前回までのあらすじ  ……今気付いたんだけど、ふたロリが男の子を責めるっておかしくないか? 「メイジーごはん出来たよー」 「はーい。あ、今日の晩御飯はオムライスですか、よしよし、いいこですとしあき」 「……頭撫でてる暇があったら、早く席について」 「最後にこれにホワイトミルクを」 「今日は普通に食べましょう」 「としあきの真人間」 「いや、それ悪口になってないよ」 「そんな。真性マゾのとしあきは、変態とかクソ豚とかいわれないと、興奮しないはずです!」 「……もういいから早く食べなさい、冷めちゃうから」  スプーンを動かして食べるメイジととしあき。他愛のない会話をしていく。 *********************************************************************** 「そういえばとしあき、学校の方にはいかないんですか?  通信教育じゃやっぱり限界がありますし」 「……正直、ここで学園編とか入ると、新しい人達もでてくるし  例えばこの話がSSになってたりすると、書く人がめんどくさくなるよね?」 「よくわかりませんが、よくわかりました。つまりいつものように脈絡なくエロエロな事をすれば」 「でも正直、ネタ切れって感じだよね。性的な意味で」 「そうですね……ちょっとイメクラでもしてみますか?  あ、そうです。我が祖国の英雄をみならって、相撲部屋プレイとか」 「色々な意味でお断りするよ」  エロもなしオチもなし。 ***********************************************************************  相撲の名門武留画李亜部屋に弟子入りし、この部屋の横綱明治山の付き人になったとしあき。  今日の一番も見事勝利をおさめて、懸賞金片手に土俵を降りる。 「ごっちゃんです! 横綱は体がちっちゃいのに、最早敵なしだね」 「無論です。これも全て我が祖国の英雄が居てくれたおかげです、今日もちゃんこをご馳走になりにいきましょう」 「相撲界ではなんでもちゃんこって言うんだよね横綱、焼肉でしょうか、寿司でしょうか」 「……それでとしあき川、一番とったあとで火照ってしまいました。私のちゃんこも召し上がりなさい」 「ええ! そんなこんな楽屋でアッー! 横綱にのぼりつめた腰の動きが、あん! ああん!」  死んでしまえばいいのに。(俺が) ----------------------------------------------------------------------------------- ----------------------------------------------------------------------------------- 「第一回! ブルガリアヨーグルト料理大会インとしあきの家!」 「いえーい(投げやり)」 「む、テンションが低いですねとしあき。もう少し盛り上げる気はないんですか」 「だってどうせオチ見えているもん。どうせ僕に、メイジがちんちんつっこんで  本場の絞りたてはどうですか? って言って終りでしょう?」 「まぁそれもそうですが、今回は対戦相手として、ブルガリアからノヴというショタを呼んでいます」 「こんな話に適当な展開で他の話じゃ重要な登場人物だしちゃった!」 「あ、あの初めまして……、としあきさんの事はメイジ姉様から色々聞いてます」 「ノブは私の組織にいた頃のオナホールでした。としあき程ではないですが、エロエロです」 「メイジ姉様ったらとっても激しいんですもの……、オクトやジュンとかも体壊しちゃったし」 「……色々な人が、適当に紹介されていってる」  結局勝利を勝ち取ったのは、メイジとノブの合作料理、ミックスヨーグルトだった。 ----------------------------------------------------------------------------------- -----------------------------------------------------------------------------------  双葉メイジの組織は、麻薬を取り扱ったり、血なまぐさい事件を起こしてはいない。  これには色々事情があるように見せかけて、バトルシーンやラブシーンを書くより、エロ書いた方が楽なだけである。 だが私は謝らない。  なので双葉メイジが所属、というかメイジが造った組織は、うるさい! そんな事よりふたなりセックスだ!  という目的だけだった。でもメイジがあんまりにも性豪過ぎて、組織はほぼ崩壊した。そこでなぜか、ちんぽの乾きを癒す為、 日本にいる14歳としあきの元へ。  引き篭もりだった彼も、いまやすっかり彼女のオナホール人形。外に出る事も、露出プレイのおかげで出来るようになりました。  話が広がると嫌なので、学校にもいかないとしあきと同棲する、としあきとメイジのヨーグルト塗れのストーリー が、自分の書いている話です。  なんでこんな特殊性癖な話に、需要があるのか良く解らない。 ------------------------------------------------------------------------------------- -------------------------------------------------------------------------------------  穴が二つあれば、商品価値がでるものですね。下半身丸出しで縛られ、身動きとれない気分はどうですか?  ……何を苦しそうな声を出しているんですか? 玩具は、人を喜ばす声をあげるべきでしょう。  こうやって一日中、アナルバイブをつっこまれても、嬉しいです、最高です、ってよがりなさい。  ああ忘れてました。I-podで、最初に犯した時の貴方の声や、別の子の淫語を延々流し続けていたんですね。今外 してあげます。  聞こえますか、私の声が? 返事の変わりにちんぽを動かしなさい。……まるで犬の尻尾ですね。  どうやら夢でもケツを犯されたらしいですね。そのちんぽから解ります。情けない。その年齢でお漏らしするなんて。  さっきから文句を言って、貴方が望んだ事でしょう? 黙りなさい。ノブ、この玩具の口に貴方のちんこを。一週 間洗ってませんから、吐き気がするかもしれませんが、時期にやみつきになります。  それじゃアナルバイブの代わりに、私のちんこをいれましょう。……泣いても意味がないですよ、だって貴方は玩具なんですから。 ---------------------------------------------------------------------------------------- ----------------------------------------------------------------------------------------  こんばんわ、としあきです。不用意な一言で、僕が二人に玩具扱いされて、もう一週間が経ちました……。  目隠しをされ、耳には今までの、僕とメイジとのエッチを録音した様子を流されたり、たまに目隠しを外されても、ビデオがあって女装姿の僕がうつっています。  こんなひどい事をされても、反論は許されません。僕は玩具なんです。  メイジ様とノヴ様の、排泄物を処理する、便器でしかないのです……。 「……んんんー!」 「今おちんちんつっこでますけど、出すのは、としあきさんの餌のミルクじゃなくて、おしっこですよ。残念でしたね」 「大丈夫ですノヴ。この前としあきは、私のおしっこも喜んで飲んでましたから」 「へー、本当に変態なんですね」  楽しげに談笑しながら、ノヴ様は、僕の口に熱い小便を放ち始めました。  口の中が、ピリピリと刺激されます。顔をしかめながら、なんとか飲み干しました。……最近の食事は、二人のおちんちんから出るものと、栄養剤だけです。  玩具の僕に、人間らしい食事などもったいないです。 「あ、性欲が溜まりました。尻に出さなければ」 「お姉様ったら、相変わらず性豪なんですから」 -------------------------------------------------------------------------------------------  近づいてくる気配だけがします。何時、ずぶっといれられるか解りません。  今の僕にとって、恐怖ですら快感の一種です。おしっこをしたあと、今度は精液を出そうと僕の口をおかすノヴ様 のちんぽをくわえた口から、涎をたらしながら、メイジさまのちんぽを待ちます……。……ああ! 「きゅうきゅう締め付けてきます。やっぱり、天然のオナホは違いますね」 「僕のお尻よりきもちいいですよね、排泄器官じゃなくて、性器ですね」 「ま、全くです……もうだしそう……だします……! ……はああう!」  びゅるびゅる出される精液、僕もところてんでだしちゃいます。……けど、一回だけで許してくれません。  一度出したヨーグルトを、ローションにして、すぐにまた腰が動きます。  休む事なんて許されません。僕は二人の性玩具なんです……。ただちんこの為だけに存在しているだけなんです……。 --------------------------------------------------------------------------------------------- 『ジリリリリリリリリリリリリ』 「……あ、今目覚まし鳴ったよね? メイジー、一週間たったから終りだよ。目隠し外して  ……あ、で、でもお尻は犯し続けて……セックスきもちいい」 「はい、このイメプレは最高でした。とっても興奮しましたとしあき。い、今も興奮して……んぅ……!」 「あー! ……あついミルクが、いっぱい。……それじゃメイジ、次は君が性玩具になる番ね、……ぼ、僕の、ア ナルバイブに」  あっというまにラブラブに戻る二人をみて、ノヴはついていけないと思った。(性的な意味で) ----------------------------------------------------------------------------------------- -----------------------------------------------------------------------------------------  何十回どころか何百回と犯された14歳としあきのアナル、  すっかりそれにはまっているノヴ君が、腰を振りながらとしあきに尋ねる。 「うん……としあきさんは、メイジさんで童貞を……捨てたいと思わないんですか……?」 「え? ……あん! ぼ、僕が、メイジに入れる? そんな事考えた事も……」 「やっぱり普通の男の子と違いますね……イク!」  メイジは劣る勢いだが、ブルガリアヨーグルトをそそがれるとしあき。  後始末をしながら、ノヴに言われた事について考える。 「……僕は、メイジに犯されているからいいわけで  オナホじゃなくなった僕なんか、メイジに見捨てられちゃうよ」 「どう考えたらそういう結論になるんですか、としあきさん」 「それにー、お尻犯された方がきっときもちいいしー」  真っ赤な顔で恥らう年上の男の子を見て、ノヴは、この人駄目だと思った。 --------------------------------------------------------------------------------- --------------------------------------------------------------------------------- 「おナスにキュウリににんじん。今日の晩御飯はそろいましたね。性的な意味で」  はーこだてー、と鼻歌を歌いながら歩いているメイジ。  時々だが、メイジもスーパーに買い物へいくようになった。  補導される心配とか、そういう事はつっこんじゃいけない。 「……あら?」  帰り道の途中で、黒服の女性を見つけた。怪しい。  そもそもこんな住宅街で、黒服を着て徘徊してるなんて、どんな神経をしてるのだろう。  自分には関係ない。そう思って通り過ぎた。  だがその次の瞬間、メイジは背後から何かをかがされて、何も出来ず気絶した。 「遅いねメイジ。今日の晩御飯は野菜とかいってたけど。性的な意味で」 「僕ちょっと探してきましょうか?」  ノヴが立ち上がった瞬間、チャイムが鳴る。amazonかと思い扉をあけた。 -------------------------------------------------------------------------  立っていたのは黒服の女性だった。 「……誰? メイジとノヴ君の関係者?」 「なんで僕達が、こんな怪しい人達の関係者なんですか」 「どう考えても、君たちくらいしか、関係者は居ないと思うんだけど」  銃や麻薬の事かなと思って、黒服と話そうとするとしあき。  だが、先に話された。 「メイジは私達組織が、近くのホテルまで拉致しました」  なんだって。  まさか、今更他のSSあきの人達にならって、シリアス展開にもっていこうなんて、 「というわけで、あの性豪のメイジさんもメロメロだという  貴方のアナルを貸しに遊びに来てくださいませんか?」 「結局そんなオチ!?」  けして、途中まで書いてめんどくさくなったという訳じゃない。嘘です、ごめんなさい。 -------------------------------------------------------------------------- -------------------------------------------------------------------------- >チンチンがおっきしたっ! 「今日はチンシチューを」 「やめて想像しただけでちんちんが縮むからやめて」 -------------------------------------------------- --------------------------------------------------  それが少年にとっての日常だった。 「全く今日もそんなにおねだりして。親戚の顔が見たいくらいです」 「今目の前に居るんですけど、むぐ」 「文句を言う前にくわえてください。私のかわいい、年上の性奴隷さん」  かけがえの無い、日常だった。 「メイジー、ご飯できたよ。……って、お願いだから何かはいてよ」 「どうしてですか? としあきの大好物でしょう? デザートに準備してるのに」 「……デザートじゃなく、今すぐ食べたくなるから言ってるんじゃないか」  日常は――普段、失いたくないと思う物じゃない。 「としあき、今日はでかけましょう」 「露出調教じゃなくて?」  日常を――失いたくないと思うのは、何時だって、 「今日は、デートです」  失った後だ。 ------------------------------------------------------------- 「組織は、私の遊びの為に作ったのは本当です」  漫画とかだと、人間の切断面って奴は、だいたい黒一色で塗りつぶされていて、  そういう死体が、どれくらい本当は残酷なのかは伝わっていない。 「でも、流石に――エロい事する為だけっていうのは、嘘ですよ」  死体は、現実の教科書だ。  彼女の横に、転がっているその体は、  知りたくない事も、少年に教えて見せた。 「武器から果物、民芸品、そして人間。売買できる物はなんだって取り扱いました」  現実の味を。 「十二人の中、たった一人の裏切り者と呼ばれても」  ノヴの顔面は半分壊れていた。  彼女の銃で、呆気なく、崩れていた。  としあきは、身体中から言葉を失っていた。 ------------------------------------------------------------ 「……日本は隠れ家だったんですよ。ほとぼりが冷めるまでの」  メイジは相変わらず微笑を絶やさず、昨日と同じようにとしあきに話しかける。  彼女の右手には、煙草のように硝煙を吐き出す銃がぶら下がり、  そして左手には、オナホが内蔵されている人形。 「しかしこうやって、元メンバーに居場所を嗅ぎ付けられたら、新たな組織を作らなければ」 「……ノヴは、ノヴ君は、皆は」  叫んでいるつもりだった。けれど、声は擦れてしかでてこない。  責めるつもりで叫んでいるはずなのに、ただの問いにしかなっていない。 「皆は、メイジを信じていた! 麻薬売買なんて、人身売買なんてしないって!」 「そうですね――自分達が売り物だと気付かないくらいでしたから」 「メイジ」 「としあき。貴方も私の売り物です」  彼女は銃口を、としあきに向ける。 「全てに気付き、私に逆らうノヴの性人形としての価値をなくした今、貴方だけは失いません」 ------------------------------------------------------------------  失わなければ気付けないなんて、人間はなんて馬鹿なんだろう。 「……メイジ、僕は」 「来なさいとしあき。私の新しい組織。二人だけの組織へ。貴方を買ってあげます」 「僕は」  失ってから、後悔したって何の意味もないはずなのに、 「そこで永遠に、私の為に引き篭もるのです。あらゆる物を売って得た金で  一生、性奴隷として使ってあげますから。……貴方が老いて使い物にならなくなるまで」  どうして人は悲しがるのか。感傷なんて、意味が無いのに。  どうして、 「……どうして」  少年は、 「泣いているのですか?」  理由は、簡単過ぎた。 「君が、好きだから」 -------------------------------------------------------------  こんな悲しい事はやめてほしい。だけど、もう彼女はやってしまっている。  少年に力があれば、殴ってでも、凶行を止めさせる事が出来ただろうか。  無理だ。少年は、弱い存在だ。  他人が自分を犯すんじゃないかと思い、家に引き篭もった存在。  それでいて、犯される事で自分の存在意義を確認できた存在に、  人を、どうにかする力があっても、その力を行使する意思なんて無い。  だから、泣くだけしか出来なかった。  無様な告白をしながら、泣いて、だだをこねるようにお願いするしかなかった。 「やめて」と。  彼女は、としあきの顔に銃を突きつけた。 「……ここで、お尻をふって、ちんぽくださいとお願いするくらい淫乱だったら  とても嬉しかったんですけどね。でも駄目です。オナホが逆らうなんて許さない」  自分の事を、本当に玩具としか考えていない彼女を見上げる少年。 「廃棄します。としあき」 -------------------------------------------------------------  彼女が引き金を引いた瞬間――  死体が甦り、「ノヴ!」銃口を逸らした。  立ち上がった少年は、腕に下から頭突きをかました。壊れた顔からぼたぼたと、血と肉が落ちる。  メイジが撃ったのはノヴの顔の表面。性奴隷として、使い物にならなくするためだけ。 「逃げ、けぇッ!?」  喋っただけで激痛が奔るのだろう。悶絶とした様子でノヴは、メイジを抑える。  逃げろと言われたとしあき、ドアへ身を向ける。  ……外へ、出れる体になっている。そう、彼女に調教されている。  性奴隷としての日々が、奴隷の鎖を解く力になる日が来るなんて思いもしなかった。  奴隷を、辞めたいなんて思う事が訪れるなんて。  ずっと少女の奴隷であれたらいいなって――だけど、  少年は、泣きじゃくりながら、靴も履かず外へ逃げ出した。  空は晴れていて、風は心地よくて、だけど少年にとっては非日常だった。  彼女が隣に居ない事は、残酷な、非日常だった。 ---------------------------------------------------------------  失ってから初めて気付く。  そして、気付く事にも、あまり意味がない。  創造主が居るとしたら、人間程、運命に対し不都合に作られた存在は無い。  ただ運命の奴隷であれたらいいのに。  選択の余地がない、命令される奴隷であればいいのに。 「貴方が」  少女は、心から願う。 「人でなければいいのに」  十一人の裏切り者が、ノヴを救いに部屋になだれ込み始めた。 ---------------------------------------------------------------- ---------------------------------------------------------------- 「顔が崩れたノヴ先輩の変わりにシュシュッと参上! その名もニューノヴ!」 「いや、十人の裏切り者と書き違えた事を、そんなネタで誤魔化すの無理ですから」 「逆上がりできるようになりました!」 「そんな微妙なバージョンアップいりませんから」 --------------------------------------------------------------- ---------------------------------------------------------------  次のニュースです。  炎の魔の手により被害にあったのは、一人暮らしの、登校拒否の少年でした。  本日未明……町のアパートで起きた、突然のガス爆発は、  木造アパートを全焼させました。この事により、双葉としあき君14歳らしき遺体が発見。  少年の両親は既に亡くなっており、親戚とも絶縁状態にあり、  遺体の引き取り手が無いという事です。  14歳の少年の存在について知っているのは、大家の方と宅配業者、  そしてカウンセラーだけだったという、孤独であり続けた少年だったという事です。  焼け跡から見つかったのは、大量の漫画やコミック、ゲーム等、  現代の若者を象徴するような品々ばかりで、独特の生活を浮き彫りにしています。  最近になって外へ出かける姿が、何度か目撃されており、  彼が更生の道へ歩き出した事を喜んでいたのに、とはカウンセラーの弁です。  14歳の少年、その一人暮らしが全て燃えてしまった事により、現れた孤独。  現代が生んだ歪な今回の事件を、後日、総力取材したいと思います。 ----------------------------------------------------------------  逃げた先で、電気屋で、そのニュースを見た時、  何も解っていないと思った。孤独だったって? 現代の象徴? この僕が?  だけど、ニュースなんてそんなものかと、笑った覚えがある。  顔写真も残っていないのは幸いだった。自分の顔を隠す必要はなかった。  ある事はあるけれど、メイジの携帯電話にしか残ってない。  あんないやらしい顔を、テレビに使えるはずなんてないだろう。そう、あの時は思った。  ……半年が経っている。  あの日から三日後、靴屋の店頭、バケツの中に放り込まれていた五百円の靴を盗んだ。  どうせ捨て値で売ってるのなら、自分に捨てたっていいだろうと、  そんな自分勝手な事を思う程、精神は荒廃していた。  補導員と呼ばれる人達がうるさくて、自分を警察に連れて行こうとするので、  そういう人達が居ない場所を選ぶようになった。  そういう人達も近寄らない、腐った臭いのする町で、僕は働き始めた。  メイジがそうするつもりだったように、僕は、自分の体を売り始めた。  ……数ヶ月経って、何も解っていない事に気付いた。 -----------------------------------------------------------------------  僕はメイジの事を、一つも解っていなかった。  ――私の性欲と釣り合うのは、貴方が初めてなんですよ  あの言葉も、心の底から受け止めていた訳じゃなかった。  ――としあきは私専用のオナホなんですから  思い知る。  ――としあき  自分の身で。  体が疼いてしょうがなくて、何をされても満足しなくて。  今もこうやって、男に体を貪ってもらっているというのに。  薄汚れた公衆便所で、浮浪者たちに犯されたり、  繁華街の路地裏で、一見真面目そうなサラリーマンのをくわえ込んだり、  だけど、駄目だ。  いくらしても、いくらしても、  足りない。 ------------------------------------------------------------  逃げていく。  ギラついた目で、僕の体を犯そうとしていた人達が、  まだ始まって間も無いというのに僕から逃げていく。  泣きながら逃げていく男すら居た。お金を置いていく人も居た。  待ってよ。  まだ全然、足りないんだ。  いくら犯してもいい。一人じゃ駄目だったら、十人でも、百人でも。  ……百人でも、足りなかった。  メイジに犯された僕の体は、鍵穴。鍵は彼女自身。  彼女という前置詞が無ければ、満たされる事なんて一つも無い。  性欲は薄れず、けれど、それを癒す術は無い。  子供みたいに泣いた。そして、こんな理由で泣く事も情けなくて、泣いた。  泣いている時ですら大きくなってしまう自分のものを、手で慰めながら、また、泣いた。  ……涙が、枯れた頃、僕の相手を誰もしなくなった。 ---------------------------------------------------------------------  いくら声をかけて誘っても、風呂にも入ってない薄汚れた、  自分の体を弄り続ける少年に、構う人間なんて居なかった。  人攫いみたいな人も一度来たけど、僕が相手のものを、殴られながら、  顔中から血を垂らしながらくわえようとした事で、気味悪がって逃げていった。  ……気味悪がるくらいなら、殺していけばいいのにと思った。  月に何度も、警察が僕を保護しようと躍起にもなったが、その度、逃げ出していた。  今更僕に暖かい生活を与えようとするのか。孤児院で、家族と出会わせてくれるのか。  ……きっと僕は、全ての人達に、淫らな事を求めてしまう。  孤独だった。  他人より、性欲が強い事が。どうしようもなく。  エロ漫画みたいな世界を作れたらって、メイジと同じ願いを抱いている。  会うたび会うたび乱れあうような世界だったら――だけど、それは夢想だ。  現実にそれを行うには、暴力が必要だし、人の犠牲も、命もきっと必要だ。  僕にはそれが出来ない。  力があっても、きっと、弱虫だからそんな事出来ない。 -----------------------------------------------------------------------  ……僕に出来る事は、もう死ぬまで、ただ、 「……あは」  壊れたように、体を求めるだけ。 「おじさん、ううん、お兄さん。ちんぽちょうだい」  泣きながら、壊れた人形みたいに、この路地裏で、 「どんな値段でもいいから、僕の事を買ってよ」  目の前に立つ、人全てに。 「買って」  お願いをするだけ。 「一億円用意したぞ!」  怒鳴り声、笑顔を供にした大きな声で、びっくりした僕の頭に、  スーツケースから、どさどさと札束が振って来た。 「人間の命は! 案外値段をつけられる!」 -------------------------------------------------------------  一度も見た事が無い札束が、僕の体を取り囲むようにうずまっているのに、  それがどうでも良くなるくらい、目の前の人間は奇行をしている。  赤茶のもじゃ髪、いかつい顔に、歯が輝くような大口での笑顔、口と顎にずらっと揃った髭、  黒いスーツ、ネクタイのつけてない白いシャツ、そういう部分は普通だけど、  言っている事がおかしすぎる。言う時の体の動きが、大袈裟すぎる。 「プライスレスという言葉に惑わされるな! だってそうだろう少年よ!  メジャーリーガーとか数十億円ってお金をもらってるじゃないか!  つまり、人間の生き様はお金になるのだ! ただ、お金に出来るってだけで、  お金にならなきゃ意味が無いという事ではない。そこは勘違いしないようにな  無料も、値段である。値段が高いものはだいたいいいものだけど、  少ない値段でもいいものもごろごろころがっているのだよ」 「……あ、あの」 「そういう訳で、俺は君が、一億円の価値があると思って買いに来た  売ってくれるか? その体だけでなく、俺に――」 -----------------------------------------------------------  ――このオクタに、少年の意思を売ってくれ  そう、目の前の男が言った時、突然銃声がして。 「ケツがあ!?」  男は、黒服に尻を撃たれて、物凄い泣き出しそうな顔でひぃひぃ言いながら、 「わぁ!?」  僕を抱えた。抱えてから、ケースを縦にしながらそこにお金をほうりこみ、  かっこつけてこんな事するんじゃなかったと言いながら、なんとか札束をケースにしまい、 「何なんだあの黒服は! よりにもよって尻って、せめて肩にしろ!  尻痛いって泣きながら逃げていくってどんだけ情けないんだ俺は!」 「あ、あの、なんなんですか、一体」 「メイジ関係だよ! それぐらい解れ! 少年! 痛い、ケツが痛い!  ケツだけじゃなくて心も痛い! あ、もしもしフェブラリ、少年確保した、ケツ痛い!」  電話の相手にすら、馬鹿な事を叫びながら、傷を負っているのに男は僕を抱え、  凄い速さで走ってく。それに抱えられた僕は、その暖かさに、メイジを思い出した。  メイジが教えてくれたものを思い出して、僕は、また泣いたけど、少し笑う事が出来た。 -------------------------------------------------------------------- -------------------------------------------------------------------- 「ドッキリでしたー!」 「なーんだそうだったんだね!」  ハッピーエンド。 これでバッチリですね。 ---------------------------------------- ----------------------------------------  ビジネスホテルで待っていたのは、以前、としあきの家に来た黒いスーツの女性。  彼女はフェブラリ、通常フェブと名乗った後――その侭するするとズボンを脱ぎ、  ……両性具有の身体を曝け出した。  メイジと違い後天的な物であるらしいが、少しは貴方の慰めになるでしょ? と言った時には、  少年は犬のように発情した目で彼女の物をみつめていて、……なので彼女は、  オクトを部屋から退散させた後、たっぷりと彼にいじめさせられた。  メイジと同じく果てしない性欲ではあるが、そこらへんの男よりは免疫があり、  なんとか、彼を落ち着かせるまでは、としあきの体をいたぶる事が出来た。 「よし少年うなぎにステーキだ! 残念ながらヨーグルトは無いがな」 「……ありがとうございます」  その後、フェブの手により、何ヶ月ぶりかに体を洗ったとしあきは、  真っ白い清潔なシャツと、半ズボンに身を包み、今二人の目の前に居る。 「オクトさん、お尻の怪我は大丈夫なんですか?」 ------------------------------------------------------------------- 「大丈夫な訳あるか! だが、メイジに掘られた時よりはまだマシだ。心の痛みも含め」  ……こんな三十路付近の男まで犯すとは、メイジはどれだけ変態なのかと、  自分の事を棚にあげつつ思って、……穴兄弟ならぬ棒兄弟かと思い嫌な汗をかきつつ、  としあきは、数ヶ月ぶりのまともな食事を口に運ぶ。 「普通は、衰弱した身にはもっと優しい食べ物が必要と思うけど」  出した分を補給する。という勢いで、気持ちよいくらいの食べっぷりを見せる。  14歳の少年を、年上の男女が見守っている光景。まるで家族のようにも思えた。 「返事はまだ聞いてなかったな」 「え?」 「一億円で、自分を売る気があるのかだよ」  スーツケースの中には、信じられないような大金が詰まっている。  しかし、そんな簡単に飛びつける話じゃない。 「何のためですか?」  としあきに問われて、二人は語りだした。 ---------------------------------------------------------------------  あの日の凶行を境に、メイジは日本での活動を始める。  性欲という圧倒的な暴力によって、様々な人間を懐柔し、独自のネットワークを構築。  それらをチェスの駒のように操りながら、自分が動かずとも世界が動く組織を作り上げる。  そして本部はブルガリアの時のように、狂乱の日々に入ってる。  いや、金で買った様々な人種や性別の玩具が居るハーレムは、ブルガリアの比ではない。 「エージェントの内、俺達のように反乱したのは九名。メイジに屈服したのは二名」 「彼女に屈服した一人は、貴方の知っているノヴ」 「――顔を傷つけられたのに」 「真意は知れないわ。でも、彼はその顔を晒さないように、表舞台に出ず暗躍してる」 「もう一人。エージェントの中での一番の厄介者。ジュンだ。不死身の異名を持つ  仮にメイジの活動限界を二時間とすると、ジュンは朝まで軽く持つ」  力を加速させるメイジ、長く持続するジュン、そして、今や表に出なくなったノブ。 「……すいません、何かどっかで聞き覚えがある気がするんですけど」  詳しく確かめたいが、ここにはパソコンは無かった。 ------------------------------------------------------------------------- 「……それで」  としあきは、全部食べ終えてから聞く。 「僕は、どうすればいいんですか?」 「……メイジを止めれるのは少年だけだ。唯一、メイジを満足させる事の出来る体の持ち主」 「彼女にとって貴方は必要なのよ。貴方がメイジちゃんを必要とするように」  説得、すればいいという事か。そんな事が本当に出来るか解らない。  だが、そういう次元の問題じゃない。 「……体は、無料で捧げます」  強い意志を、瞳に浮かべる。 「僕の意思を売ります。僕の意思を、この事に協力させて下さい」  メイジの居ない生活に耐えられない事は良く解った。フェブさんには悪いが、さっきのも物足りない。  どうしようもない理由だが、戦うには十分すぎる理由だ。  何より、メイジが好きなのは変わらないから。 「でもその場合、一億円から体の金額を引いて、少年に支払う金額は500円くらいになるぞ」 「僕の意思って、500円の価値しかないんですか!」 -------------------------------------------------------------------------  この後、うなぎとステーキで精の付いた、9999万9500円の体を、  オクトとフェブが弄る事になるが、シリアス話なのでエロシーンはさっきみたいに無しである。  顔の左半分を、布のマスクで覆った少年が、街の夜を徘徊している。  ならず者達が声をかけた瞬間、一人が手をひねられ頭からアスファルトに落ち、同時に、  かかとで顔面を踏みつけられて、一撃で悶絶した。 「……僕を、犯すつもりなんですか?」  そう言うと少年は、怯む男の前でマスクをとって、 「こんな顔でも?」  眼球が丸く露出している、骸骨に肉の繊維が張っているような崩れた顔を、見せ付けた。  そして――男は悲鳴をあげる事も許されず、最初の男のように倒され、気絶した。  残った一人に、ゆらゆらと揺れながら近づいていく。 「教えてくれませんか? この街を牛耳る一番強い奴」  性処理道具としてあの人に捧げますからといって、逃げ出す男を一瞬で捕まえた。  そして――犯すはずの男は、化物の顔をした少年に、犯された。 ------------------------------------------------------------------------ ------------------------------------------------------------------------ 「この人が、あの区画の売春行為をまとめあげている人物ですか?」  目の前の少女をなんと言っていいか、俺には解らなかった。  こんな小さいナリで、どこからどうみても可憐な少女から、  言い様の知れない威圧感を感じている。 「はい、メイジさん。ヤクザと渡りをつけていましたが  しまいにはそのヤクザも街から追い出して、全てを担うようになった青年です  海とか山とか、……命までは奪ったかは解りませんが  職業は大学生。指示などはメールで出して正体は隠してるみたいです」  一晩中ネトゲをした後、目覚めたら、周囲がはっきりしない薄暗い場所に居た。  猿轡をされ、腕に手錠をかけられ、身動きが出来ない。  何かやばい組織につかまったのか?  人に誉められるような事は、確かにしていない。あの一帯の売春を取り仕切り、  うまい汁をすって、デイトレードにつっこんでいる。  何もしてなかった方が金がたまる、自堕落な生活だ。 -------------------------------------------------------------------  だが、ここは裁判所でもない。ヤクザの報復にしてもおかしい気がする。  ……金髪の少女が自分に近づいてきている。  本来、恐れる必要のない少女に、どうしてこうも脅えてしまうのか。  体中から嫌な汗が噴出してきた。 「それじゃ、調教を始めましょうか。良く見ればきれいな顔をしてますね」 「壊さないでくださいね」 「自信はありませんが。ではノヴ、そこで見ていてください  他の人たちも、目を離してはいけません」  その瞬間照明がつき――  自分がステージ台の上にころがされて、その周りには、  全裸や、扇情的な衣装の美男美女が並んでいた。  訳が解らなかった。信じられなかった。  ……いや、こういう非現実的な空間は、実際にはあるらしいけど、  何故自分がこの場所に居るというのか、これじゃまるで自分が、  ……自分が、見せ物になっている? -------------------------------------------------------------  血の気がサーっと引く。これが何の報復かはわからない。  だが無我夢中で体を動かす。ステージ台から転げ落ちようとする。  しかしそれよりも早く、少女の小さな手が自分の髪の毛を掴み、そして、  無理矢理、振り向かされた。  信じられない物が、あった。 「まずはその綺麗な顔に、たっぷりかけてあげます」  少女には男性器が生えている。 「最近は、四六時中勃起しっぱなしですから、臭いですよ」  ふたなり、という言葉が頭に浮かんだ時には、 「えい」  猿轡の代わりに、その物が俺の口を塞ぎ、  激しい嘔吐感に襲われた俺は、暴れる中――見てしまった。  この少女の、何もかもを殺せるかのような、悪魔のような微笑を。  使い物になければ躊躇い無く、人間を棄てるような顔を。  助けてと思った時には、もう―― ------------------------------------------------------------------- 「どうですか、六時間続けて犯された気分は」  ――ああ 「お尻も口もどろどろですね。戒めもといたのに、逃げる気力もない  いやもう逃げたくありませんね、私の元にずっと居たいでしょう」  言葉が、耳に注がれてくる。その一言が、甘い酒のように脳を犯していく。  ああ。……ああ。 「アレとは比べ物にならないですが、なかなかいいお尻です  どうですか? この組織に居て、犯されたいですか」  犯されたいです。  ちんぽ好きです。メイジ様のちんぽ。メイジ様のちんぽをしゃぶったり、  メイジ様に犯していく事が俺の生きがいです。それ以外何もありません。 「そう、なら貴方の知っている子を何人か勧誘してここに来なさい」  来ます、来ますから、貴方の奴隷になりますから。  お尻振り続けます。お口開け続けます。だからください、ちんぽ、もっと、  ――もっと -----------------------------------------------------------------  そこまで言った途端、男は気絶してしまう。  欲望に肉体がついていってない。脆いが、それでもまだマシだった。  ……癒されない自分の物を、軽く扱いてから、  周囲で、性行為にふける者達に指示を出す。 「申し訳ありませんが、総出で処理していただけますか?」  その一言で、ステージに上る何十人の彼らは、メイジの体に奉仕していく。  まるで、神に信者がすがりつくように―― 「……壊すなって言ってるのに  あんまり色ボケになっちゃうと、お仕事もしてもらえなくなるし」  扉の影で有様を見ていたノヴは、そう、隣のジュンに語る。 「彼の毒抜きの方、お願いできますか?  人間の言葉を忘れない程度で、かつ、メイジさんの体を忘れられないように」  こうやって、何人も操り人形を作っていく。   こんな地道なやり方で、体を売る仕事をこの手に治めていく。  そして、彼女の世界が作られていく。 ----------------------------------------------------------------------- 「……でも、メイジさん。貴方は人形みたいには壊れない  何人もの人間にもみくちゃにされてるのに、逆に人間を壊してしまう  僕の顔みたいに、崩してしまう。世界もきっと終わるでしょう」  焚き火のようにくすぶる痛みが、布で覆ったノヴの顔その左半分から起こった。 「愚かですよ、としあきさんを置いていくなんて。愚か者だ」  そして、その痛みという火は、 「そして僕も愚か者ですよね、ジュンさん」  水で消えない。 「あんな愚かな人が、好きで好きで溜まらない」  涙はとめどなく溢れるけど、それで、痛みは恋のようにより強く疼いて。  喘ぐ少年をジュンはみつめた。小さな子供をみつめていた。  そして視線を動かして、もう一人の小さな子供を、みつめた。  人形遊びが嫌いな少女を。 ----------------------------------------------------------------- -----------------------------------------------------------------  事を終えたとしあき達は、着替えを終えて、一つのベッドの上に居る。  だが、としあきは申し訳なさそうな顔で正座をし、  オクトとフェブは、青ざめた顔で大の字になり息を乱していた。 「……まさに、メイジの嬢ちゃんに負けず劣らない淫乱」 「人間の構造的に有り得ないほどだしちゃうし……」 「ご、ごめんなさい」  未だ童貞のとしあきは、二人に代わる代わる口と後ろを犯されたが、  底無し沼のような性欲は、二人をすっかり干上がらせてしまった。  だがそれでも、今の所としあきの渇きも満たされたようだ。  ごはんも食べさせてくれたし、セックスもさせてくれたし、  まさに、至れり尽くせりのサービスである。 「……あの、でもよかったらもう一回だけ」 「勘弁してください」  まさか、14歳の自分に年上の男が土下座するとは思わなかった。 -------------------------------------------------------------------  ホテルのチェックアウトの時間にはまだ早いが、身支度を始める。  家が焼けたとしあきにとっては帰り支度ではない、寧ろ、旅支度だ。 「勝負はこっちが優勢だ」 「そうなんですか?」 「ええ、こっちの方が多数なんですもの。良くいうでしょ、仲間が多い方が勝つって」 「裏切られたメイジに着くのは二人だが、こっちはお前を含め十人居る」 「五人と四人をノヴとジュンにあてて、お前がメイジを説得すれば終り」  説得、と軽々しく言われるが、それはそんな容易い事なのだろうか。  その不安が顔に出ていた所為か、オクトは少年の頭を撫でて、こう励ました。 「お前はメイジに負けないくらいエロいんだ、大丈夫だよ」 「それ、誉め言葉になってないです」  気休めにしかなってない言葉、だが、少年が笑みを取り戻すくらいには効果があった。  としあきの顔が少し綻び―― --------------------------------------------------------------------  視界の右端を、正確には窓の外を何かが落下していった。  その何かが、人のような形をしていた事に気付き、自殺か、と戦慄して、  彼がオクトの手を振り払うように、窓に駆け寄った瞬間、  ノックも無しに、いや、ノックよりも騒々しいマシンガンの音と供に、  ベルボーイが手を触れる事なく、ドアが鉛筆を削るかのように開けられていく。  としあきはオクトの手でベッドへ、フェブはユニットバスへ。だが、  風呂場から聞こえた声は二つ、一つは人間であるフェブの声、もう一つは、犬。  二つの声のやりとりは、人が獣に襲われている声。 「フェブ……! くそう!」  腕の中で脅える少年を抱えながら、オクトはポケットからガムを取り出し数秒噛んだ後、  ベッドを挟んだ側の壁へそれを飛ばす――爆発した、簡易な爆弾は壁に僅か穴を空ける。  降り注ぐ弾幕を尻目に、オクトは隣の部屋へ移動し、としあきを抱えた侭部屋を出た。  自分の部屋へマシンガンを乱射した人物に銃口を向けながら―― 「うわぁ!?」 ---------------------------------------------------------------------  意外だったのは、マシンガンを乱射していたのが少年だった事、  いわゆる執事の姿をした、そして、もう一つ意外だったのは、  いや、予想しておくべきだったのは、 「あ、あー!? ど、どうしよう、弾が切れちゃった!?  僕はやっぱり最低で蛆虫で生物のクソをかき集めた存在で――」 「泣くんじゃないわよオアーズ! ほら!」  仲間が、居る事。 「銃ならここにあるわ」  メイド姿の彼女から受け取った少年執事は、  僕に撃てるかな? と泣きそうな瞳で彼女に言った。 「そんな事聞く暇は! ああもうほら、逃げていくじゃない!」  急かされた少年執事は、うめき声をあげながら銃を放つ。  オクトは身を屈め、ギリギリ角を曲がった。手当てした尻の傷口が、  有りがたくない事に開き始めていた。 ----------------------------------------------------------------------- 「エレベーターは使えねぇだろう、階段も網を張っているか、どうする」 「オクトさん!」  抱えられたとしあきが指差したのは、階下までのダストシューター。  迷う事なくオクトは、二人してそこに飛び込み、ある程度落下した時点、  豪腕と両足で無理矢理降下を止め、そして、積もったゴミをクッションにして着地。  出口を――ゴミの取りだし口となる場所を、汚汁と虫に絡まれながら探し当て、  なんとか脱出して、アスファルトの道路へ身を投げ出して、  そして、  ……二人は、絶望した。 「ご苦労さん、パターンDの経路で来たんだねぇ」  車椅子に座った、口調は老いているものの、妙齢の女性が居る。  その隣には、例えオクトを初めとした裏切り者が勢ぞろいしても適いそうにない、  2メートルを超える身の丈に、恐ろしい程の筋肉を詰め込んだ男が。  そして、ぞくぞくと集まってくる。 ----------------------------------------------------------------------  さっきの少年の執事と、少女のメイド、……おそらくフェブを制した牙を持つ犬。  且つ、カセット式という旧式の、ノンタイマーと書かれたウォークマンを、  あえて、見せ付けるように耳に繋げている、20くらいのニット坊を被った青年。  そしてもう一人、眼鏡を幾つも重ねがけしている、工具を手にぶら下げたツナギの女性。  聞く事を、強制している気がした。  そうでなければこの連中が、自分達を取り囲まず、  前に居並ぶという――捕獲に適さない陣形を取るはずが無い。  それだけの余裕があるのか、あるいは、これは予定調和なのか、  どうか後者であれと、そして、命の時間稼ぎになれと願いながら、  オクトはお決まりのセリフを呟く。 「何者だ」と。  求められて、されば、答えていく。 「隠居のダットリー」  車椅子の女性から、続けて名乗っていく。 ------------------------------------------------------------ 「し、執事の、オアーズです……ごめんなさい」 「メイドのアップ!」 「職人、イングリッド」 (犬、ジッパと文字が流れる電光掲示板を首に下げた雑種) 「ハッカー、CGI、ヨロシクネー」 「……暴力、テンパ」  全員名乗った後、車椅子の隠居が、代表するように答えた。 「組織、双葉の新たなる構成員、おっと、ごくろうさんね」  としあきが見た人の形が、ダットリーの傍に歩いてきて、立ち止まる。 「この方達は、私を含めた手先を総計で56名持つ、メイジを筆頭した奉仕者達です」  スピードグラファーと名乗り、デジタルカメラを右手に掴んだコートの青年は、  窓越しに撮影した写真を、ダットリーに手渡す。二人の居場所を素早く教えたのは彼――  ビルの屋上から飛び降りて、写真を撮影する常識外れが、奉仕者達の部下として56人居る組織。  周りを見ればスピードグラファーだけじゃない、幾人か配置されている。  フェブをも失った今、一言でいうならば、それは、絶望でしかなかった。 ------------------------------------------------------------------- ------------------------------------------------------------------- 彼女の世界に、色は無かった。  旧公家の血筋に生まれ、五歳にして大学に入学出来る程の麒麟児だった少女は、  家名を知らしめ、血を強くする存在として、それはそれは寵愛され育てられた。  しかし、ある日原因不明の病によって、彼女は闘病の生活を余儀なくされる。  病にこそ打ち勝ったものの、その体力は蜻蛉よりも儚い、言わば、空蝉だった。  鳴き叫ぶ事も適わない。庭にさえ、メイドの手を借りねば出られない少女。  価値が無い、と、彼女を家に閉じ込めたのは、名を落とさぬ為、血を弱くさせぬ為。  オアーズとアップという、血の繋がってない者しか家族は居なかった。  彼女の世界には色は無かった。ただ、モノクロームが支配する景色だった。  ……世界が、虹色になったのは、  たった一人の少女の手による。  その日屋敷の警備システムは完全に沈黙し、  且つ、完全なる屋敷は一人の少女の手により欠陥住宅と成り下がっており、  ダンボール箱で出来た秘密基地を、破るかのような巨漢の戦士。 ****************************************************************  騒動による音が目覚ましとなり、  寝台の上で身を震わせる、彼女の元に訪れたのは、 「……犬、かい?」  首に下げた電光掲示板に、文字が流れた。 『貴方を買いにきた』と。  ……ノックの音がする。購入予定者は、既に開かれた扉の前に立っている。  顔半分を布で覆った少年と、そして、もう一つの影を従えた、幼い少女。  部屋の明かりは点いていない、だのに、この時彼女は、 「隠居ダットリー」  目の前の少女を含んだ光景が、 「貴方の知力を買いに来ました」  まるで萌える春のように、鮮やかに彩られていくのを感じたのだ。  オアーズ、アップ、ダットリー、三人が奉仕者として購入されたあの日。 ***************************************************************  名前を聞く事を強制したのは、最初から、見逃す為だったらしい。  逃亡の時自分達がどれだけ大きな存在なのか解れば、  夜眠る時、悪夢の登場人物して出る事が出来るからと。  悪趣味だと思いながら……それだけメイジは、としあきを愛しているのかとも感じた。  好きの反対語は嫌いじゃない。無関心である。  関心を無くして捨て置くような真似はせず、かといって、問答無用で捕らえたりしない。  別に貴方の事は好きじゃありませんが、反乱されても困りますので、って、  どれだけツンデレなお嬢様なのかと――  フェブの隣で、血塗れになりながらオクトは考えている。  グロと証する青年と少女という執行人の手で、自分の肉が、死体とさせられていく。 「悪趣味ですいません」  無表情の二人組はそういって、オクトの体を綺麗に裂いていく。  その様は拘束されているフェブに、怒りよりも先に、恐怖を資格として与えていた。 **************************************************************** 「むーすんでー、ひーらいーて、まーたむすんでー」 「潰してはいけませんよ、生かさず殺さず。傷跡が無い様に縫合し終わらなければ  この人達を道具として使えるようになりません」 「ぶー、つまんないのー」 「全く、なんでこんな画が好きなのか……、ああ、痛いですか? じゃあ痛がってください」 「めいじさんはあますぎるのー、ないぞうつぶしてぐちゃーがいいのー  ひとごろしはあたりまえのせかいなのにー、なんでだれもころしてないのー?」 「あの方は優しいのですよ。誰も殺すつもりはない  殺すくらいだったら玩具として使った方が生産的だと考えている。慈悲深い」  何が慈悲深いんだと叫びたいが、オクトの感情は、痛みを何より優先としている。  逃がした、いや、見逃された一人ぼっちのとしあきの事を考える余裕も無い。  隣で自分の名前をフェブが呼び叫んでいたが、もう声を失っているようだ。  誰一人として死なない世界、ただ犯りまくるエロ漫画みたいな世界、  彼女の理想の世界―― ***************************************************************** 「そんな、世界」  腹の底から叫ぶつもりだった声だったけど、痛くて、痛くて、何より、 「あるはずが、ねぇよ」  腹が開いていた所為もあって、声帯が振動するだけだった。  その僅かな音も、消毒した手袋でむき出しになった内部に触れられる事により、  オクトの脳が機能を停止する事で、二度と発さなくなった。  あらゆる手段で、元エージェント達は陥落している。  オクトもフェブも時間の問題だと、報告し終える二人。  メイジは、くれぐれも殺さないようにと告げる。  少女は永遠を築こうとしている。そんなもの、あるはずはない、だけど、  それが愚かな願いだとしても、彼女に着いて行きたい馬鹿達ばっかりで、  この狂った組織は構成されていた。それが自分の為なのか、  自分と少年の為なのかは――まだ、少女は語ろうとしてなかった。 ---------------------------------------------------------------------- ----------------------------------------------------------------------  としあきが逃げた後、ポケットに何時の間にか捻じこまれていたカードは、  当面、いや、もしかしたら永遠の生活を保障するようであった。  キャッシュカードなんて、14歳の少年には過ぎた持ち物のはずだが、  黒色のそれは、どうやらある身分を証明する役割もあるらしく、  警察官の職種質問も、これを翳せば切り抜けられる――  正確には、カードに書かれている名前の力によって退散させる事が出来る、  問答無用で使える、有り難いカードだったのである。  問題点といっては、せいぜい、商店街みたいな場所じゃ使えない事だ。  だが、これはオクトからの贈り物じゃない。  名義には――双葉メイジと書かれていた。 (発信機の役割なんだろうな。僕がこれをどう使ってるかで、居場所が解って生きてる事も解る)  敵に塩を送られている格好だが、構わなかった。  それよりも、この半年で彼女が名前だけでも力を発揮するようになってる事を恐れた。 ***************************************************************  あらゆる売買を取り仕切る組織、……最早裏の世界だけじゃなく、表の世界まで牛耳ろうとしている。  そんな事可能なのだろうか?  けれど、非現実を現実へと、彼女は昇華させようとしている。  何の為なのかは、少し自惚れれば解る事。 (僕を、誘い出す為)  二人きりの世界で、永遠に奴隷になれと彼女は言っていた。  一度殺そうとはしたけど、矢張りもったいないと感じたのだろうか。 (僕がメイジを求めるように、メイジも僕を求めている)  けれど、素直になれない彼女は――僕をムリヤリ屈服させようとしている。  楽園を作って、追放した自分を再び、迎え入れようとしている。  ……この憶測が正しいのなら、馬鹿な少女だと思う。 「彼女さえいればどこだって楽園なのに。色々なものを犠牲にした国なんて  楽園でもなんでもない……、そんな所に、僕は住みたくありません」  どんな場所だろうと、もう引き篭もるつもりはない。そう、  目の前の二人に伝えた。 ***********************************************************************  あれから三ヶ月の時が経っている。  某電気家具販売店、その屋上にあるフードスペースで、  コーヒー三つ置かれたテーブルを挟んで、としあきが、ハッカーと職人と対面している。 「……そう、だったらショウガナイネー、どうするイングリッド?」 「どうも何も、元々私達の専門外やないの」 「ダッテサー、オーブンレンジ買いにきたらこの子見つけちゃったンダヨー?  スキンシップするのは至極当然じゃないですか? で、連れ去ればメイちゃんもヨロコブ」 「捕獲能力が無いうちらじゃどうやろうと、……ああでもこの子はガキやし、うーん」 「明確化しときましょう」  14歳の舌で、ブラックのコーヒーを味わう。 「メイジは、僕を組織に連れて行こうとしている。それに対して僕は  ……メイジを、アパートに連れて行こうとしています」  もう既に焼け落ちているから、また別のアパートで、  前みたいなおかしな日常を過したい。 「意地の張り合いで。、どちらが、どちらの家に戻ってくるか」 ******************************************************************  cgiとイングリッドは、何よりもまず、警戒した。  この言葉が妄想とかじゃない、真の意思を秘めていたからだ。  組織のメンバーを目の前にして、この大言壮語は本来有り得ない。  何か勝算が――まさか、協力者が、  だが、オクトを始めた前組織のメンバーは、こちらの手の内で、何人かは働いていて、  仮にそれが演技だとしても、この少年との接触は今まで適っているはずがない。  なのに、なんなんだこの自信は。 「今は危機に陥っている、俺がリスペクトする会社」  ノンタイマーと書かれた、カセット式のポータブルプレイヤー。 「まるでその創業者みたいに自信溢れた目をシテルッツーカ」 「いやそういう例えしとる間にも、……あ、やばいで、うちら戦闘能力無いのに」  三ヶ月経っていた。 「例えば、とある掲示板にスレをたてます。五十万円で仲間になって欲しいと  ……当然そんな嘘臭い話にのってくる人は稀で、お金を受け取っても逃げない人も稀で」 **************************************************************  だが、稀に存在する。日常から非日常への渇望者達は。  少年の話を信じ、暇つぶしであれ生きがいであれ、なんであれ、協力しようとする者。  9900万円を投入して、198人の内残ったのは、思ったよりも多い。 「日本各地に散らばる、48人のとしあき」  その内の三人が、徒手空拳がナイフ並の能力を有する彼らが、無理矢理合席してきた。 「僕には……なんの力もなくて、こうやってオクトさんの残したお金で人を雇うしかなくて」 「イヤイヤ、お手柔らかに頼みたいんダケドー」 「そ、そうそう、だいたいうちら脅しても何もええ事は」 「僕もメイジと違って殺しはしません、ただちょっとその」  赤い顔をして、微笑みをみせて、って、その微笑みは、 「……えっち、させてもらいますから」  とても彼女に良く似ていて、確かに、遠いながらも血が繋がっていると確信させた。  笑顔で手と手をハイタッチする様から、人間を掌握する術も見て取れて。 ********************************************************************** 「計画は順調だよ、メイジちゃん」 「そうですか」 「ああ、芋蔓式でうまくいくもんだねぇこういうのも  人身売買、薬の売買、重火器の売買、その人間達をほぼ取り込んでいる  金よりも快楽に服従、か。……人間なんて脆いものだね、まぁ、売春は世界最古の商売って言うし」 「でも全ては、あなたの根回しや計略があってこそです、これからも――」 「仕事の話はもういいだろう、メイジちゃん」  普段、自分の傍らに居させるオアーズとアップも、この時は遠くへデートに行かせる。。  ダットリーは、力の無い手を広げた。 「私の体が欲しいんだろ、使いな」  一瞬の躊躇。しかしやがて誘われる侭に、メイジは彼女に駆け寄って、  ただ、胸に飛び込んだ。車椅子が僅かに揺れる。その胸の中で、 「……ママ」  瞳を閉じて自分の温もりに浸る少女の頭を、ダットリーはゆっくり、撫でた。 ********************************************************************  2メートルという身長は、日本の生活に適していない。  いちいちドアを潜るだけでも一苦労であり、つけくわえ、その男の体格は、  厚く、強い、鍛えられている肉の鎧であったから尚更だった。  ……銀座の老舗で、特別にあしらえてもらったスーツを身に付けて、  電光掲示板を下げた犬を連れて歩く。その男は当然注目されるのだが、  やがてその好奇の視線がなくなったのは、単純に人が居ない場所へ入ったから。  住宅地に紛れるようにその店はあった。  町のレストラン、ブラックボードで描かれたメニューを見る。  3600円のコースを目に入れると、犬に座るよう指示した。  傘をその犬の為に置いてから、男は身を横にして店内に入る。  時刻は二時、客は誰一人居ない。  ウェイターらしき夫人は、思わぬ大きさに目を丸くしたが、直ぐに笑顔でかしこまる。 「いらっしゃいませ」  暫しお待ちをといって引き下がった彼女が、調理人、そして夫らしき男と二人がかりで、  持ってきたのは、ソファの一部である。 *************************************************************************** 「うちの家の物ですが、こちらにどうぞ」  男は会釈したあと、座った。四人用のテーブルも、喫煙スタンドのように小さく見える。 「ご注文は――」 「……コース料理を五人前ずつ。それと」 「表のお連れ様ですね」  夫人は、表に座らせてた犬の存在に気付いたようだ。 「衛生面の問題で店内に通す事は出来ませんが、軒下の方に誘導させてもらってよろしいでしょうか  暖かいミルク、……余り野菜とスネ肉の煮込みでよろしいですか? お代、さほどかかりません」  大男は、会釈した。  特別な素材を使った訳ではないが、暖かさが篭ったコース料理を、  その無骨な手には小さくなるナイフとフォークを、器用に用い、礼儀正しく頂いていく。  前菜、白身とオニオンのミルフィーユ。目の覚めるような牛コンソメの冷製スープ。  メインは――オーブンで焼いた鳩肉を、オレンジソースを供にしたもの。 *******************************************************************************  今の主人の好物が出てきて、土産に出来ないか打診しようか。  作りたてでなければこの味は出ないかと、考えながらも食べ終えて。  フルーツのプティングを、一人前ずつ噛み締めていく。 「食後はコーヒーで」 「デミタス……」 「解りました」  五人前のコース料理だったが、出されたのは彼にとっては指でつまめそうなカップ。  その中に圧縮された黒い液体を流し込み、口内で苦味を丸く転がした後、嚥下し喉を心地よく焼いた。  十分に満足いった食事を終えた後、入り口で連れと合流する。  夫人から傘を渡されると同時、真空パックされた今日のメイン料理が渡されて、 「彼女に、よろしく」  手先。……全てが組織の内部に存在する訳でなく、  名も無いとまでは言わないが、各地の拠点近くに居を構えている事も多い。 ******************************************************************************** 「奉仕者、暴力のテンパさんねぇ」 「多分あの人は知らないさ、私達の事なんて。手先なんてものがいらないんだから」  そういって男、料理の名を持つ手先は夫人と供に、後片付けをし始める。  売買組織。サラリーの語源はソルト、塩から来ている。  食こそまず取り仕切るものだと、良い食事こそ人を豊かにすると、  この店は、潰されかけた時に買われていた。 「こういう形で、あの人の役に立てる事。あの彼女は解っていたのかな」  十分に満足すべき食事は、彼の気力を確かに充実させた。  目的対象がホテルに連れ込まれようとした時、テンパは傘を投げて、  それを合図に、犬よりも早く前傾姿勢で走り始めた、狙いは、  暴力で、今連行されようとしているハッカーと職人を奪い返す事――  二人の前で、手を伸ばしたその瞬間、地面が無くなった。 ******************************************************************  轟音と一緒にマンホールとその周辺が爆砕したのだ。瓦礫と供に下水道に落ちていく。  罠――水の雨とつぶての雨に叩き付けられながら、テンパは両足で着地した。  力んだ際、スーツがボロボロに破れる。ランニングシャツの舌の、  隆々の筋肉があらわれる。まるでこれが着ぐるみのような、馬鹿げた肉体をしていて、  子供だったら、泣いてしまう。  ……だから、目の前の少年が泣いていない事実は、  精神的にはもう大人になっているという事だった。 「もう逃げません」  48人のとしあきの内、軍ヲタとただのヲタを二名バックにして、 「力ずくでいい! シンプルに、メイジの居場所を無くします!」  正義とか、悪とか、そんな事はどうでもいい、全ては、  メイジと暮らしたい、ただそれだけの為。個人の我侭。  それだけの為なら、無謀と呼ばれる戦いを、けしかけるだけの勇気と打算があった。  テンパは笑わない、ただ、有り難いとは思う。暴力には理屈がいらない。  だから、何も考えないで暴れられる。相手がそうなら尚更だった。 ---------------------------------------------------------------------- ---------------------------------------------------------------------- >ご、ごめんね…俺の後ろ掘っていいから、許して…  ……そう言って、虐められたいだけなんでしょう本当は?  自分のケツ穴を玩具みたいに使われたくて、惨めに尻をふって、  おねだりしているだけなんでしょう?  尻尾の代わりに粗末なものを勃起させて――  ……興が、のりません。  ごめんなさい、冗談を揚げ足とるようにして、すいません。  ごめんなさい――  そう言って、軽い失敗をした部下の前から彼女は去っていく。  享楽の日々を過しているというのに、彼女は何一つ満足できなかった。  としあきが、居なかった。 「……どうして、私にこんなものがあるのか」  一人、歩きながら呟く。 「あなたが教えてくれたのに。としあき」  呪われた体に、腕を回した。 --------------------------------------------------------------- --------------------------------------------------------------- 「ちょ、ナ、ナンナノコレ」 「アスファルトを沈下させるて、やりすぎやないかこれ!?」  ハッカーと職人が、続けざま驚愕を表す。あの巨体がすっかり飲み込まれた、  落とし穴は、土を掘ったものではない。マンホールを中心したとはいえ、  車が乗っても下の下水道まで貫通しない、強度を誇る道路なのである。 「だいたい、どうやったらこない大業な事、が、って」 「……お金って、なんでも買えるみたいだからね」  彼の手には、ブラックカード。メイジが渡したお小遣い。  しかし火薬なんてものは買えるはずが、いや、買ったものをリサイクルショップで売れば。  そういえば、Ipodを買ったという。ハッカーが愛するあれではない。 「……過ぎたお小遣いは、子供に持たせるとコワイケド」  ハッカーはしみじみと、 「それよりコワイノハ、狡猾な大人がテニイレルコト」  14歳としあき、既に、以前の彼じゃなかった。 -----------------------------------------------------------------  下水道に這う水路を、カードで買ったジェットスキーで駆けている。  後ろへと放たれる飛沫は、相手に対する目潰しにもなる、はずだった。だが、 「……追ってきてるって、に、人間なんですか、それ?」  無線で聞く。テンパは、ただ大股でとしあきを追っているらしい。  確かに下水道、余りスピードを出しすぎては逆にこけるからかもしれないから、  ある程度抑えているとはいえ、人が、機械に速度で追いつかれるとは思えない。  そもそもとしあきとしては、このまま着かず離れずのチェイスを繰り返し、  十分に疲弊させてから、あのとどめを刺す気なのだ。  ……テンパを最初に狙ったのは、訳がある。言うまでも無く、彼が最大戦力だからだ。  RPGなら経験地稼ぎの為に、弱い順から倒す必要があるが、  現実ではその必要が無い。少なくとも、倒す算段があるのなら、  最初に頭を叩いていた方が得策である。  何も律儀に、組織の奉仕者とやら全てを相手する必要は無いのだ。  ……倒したからといって、それより強い奴が出てくるのも、まず無いだろう。 -------------------------------------------------------------  売買組織の中で、唯一の純粋な戦闘能力。  それを落とす事が出来るのなら――そう思った時、  少年の背中に何かがぶつかり、そして、張り付いた。 「あぐ!? え、……い!?」  投げられたのは犬、犬は爪を服の繊維に突き刺し、振り落とされる事なく、  相手がスピードを緩めた瞬間を利用して、としあきの腕を強く噛んだ。  声こそでないものの、激痛が走りぬけ、その身体反応は常識を殺す。  運転中に手を放したら、そのまま落ちてしまうという事。  ざぶん、と水柱が立ち、としあきは下水道に着水した。  汚水に身体が浸される、それが嫌で立ち上がった訳じゃない。  ここで、立向かわなければならないからだ、……犬は、居ない。  としあきは胸の中を確かめる。余り、濡れていない。使えそうだ。  相手の疲労は、正直、望めないが。 「やるしかないよね、メイジ」 --------------------------------------------------------  走り続けるテンパの元に、飼い犬であるジッパが戻ってくる。  そして併走し始めた犬に一瞥をくれながら、……歩調を遅くしていく。  完全に停止した時に、目の前に、捕らえるべき少年の影が。  ――パァン、と、銃声がした。  ……少年の手元が閃光を放ったのも確認する。銃か、しかし、  初弾を外すとは愚か。テンパは、犬であるジッパの速度も凌駕して、  機関車のように相手へ向い突進していく、銃は、接近戦に弱い、  脅しの道具としても役立つが、テンパはそれに怯まない。  銃一丁が戦力ならば、テンパの戦力は、二本の腕、二本の足、そして体。  五つも存在するのだ。犬すら、投げて届かす腕力も。  テンパは、腕をこちらへ突き出すとしあきの前で、相手が引き金をかけるタイミングを見計らい、  横へ飛び、そして、相手の斜め前から5メートルの距離、  そこから一瞬で相手の顔面を射抜こうとする――  銃声と、閃光。 --------------------------------------------------------  ……その音は、銃が放たれた音ではない。  光も、銃が放たれたゆえではない。だが、テンパは一瞬沈黙する。  としあきの目にはサングラス、耳には栓、そのいでたちをした少年は、  一時停止したテンパに、身を屈めた彼の目と耳に、 「僕の暴力の勝ちです」  耳には、改造した大音量のアイポッド、  目には視力すら落とすかもしれない、大量の閃光。  再びした銃声は、サングラスおしても、耳栓をしても、眩暈がする程だった。  人間の数倍の能力を持つテンパを、気絶させるには十分だった。  テンパが目覚めると、目の前には14歳のとしあきと、何人ものとしあき。  後、cgiとイングリッド、どうやら、ホテルのようだ。  奉仕者においての最強戦力は敗北した、だがしかし、まだ使い物にはなる。 ----------------------------------------------------------  ……暴力は、信念ではない。ただの装置である。  暴力は、こんな状況などすぐに引っくり返せる。一度負けたからといって、  相手に服従するのは、愚か者のの考え方だ。負けたなら次に勝てばいい。  ……勝てばいいのだが、 「……どうして、お前達、いや」  俺も含めて何故全員裸なのか? しかも、チェーンで拘束されていた。 「選んでください、そのナリで自分より年下の少年に犯されたという  一生消えない十字架を背負うはめになるか? それとも組織をやめてくれるか」 「あ、あのスイマセン、それ俺達にトッテモトラウマニ」 「少年攻めマッチョ受けて、どんだけ玄人好みのAV」 「そ、そうですか? 僕は結構平気ですけど、とりあえず何も返事しないなら  暴れて縄引きちぎる前に乳首攻めしますね、舐めるだけなら別に」 「俺の負けだ」  テンパは即答した。ちなみにジッパは別の場所である。流石に獣姦はまずい。  でもちょっと興味あるかもと聞いて、全員が戦慄した。 ---------------------------------------------------------- 「テンパが、落ちた?」  報告を受けたのはメイジではなく、隠居のイングリッドである。  車椅子に座りながらスピードグラファーから報告を受ける。  写真に写っていたのは、職人んとハッカーともに軟禁されている暴力。  ホテル暮らしであるみたいだが、不自由はしていないようだ。  ……他はともかく、なぜテンパが逃げ出さないのか? 拘束はされていない。  何故? 寝返る様な男ではないはず。 「……いや、あの子もメイジのように性豪か」  となれば犯されるとでも脅されたのだろう。……確かに、トラウマになりかねない。  一流の色男は、ただ触れるだけで相手を発情させる事も出来るらしいが。 「戦力は、順調に削がれているって訳だねぇ」  多少、頭が痛くなってくる。最大戦力を失った今、  としあきとその一派の襲撃に耐えられるか? 「……なんの問題もなさそうなんだが」 -------------------------------------------------------  これが、自分たちと同じくらい大掛かりな組織だったらまだしも、  相手はとしあきと、全国五十人くらいのとしあきと聞いている。  場所がばれているとしても、それだけの人数に来られた所で、  単純に追い返せそうだし、もっといえば捕らえる事も出来る。  寧ろ、この組織でとしあきと供に暮らしたいメイジの願いが適う訳で。 「読めないねぇ、無謀なのか、努力家なのか」  頭をひねらせながら、対策を考えようとするが、  メイジから、としあきを傷つける事は堅く禁じられている。  ……それ程までに道具として欲しているのだろうし、そして、  愛してしまっているのだろうなと、隠居は思った。 「アップ」  後ろで作業をしていた者に声をかける。 「お姫様にもこの事を知らせてきてくれないかい? 今はオアーズが相手してるだろうけど」 ----------------------------------------------------------  彼女にとって、男性とは、都合の良い穴である。  女性よりは頑丈だし、女性みたいに生理もなく、女性みたいに破瓜もない。  だから、都合の良いおもちゃであった。  自分に組み伏されて声をあげているアップの顔に、唇を落とす。  繋がっている箇所から響く音と、少年があげる声が交じり合って、  否応にも興奮が高まっていくのだけれど、  ……執事が射精して、自分が射精しても、彼女が満足する事は無かった。 「としあき」  つい、名前を呟いてしまう。その彼女を見て、アップは申し訳なさそうな顔になる。  自虐を繰り返して生きてきた彼にとっては、彼女を満足させられない事は、本当に悲しかった。 「申し訳……ありません……やっぱり僕なんかじゃとしあきさんの代わりには……」 「いえ……、きっと誰も、としあきの代わりにはなれませんから」  中から自分のを抜き出す。本当はもっとしたいが、いくらしても満たされないからやめた。 「オアーズ、私は、ひどいですよね」 「メイジ様」 -------------------------------------------------------  としあきの家を飛び出して、今までの者達を裏切って、  ジュンも、ノヴも、手駒として使い、そして今も多くの人間を陥れている。 「でもオアーズ、私はそれでも、罪悪感なんてないんですよ」 「……」 「こうして貴方たちを利用していても、謝罪なんて考えない、だけど  としあきだけは、別です。謝りたい気持ちでいっぱいなんです  いろいろな人が、私の為に泣いたけど嬉しくなかった。だけど、私は  としあきが泣いてくれた事を思い出したら、すごく謝りたくなる」 「……それなら、どうしてとしあきさんをさらわ」  彼女の平手が、裸のオアーズのほほを打った。 「……きっと、帰ってきますから!」  泣き叫んでいる。 「無理矢理拘束しなくても、自分で私のもとに帰ってくる!  だって私が全てを教えたんです! 望んで、また奴隷になってくれる!  ……そうじゃなかったら、また、私が無理矢理奴隷にしたら」 ---------------------------------------------------------------- ---------------------------------------------------------------- あらすじ ブルガリアから来た遠い親戚であるふたなり少女メイジと、彼女により、 すっかり性奴隷となりおもしろエロく暮らしていた14歳としあき(ショタ)。 引き篭もりが彼女のおかげで改善されてから暫くしたある日、 かつて彼女が居た組織の一員が訪れ、幸せな日々が終わる。 組織は全て自分の利益の為、何より激しい性欲を癒す為作った、 人を含めたあらゆる売買の組織。騙し集めた構成員も彼女にとっては売り物。 結局、その組織も彼女にとっては癒しにもなれず、組織を捨てて日本に来たのだが、 尚自分を崇拝し日本まで探しに来た構成員達から、自分の卑しい過去が、 全て露見すると判断したメイジは、一番の自分を慕う少年ノヴの顔を銃で撃ち、 過去を自ら明かし、自分がどれだけ醜いかを説明し、 それでも尚、自身の性欲を受け止める事が出来る唯一の存在として、 一生自分の性玩具になってくれと誘う。 としあきはこれを拒否。理由は、彼女が悲しい事をするのを見てられないから。 絶望したメイジは衝動的にとしあきを殺そうとするが、メイジの本音を知っても彼女を助けようと、 構成員がメイジを抑えている間に、としあきはその場から逃げ出す。 ************************************************************* 数ヵ月後、としあきはホームレスに。 メイジによって目覚めた彼女と同じくらいの性欲は、最初は金を得る手段だったが、 やがてその需要も無くなり生きるのに行き詰った時、 メイジを助けようとする構成員オクトとフェブに拾われる。 日本で、ブルガリア以上のあらゆる売買を行う組織ふたばを作ったメイジは、 としあきが自らこの楽園に来る事を待っているという。 だが、としあきはそんな組織よりも、アパートでまた一緒に暮らしたいと決心。 この後、オクトとフェブは新生組織の新たな構成員、ノヴ、ジュンという旧メンバーと、 新メンバー『奉仕者六名』と『手先六十名』の一部よって他のエージェントと供にさらわれるが、 としあきはまたも逃れ、オクトからもらった資金で、 全国48人のとしあき(その仲間を募集したある掲示板のデフォルトネーム)を率いて、 メイジに、自分の元へ帰るよう組織の弱体化の為行動を始める。 そして、奉仕者のハッカーと職人に暴力そして犬を陥落したとしあき。 「としあき」「メイジ」「組織で」「アパートで」「「一緒に暮らそう」」 激しい性欲を抱えた二人の意地の張り合いは、遂に佳境に。 ---------------------------------------------------------------------- ---------------------------------------------------------------------- 楽屋裏 メ「というか長いです。誰もこの作者にシリアスなど求めてないのに」 と「さらりと凄い事言うねメイジ……でもさ、メイジ、エロシーンが求められるにしたって  ふたなりが男の子をあんあんさせるって、普通じゃどう考えても需要がないよね?」 メ「あら、そうですか。つまりとしあきはもう犯されたくないと」 と「え?」 メ「そうですか仕方ありません。本編でエロが無い分、たっぷり銃でぱきゅんぱきゅんしようと」 と「そ、そんな事いって、メイジが一番したい癖に」 メ「な、そ、そんな訳ありません。組織を作った私は毎日何百人もの玩具と」 と「お尻、いれさせてあげようかな?」 メ「……卑怯ですとしあき、想像しただけで射精したではありませんか」 と「そこまで溜まってるのメイジ!?」 オ「というか俺の出番はもう無いのか」 -------------------------------------------------------------------------- --------------------------------------------------------------------------  最初の記憶は、自分の物を扱いてる事。  それが冗談であれば、それが笑い話ですめば、どれだけ幸せだったろう。  現実は、そう簡単にいかない。  両性具有という稀な存在だけでなく、きちんと両方の生殖機能を有し、  それどころか、性欲というものさえも人並みに、いや、常人以上に持ち合わせていた。  まだ一桁の歳の子供なのに……。  親の顔は覚えていない。おそらく、捨てられたのだと思う。  そして私を拾ったのは、幸いにも人身売買の組織でなく、普通の孤児院だった。  院長先生は私の異常な性欲を、なんとか制しようとしたが、  子供の私に我慢なんて出来る訳がなく、寧ろ、周囲の子を襲いそうになった。  後に離れの部屋に隔離されたのもしょうがないと思った。  IQという奴も、性欲並みに飛びぬけて高かったから、院長先生を酷いと思わなかった。  ただ、理性が高くあるのに、性欲もいっぱいある。  板挟みの苦しみを、味わう事になる。 -------------------------------------------------------------------------  そんな私の為に、院長先生が買ってきてくれたのはあのぬいぐるみ。  思わず笑顔を浮かべてしまうほどかわいらしいうさぎの人形。  その子供のように喜ぶ姿をみて、院長先生も一緒に喜んでくれた。  だけど――翌日、私の姿を見て、先生は泣いた。  人形をオナホールにしてしまって、それで射精したばかりの私を見て、  先生は泣いた。  そして、私も泣いていた。ごめんなさいと何度も謝った。  そして、同時に思った。  どうして私はこんな体なのだろう? どうして私は、こんなにえっちなのだろう。  まるで日本の、hentaiの世界じゃないか。futanariはみな、こうなのか。  居場所が欲しかった。二次元じゃない場所に。  いいや、二次元の裏側とでもいうべき場所を現実に。  高い知能と、凶暴な性欲で人を操り、組織を作り出したのは、  あの孤児院を、出た後である。  その時付いてきたのはノヴと、そして―― ----------------------------------------------------------------------- 「日本のhentai、……エロ漫画をネット等で知ったメイジさんは  自分の遠い親戚に、日本人が居た事に運命を感じたのでしょう  きっと、僕があの人と出会った時よりも感じたはずです」  あの日、襲われそうになって、……メイジがここから旅立つ日に、  襲って欲しくてメイジについていった少年は、としあきに嫉妬をしている。 「……あの人を渡したくない、殺してでも  でも、そのつもりだったのに、……あの時僕はあの人を助けてしまった  あの人が、後悔するのが解ったから」  崩れた左半分の顔に手をあてる。手術でも完璧に治していない。  あの人に犯された傷跡と思えれば、幸せに思えてしまった。 「……僕は、としあきさんを殺せるんでしょうか、ジュンさん、……いえ」  ――院長先生 「殺しなんて、させない」  22か23の、黒髪の青年は、震えながら言った。 「その為に俺は、不死身になったんだ。子供達を幸せにする為に」 --------------------------------------------------------------- 「メイジ、hentaiって何、これ?」 「今も俗称として使われていますが、アメリカやドイツでの、エロ絵の総称ですね  むしろ、普通のアニメですら十年前くらいはhentaiってよばれったし  mangaですらエロ絵という意味で通ってたくらいです  まぁ私はecchiで検索してましたが、日本のエロ文化がたくさんhitしましたね  海外サーバーであげられているから無修正でしたし」 「幼稚園児からそういうのを見てると、こういう子が育つのか」 「失敬な。私の性欲は生まれつきです。エロ汁噴出しまくりです」 「そのフレーズ、気に入ったの?」 ----------------------------------------------------------------  元エージェントに与えられた部屋は、比較的まともだった。  空調も整い、テレビ等の娯楽もある。スケジュールは決まっているが、  それさえ守れば食事も取らせてもらえる。  薬の効果を確かめるバイトの生活環境と、良く似ていた。  だが、こちらは寝ているだけで、金のような利益が得られる訳じゃない。  寧ろ時という金よりも大切な物を、悪戯に消費されていく。  それが堪らなかった。 「拷問にも屈せず、快楽調教にも屈しない」  オクトに、部屋の外から話しかけているのは、……メイジだった。 「一体、貴方の何が不満なんでしょうか? オクト」  体に傷跡はないが、心には拷問の苦痛が刻まれているはずだ。  それは悪夢となり、今も彼を苦しめているはずである。なのに、  彼は、疲弊こそしているものの、奴隷にはならなかった。 --- 「フェブも、貴方の願いもむなしく、奴隷になりましたよ?  今はふたなりという性奴隷として、……幸せそうに使われてますよ?」  想像するだけで吐き気がしたオクトは、それでも、  殺意のようなものは、けしてメイジには向けなかった。 「不死身のジュン様は、どうしている?」 「……ジュン、ですか?」  孤児院の院長であり、今は自分の従順な使い。  彼の事について尋ねられる意図が、メイジには解らなかった。 「何も、変わってません」 「何もか。……そうか、あいつは何も変わっちゃいないか」 「何を言いたいのですか?」  オクトは、仕切りであるガラスの窓越しにあざけるように笑った。 「としあきみたいに、泣かなかったって事だよ」 「――何を」 ---  思い人の名前を出されて、メイジははっきりと狼狽した。 「あいつは、あのなんでもない男は、お前を幸せにする為に全てを捨てた男だ  日本でいう、どこにでもいるような大学生でありながら  あのノヴよりも先に、自分の体をお前に捧げ、自分の人生をお前に捧げた  メイジちゃんをどうにか幸せにしたい、そう思ってるだけなんだろうな  だから……なんでもないあの男は、不死身になった」  ジュンは、本当になんにもない男だ。  頭が良い訳じゃない、体力がある訳じゃない。平凡な男。  それでも、彼は不死身と呼ばれている。……死なないから。  例えそれがどんな過酷な仕事だろうと、虫の息になりながらも生き残った。  言い換えれば、運が強い男だ。誰よりも死を恐れるのに、  誰よりも先に、メイジの為に命を投げ出す。全てはメイジの為、  自分が死んだら、彼女を守れなくなるから。 「……だから、メイジはあいつの奴隷だから」 --- 「オクト」 「メイジを幸せに出来ない」  笑顔だったが、寂しさが混じった。 「奴隷は言いなりだから、お前の間違いを正してくれない」 「……」 「だからメイジ、としあきを、としあきを奴隷にしてもお前は」 「黙りなさい!」  窓越しでも、その叫びは伝わった。  メイジは、オクトの言葉で形になりそうな不安を、拒否するように叫んでいた。  だが、オクトは隔離されている。メイジの手の届かない場所だ。  掘られる心配もねぇ――自嘲しながら、彼は言った。 「幸せになれないんだよメイジ、そんな事もわからないって馬鹿なクソガキだな?  奴隷は侍らせられても、愛しあえる人間一人も得られないとは情けない限りで」 「オクト!」 ---  他の元エージェントが、抵抗をしなくなっても、  彼だけはずっと、この事を伝える為だけにこそれだけの為に抵抗していた。 「……言わないで」  彼女を幸せにする為に、 「そんな恐ろしい事、言わないでくださいオクト」  彼女を、悲しませる台詞を。メイジが泣きじゃくる言葉を。 「としあきは、奴隷にします。奴隷じゃなきゃ、また見放されるもの  愛しあえなくてもいい、人形になって欲しい。オナホのついた人形でいい」 「……それでお前は、あの日、幸せだったか?」 「聞かないで、オクト」  孤児院で、一人きりの部屋。今も持っているオナホ付きの人形。  いくら語っても、エロいとだけ言われ、理解されない激しい性欲。  自分の悲しみを――癒してくれるのは、人形なんかじゃない。  生きた人間だという事は、……気付きたくない。  としあきを奴隷にして、永遠に一緒で居たいから。夢を見たいから。 --- 「……ジュン」  メイジの後ろに、いつの間にか立っていた彼に、 「メイジが望む事が、メイジを幸せにすると、全て、そう思ってるのか?」 「……思うしかないんだ。僕は馬鹿だから」  メイジを後ろから抱きしめながら、 「ただ、命令を聞いていた方が、彼女を幸せに出来ると思うしかない」 「お前は大人失格だな、図体のでかいガキだよ」 「それでいい、メイジの人形でありたい」 「愛されるだけで、愛せない。情けない男だよな、お前も」 「自分で自分が嫌になるよ、……それでも」  ジュンは、……不死身は、 「僕はとしあき君を、彼女の人形にする」  そう、脅えながら言う男に、抱きつきながらメイジは、  ジュンに、お願いをした。  としあきを人形にしてと、子供みたいにねだった。 --- メ「若さ! 若さってなんだ! ……抜かずに八時間やる事ですか?」 と「全然違うから、そのビッグマグナムはしまってよ。ね、いや、本編でしてないからって、アッー!」 メ「次回予告、最終回まであと少し、果たしてとしあきは私を助けられるのでしょうか?」 と「そ、それとも、僕が人形になって終わり、いいよ! そこもっと突いて!」 メ「じ、次回、14歳としあきが遂に組織へ! そして、最初に、……イイ! エロ汁噴出しそう!」 と「さ、最初に会うのはぁ、メイジじゃなく、あ、もう、だめ、いくぅ!」 ノ「……頼むから、犯りながら予告はやめてください」 メ「あ、ノヴもエロ汁塗れに」 ノ「誰のせいですか!」 ---  性の為に愛はあるのか。  愛の為に性はあるのか。  子供を生み、自分達の種族を拡大していくには、性欲は必要である。  子孫はこうのとりによって運ばれてくる訳では無いのだから。  男と女という性があって、初めて、愛は成立する。  ……だけど、この少年と少女の性交は、子供など産めない。  ただひたすら彼女が少年を抉るという、神様が本来想像しようがない、  しかし、愛しあう者同士の性交だったのである。  そして、この愛は世界中を見渡せば珍しいものでもないし、  愛の為に性を別っする必要があったかも、解らなくなってくる。  卵が先か、鶏が先か。その難題にも答えが出た世界なのに、  14歳のとしあきは、けしてこれに答える術を持ってなかった。 ---  愛等ない、ただひたすら人間を犯し陵辱する性も、  性等ない、口付けの一つも交わす必要なく互いを思いあう愛もある。  凶暴な性欲と、異常な愛。  その二つを混ざり合わせる事が出来ず、きっと彼女は苦しんでいる。  自分にも、自信がない。  彼女の体を求めているのか、彼女の心を求めているのか、少しも解らない。  犯されたいと今も夢みているけど、それは肉体が求めているのか、  愛してるゆえなのかも、自分で判断出来ない。  彼女の物だからたとえ男性器でも奉仕できるのか、  正直、男性器ならなんでも良い程自分が淫乱なのかも。  ……純愛映画はけして嫌いじゃない。綺麗事は、見ていて美しいし、せつない。  だけど自分と彼女には、全く似合わないものじゃないかなと思う。  彼女が病にかかったら、最後にする事はキスじゃなく性交だと思う。  今も目を閉じ、アパートでのあの日を思い出すと、体が火照る。……立ってしまう。 ---  情けないとなじられても、卑猥だとなじられても、自分は彼女に性欲を隠せないだろう。  愛してるから体を重ね合わせたいのか、ただ彼女の肉体を求めているのか、  その両方なのか、一方なのか、どっちにも自信が持てない。  会いたいという気持ちさえあればいい訳じゃない。  この問題に答えを出さなければ、自分はメイジに会えない。  自分は、もう一度好きだと言いたいから。  最悪、奴隷になってもいいけど、好きと伝えたいから。  その好きな気持ちに、疑いなんて持ちたくなにから。……だから、 「だから、ダットリーさん」  組織一の才女に、せつない声で尋ねた。 「僕はどうすればいいいんですか」  彼女の自室、車椅子に座る彼女の前で、としあきも座っている。 ---  としあきの後頭部には、オアーズが銃口を向けていた。  机には、アップの手により紅茶が二つ置かれていて、二つとも半ば減っていた。  組織にひっそりと潜入したとしあきは、メイジの元に直接行けなかった。  寄り道は、最初から予定していた。 「他人に答えを求めるなんて、あんた、どんだけ情けないのかねぇ」  この人なら答えをくれるんじゃないかと、淡い期待を抱いたから。  みっともなく、縋っているのだ。  ダットリーは、この、メイジを狙う侵入者に対して、微笑んだ。  キスをすればいいと、言った。 「昔、同性愛なんて世界中で当たり前だったさ。けど、キリスト教がそれを禁じた  子供をなせない行為だからね。神様の癖に、えらく科学的なものだよ」  少しぬるくなった紅茶を一口含んで、彼女は言葉を続ける。 --- 「でも、そこまで合理的な宗教が広めた行為で、人間的に不自然なものがある」 「……キス?」 「唇をさ、体に押し付けるっていう性行為。あっちじゃ、男同士だろうと女同士だろうと、  たとえふたなりだろうとチュッチュしあってるよ?」  こんな風にねと言って、彼女はとしあきの手をとり、甲に口付けをした。  なんでもない行為なのに、……何か、心が温かくなった。  自然と、泣いていた。 「メイジは奪っていっていいよ。代わりにこの組織、私にくれるんだろ」 「はい、……はい」 「ギブアンドテイクは成立だけど、あと一つ条件がある」  アパートに戻ったら、私達を招待しろと言った。 「メイジちゃんとは友達で居たいからねぇ、寂しいのは嫌いだよ、わたしゃ」  顔をうつむけながら、ボロボロに泣いて、としあきは感謝した。  キスをするという単純な指示が、命令が、……何もないとしあきには嬉しすぎた。 ---  犯されるんだろうな、と思う。そして、自分も犯されたい。  だけどその間、キスをしようと思った。  純愛映画みたいなキレイなキスは絶対できない、貪るようなやらしいキスになるだろう。  それでもいい。  相手を陵辱するんじゃなくて、相手の心を求め合うキスが出来るなら、  それで、好きという気持ちが伝わるなら。  掘られながらでも、それでいい。それで―― 「させない」  アップとオアーズによって、メイジの部屋の前に案内された彼に、立ちはだかる、 「メイジにキスなんてさせないよ、君は恋人になっちゃいけない。人形になれ、としあき君」  不死身のエージェント、ジュンの手には、何も武器などない。 「愛さなければ、悲しみも無いから。例え」  喜びが彼女になくてもと、こう言ってジュンという名のメイジの人形は、全力の一撃で襲い掛かり、  ……その狂拳を防いだのはとしあきでなく、ノヴの崩れた顔だった。 --- 「……初めて、ですね」  崩れた部分を殴られたノブの、その顔から、血が、じんわりと滲む。  瘡蓋を無理矢理ひっぺがしたような傷は、ひりつくような痛みを生むが、  それでも尚少年は笑い、 「院長先生に、殴られるのは――」  そして、その顔を崩した。  鳩尾へ一気に突き刺さる、無慈悲なジュンの一撃は、  何も無い腹の中を嘔吐させる程に強烈な一発だった。  大人が、子供を全力で殴る。 「ノヴく」  思わず声をかけたとしあきのローを鞭のようにしなる足で蹴り、  よろめいた所を体を重ねるようにして、押しつぶして、  腹の部分の肉を、親指と人差し指で引きちぎるように、つねった。 「いああああああああ!?」 ***  神経のつまった肌を強烈に締め上げる行為。  もしそれを、大の大人が戦略に取り入れたならば、恐ろしい物になる。  穴あきペンチで自分の肌を挟まれるような体験に、  叫び声をあげられずに居る者が、どれだけいるのであろうか。 「とし、あきさん」 「どういう心変わりかは知らない」  つねるのを離し、体を離して次にジュンが繰り出したのは、  股間の部分を思いっきりかかとで踏みつける行為だった。  声も、出せない。一瞬で、脳から命が抜けていくような感覚。  白目を剥きとしあきは股間を押さえ込み、情けない声で呻いた。 「メイジが好きな君が、どうして、僕を止めようとする  主人に対しての正誤の判断が、……おかしい」  ……息を整えた、ノヴは話しかけ、「僕はメイジさんを」  ――その途中で攻撃をしかける。フェイントをかける。 ***  小さな体を十分に振りかぶっての一撃は、お返しとばかり鳩尾に突き刺さったが、  呻きながらもそれと同時にジュンは、少年の崩れた顔を掌で覆い、  握り潰す。 「ぃ、ぎ!?」  そしてその箇所に、サッカーボールに対するように躊躇なく蹴りを叩き込む。  吹き飛ぶノヴ、靴の甲に、糊のようにべっとりと血が付いた。  卑怯だ、外道だ。  そして、純粋だった。  メイジを守る為ならなんだってする。それは狂気に良く似ていたが、  初めて、彼女を拾った日と根本は変わっていない。 「……院長先生」  ……変わってないのなら、 「としあきさんを、会わせてあげて、その人だったら」 「メイジを、奴隷じゃなくて恋人として幸せに出来るかもしれない」 ***  そんな事は解っている。だが、 「メイジは、それは望んでいないよ、ノヴ君  心の底ではそう望んでいるかもしれないけど、表面上は、嫌だって言ってる  心の底なんて僕らには関係ないよね、ただ、与えられた命令だけをすればいい」  立ち上がったノヴに対して、ポケットから取り出したのは銃じゃなくて、石。 「僕はメイジが好きだ、でも、彼女を幸せに出来なかった」  ノヴの崩れた顔に投げつける。えぐりこむ石、血が宙に舞った。  崩れた顔が土砂崩れのようにさらに破綻していく。 「だからそれからは、メイジの望む事だけをしようと思った  彼女の願いをかなえる人形になろうと思った、……としあき君」  後ろでやっと呻きを抑えてきた少年に、振り返らず、話しかける。 「僕はなんて事ない、ただの男だよ。でも、メイジの為なら必死になれる」  不死身と呼ばれる男は、 「僕如きを倒せないなら、君は、人形になった方がいい」  そう言った。 ***  ……立ち上がるとしあき、無防備な背中をみつめる。  だけど、どう襲い掛かっても、何をしても、返される気がする。  どこからどう見てもただの大学生にしか見えないのに、  必死になるだけでどうして、こんな事が出来るのだろう。  筋力がアップしたとか、速さが増したとかそんなんじゃない、  メイジの為の行動にためらいが無くなる、大人が子供を虐めれる。  必死になれば、もう死ぬのだから、それ以上は死ねない。  不死身―― 「……僕は、貴方みたいになれない」  せつなそうな声で呟いた。 「メイジが好きだけど、メイジの為に人殺しなんて出来ない  メイジが好きだけど、メイジの為に奴隷になんてなれない」 「それが君の優しさだし、強さだし、弱さだろうね」  相変わらず無防備な背中を向けている。  これ以上、奴隷を無駄に痛めつけたくない、という配慮だろうか。 ***  だが、歯向かわなければいけない。  無謀につっこむんじゃなくて、それも、ある程度の予測をたてて。  メイジを自分より前から知っていて、彼女を一番深く愛している男。  それを倒す為の方法――  としあきは全力で走り、振り返ったジュンに、  倒された。  のしかかられる。  さっきと同じ体制、  さっきと同じつねりという攻撃、としあきは、  手足も動かない状態でした事は、  ジュンの唇を、唇で塞ぐ事。  ……生理的な嫌悪感は、芽生える事が無かった。  ただ、疑問が生まれ、ジュンの行動は止まっていた。 *** 「なんでこんな事を」 「キス、今みたいにさせて下さい」  ……馬鹿みたいに、願っていた。 「メイジにキスをします、物語の終わりみたいに  キスしたら、お姫様だって眠りから目覚めるじゃないですか  キスで、メイジを幸せにしますから、だから」  涙ぐみながらまた、ジュンにキスをする。  顔を抑えながら、呆気にとられているノヴ。 「僕を彼女に会わせてください、ジュンさん」  ……馬鹿な子供と、感じた。……自分に凄く似ていると。  ジュンは立ち上がり、情けない顔のとしあきの襟を掴み、  投げ飛ばした。  ……メイジの部屋に向かって。 「……僕は君を、メイジの奴隷にする事はできない  だから、メイジ本人に人形に仕上げてもらう」 ***  哀れみとかじゃなく、本当に、そんな理由だった。  多分どんな手段を使っても、他人である自分が、彼を人形に出来ない。  優しさ等でなく、そう判断しただけだった。 「君を肉人形にしたい彼女に会わせよう」 「……それで、もし」  としあきは立ち上がる。 「メイジが、僕の事を、恋人にしたいと思い直したら」 「僕は彼女の望みの為に生きる人間だ」  ジュンは、笑わなかった。どこか落ち込んでいるようでもあった。 「だったら、それでいい」  相手に何もかもを与える事が自分の愛だった。  けれど、少年は奪い、与える愛を知っている。  ……どっちが大人なのか解らない。 「ありがとうございます」  礼をいって、としあきはメイジの部屋に入っていく。 *** 「……ノヴ君」 「なんですか、院長先生」 「メイジは幸せになれるかな?」  そんな事等わかるはずがない、意地の悪い質問のつもりだった。だが、 「はい」  ノヴは、ためらいもなくそう答えた。  ……供に暮らさなければ解らない、あの少年の何かを知ってるのだろうか。  一緒に暮らしてみようかなと、自分の唇を抑え、そう思った。  部屋に入ったその瞬間、  椅子に座ったメイジは、 「お帰り」  銃を放った。 「としあき」  少年の胸に、銃弾を叩き込んでいた。けど、……としあきは笑っている。 ---  彼女の銃弾は正確無比に、狙った位置へ飛んだ。  ……それでも、心臓に当たっても、としあきは死んでいない。  何故か? 「……え、えっと、あの、メイジ?」  骨にもギリギリ皹は入らなかった。 「僕、殺したら、意味ないと思うんですけど」 「死姦もいいものかなと思いまして」  防弾チョッキをつけていたから。ただ、それだけの事。 「後先考えずに撃ってましたね、迂闊でした」 「迂闊な事で僕を殺さないで欲しいんだけど」  別れ半年、オクトと出会い彼女を取りもどうとして数ヶ月、  それ以来の再会のはずなのに、淡々と、喋っている。  まるであの日のように二人は話していた。 「……凄いね、メイジ」 ***  銃口を今度は、自分の顔に向ける彼女に、微笑みながら近づいていく。 「ほんの少ししか経ってないのに、こんな凄い組織を作れるんだから」 「私にとっては長い時間でした、としあき」  彼女も、柔らかく微笑んだ。 「貴方の居ない空間は、終わらない冬のようでしたから」 「それで、僕が春を売りに来たから」 「ええ……とても嬉しいです。……貴方と話していると、心が暖かくなる」  嬉しかった。 「こんなおぞましい私を、助ける為に来てくれたんですよね  弱いくせに、がんばって、奴隷だったのに、ヒーローみたいになって  奉仕者も、手先も、ジュンも、ノヴも、やっつけて来た正義の味方  ……私はお姫様なんですね、としあきにとって……。……嬉しい」  だけど、 「でも、としあき」  悲しかった。 *** 「気づいてますよね」  情けなかった。 「私は、恥ずかしいです」  こんな状況で、大好きな人が、会いに来てくれたのに、 「だから笑ってください、侮蔑してください」  それよりも勝る物―― 「勃起、してるんですよ」  彼女の股間の膨らみは隠せない。  涙を流していた。 「……私はお姫様なんかじゃありません、こんな状況でも体を求める  貴方の姿を見ただけで、性欲が隠せないけだものなんです」  泣きながら自分の物を、いじり始めるメイジ。 ***  としあきは笑わない。 「そんな、そんな目で、見ないで、としあき」  彼が近寄ってくる。 「いっそ、侮蔑してくれた方が楽ですから、こんな時にも勃起してるって  どこまでも変態だってなじられた方が、救われますから  哀れみの目で見ないで、可愛そうだと思わないで、……私を、不幸な子だと否定しないで」  耐えられない。 「としあき、貴方が好きです。だから私を肯定する存在に、  奴隷になって欲しいんです。貴方をむちゃくちゃに犯す役割を持った  主人に、なりたいんです。だから私に忠誠を誓って、人形になって」  なんでこんな物が生えていて、そして、それを扱いてしまって、  馬鹿みたいに泣きながら、かなわない願いを叫んでいるのか、  メイジには何も解らなかった。 「普通の女の子じゃなかったから、貴方に会って幸せになれた  だけど、普通の女の子じゃないから、普通じゃ幸せになれない」 ***  としあきの距離がここまで近くなっても、  彼の眉間に、銃口を突きつける事になっても、……解らない。 「貴方を人形にする以外、私が幸せになる方法が解らないんです」 「メイジ」 「人形になってとしあき、愛が無くてもいいから、私に全てを捧げて  毎日犯してあげますから、かわいらしい貴方をどろどろにしますから」 「僕も君が好きだから」 「ミルクも毎朝飲ませてあげます、夜にだって飲ませてあげます  ……私は、淫乱なんです、今もこうして、貴方の顔でオナニーして  ……嫌、どうして、どうしてこんな体なんですか?  私はどうしてふたなりなんですか? どうしてこんな淫らなんですか?」 「君も、僕が好きだから」 「なんでこんな、恋愛映画のような場面で、私は勃起してるんですか?  何もかも台無しにする浅ましい存在なんですか?」 ***  愛よりも、性欲を捨てられなくて。  夢よりも、性欲を選んでしまって。  何よりも、きっと、もしかしたら、  としあきよりも性欲が大事で。 「犯させて、としあき。私を殺してもいいから」  ……としあきは、  うなずいた。 「犯していいよ、メイジ」  そして―― 「僕を殺してから」  笑った。 「そんなの嫌、殺したくないとしあき」 「……ごめんね、メイジ」  としあきは申し訳なさそうな顔をして、そして、 ***  パァンと、  乾いた音が鳴る。  血が、流れた。  ……としあきから。 「……どうして」  自分自身へ向けて放った小さな銃弾は、  としあきを死に掛けにした。 「どうして、としあき!」  縋り付く彼女に、声を出す気力も無い。……痛みで気を失う前に、  としあきは彼女に手紙を渡す。 「まさ、か」  全て、計算なのか?  賭けなのか? ***  何の為――  僕が、生きていたら、キスしてください。  そう手紙に書かれていた。  ……手紙を読んだ彼女の手が、ふるふると震える。  目の前には、人形になりかけのとしあき。  人の形をした、命のないものになりかけのとしあき。  彼女が欲しがっていたもの、彼女が待ち望んでいたもの、  もうすぐ、少女の手に入る―― 「……誰か」  だけど、 「誰かぁ!」  欲しいのは、こんな物じゃない。 *** 「助けて、としあきを助けて、死なせないで!」  狂乱した彼女は、泣きじゃくりながら部屋の外へ向かっていく。 「誰か、、誰か来て、としあきが!」  自分が欲しかったのは、ただの人形じゃない。  犯したら、声を出して欲しい、感じて欲しい、ぬくもりを与えて欲しい、  逃げないで欲しい、絶望しないで欲しい、私を見放さないで欲しい、  私が犯しても、私が何度も何度も狂ったように犯しても、  それでも、 「死なせたくない」  笑ってくれる、としあきがいいから。  人形よりも、そっちの方がずっといいから、そう、  やっと気づいた。 「としあき――」  部屋を出る直前、彼女が亡骸に振り向いて、 *** 「……」 「……ええと」 「……とし、あき」 「ド、ドッキリ、成功、なんて」 「……」 「い、いや、だって僕、防弾チョッキつけてたでしょ?  血はその、鶏とか用意できなかったから、ただの絵の具で……  あ、そ、そんな怒らないで、走ってこなくても、いやちょっとぎゃー!?」  華麗なるドロップキックを、決められたとしあきは垂直に吹っ飛んだ。 「し、暫く見ない内にこんな技を」 「ふざけないでください! なんですか、何考えてるんですか!  どれだけ心配したと、こんな冗談を、としあきという人は――」 「メイジ」 ***  そして、 「僕のお願い、聞いてくれるよね?」  手紙の内容は、即実行される。不意に唇を奪う少年。  メイジの瞳は一瞬驚きで閃いたが、  ……それでも、陶酔してしまった。  目を閉じて、抱きしめあい、長く長く口付けを交わした。 「……ん」  互いの唇が離れた後、メイジはとしあきに頬を寄せる。 「……としあきは、私の奴隷の癖に、生意気です」 「お仕置きする?」 「ええ、……凄いですよ、今の私は。エロ汁噴出しまくりです」 「うん、僕も多分、馬鹿みたいに喘いじゃうから、ていうか喘ぎます、変態でごめんなさい」 *** 「でも不思議です」  キスをしている、あの間だけは。 「ずっと、ずっとキスだけをしたいと思ってた。犯したいとは思わなかった」 「……それじゃ、もう一度する?」 「嫌です。それより早くちんぽをとしあきの尻にぶちこみたいです」 「……もうちょっとムードを大事にっていうかいや待って!? 本当にいきなり!?」 「ああ久しぶりのとしあきのお尻、いい艶、いいひくつき、あはぁ……」 「品定めしてる!? も、もう少し、色々話してからとかの方が! ああもうメイジ!」 「としあき、このセックスが終わったら」  彼女は自分の物をあてがいながら、 「また、キスしましょうね」 「……メイジの馬鹿」  顔を赤くする彼が愛しくて、そして、  久しぶりの二人の行為は、相変わらず異常で、けど、  相変わらず、幸せそうで。 ---  一ヵ月後―― 「……ここが新しい、としあきと私の愛の巣」 「本当はもっと安い所が良かったんだけどね」  見上げるのは築二年、家賃公共費含めて六万二千円と、  この地方にしては割高な値段ではあるが、仕方あるまい。 「前のような場所って、良く考えたら声だだ漏れだもんね」 「ええ、火事で全部焼けてよかったです」 「……まさか住人も」 「失敬な、このメイジ、人殺しなんて真似はしません」 「僕殺そうとしてたじゃん!」 「はいはい、痴話げんかはいいから」  新しい住処を見上げる二人に、声をかけるのは、 「しっかりこの荷物運ばないかい、全くぐずだね」 「……車椅子に座って何もしない貴方に言われましても」 *** 「部屋を探したのは私じゃないか、だろ?」  車椅子に座った彼女、ダットリーは、  私服姿のオアーズとアップに同意を求めている。 「そもそも二人とも未成年だから、保証人が居るってぇのに  私がその保証人をやってるんじゃないか? だいたい」 「ご、ごめんなさい! ほらメイジも謝って」 「組織に居た時は私の部下でしたのに」  ぶつぶつ言いながら手伝いをしようと、軽トラに、  ……たった一人で冷蔵庫を運び出すテンパや、  配線工事の為に来たcgiとイングリッド、  元奉仕者の手先が勢ぞろいで手伝いに来ていた。 「……でも、オクトさんとかは居ないけど?」 「もうブルガリアに帰っちゃいましたしね」 *** 「本当にいいのか? ジュン」  帰りの飛行機、隣の席になったジュンに問うオクト。 「お前にとって命をかけて守る存在なんだろ?  日本に残らずに、それは果たせるというのか?」 「……もう隣に、としあき君が居るからね」 「僕は失恋しちゃいましたし」  顔を仮面で隠したノヴも、ため息をつく。  慰めてあげようかしら? と微笑む、奴隷から人間に復帰した、  フェブに対して、遠慮しておきますと言っておいた。 「それに、やっぱり日本よりブルガリアの方が、肌にあってますから」 「……だな、まぁたまにメイジの譲ちゃんちに遊びに行くのはいいけど」 「ただ、一つだけ心残りがありますよね」 「全くだ」  忙しかったせいで、祖国の英雄が土俵にあがる様を見れなかった事である。  心残りがありつつも、元エージェントは、一路ブルガリアへ。 ***  昼過ぎには、すっかり引越しは完了したが、 「……あのさメイジ、家電とかそういうもの用意してよ」 「どうしてですか、これらは全部生活の必需品じゃ」 「大人の玩具とかローション一年分とか、明らかに必需品じゃない!」  としあきは正論を言っているが、他の面子からしたら何を今更といったところ。  あの再会のあと、メイジの部屋で一週間こもりっきりだったのは忘れない。  寝食忘れて、やっと部屋から出てきたら、二人して栄養失調になりかけてた。 「とりあえず鍋でもしようかい、つっても、テンパ用に別に用意しなきゃいけないが」 「……自分を制するのはできる」 「空腹我慢サレテモサー」 「うちらも心苦しいし、なぁそやろジッパ」  室内に犬をいれてはいけないが、ベランダには大丈夫だと、犬も居た。 「……そういえば、鍋作る前に聞いておきたいんですけど  結局組織のほうはどうするんですか?」 ***  メイジから譲り受けた組織は、これからも存続させるらしい。  ただし現在、政府と交渉中であるとの事。 「正義の味方でもする気なんですか?」 「まさか、商売だよ。……蛇の道は蛇っていうしね  犯罪ギリギリの事をやって、犯罪やっちゃった奴らを探し当てて、捕まえて売る  その代わり政治家から金をたんまりと頂く  その金で、組織は絶対数を保つ。勢力の拡大を目的しない  そういう機能だけをもった組織になるという訳さ」 「……切り捨てられませんか?」 「まさか。交渉相手はお得意様ばかりだ」  どういう事?という顔のとしあきに、ダットリーは笑った。 「売春はまだやってるんだ。……政治家の性癖結構面白いよ?  それを正直に晒す奴は、……逆に、信用おけるじゃないか」  アップが作った鍋は、スタミナをつけてとカキのキムチ鍋だった。 *** 「あ、あの、聞いていいか、解らないですけど……やっぱりごめんなさい!」 「ああもう、まだ何も言ってないじゃない貴方」 「そ、そのあの、……としあきさんの、仲間たちは?」 「……別に、連絡はとってないよ」  メイジの分を器についで、渡して、  それは寂しくないかとオアーズが問うと、としあきは首を振る。 「みんなまたただのとしあきに戻っただけだよ」  その掲示板の詳細を知っているメイジだけが、言葉の意味が解り笑った。 「……みんな行っちゃったね」 「ええ、という訳で早速」 「待った」  鍋の後片付けもすんだ部屋で、襲い掛かりそうなメイジを手で制する。 「どうしてですか、もう二人を阻むものは何も無いのに」 *** 「そりゃ僕らにはもう、世間体とかも無いけどさ、でもメイジ」  少し恥ずかしそうに、彼は呟いた。 「今日なんだけど、良かったら、僕がメイジにいれていい?」 「……え?」 「……メイジの処女をもらいたい。駄目かな?」  ……さんざん、としあきを犯してきた彼女なのに、  その言葉には激しく動揺していた。 「ど、どうしてそうなるのですか? なんでまた急に……んぐ!?」 「……ん、……二人の記念日にしたいから」  キスをした後、顔を間近にして、としあきは呟く。  14歳の少年は10歳の少女に告白した。 「……痛く、しないで下さいね」 「それ、僕が何時も言ってた事だよね?」  ベッドも敷かず、そのまま固い床に二人して寝転がり、そして、 ***  童貞を喪失した少年、処女を喪失した少女。  これにより、普通の性交も時にはするようになったけど、  相変わらずするのは逆転した倒錯的な行為であり、  結局、狂った日常を取り戻す事になってしまって。 「え、としあき学校に行くんですか!?」 「やっぱり働くとなったら……な、泣かないでよメイジ、留守にするからって」 「……いえ、決めました! 私も飛び級で同級生に!」 「えー!?」  毎日、入れたり、入れられたり、飲んだり、飲まれたり、  それは明らかにおかしくて、どこからどう見ても変態で、 「や、やだよ、メイジ絶対学校でも僕の事。もしそれがバレたら、ん!?」 「……ん、としあきは、キスされると断れなくなりますね?」 「メイジの馬鹿……」 「それじゃ今度はこっちにキスを」 「メイジの馬鹿!」 ***  愛がないと言われてもおかしくない関係。……だけど、 「なんだかんだいっていっぱいキスしてくれたじゃないですか」 「ううー、……だってメイジが誘うから」 「普通の男の子は誘ってもキスしてくれません」 「だ、だって、それは。……メイジ?」  普通のキスをしている時は、 「としあき」 「……何度目なんだろうね、もう」  愛があるかのように思える二人。 「ねぇとしあき、私がお嫁さんでも、お婿さんでも」 「僕がお婿さんでも、お嫁さんでも」  愛していると声をそろえて、唇を重ねた。 (ブルガルアふたなり少女サドロリ編 おしまい) --- --- 正直、書く事も無いのですが、とりあえずありがとうございました。 元々ネタの為に書いたシリアス編でしたが、こんな長くなるとは思いませんでした。 多分誰も、大円団展開とバトロワ展開とエロ展開、どれがいいですか?と、 聞いた事も覚えてないと思います。もしバトロワ展開だったら、誰も彼も死んでいて、 メイジととしあきも心中していたと思いますので、大円団でよかったかなと思います。 そもそもなんでブルふたで書き始めたのかも良く覚えていません。 ただ、相変わらずとしあきの性癖は無限大だな、と思ったのは覚えています。 こういうスレだと未完に終わってしまう作品が多いので、 自分のは、無理矢理ですが、話を終わらせる事ができたのはほっとしてます。 えーと後は・・・これからもブルふたは永遠に不滅とか、適当な事言って終わります。ありがとうございました。 PS.特にありません。 --- --- >サドロリが本音をこぼしたのを初めて見たんだ。 え、このあとがき本音だったんですか? 知らなかった・・・自分は心の中で、 クロマティ高校の野中先生になりたかったのか・・・。 次回から魁!ブルガリア高校が始まります。 ---  14歳のとしあきとメイジが新たな暮らしを始めて少したち、  二人で学校も通い始めているが、今日はお休みの日。  午前八時、のそのそとベッドから起きると、隣で寝ていたメイジが居なく、  部屋を見回すとテーブルに食事の準備をしていた。 「ふぁ……ありがとうメイジ、ご飯の用意してくれて」  寝ぼけ眼を擦りながら、パジャマの侭イスに座る。  チーズトーストにオレンジジュース、そして、砂糖の入ってないヨーグルト。  ごくごく簡単なメニューである。 「それじゃ、いただきます」  オレンジジュースを飲んで、チーズトーストをかじり、そして、  その合間にヨーグルトを一口含んだ。 「……?」  何か、そのヨーグルトから違和感を感じて、もう一口食べる。  ……としあきは、もう一度食べたその行為を、後悔した。 「こ、これって、メイジ……まさか……」 *** 「もちろんそうです」  彼女は悪びれた様子も無く言った。 「私のヨーグルトもまぜた特別なヨーグルトです」 「な、何考えてるんだよメイジ!?」  スプーンを手から落として、イスから立ち上がるとしあき。  真っ赤な顔で少年は、無表情のメイジに怒り始めた。 「ど、どうして、こんな事するんだよ!? なんでこんな、おかしな事」 「……としあきは良く眠れたようですね」 「話をはぐらかさないで」 「私は、あなたのせいで余り眠れていないのです」  メイジのその言葉に、としあきの声が止まる。 「……えっと、メイジ? どういう事かな?」 「……夜中の何時かは解りませんが、としあき、私の股間に顔をうずめてましたね?」  少年は言葉を失った。 「パジャマごしに私のおちんちんに顔をこすりつけてオナニーしていましたよね?」 ***  ……している。昨夜ふと、物寂しくなったとしあきは、  メイジを起こすのも悪い気がして、……ふとんにもぐりこんで顔を彼女の股間に近づけた。  そして、その膨らみに顔をあてて、自慰をした。  バレてないと思っていたのに。 「自慰をしてすっきりした、としあきが気持ちよさそうな寝顔を浮かべている隣で、  私は体の火照りを冷ます事もできず、寝付くまでもんもんとしていたのですよ!?」  彼女は涙目で、としあきを恨みがましそうな目でみている。  としあきは最初こそ苦笑いを浮かべていたが、やがて、非を完全に認め、  頭をテーブルにこすり付けるように下げて謝罪した。 「ごめんメイジ! どんな罰でも受けるから許して!」 「……今日は一緒に買い物行く予定でしたけど、それは午後からに致しましょう」  そう言って彼女は、としあきにテーブルの下にもぐりこむようにいった。  そして、彼の目の前で、するするとワンピースのスカートをたくしあげる。  ……彼女の物は、既に、大きくなっていた。  これに対して欲情してしまう自分がおかしい事を知っていても、としあきは目が離せない。 *** 「ほら、としあきが大好きなソーセージですよ?」 「ソ、ソーセージって……あ……」 「としあきはケチャップをかけて食べるのですよね」  一直線にそそりたった男性器に、彼女はトマトケチャップをかける。  倒錯的で、変態的な行為である程、二人の興奮は高まっていってしまう。 「……としあき♪」  可愛らしい声で誘惑する彼女に、少年はあらがうすべもなかった。  ケチャップが塗られた一物を彼は口に含んでしまった。 「ああ……一晩中勃起していたものがとしあきの柔らかいお口に……!」  頬を染めた少年は、慣れた様子で彼女の物を気持ちよくしていく。  四歳年上の男の子のかいがいしい様子に、一種の感動すら覚えるメイジ。  この人無しじゃ生きられない自分と、私無しじゃ生きられない彼を改めて確かめる。 「……メイジのソーセージ……美味しいよ。メ、メイジ……」 「はーい♪美味しい肉汁をたっぷり出してあげます……!」  そして、口の中に放たれる青臭いヨーグルトを、少年は幸せそうな顔で飲み下していった。 *** 「メイジィ……!乳首を指でぐりぐりするのはやめてよぉ……!」 「だって、こうするとお尻に埋めたものがぎゅぎゅっと絞まるんです……!」  フェラチオを楽しんだ彼女は、次にセックスを望んだ。  イスに座ったまま、こなれた彼の後ろに、萎えない自分のものを突き刺す。  何度やっても飽きない、彼と彼女の幸福な趣味である。 「ちょ、ちょっとまって!? どうして腰をあげるの!?  駄目だよ、このままじゃ料理に僕のがかかっちゃうよ……!」 「かける事が目的です!自分のミルクがかかった朝食を食べるとしあき  考えただけで興奮します……、出して、私も出しますから出して……!」 「や、やだ、そんな人間失格な真似……ああ……!?」  こらえる事なんてできず、メイジに射精させられた少年は、  用意された朝食に、自分の白く濁った汁をぶっかけてしまった。  お尻にさしたまま、彼女は幸せそうな顔でイスにすわり、……パンを手にとる。  白く汚れたパンを千切って、自分の口元と相手の口元へ運んだ。  ……この後どうなったかは、彼等が、筋金入りの変態である事だけ書いて想像に任せる事にする。 *** ---