テラスティア大陸と新大陸を繋ぐゲートが発見された。 ゲートに掘られていた神紀文明語からヤーガイムと名づけられたその大陸へ ルキスラ・ダーレスブルグ・フェンディルの3国が連合軍を組み、ゲートの向こう側にあった妖魔の王国を陥落し、 開拓都市ヤーガイムを設立した。 それにともなって3国の積極的な開拓政策としてヤーガイムに様々な形で開拓者たちが移りすんだ。 そして俺たちが所属するルキスラの冒険者の宿"竜の篭"は新たにヤーガイム店を ピースメーカー村の鈴の鱗は所属する蛮族の冒険者を引き連れて、竜の篭ヤーガイム店へ移ることを選んだ。 竜の篭に所属していた冒険者たちは、ルキスラに残る者と新大陸へ移る者に別れた。 俺たち兄妹もルキスラに残るか、新大陸へ移るか・・・・ 妹がどちらを選択してもいように心を決め、その上で話をしてみれば あっさりと彼女は新大陸へ移ることを選んだ。 あの事件以来生まれた「人間・人族に対するトラウマ」を考えれば必然の結果だったと思う。 竜の篭ヤーガイム店へ二人で訪れた時、ロディやナシュトはいなかったが留守番のコボルトから 新たに登録をするように言われた。 どうも、新店舗を出すにあたって改めて整理をしたいらしい。 受け取った登録用紙を見ると以前よりも見やすく、わかりやすくなっていた。 二人並んで座り、必要事項を書き込んで行く。 俺は、種族の項目に以前偽っていたように「人間」ではなく「ナイトメア」と書くことにした。 正直……今でも少し、自分がナイトメアだと明かすことに抵抗を感じる。 でも、ここをミリィが笑って過ごせる場所にするために自分が持ってる力を出し切りたいとも思う。 そんなことを考えながら、書き終えた書類をコボルトに渡した。 右上に161のスタンプが押された。 席に戻るとミリィはまだ書類と格闘してるようだった。 多分、丁寧に書いてるせいだろう。 二人きりの時は甘えてくるせいか、「お兄ちゃんかいてー」とねだってくるけれど、 こうしてミリィ自身が書いてるのを見ると、俺が書くよりも字が綺麗だよなと思ってしまう。 ふとミリィの書いてる登録用紙に違和感を感じた。 「おんなの……こ?」 そう、性別の項目に書かれていた。 そして、思わずつぶやいてしまった一言にミリィが即座に反応する。 「私、女の子ですから」 周囲には俺たちだけじゃなく他の冒険者も何名かたむろしてるためか、人前モードでそう答えると 書きあがった書類をカウンターへと持っていく。 俺の後に登録書類を提出した冒険者はいないみたいだから、今度もまた連番で登録されるのだろう。 ミリィが俺から十分離れたのを確認してそっとため息をついた。 「(女の子というより、女性なんだけどな……)」 。