「メイジと俺の日々」 <プロローグ>  俺の家には同居人が一人居る。叔父さんの紹介でやって来た10歳のブルガリア少女。と言っても全くの 初対面で、叔父さんの手紙を見せてもらえなかったら、住まわせなかったと思う。  何しろこの子はただの女の子じゃない。  麻薬所持の上に、コルト・ガバメントも使えるというのだから大したものだ。唯一、歳相応なのは うさぎのぬいぐるみだろうか。  初めて家に上げた時、緊張を堪えて抱き締める余り、千切れてしまうんじゃないかと思ったものだ。 もっともその後すぐに麻薬や銃が出てきて、それどころではなくなったが。  だが、本当の衝撃は、その日の夜に待ち構えていた。 メ「ウ・・・うん・・・ウウゥ・・・・・・くぅっ・・・・・・」 俺「えっ!?メイジ!?どっか悪いの?大丈夫?」 メ「いえ・・・その・・・此処に来るまで・・・緊張してたせいか・・・なんともなかったのですが・・・・・・」 俺「なに?なんか持病でも抱えてるって言うの?」  メ「ああっもう我慢できない・・・」  その瞬間の記憶はない。何をされたのかも分からない。俺はメイジに倒され、押さえつけられていた。 メ「トシアキ・・・御免なさい・・・本当に・・・本当に御免なさい・・・」 俺「え?」  そして次の瞬間、俺は貫かれていた・・・・・・・・・。  彼女が果てて、その行為は終わり、俺は彼女の最後の秘密、ふたなりを知った。  その事実はショックだった(行為も)。けれど、泣きながら謝り続けるメイジを見て、俺は何故だろう、 咄嗟に、「この子を泣かせちゃいけない」と、決心していたのだった・・・・・・。  それから日は過ぎ、俺たち二人は、いつしか上手くやっていけるようになっていた。  これから語るのは、そんな二人の日々だ。 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <1.帰宅の風景> 俺「ただいまー・・・、つっかれたー・・・・・・」 メ「お帰りなさい」 俺「メイジ、ちょっと来て」 メ「なんですか?・・・キャッ!」 俺「ちょっと抱っこさせてねー♪」 メ「ちょっ、ちょっとトシアキー、いきなりそんな」 俺「メイジは今日もかわいいなー、俺、メイジをこうしてぎゅうってしてる時が一番幸せ」 メ「・・・ンもぅ・・・しょーがないですねー」 俺「ありがとね・・・・・・。ちょっとこのままゴロンてしていい?」 メ「いいですよ・・・・・」 俺「メイジの髪、いい匂いがするね・・・・」 メ「トシアキ変態っぽいです・・・・・・・・・・・・トシアキ??」 俺「くー・・・くー・・・・・・」 メ「トシアキ、お疲れ様。・・・・・・もうちょっとだけこうさせてあげますね・・・」 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <2.二人で料理を> メ「トシアキ、わたしも何かお手伝いがしたいです。お料理を教えて下さい」 俺「料理?え~と、それじゃ~え~・・・・・・肉じゃがなんてどう?」 メ「是非とも教えて下さい」 俺「じゃが芋は2つか3つに切って、人参は半月切りに・・・。玉葱はくし切りにして・・・」 メ「えっと・・・(トン・・・トン・・・トン・・・)」 俺「牛肉と糸蒟蒻は食べやすいサイズに・・・。まず野菜を炒める・・・水は野菜から出るからね」 メ「野菜を炒める・・・(ジュージュージュー)」 俺「糸蒟蒻入れて・・・・・・。最後に肉を・・・」 メ「糸蒟蒻・・・・・・お肉・・・・・・(ジュージュージュー)」 俺「で、味付けね。味醂・・・醤油・・・。味見してみて」 メ「んー、これで・・・良いと思います」 俺「じゃしばらく煮たら、一旦冷ます。この時に味が染みるから」 メ「分かりました」 俺&メ「いただきま~す」 俺「・・・美味しい!美味しいよメイジ!凄くいい!」 メ「良かったぁ~・・・。トシアキ、まだまだありますよ。たくさん食べて下さいね」 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <3.田舎体験・前編> 俺「えっ俺も?あのさ、分かってるだろ?うちには叔父さんから・・・えっ?連れて来い?・・・そんな、   どう説明・・・えっ・・・とにかく帰れって・・・ええ?・・・ああもう分かった。うん、それじゃ(ガチャ)」 俺「メイジ、どうしても田舎に帰らなくちゃいけないんだ。二、三日泊りがけで出かけるんだけど、   メイジは他所の家に泊まるのは大丈夫?俺の親戚もたくさん来るんだけど・・・」 メ「構いませんよ。トシアキがどうしても行かなければならないなら、どこへでも」 俺「そ、そう、じゃ二人で帰省だな。メイジに日本の『お盆』を体験させてあげよう」 メ「『お盆』。最近ニュースでよく聞きますね。楽しみにしています」 俺「よ~し、それじゃ行くか」 メ「随分早いのですね」 俺「まあ、お昼のお楽しみに合わせてね。行こうか!」 メ「これが『お昼のお楽しみ』ですか?」 俺「そ、これが名物(?)『えきそば』だよ」 俺「そばはどうだった?」 メ「う~ん、不思議な感じです。普通のお蕎麦とは違うんですけど・・・でも・・・それがなんだかクセに   なるような・・・」 俺「まあ気に入ったんなら、帰りも食べたらいいよ。あっ、ほらメイジお城が見えるよ。世界遺産だよ」 メ「ああ!時代劇で江戸城の代わりに出てくるお城ですね?!」 俺(・・・なんでそんなこと知ってるんだ?) ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <4.田舎体験・後編> 俺「メイジ、俺の田舎はどうだった?」 メ「えぇっと、山と、田んぼと、畑と、家しかありませんでした」 俺「まあね。コンビニも無いくらいだからな~」 メ「でも風がすごく涼しくて気持ちよかったです」 俺「田んぼの上を渡った風はそうなるんだよ」 メ「しいたけと、きゅうりと、なすと、トマトを採らせてもらいました。いずれも大変美味しかったです」 俺「俺もよく採らせてもらったよ」 メ「そうだ!びっくりしたことがあります。手でドアを開ける電車が、日本にもあったんですね!」 俺「・・・(苦笑)」 メ「あと、なんで道で会った人たちが、みんなわたしを見たんでしょうか?」 俺「ああそりゃ割と普通のことだよ。この街は昔から外国人が多いから、そんなことないけどね」 メ「そうだったんですか・・・。でも、のどかな良いところでした。また行きたいです」 俺「そうか・・・。良かった、また連れてってあげるね」 メ「ハイッ!是非ともお願いします!」 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <5.ぬいぐるみ> メ「トシアキィ!!」 俺「うわっ!どうしたの!?」 メ「ウ・・・ウウ・・・ウゥ・・・・・・」 俺「えっ!?な、なに?・・・ほらほら、涙を拭いて、何があったか説明してくれる?」 メ「こ・・・ヒック・・・これ・・・・・・これぇー・・・」 俺「あっ!?うさぎ、破れちゃったの!?・・・う~ん・・・でも・・・これなら・・・綴れば・・・」 メ「直るの!?」 俺「え~と自信は無いけど・・・とりあえずやってみよう。裁縫箱、裁縫箱と・・・」 メ「トシアキ・・・直りましたか?」 俺「え・・・と・・・もうちょっと待ってね」 メ「トシアキ・・・」 俺「ごめん!もうちょっとだけ待ってて」 俺「え、え~と・・・う~ん少し見映えは良くないけど・・・」 メ「ああ・・・直ってる・・・。トシアキ、ありがとうございます!!直って良かったぁ・・・。   ・・・爺やのくれたぬいぐるみ・・・」 俺(爺や・・・?・・・メイジって、ひょっとして良いとこのお嬢さん?・・・まあ今は聞くのはよそう。でも・・・   それならなんで、一人でこんなとこまで来たんだ?) ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <6.雷の夜に> 俺(うわぁ凄い雷。映画みたいに光ってるよ・・・。遠くで良かった。これ近くだと凄いだろうなぁ・・・) メ「・・・・・・・・・・・・」 俺「どしたのメイジ?空を見上げて黙り込んじゃって」 メ「えっ?あっ、いえ、別に・・・・・・」  ヒョイッ(メイジを膝に抱える) メ「トッ、トシアキ!?なんですか急に?」 俺「いやぁ~ひょっとしてメイジ、雷が怖いのかなぁ、なんて思ってね」 メ「そんなんじゃありません・・・・・・。ただちょっと思い出していたんです」 俺「なになに?どんな思い出?教えてよ」 メ「え?あの・・・すみません、今は心の準備が出来てません。ですが、いずれ必ずお話します・・・」 俺「ふーん・・・そっか・・・いずれかぁ・・・じゃとりあえず、ぎゅうってしていい?」 メ「えっ、なんでですか?」 俺「う~ん、せっかく膝に乗ってもらったからね・・・まぁいいじゃん」 メ「ンもう、本当にトシアキはー・・・」 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <7.眠れぬ夜> メ「う・・・・・・ん・・・・・・うぅ・・・・・・・んっ・・・・・・」 俺「メイジ、眠れないの?俺、明日早くないから・・・してもいいよ」 メ「いえっトシアキに迷惑は掛けられません!」 俺「でも苦しそうだよ」 メ「だって、トシアキ、痛がってたじゃないですか! それにあんなこと、してはいけないんです!   あんな、はしたない・・・・・・」 俺「もう慣れたよ・・・。それに性欲の何が悪いの?誰にでもあるのに・・・」 メ「だってレディーのすることじゃ・・・!」 俺「いいよもう」  俺はメイジに構わず、下着ごと彼女のパジャマのズボンをずり下ろす。 メ「ちょっ・・・止めて下さい!」 俺「いやだ。俺はメイジがうなされるとこなんか見たくない」  メイジを悩ますその器官をそっと握り、慰め始める。 メ「いやっ・・・やめ・・・て・・・う・・・あぁ・・・んッ・・・」 俺「いいんだよ、すっきりしちゃえば・・・」 メ「ううぅっ・・・・・・アアッ!!・・・・・・・・・ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・・・・」 俺「落ち着いた?・・・おやすみ、メイジ・・・」 メ「トシアキ・・・・・・・・・」  メイジは眠れたようだった。精液を拭き取り、汗も拭いてやる。服を整えてやり、布団を掛ける。  その時、自分の手にまだ精液が付いているのに気づいた。一瞬戸惑ったが、 俺「ぺチャ・・・(舐めた・・・メイジの・・・精液・・・・・・もっと・・・・・・舐めたい?)   ・・・・・・はぁっ・・・俺の方がよっぽど変態だよ・・・・・・・・・」 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <8.演歌と民謡> 俺(メイジ、演歌の番組なんて見るんだ。好きなのかな?) メ「ン~~~♪ン~~ン~♪ン~~ン~ン~~♪~~」 俺「ねえねえ、メイジは演歌が好きなの?」 メ「エッ、あっ、そうですね、うーんなんと言いますか、ブルガリア民謡とちょっと似てるんです」 俺「そうなの?」 メ「ええ、なんとなく・・・ですけどね」 俺「メイジ・・・・・・ブルガリアが懐かしい?・・・それとも恋しくなった?   やっぱり、帰りたいって気持ちはあるの?」 メ「え?・・・・・・いえ・・・・・・んと・・・・・・あの・・・よく・・・・・・わからないです・・・」 俺「そう・・・・・・」 メ「でも・・・うちに帰りたいとは思いません・・・」 俺「えっ・・・なんで?」 メ「・・・言わないと・・・いけませんか?」 俺「いや・・・言いたくないなら、無理に聞こうとは思わないよ」 メ「・・・・・・・・・いえ。お話します。・・・何故、わたしがここまで来たか・・・」 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <9.メイジの回想・前編>  わたしが"それ"を知ったのは、10歳を迎えて数ヶ月余りのことでした。実は当時、 好きな人が居たのですが、その人を見ているに、たまらないものが心の底から湧き上がり、 わたしは夢中で彼に飛び掛っていました。  結局、その場でわたしは取り押さえられましたが、一度目覚めた"それ"は、 もうどうにも出来ませんでした・・・。  屋敷の中がすっかり様変わりしました。けれどわたしはそんなこととは無関係に ひたすら目覚めた"それ"に振り回されていました。  ただはっきりとわかったのは、お父様が笑わなくなったこと、お母様が躾けに躍起になったこと。 誰もそれまでの様にわたしに接してくれなくなったこと・・・・・・。  でもただ一人、爺やだけは変わらなく接してくれました。わたしを庇ってくれましたし、 遊び相手にもなってくれました。  そして・・・爺やがわたしを救ってくれたんです・・・・・・・・・・・・。 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <10.メイジの回想・中編>  それは、遠く夜空に懸かる黒い雲の中に、音も無く稲光が輝く真夜中のことでした。 爺や「お嬢様、お嬢様、起きて下さい・・・!」 メイジ「爺や・・・?なぁに・・・?」 爺や「落ち着いてお聞き下さい。旦那様は、お嬢様をどこかにおやりになることを決められました」 メイジ「ええっ!?嘘でしょう?そんな・・・まさか・・・」 爺や「いいえ。残念ながら本当のことでございます。お嬢様、お逃げになるのです。さぁっ早く!!」 「ちくしょう!逃げやがった!!」「おい!早く見つけて始末しねぇと、俺達が旦那に始末されち まうぞ!!」「おっ、おい!あれ!」「あそこだ!逃がすんじゃねぇ!!」 「お嬢様をお頼みしますぞ!」「よしお嬢ちゃん乗れ!」「待って、爺やは!?」 「黙れ!爺さんはお前を守るために命懸けてんだ!聞き分けろ!」「爺やぁー!!!!」 爺や「お嬢様、どうかご無事で・・・!ウォォ――!!マフィアどもがぁ!!ここから先は通さんぞぉ!!!!」 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <11.メイジの回想・後編>  わたしはその男の人と国を出ました。わたしを逃がし、銃の使い方など、身を守る術を教えて くれたのが、トシアキ、あなたの叔父様です。しばらく二人で逃げ続けたのですが・・・。 叔父「さぁてどうするかな?船まであと一歩なんだが・・・。よし、お嬢ちゃん、俺が突っ込んで    奴らの気を引く。その隙に船へ行け。よし!お嬢ちゃん行け!走れぇ!!」 メイジ「ハイッ!!どうかご無事で!」 船長「ふん!大時化だがね?ふん、神話のように、このお嬢さんを海に投げてみるかね?」 メイジ「いいえっ!そんな訳にはいきませんよ!!わたしは生きるんです!!何があっても!」 船長「ハハッ。冗談だがね。しかしお嬢さん、中々良い目をしているな?強い目だ。ふん、気に入った」 船長「ふん、もうすぐ日本だがね、餞別をやろう。大麻5キロだ。なに、捌き方も教えてやるがね」 メイジ「は、はぁ・・・」  こうして、わたしは日本に、トシアキの元に来たんです・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <12.告白の後に> 俺「そんなことが・・・・・・」 メ「信じては、もらえないでしょうけれど・・・」 俺「うん・・・確かに、俄かには信じ難いけど・・・でも信じるよ。メイジはつまらない嘘なんかつかない」 メ「・・・・・・・・・トシアキ・・・・・・・・・・ック・・・・・・」  (あっ泣きそう)とっさに抱きしめた。 俺「泣かなくていい。泣かなくていいよ・・・」 メ「でも、でも・・・爺やも、叔父様も・・・わたしを逃がそうとして・・・」 俺「そんなこと気に病まなくていいよ。二人とも、小さな女の子を助けようとしただけなんだ。   爺やさんは知らないけど、叔父さんなら分かるよ。きっと、二人とも望んでしたことだと思う。   メイジはだから幸せになってあげたらいいんだよ。それが二人の望んだことなんだから・・・」 メ「そうでしょうか・・・?こんな体のわたしが・・・?この体の所為でみんな・・・!!」 俺「そうだよ。体がどうしたって言うの?俺はそんなの気にしない!むしろ好きだ!!   メイジのこと、体を、ふたなりのことも含めてみんな、みんな好きだ!!大好きなんだ!!   そうだ!俺はメイジがこの世で一番大好きなんだ!!」 メ「・・・・・・トシアキ・・・・・・・・・嬉しい・・・です・・・。今までずっと・・・・・・こんな体でなければって・・・   ずっと・・・ずうっと・・・思ってきたのに・・・。なのに、こんなわたしを・・・好きだって・・・・・・」 俺「もう何も言わなくていいよ・・・・・・。もう、そんな悲しいこと言わないでよ・・・」 メ「トシアキは、すごく優しいですね・・・。わたしの知る限り、一番優しい人です・・・」 俺「・・・でも、それだけだよ。爺やさんや叔父さんみたいに勇敢じゃないの、自分で分かるし・・・」 メ「そうでしょうか?見ず知らずのわたしを受け入れて、そのまま置いてくれたじゃありませんか。   優しくて、勇気のある人じゃないと出来ないと思います」 俺「・・・!」  堪らなくなった。それで思わず、ぎゅっと、より強く抱きしめた。 メ「トシアキ・・・痛いです・・・」 俺「あっ、ああ、ゴメン・・・あの、なんか、当たってたんだけど・・・・・・」 メ「あっ、あの、あのこれは!これはその・・・!」 俺「いいよ、メイジ。隠さなくても。俺はメイジが全部好きなんだから。・・・どうする?鎮めとく?」 メ(コクッ) メ「うんッ・・・うあ・・・んんッ・・・トシ・・・ア・・・キ・・・そっそんな、ああっ」 俺(ン・・・チュ・・・ピチャ・・・(これがメイジの・・・ああ・・・こんな、味、なんだ・・・)チュル・・・) メ「そ、そんな・・・とこ、口に、なん・・・て・・・アア――っ!」 俺(ああっ!出た・・・俺の・・・口に・・・メイジが・・・)コクッ・・・コクッ・・・(飲ん・・・だぁ・・・) メ「・・・ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・スゴ・・・い・・・。ハァッ・・・今度は、わたしの、番、ですからね・・・」 俺「うん・・・いいよ」 メ「・・・では・・・。んっ。・・・・・・トシアキ・・・大好きです・・・大好きです・・・心から・・・・・・ああっ・・・!   ・・・・・・抱きしめて!・・・ぎゅって、して、ください!!」 俺「メイジ・・・!おっ俺も、大好きだよ!メイジィ!ウ・・・わぁ・・・なんか、いつもと・・・違う・・・!   おっ、おかしくなりそ・・・だ!た、たす・・・け・・・て・・・!」 メ「わ、わたしも・・・変、です・・・!も、もう・・・!・・・止まりませんンンッ・・・・・・!!」 俺「お、俺!俺ェェ!・・・うああぁぁっ!!」 メ「で、出ます・・・!!」  腹の中に熱い奔流を感じながら、俺はボンヤリと(ああ・・・これがドライか・・・)などと感じ入っていた。 ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <13.すべて世は> メ「ほらほら観てください。牧羊犬ですよ。お利巧さんで、スッゴク可愛いんです」 俺「ああ、あの牧場な・・・・・・・・・。長いね。これ15分のローカルニュースだよね?もう10分近いよ?」 メ「可愛い~。いいじゃないですか。トシアキも観て下さい」 俺「・・・今日、よっぽどニュース無かったんだなぁ・・・」 メ「う~ん、殺人事件とかより、ずぅっと良いと思いますよ?」 俺「ああ――そうだねぇ。『すべて世はことも無し』・・・かぁ・・・」 メ「なんですかそれ?」 俺「詩の一節。意味はよく分からないけど、俺は『なんにもないのが何よりだ』って解釈してる」 メ「なるほど・・・・・・わたしもそう思います」 俺「そうだね・・・。そういや明日、何もないな。そうだ、メイジ!明日、ここ連れてってあげるよ!」 メ「本当ですか!?ありがとうございます!こうしてはいられません、早く寝ないと!」 俺「えっ!?もう寝るの?・・・鎮めなくても大丈夫?」 メ「ハイッ!明日が楽しみで、それどころじゃありません!」 俺(そっか・・・。もう安心じゃないかな・・・毎日、楽しく過ごしてくれたら・・・何も心配しなくていい・・・)  こうして、メイジと俺の日々は過ぎて行く――――。                  ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ <エピローグ> メ「う―――ん・・・楽しかったですー。動物、可愛かったぁ・・・」 俺「結局、朝から夕方まで一日中かぁ。堪能したな。・・・あっ手紙来てる。外国から?・・・ア――ッ!!」 メ「ど、どうしたんですか!?」 俺「メ、メイジ!お・・・叔父さんからの手紙だぁ!」 メ「エ――――――ッ!?」 ―――お嬢ちゃん。無事、としあきのところに辿り着けたと信じて、この手紙を送る。   俺は逃げ延びた。しばらくブルガリア中を逃げ回ったあと、戻って来た船長に助けてもらい、   ブルガリアを脱出した。    もう何も心配しなくていい。あの時、爺さんの大立ち回りが派手過ぎたんで、さすがに当局も   見過ごせなかったようだ。    親父さんのマフィアとの繋がりも断たれ、幹部連中にも逮捕者が出た。もうお前を狙う者は居   なくなったってことだ。    それと爺さんは何とか生きてる。かなりの重傷だったらしいんだが・・・。    さて、ここからが大事な事だ。俺は今、ブラジルに居る。ここで一人の女の子を育てることに   なったんだが、名前が無かったんで、「メイジ」って付けた。    実はこのメイジもお嬢ちゃんと同じ体をしている。お嬢ちゃんはいつも体のことで悩んでたな?   もうそんなことは気にしなくていい。ここにも仲間がいる。お嬢ちゃんは一人じゃない。    いつか、こっちのメイジを連れて、日本を訪れる。船長も会いたがってる。爺さんも入れて、   そっちに行きたい。としあき、メイジを頼んだぞ――― 俺「・・・良かったぁ―――。二人とも無事だったんだ・・・良かったね、メイジ」 メ「ええ・・・本当に・・・」 俺「ブラジルか・・・地球の反対側にもメイジと同じ女の子が・・・」 メ「クスッ・・・。それにしても、叔父様ったらおかしなことを書きますね」 俺「えっ?」 メ「『一人じゃない』・・・。わたしは、もうとっくに一人じゃありません。爺やに叔父様、船長さん・・・   それにあちらのメイジ・・・。   でも、何よりもわたしにはトシアキが居ます。トシアキが居てくれたからこそ、わたしは一人じゃ   ないって思えたんです」 俺「・・・メイジ。俺はいつまでも一緒に居るよ。何よりもそれが望みなんだ」 ・・・トシアキ・・・  ・・・ありがとう――・・・   ・・・ずっと・・・ずっと――・・・一緒に居て下さい・・・・・・ (完)