カンカンカン 子気味良く鉄の階段を駆け上がる音が響く 制服のスカートがひらひらと風に揺れている タタタ、チャリ、カチャカチャ 廊下を走りドアの前に立ち、ポケットから鍵を取り出す 期待に胸が弾み手が思うように動かない カチャッ 少し手惑い、鍵を開ける その音に少女の顔が笑みで綻ぶ *** 木造の、見かけからしてそう新しくないアパート そのドアを勢い良く開け、部屋の中に入ると中に向かって声を張り上げる 「お待たせー!」 鞄を手に持ったままいそいそと靴を脱ぎ、部屋の中に入る まるでここが自分の部屋であるかのように慣れた動作で居間に上がる 「・・・」 時が止まった そこには、期待していた人の姿は無く、代わりにキャミソールにパンツ一丁の格好で胡坐をかき、 座卓の上の煎餅をポリポリと食べているだらしない金髪の少女がいるだけだった 外人? 小学生くらい? それが何でこんな所に 「誰よ貴方」 当然の言葉だった。しかし 「誰アンタ」 相手の少女もほぼ同時にこちらに向かって言葉を投げてきた *** 「貴方こそ何よ。ここはお兄ちゃんの部屋よ! 貴方ここで何してるのよ!」 「お兄ちゃん・・・どいてソイツ殺せない?」 「私はネットゲーなんてやらないしストーカーでも無いわよ!」 「そう、じゃあその鍵はとしあきから奪ったの? それとも留守の間にベランダをよじ登って二階の窓をガムテー プで固めてドライバーで割って部屋の中に進入して持ち出したカギで合鍵を作ったの?」 「お兄ちゃんから貰ったの! だいたい何よその変に具体的な説明は」 「私がそうしたから、アンタもそうしたのかなと思っただけよ」 「・・・ど、泥棒!」 「人聞きの悪いこと言わないで。としあきが私に鍵を預けるのを忘れただけよ」 部屋の中で下着姿でくつろいでいる少女は、悪びれずそう言う 「だいたい何よ貴方、随分図々しいけど」 「私? そうね、としあきのご主人様って所かしら」 「!??」 *** そこにタイミング悪くとしあきが帰ってきた 「ただいま~」 何も知らずに鼻歌交じりで靴を脱いでいる しかし部屋の中の険悪な空気に気づき、顔をあげる 「ひ、ひぃ、ごめんなさい」 なぜか理由はわからないが謝っていた 心の中で、土下座したほうがいいのだろうか、とさえ思っていた 「お兄ちゃん、この図々しい子、誰?」 「としあき、この態度のデカイ女、誰だ?」 *** 態度のデカイ女・・・そう言われて頭に血が上った 「わ、私はお兄ちゃんに初めてを奪ってもらったんだから! 貴方とは違うのよ!」 「うわーうわーうわー聞こえない何も聞こえない」 としあきが慌てて両手で空中をバタバタとさせる 金髪の少女は顎を少し傾けて睨むと口の端を歪めて笑った 「ふーん、私はとしあきの処女を奪ったぞ」 「あーあーあー聞こえない聞こえない」 としあきは自分の耳に両手を当てて大声をあげる *** 「お兄ちゃん・・・妹を犯しただけじゃ飽き足りず、こんな外人の女の子を部屋に連れ込んであんな事やこんな事までして・ ・・手遅れになる前に自首しよ? ね? 私はいつまでも待ってるから」 「だーかーらー、こいつの話を聞いてなかったのかよ! 俺は被害者! こいつが勝手に俺の部屋に居座ってるんだよ!  第一お前が俺の初めてを無理やり奪ったんじゃないか、人聞きの悪い」 「あの夜のこと、私忘れないよ・・・お兄ちゃんが私の中に入ってきた夜・・・熱くて固い物が私の」 「いや、頼むからここでそういう事を語らないでくれ。ほんとお願いします」 「えー、私たちの愛の物語の第三章なのにぃ」 「・・・勘弁してくれぇ」 「フフフ、お前も苦労してるようだな」 二人のことを楽しそうに見ていたメイジが意地悪そうな口調で言う 「お前が言うなお前が! 何で俺ばっかりいつもこんな目に合うんだ・・・」 胃から出血しそうな勢いで落ち込む (未完)