『蝕よ再び』(第4章「牙の慟哭」) (1/6) 敵を倒し、カメラを壊し、武器や弾を奪いながらこの娼館を管理する責任者を目指して進む。 途中で倒した敵が格闘に使えるナイフを所持していたので、今は右手に拳銃を左手にナイフを逆手に握っている。 本来の私のスタイルに近い形で戦えるようになったのはいいが、やはりブランクの影響は大きい。 現役時代よりも疲れが酷い。 肉体的にも精神的にも弱っている。 しかし休んではいられない。 ここの責任者は〈組織〉の中でもそれなりのポストではあるはずだ。 私が反乱を起こしたことがどれだけ重大かは理解できるはず。 ならば〈組織〉に援軍を要請しているだろう。 グズグズしていたら最悪挟み撃ちになる。 私は深呼吸をして息を整えると再び飛び出していった。 **************** (2/6) 娼館内部を把握し切れないまま、とにかく部屋を確認しては上の階へ上り、最上階までたどり着いた。 疲労と細かい負傷でボロボロだが、残りはこの階だけだ。 様子を探ろうとした瞬間、2人の敵が同時に襲いかかってきた。 落ち着いて狙いを定めたつもりだったが、まずい! 1人はヘッドショットを外して肩に当てた。 もう1人は完全に外してしまい、無傷で駆け寄ってくる。 銃では間に合わない。 私は急いでナイフを構えようとしたが、首元を掴まれて押し込まれる。 壁に激突した衝撃で武器を落としそうになるのを必死に耐え、右手の拳銃を敵に向けてトリガーを引き続けた。 目の前の敵が崩れ落ち、咳き込みながら足を踏ん張り、残りの敵の方を見ると片腕で銃を構えようとしている。 右手の銃は弾切れで、咄嗟に左手のナイフを投げつけた。 私の投げたナイフが首に刺さり、最後の敵も倒れた。 弾切れの銃を捨て、最後の敵が撃とうとした銃を拾った。 首に刺さったナイフを抜く気力は残っていなかった。 **************** (3/6) 残った体力と気力を振り絞り、私は最後の部屋に飛び込んだ。 ここのボスらしき人物と側近らしい人物が2人。 側近達が私に向けた銃は2本ともショットガンだ。 咄嗟に横に飛んで床を転がり散弾を避ける。 壁や床に幾つもの穴が開いていく中、二度トリガーを引く。 このレベルなら動きが遅い。 残りはボス1人! 「な、何!?」 「くくく…やはりコイツは効くようだな」 「な…何故…」 ボスがサラを抱え、銃を突きつけている。 「何故逃げなかった!!?」 「逃げたよ。娼婦どもみんな逃げたが、コイツだけ戻ってきたのが窓から見えたんでな。お前が来るまでに捕らえさせたのさ」 なんということだ…。 私は銃を捨てた。 **************** (4/6) 「メイア! 駄目! 私のことはいいから!」 「そういう訳にはいかないよ。君を巻き込んだのは私だ」 「よーし、そのまま動くなよ…。お前を殺るのにちょうど良い物があるんだ」 そう言うとボスはサラを引きずりながら壁に近付いていく。 立体額が壁に掛かっていて、中から取り出したのは鈍く光る銀色の大型拳銃だった。 .44オートマグ! 私は驚愕した。 「まさか! それは私の!」 「そうだ! お前の銃だよ、蝕の牙(エクリプス・ファング)! 自分の銃で死ね──!!」 「やめて──!!」 サラが銃を握るボスの腕にしがみつく。 その瞬間私はすでに飛び出していた。 サラを突き飛ばしたボスが銃口を向けるが構わず飛び込んでいく。 .44オートマグの轟音が響いたが、下手くそが撃った弾は無駄な方向へ飛んで行き、全力を乗せて振り抜いた私の肘がボスの鼻梁に食い込んだ。 倒れて呻くボスが落とした私の.44オートマグを拾い上げる。 そして額に手を入れ、ホルスターやナイフを付けたタクティカルベルトを取り出した。 **************** (5/6) そういえば〈組織〉から逃げようとした私を捕らえたのがこの男だった。 その後も私を監視するためにここの責任者を命じられたのだろう。 あの時私から奪った銃とナイフを戦利品として飾っていたということか。 不快感はあるが、きちんと保管していたことには感謝しておこう。 先程突き飛ばされていたサラが立ち上がり、私のところに来た。 「メイア、怪我はない?」 「サラ、君こそ大丈夫なのか?」 「うん、平気…あっ!」 「サラ?」 突然サラが駆け出し、私に背を向けて両腕は広げた。 そして銃声が響いた。 ぐらり、とサラの身体が倒れ込んでいく向こうに、床に倒れながら拳銃を握ったボスの姿が見えた。 その瞬間、すでに私の右手は愛銃のトリガーを引いていた。 約1年ぶりだったが、私の銃は私の撃ちたい物を正確に撃ち抜いてくれていた。 **************** (6/6) 「サラ! サラ! しっかりしろ! 目を覚ましてくれ!」 なんてことだ、私としたことがこんな油断をするなんて! 「メイア…」 「サラ!? 大丈夫だ、すぐ医者に連れて行くからな!」 「なんで、戦うの…?」 「え?」 「教えて…」 私は一瞬躊躇った。 だがすぐに正直に話すことに決めた。 もうサラに嘘をつきたくない。 「私には、娘がいるんだ。私が戦うのは、娘を取り戻すためだ」 「そう…メイアの子…会って…みたい…」 「会える! 会えるぞ! あの子を取り戻したら絶対君に会わせる!」 しかし彼女はもう何も答えなかった。 「サラ────!!!!」 (第4章終わり)