メイジが家督を放棄したことによって、仕えていた俺は職をなくすことになった。 日本まで追いかけて来たはいいが、 メイジを世話している「としあき」とかいうやつはまるで甲斐性が無い。 本国へ連れ帰ろうと何度も説得したが、 頑なに拒むメイジの首を振らせることは出来なかった。 生活していくために新しい主に仕えたものの、 やはり長年ともに暮らしたメイジのことが気になっていた。 「生活態度の改善を要求します」 訪れるなり不躾とは思ったが、ガツンと言ってやろうと思った。 脱いだ服がそこらに散らばっていた。 「なんだよ急に」 昼も過ぎようというのに、カーテンは閉め切ったままだ。 メイジもベッドで寝息を立てている。 ************************************************************ 「まったく、荒れ放題ですね。どんな食生活してるんですか」 聞かなくてもわかっていた。ゴミ箱の中身で一目瞭然だ。 「ピザ頼んだり、コンビニの弁当買ったり……」 言い訳もしない……。開き直りか?いや、何も悪くないと思っているのだろう。 「メイジは育ち盛りなんですよ。バランス考えてください」 足元の服を畳んで足場を広げていく。 我が家の主もそうだが、日本のオタクというのは、皆こうもズボラなのだろうか? 「いやぁ、最近のお弁当はけっこうバランスいいんだよ」 嘆かわしい。サラダを添える、野菜のスープを加える。そんな形跡は微塵も見られない。 バランスもそうだが、カロリーもオーバーしているだろう。 「今日から俺が作りますから、片付けくらいは手伝ってください」 未だに眠そうにしているとしあきにコンビニの袋を手渡す。 「へいへい」 怠惰は悪だと言うことを一度語ってやらねばならないな。 ************************************************************ 「あぁもう、分別、分別。ペットボトルは別にしてください」 全て同じ袋に放り込むの見つけて咎める。 「全部燃えるごみでいいじゃんか。……それはそうとして、詳しいな」 普段から気を付けていないのが丸わかりだ。 このままではメイジもズボラになってしまう。 「『郷に入っては郷に従う』です。このご時勢、リサイクルは当然かと」 としあきからゴミ袋を取り上げ、中身の分別をやり直す。 「ははは、真面目だな、ノブは」 ベッド脇のゴミ箱に夜の匂いを感じ、少し嫌な気持ちになった。 「あなたが不真面目なだけです」 掃除は……メイジが起きてからで良いな。 「もう少し人を養っていくという自覚をですね……」 そんなこんなで通い妻です。お給料はでません。 ------------------------------------------------------------