今日もとしあきと家でごろごろとしているメイジ。 今度一緒に遊びに行こう、という約束はしたけれどとしあきはかなりの出不精なので何時になることやら。 メイジは半分諦めているが、家でのんびりとするのも悪くないとは思っている。 あまり堂々と外を歩ける身でもないし。 ただ、部屋の中で篭ってばかりだとさすがにヒマなのでとしあきに色々とちょっかいをかけていた。 「ねぇとっしー。遊ぼうよー」 寝転がりながらマンガを読んでいたとしあきの背中にまたがってみる。 「とっしー言うなー……」 あまり気にせず、OL進化論を読みふけるとしあき。 「あーそーぼーよーぅ」 がっくんがっくん腰を振ってとしあきの身体を揺らしてやる。 さすがに顔をしかめるとしあき。 視界が揺れてマンガが読めないようだ。 「みゅー」 「おわっと」 ぐるーり、と身体を横に半回転。 背中に乗っていたメイジはそれに合わせてまたがり直し、今度は腰の上に正面から乗っかる格好になった。 「ねぇメイジ」 「なぁに、としあき」 ふと瞳に真摯な光を浮かべ、としあきはきりっと言い放った。 「僕はメイジといるだけで幸せだよ?」 あまりにも白々しい。 「いや、そういうのはいいから」 つれないメイジの態度にとしあきは悩ましげなため息一つ。 「仕方ないにゃー」 たまにとしあきはこんな喋り方をするが、容貌が女子中学生くらいにしか見えないので違和感はない。 ただ、あくまで中身は二十歳すぎた男なのではあるが。 「じゃあドカポンでもやる?」 「アレはケンカになるからヤダ。他のがいいー」 とか言いながら身を揺らしていたメイジだが、はたと自分の体勢に気が付いた。 仰向けに寝ているとしあきの腰の上にまたがっている。 しかも先ほどから自分は派手に腰まで振っていた。 これではまるで、と変な連想をしてしまいメイジは赤くなる。 しかも擦り付けているうちに何だか気持ちよくなってきてしまった。 これは恥ずかしい、と腰を動かすのを止めて一度深く深呼吸。 下になっているとしあきは、そんなメイジを気にした様子もなく気だるい表情でぼんやりしている。 バレてないよね、と安心しかけたメイジだが、としあき視線が先ほどより少し下がっていることに気が付いた。 まさか、と自分の下腹部に視線を落とすと。 「……あ」 ワンピースを、メイジの分身が軽く持ち上げていた。 もうナニがどうなっているかは誰がどう見てもわかる状態に。 「……あはは」 「メイジ」 としあきはぐっと身を起こすと、優しくメイジの名を呼んだ。 メイジを膝に乗せたまま、ほとんど正面から抱き合うような格好になる。 顔が近づき、吐息がかかる。 思わずメイジはくらくらとしてきてしまった。 いや、むらむらと言った方が正しいかもしれない。 「としあき……」 ほとんど無意識に持たれかかり、身を任せる。 「年頃の少年少女が不意に元気になっちゃうのはよくあることだからね。気にしなくていいよ」 「……え?」 思わずとしあきの顔を見上げると、とつとつと諭すような口調で語りかけてくる。 「生理現象ってやつさ。トイレでおしっこでもすればすぐに治まるって」 「あー……うん」 もっと生々しい感覚だとはとても言えず、メイジは曖昧に頷く。 正直治まりがつかないので、としあきに何とかしてもらいたい気もする。 でもせっかく無理強いさせられる生活から抜け出せたのに、自分からそういう行為を求めるのは抵抗があった。 「じゃあちょっとトイレ行ってくるね」 「ごゆっくりー」 軽い様子のとしあきを見ていると、一人もやもやしているのが情けなくなってくる。 トイレで一人で何とかしよう、とメイジは憂鬱になりながらその場を立った。 「あー……情けないよぅ」 身体はすっきりしたけれど、ひどい自己嫌悪に陥りながらメイジはリビングへと戻る。 そこではとしあきが何事もなかったかのように再びごろ寝で本を読んでいた。 「まぁ実際としあき的には何もなかったんだろーけどさっ……」 口を尖らせつつ、気分を盛り上げようと、としあきにちょっかいをかける。 「もー。本ばっか読んでないで遊んでってば!」 後ろから読んでいた本をかっさらってやった。 「あっ」 しまった、と言わんばかりの表情を浮かべるとしあき。 「ナニ読んでのかなー?」 もしかしてエッチな本でも、と期待しつつ表紙を確認すると、 「……子育てハッピーアドバイスぅ?」 最近評判の育児指南書であった。 しかも開いていたページは思春期関係。 「いや。絵が可愛かったから。それだけ。うん。他意はないよ」 ぷるぷると身を震わすメイジに、としあきは乾いた笑みを浮かべる。 「……そこまで」 「あははは」 四つん這いになってそろそろと逃げ出し始めるとしあきを、メイジはきっと睨みつける。 「そこまで子供扱いするなー!」 「あいたー!?」 尻を思いっきり蹴り飛ばされ、わりと本気で悲鳴をあげるとしあきであった。