■ 初日 ■ ユキ「あークソー。古文のハゲ峰、講習の模試で補習なんかするんじゃねーっつーの」 ユカリ「う~ん、今回はユキが悪いと思うよ? 赤点なんかとっちゃ駄目だよ」 リョウコ「ユキはどっちかっていうと暗記モノは苦手だからなあ…」 ユキ「私を待っててくれたことは嬉しい。でも、今はなんか薄ら笑いのアンタ達が憎い」 リョウコ「ケッ! 八つ当たりですってー? バーカ! バーカ!」 ユキ「なにおう! 理数系は軽く90こえてんだ、総合でアンタより上だったらいいのっ」 リョウコ「負ーっけ惜っしみー? アタシ補習なんて受けたことないんですけど?」 ユキ「 ウッ……」(泣)  照りつける強い日差しが、容赦なく歩道の石畳を焼く。  彼女達はこの坂の上にある公立女子高校の三年生。今午前中の夏期講習を終えてきたところだ。  一応三人とも別々の大学へ進学を目指している筈なのだが、  その様子からは毛ほどの危機感すら感じられない。  自分たちの将来なんか想像できなかったし、この瞬間は永遠だと信じて疑わない時期だった。  騒がしく言い合いながら、彼女たちはなだらかな下り坂を降りていく。  やがて、三人は目的地である駅前のショッピングモールについた。  ユキ、と呼ばれた少女がなにやら渋っているようだが、二人に押し込められるように  無理矢理オープンカフェの一角に座らされたようだ。 ユカリ「古文はいいとして、英語が芳しくないのはマズいよね…。受験で相当不利になるよ…」 リョウコ「まあユキなら大丈夫でしょ、基本的に頭いいし」 ユキ(無ーー視!) リョウコ「そうヘソ曲げるなって、ホラ、苺クレープおごるよ、はい、ユカリ確かはチョコ好きだよね?」 ユキ(無・・・視・・) ユカリ「うん、ありがとう。私の分は…おごりなの?」 リョウコ「もちろん、ハイどうぞ…。わをっ! うめーっ! 抹茶うめーっ!   このまま右手の苺も、簡単に食べれる気がするな」  物憂げな表情でチラチラと様子をうかがっていたユキが、カバンから財布を取り出した。  向かいに座っている二人に目を合せないようにして、そそくさと立ち上がろうとする。  それを制するように、腰まで届く黒髪を持つ少女が静かに口を開いた。 ユカリ「駄目だよユキ。クレープはリョウコのお疲れ様とごめんなさいなんだよ?   ユキはそれを受け取れないの? リョウコが恥ずかしがり屋なのは知ってるでしょう?」 リョウコ(クサいセリフに赤面) ユキ「……そっか、そうだよね。ごめんなさいリョーコ。私は馬鹿です。苺クレープください」 リョウコ「はいドゾー」 ユキ「いただきまウホッ! うめーっ! 苺うめーっ!」  猛然とユキはクレープに掴みかかる。背中を丸め、髪を振り乱しながら食らい付いた。  噛みついたまま首を大きく横に振ってクレープを引きちぎっている。  二、三度ガチガチと歯音を響かせ、そのまま飲み込んでしまった。 ユカリ「…リョウコの気持ちなんだから、ちゃんと食べようよ」 ユキ「コンセプトは"腹ペコのワニ"。豪快に、しかもたおやかで。つーかリョーコのマネ」 リョウコ「たおやか? 淑女なアタシにピッタリの言葉だけど、そのザマは似ても似つかないね」 ユカリ「……」(←リョウコから目をそらして半笑い) リョウコ「なにそのリアクション」 ユカリ「うーん、ちょっと」 リョウコ「えっ? えっ? マジ似てるの?…目とかイッてるしヤバくない? アタシいっつもそうなの?」 ユカリ「目と首の感じとかはチョット似てる…」 リョウコ「 グハッ 」  三人は馬鹿だった。  駅前のベンチで少し話し込んでから、三人はユキの家に向かう。  リョウコとユカリは学園の女子寮に住んでおり、駅を挟んで完全に方向が逆なのだが、  今日はユキの家で遊んでいくようだ。    ここ一年、仕事の関係で両親が海外なので、兄弟の居ないユキは実質一人暮らしに近い。  最初の頃は一人でいるユキを心配した二人がいろいろ世話を焼いていたのだが、  どうやら心配ない、と解った後も自然と集まるようになっていた。いわゆる溜まり場である。  さらには、よくよく何かと理由をこじつけて、ユキの家に泊まりに来る二人だった。  「怖い話をきいた、一人で寝れない」「寮の風呂が壊れた」「隣部屋の子が百合だった」  「駅に着いたら向かい風だった」「百円拾った」など理由は様々。 ユキ「いっつもなんか買ってくるけど、今日はいらねーよ、なんか悪いんだよね」 ユカリ「う~ん、そう? じゃあ飲み物だけ買っていこう」  近くのスーパーで安く購入しようということになったらしい。  手早く買い物を済ませた三人は、足早にユキの自宅に向かう。  他愛もないことを言い合いながら、ペットボトルを振り回したりしている。  甘味物の誘惑には勝てなかったのか、結局大量のお菓子も買い込んでいるようだ。  大通りから少し離れた白い洋館に到着すると、玄関の傍らに場違いな影が鎮座していた。  住宅街に不釣り合いな金髪の少女は、携行用のキャリーバッグに腰をかけて空を見上げている。  三人が近づくと顔を上げたが、最初、その表情は限りなく無表情に近かった。 ユキ「オオー。外人さんだ。ハローっ」 リョウコ「キュート! プリチー!」 ユカリ「わぁ、かわいい。お肌真っ白だよ」 ???『!!……』 リョウコ「なんかユキのこと見てるよ、隠し子? ユキは何歳で女になったのかな? ん?」 ユカリ《こんにちは。お母さんは何処? 迷子なのかな?》 ユキ「英語なのに凄く反応が薄いね…。なんかビックリしてるのかな?」 リョウコ「首振ってイヤイヤしてる…。迷子じゃないなら、どうしたんだろう?」 ユキ「なんかホントに私のことスッゴイ見てるんだけど」 ???『───────Yu…ki…──────!、────────────!!』 ユカリ「うん? 何語? フランス? イタリア? しかもユキって言ったよ、今」 リョウコ「ユキっ、ユキに用があるんんじゃないの?」 ユキ「えぇー。私なんにも悪いことなんかしてないよ」(錯乱) ???『────!!、───!!───……』 リョウコ「おわっ、なんかいきなり札束出し始めた」 ユカリ「米ドル? なにかお願いしてんのかな…。ユキ、 間違いなくユキになにか頼んでるんだよ、コレ」 ユキ「凄く…なんか…。一生懸命だね…。ただ事じゃないのかもね」  ユキは少女の前にしゃがみこんだ。自分の表情に細心の注意を払って、  札束を持った少女の両手を優しく包み込み、ゆっくりと首を左右に振る。  ハッとした表情を浮かべた少女は、急に黙りこみ、唇をかんでうつむいてしまった。  しばらくの間少女は沈黙を続けていたが、やがて、しっかりとユキの目を見つめながら、  たどたどしいながらも、だがはっきりと自分の意志を伝えた。 ???『Please help me…, Please……』 ユキ「えっ?」 リョウコ「ちょっ…」  我慢していたのか、ついに緋色の瞳から滴がこぼれ落ちる。  弾けるように泣き出した少女は、ユキの服をつかんで放さない。  嗚咽をあげて泣き叫ぶ姿。感情の爆発を真っ直ぐぶつけられて、三人はしばし呆気にとられてしまう。  少女の背中をさすってなだめていたユキだったが、決意したのか急に立ち上がる。 ユキ「……よし解った! 私に任せろってんだコンチクショウ!」 ユカリ「どうする、ユキ。まず、警察に届けるっていう…」 ユキ「拉ーーーーーー致!!」 リョウコ「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」  少女を小脇に抱えたユキは、玄関を乱暴に開け放ち、そのまま家の中に姿を消した。  二人は、道路に残されたキャリーバッグとぬいぐるみを持って急いで後を追う。  ユキの部屋に移動した面々は、とりあえず腰を下ろして対策を練ることにした。  「とりあえず、お腹すいた」などと言いながら机にお菓子を並べて、聞き込みを開始する。 ユカリ《初めまして。私はユカリ。あっちがユキで、そっちがリョウコ。お名前聞かせて?》 メイジ《??…。アー、ンー、メイジ》 ユカリ《ご両親は? 一人でココまで来たの?》 メイジ『(ふるふる)』(首を振って否定) リョウコ「なにこの疎外感」 ユキ「戦力外? 私たちって、自分で思ってるより使えない奴なんだ…。泣きそう…」 ユカリ《私たち、貴女の身元を知りたいの。バッグを調べたいんだけど、許してくれる?》 メイジ《ンーーー。ゥウーーーーー。……》  ユキ「なんか困ってない?」 リョウコ「う~ん、英語が駄目なのか、ユカリの発音が駄目なのか、嫌がってるのかどれなんだろう?」 ユカリ「そう言われるとなんか傷つくよ…。自信はあるんだけどなあ…」 ユキ「まだ小さい子なんだから、英語あんまり分かんないんじゃない?」 リョウコ「そうかもね、なんか知らない国の言葉っぽいの話してたし」 ユキ「よし、私に任せろっ…。イェア! 私ユキ! ハイこれクッキーとジュース。   eat eatしてdrinkingすれば、気持ちも落ち着くよ」 ユカリ「……」(絶句) リョウコ「こっ…これはひどい…。今のは本当に高校三年生の英語力なのか…」 ユキ「えー。だってテスト期間でもないのに英語で考えるの面倒くさいんだもん。それになんか可哀想」 ユカリ「でも、言われてみれば確かに尋問してるみたいな雰囲気だったかもね」 ユキ「そーよ。言葉が通じなくて心細いだろうから、こっちが深刻な顔しちゃダメ。   ウチらの沈んだ気持ちは伝染するからね。多分」 ユカリ「うん、とりあえず落ち着いてもらおう。それが良いよ」 リョウコ「なんか素直に信用できないなぁ…。ユキ英語ダメだし」   オロオロと三人を交互に見やっていたメイジに、リョーコが寄り添う。  お菓子の袋を破って皿にのせ、コップにジュースを注ぐ。 リョウコ「どうぞ、召し上がれ」(ふんわりスマイルとジェスチャー付き) メイジ『(はむはむ)』(可愛い) ユキ「うおーッ、リョーコスゲー。食べてる、小っちゃい口で、なんか必死に食べてるよカワイー」 ユカリ「お腹すいてたんじゃない? さっきドルだしてたけど、それじゃあ買い物できないし、   言葉もわからないから両替できなかったのかも知れないし…」 ユキ「ウチらも食う? こんなに見られていると緊張するんじゃ?」 リョウコ「賛成、お姫様が食べ終わるまでコッチも食べながら様子を見ようよ」 ユキ「よし、冷蔵庫からなんか出してくるよ」 ユカリ「あたしが行くよ。ユキが居なくなると心配するかも知れないし」  小一時間ほど、当初の予定通り食事会(?)のような形になった。  空腹だろうという予想は当たっていたようで、食べ終わったメイジに何気なく新たな品を押しやると、  チラリとユキの目を伺う。ユキが頷くと、おそるおそる手を付ける。  この繰り返しを続けていたのだが、かなり食欲は旺盛で、  三人が買ってきた分は殆ど無くなってしまった。 ユキ「とりあえず、どうしよっかー」 リョウコ「ポリスにコール、オーケー?」 メイジ『(ぶおんぶおん)』(超絶拒否) ユキ「…リョーコ、遠回しに私のこと馬鹿にしてるんだろ」 リョウコ「いやいや、意外に通じるモンだと思ってねぇ…。ブハッ!」(鼻水) ユカリ《じゃあ、何か私たちにできることはないかな?》 メイジ《!?……。ンー、ココに、居たい、しばらく。お願い、します…》 ユキ「ユカリ、今のstayって泊まるっていう意味でいいの?」 リョウコ「Pleaseって、日常会話じゃよっぽどじゃないと使わないんじゃなかったっけ。   本当に困ってるんだ、きっと」 ユキ「そうだろうね。なんか表情がそうだし…。よく見ると髪の毛とかくたびれてるなぁ…。   せっかく綺麗なのに。お風呂入れてあげよっか?」 リョウコ「お湯張ってくる」 ユカリ《祖国は何処?》  メイジ《家?……。ブルガリア共和国》 ユキ「ブルガリア? ブルガリアって何語なん?」 ユカリ「わかんない…」 ユキ「パソコン点火ァ……。Google先生の答えは…。ブルガリア語ってあるんだ…。キリル文字?…。   難解なロシア語にそっくりな文法っぽいなあ…。翻訳サイトは…企業向け、有料…。   パソコン使った筆談みたいな事を考えていたんだけど難しいかもね」 ユカリ「警察をいやがる理由はなんなんだろう?」 ユキ「ブルガリア大使の秘蔵の娘っ子。家出したけど、早々と挫折。   それを一介の高校生が分をわきまえずにかくまった。そして発覚して大目玉」 ユカリ「うわ、なんかバレたら停学じゃあすまされないような顛末だね…」 ユキ「と思ったけどそれは無いな。私の名前と顔、住所をあらかじめ知っていた可能性が高く、   日本語を話せない。ブルガリアから直接来たと仮定して、ユーロではなくドルを所持している理由も   よく解らないしなあ」 ユカリ「英語はあんまり得意じゃないよ、多分」 ユキ「メイジっていうんだっけ…。この子…。何があったのかなあ」 リョウコ「お風呂沸いたよーっ」 ユキ「ユカリ、メイジをお風呂に入れてあげて。ブルガリアに湯船は無いかも知れないし、   勝手も違うだろうから。少しでも言葉が通じるユカリなら、少しは気が楽だと思う」 ユカリ「解った」 ユキ「よしよし、こんなに小っこい体ではるばるブルガリアから来たんだよね…」(なでなで) ユカリ「おいで、お風呂はいろ?」 メイジ『??』  トテトテとユカリの後をついていくメイジ。 リョウコ「風呂入ってる間、アタシらはどうしよっか」 ユキ「晩飯でも買いに行こう。それとメイジの生活用品とかも買ってくる」 リョウコ「少し話が飛躍してるんじゃ? キャリーバッグにそれぐらい入ってるんじゃない?」 ユキ「すぐに帰っちゃうかも知れないし、無駄になるのかも知れないけど、そうしたいんだ」 リョウコ「アーア。なんか下手に深く関わると良くない気がするんだけどなぁ…」 ユキ「まったく同感。だけど、あの叫びを聞いた瞬間に決めたんだ」 リョウコ「助けて、か」 ユキ「異国の地で、言葉の通じない外人に、しかもお金を持ち出したりしてまで   助けを求める心境っていうのは解らないけど、アレはかなり追い詰められていたと思う」 リョウコ「いきなりだったもんなぁ。肩振るわせて泣いてる子なんて始めて見たよ」 ユキ「なんかブルガリアの子みたい」 リョウコ「へ~え。食文化は日本と似てんのかね」 ユキ「調べるの忘れた…。まぁいいや、行こう」 ユカリ「ア゛ーーッ」 リョウコ「……今度の叫び声は、ユカリらしいけど」 ユキ「ユカリこんな声も出せるんだ…。というより何事?」  二人は急いで脱衣所に向かった。  ドタドタと足音を響かせ、躊躇なくカーテンを開け放つ。 ユキ「どうしたの、ユカ……」 リョウコ「チンコだSUGEEEEEEEEEEeeeeeee!!」  俗に言うふたなりの器官を持つメイジが、白い肌をさらして立ちつくしている。  横には、ペタンと座り込んでしまったユカリが、動転と混乱から立ち直れず涙目になっている。 ユカリ「あっ、アノ、女の子なのに、ついてて、おっぱいなのに、女の子の、本当に……」 メイジ『……』 ユキ「……!!、リョーコ、すぐにユカリを居間に連れて行って、お願い」 リョウコ「どうした?……。ああ、そうか」 ユキ「早く!!」 リョウコ「ん。ユカリ、立てるか? 腰抜けたんだ、だらしないなぁ」 ユカリ「ごっ、ゴメ…」  リョウコがユカリの抱き上げて浴室を去り、後には二人と静寂が残される。  全裸のまま両手を握りしめて、険しい表情のメイジだったが、  ユキと目が合うと、つい、とユキから顔をそらしてしまう。  ユキは静かにメイジに近づくと、膝をついてメイジを抱き寄せた。  両腕を背中に回し、小さな体を包み込んで、おでこをメイジの頭くっつける。 ユキ「ごめんね。ユカリに悪気はないんだ。ただ、ちょっとビックリしただけなんだよ?   メイジがありのままの自分を見せたのに、強く拒絶されたように感じたなら謝るよ。   あの子は純情なんだ。良かったら、許してあげて?。メイジの心は泣いてるのかな?   でも、ココにいる人間は誰もメイジのこと嫌ったりしないよ…。だから、そんな顔しないで…」  それは、メイジの国の言葉ではなかったけれど。  沈んだ表情の少女は、薄く微笑んだように、ユキには感じられた。  これはユキの勝手な解釈なのかも知れないし、独りよがりだったのかも知れない。  ユキは自分の着ている服を乱暴に脱ぎ散らかすと、浴室の扉を開けて中に入った。  クルリと回ってメイジを見やり、手招きをする。 ユキ「私とお風呂入ろ? ねっ?」 メイジ『!……。───Yuki!、──────!!』 ユキ「アハハ、何言ってるか解んないよ…って、メイジもそうなんだよね…。   こっちに来て。シャワーで体流してあげる」  メイジは迷いなく浴室に足を踏み入れた。ユキがシャワーで頭をすすいでも、  軽く目をつむったまま抵抗ひとつしない。  ユキは自分の体を流してから、先に湯船につかってみせた。  ユキがニッコリ笑うと、メイジもそれに倣う。  ブルガリアにも湯船ってあんのかな、とたわいもない事を考えながら、  ユキはメイジの白くて細い肩に何度かお湯を掛けた。 ユキ「お肌すべすべだなぁ。これが、若さか…」  ガラッ  全裸で仁王立ちのリョウコと、リョウコの影に隠れるようにしてユカリが立っている。 リョウコ「抜け駆けしてんじゃねーっつーの。ほら、なにしてんの、こっち来なよユカリ」 ユカリ「ううっ」 ユキ「痴女ーーーん。うん、みんなで入ろう。ユカリは変に意識しちゃダメだよ?」 ユカリ「ウン、ガンバって謝っ……」 リョウコ「オラオラさっさと入るんだよ」(ユカリに怒濤の突っ張り) ユカリ ザバーン(ユカリ頭から入浴) ユキ「もしもし、リョーコさんや。相風呂では体を流すというマナーをご存じかね?」 リョウコ シャワワーン(自分は浴びてる) ユカリ「そっ、そんな…」 リョウコ「はいアタシ綺麗。でもちょっと四人横並びはキツいな。ユキの上にメイジを乗っけてくれよ」 ユキ「よしきた」(かかえてメイジ移動) メイジ『ぉおーぅ』 リョウコ ダバーーーッ (強行) リョウコ「カナーリお湯が無駄になってるなぁ。しかしユキ、対面座位とはこれまた…」  メイジ『(きょろきょろ)』(三人の胸を見比べる)  リョウコ「んー? アタシの胸スゲーだろー?」 ユキ「その無駄にデカい乳、なかなか垂れてこないな。毎日呪ってんだけど」 リョウコ「ハッ! ひがみとは恐れ入る」 ユキ「ユカリ、メイジのオチンチンばっか凝視しないの。大事なところなんだから、恥ずかしいでしょ?」 ユカリ「ぅえっ、そんなに見てた?」 メイジ『(ぐいぐい)』(ユカリの乳揉んでる) ユカリ「いっ…痛いよ…」(自責の念から逃げられない) リョウコ「ゲラゲラゲラゲラ、まとめて仕返しされてやんの」 ユキ「とか言いながら、リョーコはメイジのオマンチョ触っちゃダメだっつーの!」 リョウコ「いやね、ホントにそうなんだなぁ、ってさ」 ユキ「そりゃあ私もビックリしたよ…。あっ、そうだ! みんなでメイジの髪洗ってあげない?」 ユカリ「うん、椅子に座らしてやったげようよ」 リョウコ「シャンプーどれ使おうか?」  三人は口々に言いながら、浴槽からあがって準備を進める。  ただ一人だけ状況を把握できないメイジだけが、しばらくキョトンとしていたが、  促されて椅子に座り、なすがままにされるメイジだった。  始め、硬く体をこわばらせていたメイジだったが、意図を察したのか、力を抜いて身を任せる。  だんだんとリラックスしてきたのか、鼻歌さえ歌い出した。 メイジ『nーnn~♪n~~♪』(ニコニコ) ユカリ「お気に入りの歌なのかな」(優しい小声) リョウコ「ママの子守歌ってヤツだろ。やべっ、髪モロに引っ張っちゃった」(大声) ユキ「ウェーブかかってると、手入れ大変なんだなぁ。そのうえ長いしこの子」(リョーコつねる)  四人での入浴は手狭だったが、  何よりも三人を喜ばせたのは「メイジが笑うようになった」ことだった。  皆一通り洗い終えると、メイジとリョウコが湯船につかり、なにやらじゃれて遊びはじめる。  腰ほどまでしがお湯がないのだが、二人は気にした様子もない。  ユキとユカリは先にあがって手早く着替えをすませ、  偏った冷蔵庫の中身を見ながら、夕食について頭を悩ませていた。 ユカリ「デザートしかないね…」 ユキ「デザートしかないなぁ…」 ユカリ「買いに行く? 私、急いで髪乾かしてくるよ」 ユキ「せっかくの綺麗な長い髪なのに、乱暴に乾かして痛んじゃうのは心苦しいかも。   いや、そうじゃないな。私が嫌だ。後でリョーコと私で買いに行ってくる」 ユカリ「ユキとリョウコだって、同じ事をすれば痛むんだし、乾かさないと風邪を…」 ユキ「ダーーーーメ」 メイジ『…ぁ…っ、……ぁぅ………』 ユキ「おや? 今のエロエロボイスは私の幻聴なのかしら、ユカリ?」 メイジ『……ぅっ、…ぅっ…ぁぁ………』 ユカリ「……」(真っ赤) ユキ「うぉーい。リョーコやっちゃったよ…」 ユカリ「ねえ、リョウコまさか、メイジのこと手籠めにしてるんじゃぁ…」 リョウコ「精液デター!」 ユカリ ドサッ!(白目剥いてDown) ユキ <<ああっ、ユカリもヤられた!>>(しかも自分の妄想に)  ユキはユカリを抱きかかえて居間のソファに寝かせることにした。  崩れてしまった頭のバスタオルを巻き直し、はだけてしまったローブの裾を正す。  部屋から持ってきたタオルケットを体にかけた頃、浴室からリョウコが出てきた。 リョウコ「ふぃーっ、終わった終わった」 メイジ『……』(濡れた瞳と上気した頬) ユキ「リョーコ、避妊はちゃんとしたの?」 リョウコ「馬鹿な! アタシが受けたんじゃない。手で両方同時に攻めてイカせただけだ」 ユキ「あれ? 馬鹿は私なの? それでも強姦みたいなもんだろ」 リョウコ「多分合意の上」 ユキ「リョーコの思い違い、そうじゃなくとも恐くて抵抗できなかったというのも十分考え得る。   そもそも小っちゃい子は嬲っちゃダメです」 リョウコ「思いっきりイケば、慣れないベッドでも緊張しないでグッスリと眠れるからと思ってやったんだ」 ユキ「そういう問題か? でもこの子を見なよ、まだ十歳そこそこだぞ?」 メイジ『(うっとり)』(周囲にエロオーラ発散中) リョウコ「駄目だ、浸ってやがる。早すぎたんだ」 ユキ「 お ま え 一 回 殴 ら せ ろ 」  リョウコ「解った、解ったよ、アタシが愛してるのはユキだけだってば。もう絶対しない」 ユキ「 違 う だ ろ ? 」(ちょっとマジ) リョウコ「ホントにゴメン、軽率だった…。コレ出んのかなーって、興味沸いちゃってさ」 ユキ「メイジ、驚いた?…ゴメンね。もうこんな酷いことしないからね……」(ナデナデ) メイジ『(!!)』(ビックリしてる) リョウコ「ほほう! ユキにレイプされるんじゃねえかと怯えてるよ! 意外に信用ねえなあ? ユキ?」 メイジ『(ビクッ)』(レイプという単語に反応) ユキ ギロリ リョウコ「もう茶化しません。本当にすいませんでした」 ユキ「はーァ、もういいや。晩飯、プリンとかアイスとかしかないんだけど、どうする?」 リョウコ「すげぇ夕食だな…。そうか、ユカリが驚いて、予定変更したのアタシらだったっけか…。   行くの面倒くさいんでそれちょうだい。というよりアイス食べたい」 ユキ「いいよね? それと明日、講習の選択があるのは私だけ?」 リョウコ「いや、ユカリも出席のはずだったけど…とりあえず今日の分、寮に外泊の連絡しておくよ」 ユキ「うん、宜しく……。C'mooon メイジ、限られた備蓄を徹底的に物色する。我々の今回の任務だ」 メイジ『?』 リョウコ「電話したらアタシは今日の寝床作っとくよーっ」  ダイニングに肩を並べた二人の異国間同盟の連携は凄まじく、  冷蔵庫の仕切りも全て外してしまう勢いだった。  この作業に言葉は必要ないようで、実にスムーズに事が進む。  選別されてテーブルに並んだのは、焼きプリン×5、ヨーグルト500g×1、チーズケーキ×2、  チョコミントアイス(ボックス)1kg×1、シュークリーム×3、などなど。  ユキは身に覚えのないケーキとシュークリームの賞味期限には自信がなかったが、  とりあえず気付かないフリをして、自分で食べることにした。  一人エロの世界へ旅立ってしまったユカリを除き、三人は卓につく。  メイジがヨーグルトを欲しがるそぶりを見せたので、ユキが器に移したのだが、  おかわりを続けた挙げ句、結局全部食べてしまった。  メイジのお腹をリョウコは心配していたが、彼女もまた大量のアイスクリームを口にしていたので、  ユキは総員全滅のファンファーレを頭の中で打ち鳴らしていた。  つつがなく微妙な夕食は終わり、リョウコが用意した寝床である居間に移動した。  足の低い大きなテーブルを立てかけて、三人で寝れるように布団がくっつけてある。  布団の脇にはユカリが横になっているソファーがあって、  リョウコがやったのか、ユカリにはシーツがもう一枚かけられていた。  日本の文化である「床に寝る」ことに抵抗を感じないのか、メイジはすぐに寝息を立て始めた。  心身ともに疲れていたのだろう。リョウコが気を利かせた(?)事も大きいかも知れない。  長い間寝付けずにいた年長二人だったが、ついにリョウコが口を開いた。 リョウコ「なあ…。ユキ、これからどうするんだ?」  ユキはなかなか返答しなかった。その沈黙の意味が拒否ではなく、  長考であることをよく知っているリョウコは何も言わずに返事を待つ。 ユキ「なるようにしか…。ならないよ。でも、私がしてあげられることは、全部してあげるつもり」 リョウコ「ユキらしいよ」  リョウコはお人好しの親友の返事を聞いて微笑んだ。  三人の認識はまだ甘かった。  明日にも親権を主張する者が現れ、それに引き渡せば話は済む、と少々楽観視していた。  情が移ってしまえば、当然別れは辛くなるが、ただそれだけだ、と。  実は問題は山積みだった訳で。それどころか、具体的な問題の内容すら明示されていない状態。  そんなこんなで、一日目終了。