「あ~死ぬる」  そういいながらも朝食を作るのは利明の甲斐甲斐しさか。  安アパートの一角。  利明はぼんやりとした頭でフライパンを動かしていた。  思い起こされるのは、ほんの一週間前の出来事。  ジェスというメイジの協力者。  二度目の組織との接触。  始めて見たノヴ。 (『今回は殺さずにすんだな。』  ジェスはそう言った。  本当にそうだと思う。  次は、どうなんだろうか。  自室には、今、ジェスが最後に渡したハイパワーがある。  アレを使うのだろうか。  一週間ずっとそんなことを考えていた。 (自分でもよく分からないことに首突っ込んだよなぁ  それは本当に幼稚な理由からかかわったこと。  自分の悪い癖だ。  でも、それが自分にとって大きなウェイトを占めはじめている。 「と、これでいいのか?」 「おふぁよう…利明ぃ………。」 「お?おはよう。おきたか?」  そういって利明は時計を見た。  朝の九時程と朝食には少し時間は遅いだろうか。  時間間隔が狂いつつある二人には瑣末事だが、 取り合えずメイジの動きを促すために鍋の中身を見せる。 「おまえが言ってたのってこれで良いんだよな?」  そういって見せられた朝食をいぶかしげに見たメイジだったが、 その中身が分かると輝かせるように目を見開いた。  ベイクドビーンズ。  他にも食卓にはベーコン、目玉焼き、マシュルームのソテー、焼きトマト。 利明の判断でパンは揚げパンとフランスパンの二種類。 飲み物にミルクとデザートには気休め程度にブルガリアっぽくノンシュガーのヨーグルトがある。  ブルガリアの朝食ではなく、 イングリッシュブレックファストとまで呼ばれるイギリス風の朝食だ。   「すっごい!利明!!」  そういうメイジの目は年相応の少女の輝きだった。  朝飯でそこまで喜ぶことだろうか?、とも利明は思う。  ただ悪いことではないので微笑ましくその日常を受け入れることにした。 「じゃあご褒美に朝のア○ルファックを」 「いらないよ?ものすごく要らないよ?」 そう言って利明はメイジに席につくよう強制した。