金魚に恋を
シーン0 「出会ってしまった」

 

お祭り

タロウとサキが歩いてる

タロウあんまり乗り気じゃない

サキすっごく楽しそう

ずっと歩くと金魚すくいがある

そこで金魚と衝撃的な出会いをする。

 

 

タイトル


シーン1「運命に走る男」

 

蝉の声

狭い部屋

サキはスイカを切って運んで来る

タロウは金魚に餌をやっている

 

サキ 「夏だねえ」

タロウ「うん」

サキ 「またお祭り行こうね。今度はもっと大きい所、行きたいな」

タロウ「うん」

サキ 「あっついねえ」

 

蝉の声

 

タロウ「どれくらいだっけ」

サキ 「なにが」

 

二人が同棲してるカット(分かり易い、歯ブラシとか、写真)

 

タロウ「うん、」

サキ 「もうすぐ半年じゃない?ふふ」

タロウ「…ねえ」

 

蝉の声

窓際の金魚

 

線路沿いを歩くタロウ

タロウ「8月14日、約半年付き合っていた彼女と別れた。理由は」

    (ナレーション)

 

さっきの部屋のカット

 

タロウ金魚袋を見せる

サキ泣きそうな顔になって物を投げる

 

電車の踏切

 

タロウ「日々がつまらないのは、たった一個が見つからなかったから。見つけ

    たから俺はこうするべきだ。(ナレーション)

 

電車横切る


シーン2「探し物はなんですか?」

 

タロウ走る

走る

走る

 

街角のベンチ(石段)にもう無理と言った感じで腰を下ろす。

 

テツ傘をさして反対方向から歩いて来る。

 

テツ「何か、探し物ですか?」

 

タロウ不審な目で見る。

 

テツ「春の花は春にだけ咲くから、そこに意味があるんです。季節は目に 

   見えないから、その間だけは絶対だと思いました。」

タロウ「…」

テツ「でも花は一年中咲くんだ。理解したら笑ってました。」

タロウ「ふうん」

テツ「でも一回勘違いしないと分からないんですよね」

 

沈黙

横からのカット

テツ、パスケース(写真入れ?)を渡す。

 

タロウ「なに?」

テツ「僕の彼女。かわいいでしょ。」

タロウ「ふん」

テツ「あげる」

 

テツ画面からアウト

タロウ、パスケースまじまじと見てる

パスケースに何かに気付く

 

『あと少し』

 

タロウまた走り出す。

音楽 明るい切ない音楽

 

走ってるカットと

お祭りのカットが少しずつ混ざっていく

 

 

タロウ一気に階段を登る

金魚をすくうカット

階段を上がる

 

ドアを一気に開ける

 

音楽ストップ

その音に振り向くリンダ

 

タロウ「……呼んだ?」

リンダ「……ずっと!」

 

タロウ飛び込んでリンダを抱きしめる

金魚袋の金魚

繋いだ手

 

 

 

 

 

 

 

シーン3「やっと見つけた」

 

沈黙

 

タロウ「ずっと探した」

リンダ「私も」

タロウ「どうしてだろう」

リンダ「運命、だからだよ」

タロウ「口に出したら安っぽいね」

 

二人でくすくす笑う

 

タロウ立ち上がる

タロウ「…はー。でも、本当にどうしてかな。縁日で君を見つけて、体中全部

    満たされた気分になったよ。」

   「五千円も使っちゃったけど」

リンダ 笑

タロウ「笑わないでよ。それ位捕まえなきゃって思ったんだ」

リンダ「つまりはそういう事でしょ。」

タロウ「おかしいのかな、俺たち」

リンダ「どうして?」

タロウ「だって」

 

金魚

 

リンダ「うん」

タロウ「君は…いるの?」

リンダ「いるよ、ちっちゃな金魚鉢の中に」

タロウ「そうじゃなくて」

 

リンダ、タロウを睨む

 

サキの部屋

 

サキ部屋の中央で泣きながら背中を向けて正座

タロウ玄関で靴をはきながら

 

サキ「…どうしても行くの?」

タロウ「やっと見つけたんだよ」

サキ「あたしは?」

タロウ「さあ」

 

タロウ「本当は異常だって思ってるのかもしれないんだ」

 

サキ「…あんたは頭がおかしくなったのよ」

タロウ「ちがう。俺は見つけたんだよ」

サキ「おかしくなったのよ!」

タロウ「…」

 

部屋を出て行く

 

リンダ「満ち満ちる心と体疑うの?」

タロウ「そういう訳じゃないけど…」

リンダ「これは運命だったはずでしょ?」

タロウ「そう…」

リンダ「あなたは…望む方角へただ歩く事、難しいのね。」

タロウ「…うん」

リンダ「唯形が違うだけなのに」

 

沈黙

 

リンダ「…ねえ知ってる?」

タロウ「なに?」

リンダ「夜店の金魚はあなた程長くは生きられないの。」
シーン4「不本意なお別れ」

 

リンダ「一緒に…くる?」

手を差し出す。

 

タロウちょっと躊躇して手を差し出す

 

サキの部屋

サキがタロウの腕に抱きつく

しがみついたまま泣きそうな顔で首を横に振る

タロウ困惑の表情

 

 

タロウ正面のカット

タロウ差し出した手をゆっくり止める(横から)

 

リンダ「それが答えね?」

タロウ「…ちがう」

リンダ「違わないわ。それも運命。恥じることじゃない」

 

タロウどうして良いのかわからない様にゆっくり手を引っ込める

 

リンダ「そこに絶対があったとして、その絶対に全ての選択を委ねても、

    そうしなくても、それでも私たちは会わなくてはいけなかった。」

タロウ「…」

リンダ「それだけの事よ。」

 

沈黙

 

リンダ「いくね」

タロウ「…」

 

タロウ「あのさ…本当に」

リンダ「うん、それだけは本当だったんでしょう?」

タロウ「うん」

リンダ「ありがとう」

タロウ「…俺は!」

 

空の金魚鉢

タロウのカット

 

空の金魚鉢とタロウの足(足下から)

 

タロウ金魚鉢の前に崩れ落ちる

 

暗転

タロウ「ごめんね」

 

電車が通り過ぎるカット

 


シーン5「そして僕は嘘をつく」

 

踏切

タロウの前に電車が横切る

向かい側サキが立っている

タロウ歩み寄る

タロウ「…」

サキ「…別れるんじゃなかったの?」

タロウ「…」

サキ「ねえ、ねえったら!!」

 

タロウ完全にサキの前に立つ

 

タロウ「…嘘だよ」

 

空の金魚袋

 

 

エンド