『蝕よ再び』(第1章「牙の幽閉」) (1/6) 日が沈むとまた新しい1日が始まる。 この館では月と太陽の役割が逆だ。 森の奥深くに建てられたこの館は、どれほど豪華に作っても中身は醜い。 夜毎欲望を剥き出しにした男達がここに集まる。 そして狂った遊びに耽るのだ。 「おい奇形女(フリークス)! ショーの時間だぜ」 館で働く男が下品な笑い声と共に私を呼んだ。 何が可笑しいのだろうか? もう1年近くここにいるのに、まだそんなに可笑しいのか…。 **************** (2/6) 私はゆっくり手足で前を探りつつ男について行く。 私の視界はぼやけてろくに見えない。 男が振り返った。 それくらいならなんとか分かる。 「おいおい、トロトロ歩くんじゃねえよ!」 この男は私の目が悪いことは知っている。 知ってて嘲笑(わら)っている。 でなければ毎回ルートを変えたり、途中に物を置いたり、無意味に人が立っていたりしない。 眼鏡があればいいのだがそんなものは与えられない。 私はやっと舞台袖に辿り着き、助手の女の手を借りて衣装に着替えた。 衣装といっても胸も股間も剥き出しの卑猥なものだ。 今夜もこれから仕事が始まる。 **************** (3/6) 照明を落とした舞台の上で、私は手枷と足枷をつけられた。 「さあお待たせしました! フリークスショーの開幕です!」 司会者の声と同時に私にライトが当たる。 客席から歓声や驚きや嘲笑や様々な声が上がる。 命じられた段取り通り私は股間を突き出す。 「本物かーっ!?」 「偽物はいらんぞー!」 「確認させろ!」 「もっとよーく見せてくれー!」 司会者が客席を制止したのだろう、ホールが静かになった。 「本物かどうか? まずはそれをお見せしましょう!」 助手の女が私の背後に回るのが気配で分かった 彼女は背後から私の股間に両手を回した。 歓声が上がり客席の興奮が上がったのを感じた。 **************** (4/6) それは助手も分かっているのだろう。 観客を焦らすようにすぐに手を動かさない。 しばらく客席の雰囲気を確かめた後、ようやく彼女の両手は左右別々に動き出した。 右手は私の男根を扱き始め、左手は私の女陰をまさぐりだす。 1年近くこの下衆なショーを続けてきた助手は、私の身体のどこをどう刺激すればいいかよく知っている。 私の男根は硬く反り返り、女陰は愛液を滲み出す。 男達の下劣な歓声が一層盛り上がる。 「どっちも濡れてるぜ!」 「おいおい本物かよ!」 「イケ! イケ!」 助手は客席を焦らしてたっぷり時間をかけて愛撫を続ける。 私の性感帯を熟知しているから絶頂の寸前で止めることが出来るのだ。 だがそれももう限界が近い。 **************** (5/6) 絶頂に辿り着けない快感は苦痛だ。 私は身体をよじるが、手枷と足枷で助手の手からは逃れられない。 私がもがけばもがく程客席が盛り上がっているのがうっすらと分かる。 まだか…まだなのか!? 助手の手の動きが激しさを増した。 段取り通りならそろそろだ。 早くしてくれ…早く!! 早く!! 「あッあッアアア──ッ!!!!」 焦らされ続けた絶頂の激しさに私の身体が仰反る。 男根から精液が噴き出しているのを感じる。 私の脚から力が抜け、舞台上に崩れ落ちた。 凄まじい歓声が客席から上がっているのが聞こえる。 **************** (6/6) だがこれで終わりではない。 司会者と助手が私を立たせる。 「さあ、これでこいつが本物の半陰陽であることが分かったでしょう! ショーはここからが本番です! この半陰陽を孕ませたいとは思いませんか!? これより希望者による種付けタイムの始まりです!!」 さらに凄まじさの歓声が上がり、ホールの熱狂が最高潮に達した。 男達が助手を押し退け私の身体に群がる。 ここに来る奴らは全員が変態だ。 私の身体はきっと楽しい玩具なのだろう。 司会者がさらに叫ぶ声が聞こえた。 「見事こいつを孕ませた方には産まれた子供の所有権をプレゼント! もし半陰陽が産まれたら大当たり!」 こいつらみんな、狂ってる。 (第1章終わり)