◇2 「デート」  ◇2-1 「変な夢を見たな……。」  寝起きざまにふと口に出た。しかし改めてどんな夢だったかと思い返してみると記憶があやふやになっている。  いつも通りの気だるい寝起き眼を擦りながら、目覚まし時計を手に取ると針は11時丁度。  今からでも準備して予備校へ出向けば、午後の授業には間に合うだろうか。  流石にいい加減サボり続けるわけにもいかず、半ば嫌々ながらもとしあきは布団から体を起こした。  今日の午後は何の授業だったかな、担当講師は口煩い奴じゃなければいいな、  まだ上手く回転していない頭を掻きながら、としあきは寝巻きを脱ぎ捨てバスルームへ足を運んだ。  蛇口を捻りシャワーを浴び、シャンプーボトルに手を伸ばしたあたりで不思議な違和感を覚える。  まずシャンプーやボディソープのボトルの配置が、普段自分が使っているときと異なっていること。  そして何より、そのシャンプーボトルが何故か二本並んでいること。 「あれ? いつ新しいの開けたっけ……?」  その二本のシャンプーボトルをそれぞれ手にとって見ると、片方はずしりとほぼ満タンに入っているのに対し  もう片方は軽く殆ど空に近い状態であることがわかる。  小さく首を捻ってみたが、大したことでもないだろうとさして深く考えることもなくそのまま頭を洗い出した。  ひとしきりシャワーを浴び、としあきはバスタオルで体を拭きながら部屋へ戻る。  すると先ほどは寝起きで気づかなかったが、見慣れたはずの部屋に再び言い知れぬ違和感を覚えた。  テーブルの上に置かれたペットボトルのジュースとグラスが二本。  その傍らに転がっているピンクの兎のぬいぐるみと、壁に立てかけられた見慣れぬトラベルバック。 「兎の……バクラヴァ? ……そうだ、メイジ!!」  ◇2-2