですか?」 (ベリフ)「こんな事を言うぐらいには、私は辛かったですよ」 (メノウ)「………」 (ベリフ)「…辛い時に、そばにいさせてくださいよ」 (ベリフ)「何も言わなくても、何も伝えてくれなくてもいいから。…メノウさんの苦しみを、少しは分けて下さい、よ」 (ベリフ)「私は、よりかかる事もできない程、酷いヤツ、ですか。不安定なヤツ、ですか」肩が震え (メノウ)「………」 あたしって最低だな。とか思いつつ、俯いて唇を噛んでる (ベリフ)「メノウさんはバカですよ。本当に、バカです。頭がいいように見えて、ちっとも頭よくない、です」 (メノウ)「………ごめんなさい…」 (ベリフ)「…なんとか、やり方はあったハズです。言えなくても、それとなく零して、辛くなってもなんとかできたハズです。そうじゃなきゃ困ります」 (ベリフ)「………頼って、下さいよ。支えさせて下さいよ。なんでですか。なんで、私だけのうのうと笑ってるんですか」 (メノウ)「……」 (ベリフ)「メノウさんと一緒に、皆で一緒に笑ってなきゃ、なんの意味もないじゃないですかッ!!」 (ベリフ)「………ほんとに、私は、ひっどいです。メノウさんが苦しんでたのは十二分にわかってるんですよ」 (ベリフ)「その上で、さらにこんな風に押し付けてるんですよ。メノウさんが傷つくように、今回の事ちゃんと反省するように、痛いぐらいの言葉を突きつけてるんです」 (ベリフ)「………はぁ………」 (タキン) もっと煽って怒らせてもいいのよ(’’ (ベリフ)「…一番のバカは、私です。結局、私がちゃんと気付いてさえいれば良かったんですから。気付く所は、いくらでもあったハズなのに」 (タキン) ていうか、このままだとアレやで、マジで… (ベリフ)「…そりゃ、神官どころか友達でもなんでもないですよね。そこんとこ、どう思います?」 (メノウ)「…………」 何も言えないな…。ただ自責 (ベリフ)「………なんとか、言って下さいよ!!」 (ベリフ)「メノウさんにとって、私ってなんなんですか!!」 (ベリフ)「………なん、なんですか………」力なく項垂れ (メノウ)「………」 ギリッと拳を握り (ベリフ)「………質問を、変えます」 (ベリフ)「私は、メノウさんを友達だと、掛け替えのない"親友"だと思ってます。…ここまで言っておいて、まだ『信じて』います」 (メノウ)「………」 もう絶交とか言われても仕方ないな的諦めの境地 (ベリフ)「…メノウさんは、どうです?」 (メノウ)「………あたしに、そんな資格ないよ…」 (ベリフ)「こんな事言うし、頼れもしない私を。…どう思ってますか」 (ベリフ)「………資格が無いのは、私ですよ。…結局、私がどこかで気付いてさえ、いればッ」 (メノウ)「ベリーが傷付くってわかってて、なのに頼らなかったのは…、…ベリーのこと、傷付けようとしてたのと同じ。…そんな奴…」 (ベリフ)「ずっとッ、そばにいるってッ、手を、離さないッ、って、そう、そう言った、のにッ…!」 (メノウ)「……ごめん。辛い…よね。…あたしなんかが、そこにいたら…、余計、辛いよね…」 (ベリフ)「………そんな言葉、聞きたくなんかないんですよッ!!」胸倉掴んで (メノウ)「ぅぐ…」  (ベリフ)「………」力抜けて (ベリフ)「………メノウさん、メノウさんはどうしても、相手の気持ちを考えてしまいますよね」 (ベリフ)「今回も、『私が資格がない』とか、『あたしがいたら辛いよね』、とか」 (メノウ)「……ちがうよ。…ベリーが言った通り。あたしはあたしのことしか考えてない。…あたしの都合でベリーを傷つけて、それで満足してるだけの…ただの…」 (ベリフ)「………そんな、ヘタな気遣いはいいんですよ。メノウさんはどう思っているんですか、そう聞いてるんですよ」 (メノウ)「最低な奴だ…」 (ベリフ)「…メノウさんは、私を傷つけてそれで満足して、それからどうしたいんですか」 (ベリフ)「メノウさんの意思を、私はまだ聞いてません。『この事についてどう思ったのか』『これからどうしたいか』」 (メノウ)「…それだけ。…それで満足してた。いつも通りのベリーが隣にいて、それで笑っててくれれば、救われた気持ちになってた」 (ベリフ)「私は、一個も聞いてないんですよ…」 (メノウ)「…それが一番ベリーを傷つける。ってわかってたのに、だよ?」 (メノウ)「…最低じゃん」 (ベリフ)「………私の事を思ってやった事に、変わりはないでしょう。メノウさんはバカですから、間違いもミスも多いです。そんなもん、知ってます」 (ベリフ)「私が何度、メノウさんのミスを見て、フォローしてきたと思ってるんですか」 (ベリフ)「今回も、ただ結局、『どっちが傷つくか』『どっちがいいか』の選択を迫られていつも通りミスした。それ、だけです」 (メノウ)「話、聞いてた?」 (ベリフ)「聞いてますよ、コレ以上ないほど聞いてますよ」 (メノウ)「全然聞いてない。わかってない」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「どっちが傷付くか。どっちがいいか。そんなんわかってた」 (メノウ)「その結果、あたしは自分が助かるために、ベリーが一番傷付く方法を選んだ。ってだけ。さっきからそう言ってるじゃない」 (ベリフ)「……………」 (メノウ)「それで?あたしが相手の気持ちを考える?…何言ってんの…?」 自嘲的に (ベリフ)「………メノウさんは、私の事を傷つけたかったんです?」 (メノウ)「何とか言えって言われたって、何言われたって、反論なんかできないよ。……だって全部その通りだもん…」 (メノウ)「…そんなわけないじゃん」 (ベリフ)「………良かったです。さすがにそれを肯定されたら、私は本気で立ち直れないとこでした」 (メノウ)「でも似たようなもんでしょ。その方があたしが楽だからってだけで、ベリーをこんなに傷つけたんだから」 (メノウ)「……こんなん違うよ。…ただあたしがベリーを利用してるだけだよ」 (ベリフ)「…全然違いますよ。悪意を持って傷つけるのと、悪意がなくて傷つけるのと」 (ベリフ)「メノウさん、私にとっての最初の"親友"ってどんなヤツだったか知ってます?」 (メノウ)「……さあ」 (ベリフ)「当時、普通に村で過ごしてた頃、私に『ベリー』というアダ名をつけて、お互いにアダ名で呼び合って」 (ベリフ)「ずーっと一緒に笑っていた子だったんですけど」 (ベリフ)「…そいつが、私をかつて『裏切って』、牢獄でぶちこんでくれました」 (メノウ)「………」 夢のあれか…くらいに (ベリフ) 牢獄へ だ (タキン) ていうか、何気に牢獄云々聞いたのは初かな (ベリフ)「そんで牢獄で私に別れを告げる時に、いい笑顔で『まだわかんねぇのか、裏切られたんだよお前は』、そう言ってくれたんですよ」 (ベリフ)「………キツかったですね。あれが私が生まれて初めて浴びた悪意でしたから」 (メノウ)「………」 (ベリフ)「…メノウさんは、そういうつもりなかったんでしょう?傷つけたくて、より傷つける方法を選んだわけじゃないでしょう」 (ベリフ)「だから………もう、いいです。そんな"些細な事"は、赦します」 (メノウ)「……」 (ベリフ)「…だから、メノウさんはこれからどうしたいか、って聞いてるんです」 (メノウ)「………勝手に」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「…勝手に背負い込んで、あたしを信じてくれてる人を傷つけて…、…それで、赦されて…」 (メノウ)「…ベリーは、強いよね。…やっぱり強い…」 (メノウ)「……ごめん。…あたしは…」 (ベリフ)「…強くなんかないですよ。メノウさんが一言でも肯定してくれれば、私はすぐにボロボロです」 (メノウ)「…あたしは…。ごめん…」 (ベリフ)「それに、強いというなら、この強さはメノウさんが助けてくれたから、なんです。ですから、この位は借りを返した程度ですよ」 (メノウ)「……」 (ベリフ)「………何がごめんなのか、さっぱりわからないので。ちゃんと言葉にしてくれません?」 (メノウ)「………」 かぶりを振って 「……このまま、隣で支えられる自信、無い…」 (ベリフ)「そうですか。なるほど。そいつはまた、ギルティ+1ですね」 (メノウ)「……」 (ベリフ)「………じゃあ、ここまでの罪状をまとめて。判決を渡しましょうか、メノウさん」 (ベリフ)「…その自信が戻らない事には、メノウさんはボッロボロでしょう。全然"元通り"じゃないです、今回の事案はまだ続いてます」 (ベリフ)「ですので。…元通りになるまで、メノウさんを勝手に支えさせてもらいます。今度こそ」 (ベリフ)「つっらい判決が下りましたね。私、一度決めたことはそう曲げませんよ?」 (メノウ)「…………わかった」 辛そうな顔で返す (ベリフ)「…メノウさん。私は、メノウさんの負担ですか?」 (メノウ)「………正直に?」  (ベリフ)「正直にどうぞ」 (メノウ)「………」 少し躊躇ってから (メノウ)「……今は、ちょっと。……辛い、かな…」 (ベリフ)「………そうですか。…やっぱり、私もまだまだですねぇ」 (ベリフ)「…メノウさん、結局まだ、メノウさんがどうしたいのか聞いてないんですけど」 (メノウ)「悪いのは、あたしだから。……だから、ごめん」 (メノウ)「…言ったよ」 (ベリフ)「言いましたっけ?」 (メノウ)「……傍に居るのが辛い。…支えきれる自信が無い。……だから、ごめん、って…」 (ベリフ)「それって、『自分が今どうなのか』じゃないんです?」 (メノウ)「…………ッ」 ギリッと色々噛み締めたり握りしめたり (メノウ)「…………わかんないの?…わかんないフリしてるの…?」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「…そんなに、あたしを苦しめたいの…!?」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「ベリーの傍にいたくないって!ベリーともう一緒にいたくないって、そう言ってんの!あたしだって言いたくないよこんなことッ!!」 (ベリフ)「……………」 (メノウ)「だけど…!でも…!ベリーのこと傷つけたのは…あたしだから…!こんなんなるまで、良いように使ったのはあたしで…、そのあとベリーがどうなるかなんて考えてなくて…」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「それで、一方的に赦されて?ベリーの隣で親友面しろっていうの?無理に決まってるでしょ…!?」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「悪意がなければいい?…なわけないでしょ?罪悪感感じてればいいの?」 (ベリフ)「………」ひたすら聴き続けてる (メノウ)「あたしは!あたしのためにベリーを傷つけたの!そんな奴がベリーの親友を名乗っていいわけないでしょ!?そんなん、あたしが一番辛いよ!ずっとこんな罪悪感背負って隣にいろっていうの!?」 (メノウ)「……だから、ごめん。…あたし、こんな弱い奴だから。いつも親友親友って、口先だけで言ってるだけで、いざとなったら自分のために傷つけて」 (メノウ)「そして今度は、ベリーの隣に居るのが辛いから、って逃げようとしてる。そんな奴だから」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「……だから」 (メノウ)「……」 (ベリフ)「…だから、の先をメノウさんが言えるワケがないでしょうね」 (メノウ)「……言えっていうの?」 (ベリフ)「言ってもいいですけど?言えます?」 (メノウ)「……言える、よ」 (ベリフ)「では、どうぞ」 (メノウ)「………」 俯き、ぽつりぽつりと 「…もう、やめよ。ベリー。…あたし達、友達になんかなれてなかったんだよ…」 (ベリフ)「………」 (タキン) 言い切ったら、さらに下を向き、拳を握りしめる (ベリフ)「………本当に、それがメノウさんの本音ですか?…本音には違いないでしょうが」 (メノウ)「………」 黙ってうなずく (ベリフ)「………はぁー………」 (メノウ)「…もう、いいでしょ。…あたし、帰るね」 (ベリフ)「…断りますね」 (メノウ)「……これまで、傷つけて…。…ごめんなさい」 (メノウ)「……は?」 (ベリフ)「私がその程度で、『約束』を破るかと思ったら大間違いです」 (ベリフ)「………」強引に手を握る (メノウ)「……っ」 「…離して」 (ベリフ)「イヤですね。他ならない、メノウさんからの『約束』です」 (メノウ)「…そのあたしが、もうやめようって言ってんの…!」 (ベリフ)「約束は一人だけでするもんじゃないんですよ。二人の同意の上で成り立ってるんです」 (メノウ)「……っ」 (ベリフ)「………メノウさんが、ここまで言って。キツくないわけないです」 (ベリフ)「このまま帰したら、本気で自責の念でメノウさんはどうにかなっちゃいます。そんなもの、私は許しません」 (メノウ)「だからキツいって、辛いっつってんじゃん!もう離してよ!」 (ベリフ)「嫌に決まってるじゃないですか!!」 (メノウ)「なんで、なんでそう自分勝手なの!?」 (ベリフ)「メノウさんにだけは言われたくないですよ!!お互い様じゃないですか!!」 (メノウ)「今日最初っからそう!あたしのことなんかちっとも考えてないじゃない!」 (ベリフ)「それもお互い様ですね!!私の事を考えず、"自分のことばっかり考えてた"、って告白してましたよね!?」 (メノウ)「言ったよ!ええ言いましたよ!あたしは自分勝手でした!だから!?今ベリーのこと言ってんの!」 (メノウ)「言いたくないけど!こっちはずっとずっと、ずっと辛かったんだよ!?ベリーこと傷付けて逃げるくらいに!それがやっと解決したのに、何爆弾ぶつけてくれてんの!?」 (メノウ)「そりゃ傷つけたのはあたしだし、きっとすっごく辛かったんだと思うよ!?だからって、今あたしに、自分が不幸になった、だなんて言わなくていいじゃない!」 (ベリフ)「傷つけておいて逃げるとか許されるワケないじゃないですか!そんなうまい話ないんですよ!!」 (メノウ)「じゃあどーしろってのよ!罰としてベリーの隣にいろっつーの!?」 (ベリフ)「あーそうですよ!!罰ですよこれは!とんだ罰ゲームですよ!!」 (メノウ)「そんなん嫌に決まってるでしょ!?」 (タキン) やっと怒れた… (ベリフ)「嫌だろうがなんだろうが、メノウさんにも私の痛みを知ってもらいます!今まで散々持ち越した分、こっから知ってもらいます!」 (ベリフ)「大体私がどんだけ心配したか全然わかってない!わかってない上で逃げられてたまりますか!!」 (メノウ)「そんっなんっ…知るか!じゃあベリーに不幸ぶちまけりゃよかったの!?そりゃベリーは満足かもしれないけど、こっちは今よりずっとダメージでかかったんだよ!?」 (メノウ)「あたしにそんなダメージ負えっての!?そりゃ一方的で、ベリーは納得できなかったかもしれないし、傷付いたかもしれないけど、でもあたしなりに頼ってたんだからいいじゃない!」 (ベリフ)「それこそ知るか!!そんなものはただの結果論じゃないですか!!大体、私が傷ついた所でどうだっていいんでしょう!?」 (メノウ)「いいわけないからこんな怒鳴ってんだろーがっ!」 (ベリフ)「"これから友達やめる""もうやめる"って、それこそこれ以上に私を傷つける事でしょうが!!」 (メノウ)「だってしょうがないじゃない!一緒にいるのが辛いんだから!何?ツラそうな顔してるあたしが隣に居れば満足なの!?」 (ベリフ)「ああ満足ですね!!どんだけキツい事でしょうけど、辛い思いしてるメノウさんを知らずにのうのうと過ごすより何百倍もマシです!!」 (ベリフ) ちょっとそろそろブレてきやがったか (ベリフ) 言葉が (タキン) 眠気のせいなら仕方ないネ (ベリフ)「辛そうな思いしてるメノウさんを、ほっとけないんですよ!!そんなに辛いなら、分かち合って下さいよ!その原因の私を責めて下さいよ!!」 (ベリフ)「全部、私が悪いんですよッ!!気付くことも出来なかったからって、こんな風にメノウさんを傷つけて、八つ当たりじゃないですか!!」 (メノウ)「じゃー責めますよ!責めりゃいいんでしょ!?今その辛さの原因になってんのベリーだっつの!分かち合えって無理じゃないの!?」 (ベリフ)「いくらでも言って下さいよ!!それが私の罪であり、罰ですよ!!」 (メノウ)「ほんっとだよ!八つ当たりもいいとこだよ!もうあたし、良く考えたらなんでここまで言われなきゃならないのかわっかんないよ!」 (ベリフ)「決まってんじゃないですか!!私にとって、メノウさんが大切だからですよ!!」 (メノウ)「じゃあもっと気遣ってよ!全然違うよ!何言ってんの!?何、赦すって!?馬鹿じゃないの!?」 (ベリフ)「前に"友達同士でもケンカする"って言ったじゃないですか!!今まさにその時なんですよ!!」 (ベリフ)「じゃあ何ですか!私がメノウさんを赦さなきゃいいんですか!責めればいいんですか!!」 (メノウ)「傷付けたのあたしじゃん!一方的に赦そうとして、それであたしが満足すると思ってんの!?」 (メノウ)「今自分で言ったばっかじゃん!あたしが悪かったんだから責めればいいじゃん!なんで微妙なとこで自虐入ってたの!?」 (ベリフ)「私の事思われて、そんな事できてたまるかッ!!傷つけたくて傷つけたワケでもないのに、責められないんですよ私は!!」 (メノウ)「で、何、最後は一方的に赦します。って?ふざけんな!」 (ベリフ)「赦されてるんなら受け入れろって言ってんですよ!!何拒絶してくれてんですか!」 (メノウ)「こんだけ傷つけて、勝手に背負い込んで、その上で言うのは図々しいけど…!」 (メノウ)「あたしはベリーと対等でいたいのっ!!意味わかんないうちに赦されるとか、そんなんヤに決まってんでしょ!?」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「………」 (メノウ)「……なんか、…何だろうね。これ…」 (ベリフ)「………なんでしょうね………」 (メノウ)「………あ、座っていい?」 (ベリフ)「あ、どうぞ、隣座りますけどいいです?」 (メノウ)「…うん」 (ベリフ)「………なんかもう、まとめた感じ。…どっちも、自分を責めてません?」 (メノウ)「……あと相手も責めてるね」 (ベリフ)「…ですね」 (メノウ)「……でも、何かちょっとすっきりはした。…うん」 (ベリフ)「………私もです。ようやく、言いたいだけ言えた感じします」 (メノウ)「…ごめん、正直言えなかったけど、最初色々責められたとき、正直ムカついてた」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「…まあ、さっき思いっきりぶちまけたから、別に今更言うことじゃないけど…」 (メノウ)「……その、色々言って、ごめん」 (ベリフ)「…私もです。…私がやった事、勝手に赦されたら、そりゃ私だって許せそうにないです…」 (ベリフ)「…私が始めた事です。…本当に、ごめんなさい」 (メノウ)「……さっき、友達なんかじゃなかった。って言ったじゃん?」 (ベリフ)「…言いましたね。言われましたね」 (メノウ)「…こんなんガーって言える相手、多分、あたしにとって、ベリーだけだから」 (ベリフ)「………多分、私もです。………ここまで、ムキになること、そうないです」 (メノウ)「赦されたくなかった…ってのは、そういうトコかな。…ごめん、多分ムキになってた」 (ベリフ)「………」 (メノウ)「…だからその、親友とか、そういうのじゃなくていいから…。まだ、友達でいてほしい…かな、とか…」 ボソボソと (ベリフ)「………私は、一度言ったことをそう撤回しません」 (ベリフ)「…私は今でも、メノウさんを親友だって…『信じて』ます」 (ベリフ)「………だから、こんなに言うんです。だから、こんなにムキになったんです」 (メノウ)「…ころころ言い分変える蝙蝠ですんませんっしたー」 ぶー (ベリフ)「…別にいいですよ。メノウさんは、私ほど単純じゃないんです」 (メノウ)「そーかなぁ…。あたし、結構単純だと思ってるけど…」 (ベリフ)「私にとって、信じられるかどうか以外どうでもいい。…これ以外、私にはありません」 (ベリフ)「メノウさんは、色々考えてるじゃないですか。自分のことも、相手の事も、いろんな事も、しかもその度滅茶苦茶抱えて考えこんで」 (メノウ)「……むぅ」 (ベリフ)「…こっちこそ、一つ頼みがあるんです、けど」 (メノウ)「……何?」 (ベリフ)「…ここまでひっどい事言っておいて、さんざん傷つけて、苦しめておいて、なんですけど」 (ベリフ)「…まだ、傍にいていいです?」 (メノウ)「…さっきは辛かったけど。…なんだろ、吐き出し切ったからかな」 (メノウ)「…ちょうど隣くらいが、心地いいや」 控えめに手を握ろうと (ベリフ)「…やっぱ、抱え込みすぎって、ダメですね…ろくなことないです」しっかり握って (メノウ)「……ごめんね。一人で悩んで」 (メノウ) ことっと、肩に頭載せ (ベリフ)「………責めるとして、赦さないとしたら、それだけですね」