『めぐみが過ごす一人の休日』 わたしは寝っ転がって天井を見上げていた。 特に意味はなかった。 (ホントにもう…退屈だわぁ) 折角の休日だというのに、みんな用事があるなんて。 まあメイジさん達もあろえさんも、みんな事情はあるものね。 仕方がないわよね。 でもそれはそれ、これはこれ。 暇を持て余していることに変わりはない。 前までのわたしは、こういう時どうしていたのだろう? 彼女達と出会う以前はどうやって過ごしていたのだったか…。 そういえば、街をブラブラと歩いていたこともあったわ。 大した意味はなかったけど…。 でも部屋でじっとしているのはもう飽きたし、久しぶりに出かけてみてもいいかもしれない。 次にみんなに会った時の話の種が見つかるかもしれないし。 わたしは久々に1人で街に出ることにした。 **************** 街に出たわたしは気の向くまま歩き出した。 以前は何を目的に歩いていたのか…。 あー、そういえばつまんない男をターゲットにして遊んでたこともあったわね。 もっとも、恨みを買った相手に襲われてからはさすがにやめたけど。 でも、その時助けてもらったからメイジさんと友達になれた。 そしてブラックさんにノヴさん、意外だったけどあろえさんとも仲良くなれた。 おかげでみんなから〈色んなこと〉を教われたしね…。 そんなことを思い出していたからだろうか、ふと気になるものを見てしまった。 さっきから、チラチラと視界に入っていた女の子。 不安げな表情でずっと立っていて、何度もスマホの画面を覗き込んでいた。 正直なんだか危なげだなと思っていたけど、疑惑が急速に大きくなった。 向こうからやって来た若い男の人。 身なりはきちんとしてるけど、多分、あれは家族とか親戚とかじゃない。 男のあの目、あれは何度も見ている。 人を品定めする目、オモチャとしか見てない目。 **************** (そもそもわたしが、ここまでする義理なんてないのだけどね…) そんなことを思いつつ、スマホを見るふりをしながらわたしは2人を尾けていた。 いつしか街の中心を離れ、だんだん怪しい方向へ向かっている。 どう考えても、まともな大人が連れて行くところじゃないでしょ。 あの子も少し不安そうではあるけど、まだ逃げようとはしない。 迷ってるのかしら?もうそんな段階じゃないわよ。 こうなったらやるしかない!スマホをしまいながら駆け寄った。 「わぁ、こんなトコで会うなんて珍しいー!久しぶりね!」 「え、誰…?」 女の子は混乱している。 「えーっと、君は彼女の友達なのかな?」 男が聞いてきた。 「そうでーす。お兄さんは?まさかこの子の彼氏?」 「イヤイヤ、そんな関係じゃないよ。ちょっと歳の離れた友達ってだけ」 「そうなの?でも羨ましい。わたしもお兄さんみたいな人とお友達になりたいな…」 **************** 話しながら思いっきり距離を詰め、上目遣いで相手の目を見つめる。 声色は甘ったるく、ちょっと頭軽めなくらいで十分。 そっと裾を握って、すがりつくみたいに。 「あ、あの…」 女の子が後ろから声を掛けてきた。 ほーら、よく見て、この男を。 鼻の下を伸ばした、だらしない、スケベな馬鹿面を。 あなたにどんな甘い言葉を囁いたか知らないけど、これがコイツの本性。 「わ、わたし…」 あーあー、ちょっと涙目になってる。 相手が素敵な人だとでも思ってたのかしら? その男が、突然現れた女の子にデレデレしてちゃあねえ。 「ごめんなさい!」 やっと帰る?まったく、判断が遅いのよ。 これに懲りたら、もう変なのに引っ掛からないでね…。 **************** 「あっ、オイ!ちょちょちょ!」 男が追いかけようとするけど、させない。 腰の辺りに両手を回し、思いっ切りしがみつく。 「オイ!どういうつもりだよ!?」 わたしはパッと後退して距離を取った。 「どうもこうもないわよ、この変態!未遂のうちにさっさと帰れ!」 すかさず反転して、走り出す。 ああ、やっぱり追ってきたわね。 若いから体力ありそう。 こうなれば…。 さっと道を曲がって裏通りに飛び込む。 ここら辺は土地勘があるわたしが有利のはず…! 何度も道を曲がって引き離そうとするが、やっぱり足が早い。 (まずいかな…) そう思った直後だった。 **************** 「えっ!ウソ…」 通り抜けが出来るビルなのに、工事のフェンスで囲まれてる…行き止まり!? まさか、しばらく来ないうちにこんなことになってたなんて…。 「ハハッ、ガキの浅知恵だな…自分で追い込まれてやがる」 追いつかれた! 「ふーん、工事現場か。今日は休みか?入れるんなら、こん中でもいいかもな」 こうなればもう仕方ない。 密かに深呼吸をして息を整え、振り返った。 ニヤニヤしながら、男がゆっくりと近づいてくる。 「ご、ごめんなさい、つい、悪ふざけのつもりで…。許して…」 「誰が許すかよ。計画狂っちまったんだぞ、代わりにテメエをヤらならきゃ気が済まねえ」 男は近付きながら、持っていた鞄からスタンガンを取り出した。 「ククッ、もう泣いてんのか?まだ早えぞ…これからなんだからな…」 「なになに!?何する気なの?」 「分かってんだろうが。苦労して呼び出したのを逃しやがって…。責任取れオラッ!」 **************** 男のスタンガンを握る手が伸びる瞬間、わたしは左手を掲げた。 「録音」 男は目を丸くして固まった。 スマホのボイスレコーダーが動いているのを理解したようね。 間髪を入れずわたしは右手を突きつける。 「うぁーっ!!?」 右手に隠し持った催涙スプレーから噴き出した液が男の顔面を直撃した。 男はスタンガンを取り落とし、両手で顔を押さえて地面に倒れ込んだ。 もがく男の尻ポケットから財布を抜き取る。 開くと免許証が見つかったので、スマホで撮っておく。 ハンカチで拭いて戻した後、ポケットに差し直すのは難しいと思ったので鞄を開けた。 うわ、なんか手錠とかあるし…気持ち悪っ。 男を見るとまだ顔を押さえながら、地面に倒れ込んで呻いていた。 男の足元に近づき、目一杯振りかぶった右足を叩き込んだ。 股間に蹴りが入ると、一発で男は静かになった。 **************** その後現場を離れたわたしは、すぐに帰宅することにした。 イヤホンで確認すると、男の言葉はどうにか録音出来ていた。 後は男が女の子を連れているところの隠し撮りと、免許証の写真。 これだけあれば、それなりの証拠になるでしょ。 帰ったらパソコンに移して、ディスクにも焼いておくか。 それにしても、性犯罪者なんてほんと最低よ。 わたしは隠し持った愛用の千枚通しに触れながら思う。 いつもならこれでチンコ刺してやるところだけど、今回はあまり余裕がなかった。 まあ、思い切りキック入れたのでよしとしましょ。 ちょっとヤバかったけど、〈みんなに教わったこと〉が役に立ってくれた。 明日会ったらお礼を言わないとね。 危ないことするなって、怒られちゃうだろうけど。 ああ…、それより今はお腹が空いたわ。 あんなことがなければ、どこかでおやつを食べたのに。 近所のコンビニで何を買おうか考えつつ、わたしは家路を急いだ。 (終) ------------------------------------------------------------------------------------------------ 『めぐみが過ごす一人の休日・後日談』 め「ねえ聞いて。わたし昨日大変な目に会ったの」 (めぐみ説明中) め「という訳で、みんなに教わったことを生かして切り抜けることが出来たの。本当にありがとう!」 メ「めぐみ、他にもやり方はあったハズ」 ノ「人助けは立派だと思うけど…」 ブ「女の子を逃がしたら、そのまま自分も逃げたらよかったんだよー」 あ「ええ。それと金的はやり過ぎ、過剰防衛になるわ」 め「そう?相手は最低の犯罪者なんだし…」 メ「めぐみ!」 め「うー…。分かりました。反省します」 あ「なら言うことは?」 め「ごめんねにゃん、許してにゃん♡」 「「「「めぐみ!!!」」」」 (終) ------------------------------------------------------------------------------------------------ 『めぐみが過ごす一人の休日(裏・メイジ編)』 本当にこんなところに…?私は半信半疑ながら路地裏を進んでいた。 「お~、ここはまだ来たことなかったね~」 「道はきちんと覚えておかないとね。何があるか分からないし」 先を行くブラックとノヴはゆったりと喋っている。 人目につかないため表通りよりも危険だが、私達が生きてきた環境よりはマシだ。 普段はあろえやめぐみと共に過ごす休日。 それが私達3人だけで路地裏を歩いているのには当然理由がある。 この先にある、あろえに教えてもらった〈店〉を観察するためだ。 接触の際にはあろえに同行してもらうはずだったが、彼女は今日は用事が出来たという。 仕方がないので、私達3人だけで先に店の所在を確認することにしたのだ。 「あーっ、アレじゃない~?」 ブラックが指差す先にあるのは、ガラクタにしか見えないものがぎっしり詰まった怪しげな店だった。 看板には「リサイクルショップ」とある。 店名は確かに聞いていた名前だった。 しかし…ここに本当に「密売人」などいるのだろうか? **************** 「へえ、あろえさんが言っていた通りのお店だね」 ノヴが感心したように呟く。 「ねえねえ、どうする、入ってみようかー?」 ブラックが好奇心を抑えきれない様子で言う。 そこまでする必要はない、そう言いかけた時だった。 「下がれ!」 2人を引っ張って物陰に身を隠す。 1人の男が店に向かって真っ直ぐ向かってくる。 「姉さん…」 「あれヤバイよね~」 あの目付き、表情、明らかに危険人物だ。 私は決断した。 「行くぞ」 「あ、恩を売っとく?」 「なんかあったらあろえも困るしねー」 **************** 男が乱暴にドアを開け、店に入っていく。 全開になったドアが閉じる前に私達も店内に滑り込んだ。 素早く散らばり、棚や商品の陰に身を隠す。 「いらっしゃいま…ちょっ、なんです!?」 「うるせえっ!」 そっと窺うと客の男が店主らしき男の胸倉を掴み、包丁を突きつけている。 「銃だ…それと弾!在庫があんだろ、何でもいいから寄越せ!」 「ちょちょちょ、ウチをなんだと…」 「うるせっつってんだろ!俺の顔を忘れてる訳ねえだろが、今まで何度か来てんだろうが!」 「ま、まあそれはそうだけど…」 「早く出せコラァ!あんの野郎…ぶっ殺してやる!」 やれやれ…どうやらあろえの話は確かなようだ。 彼に何かあっては困る。 2人に目配せし、ハンドサインを送る。 私は立ち上がり、揉めている2人に向かって進んだ。 **************** 「そこまでにして欲しい」 私はウサギのぬいぐるみ…〈ウサ吉〉を胸元に抱いて、客の男に声をかける。 自分達以外に人がいないと思っていたのか、男は大袈裟なくらいに驚いている。 「ちょっと!何やってんだ、逃げろ!」 店主が叫び声を上げる。 目撃者を逃すまいと、男が掴みかかるのを素早く下がって躱す。 ちょうどいい位置に来たところで、〈ウサ吉〉を構える。 「ぐあっ!?」 〈ウサ吉〉の中に仕込んだ催涙スプレーの液が口の部分から発射され、男の顔面に直撃した。 次の瞬間、私から見て左側からノヴが飛び出した。 店の商品と思しき錆だらけのハンマーで男の右手を強打する。 男が包丁を取り落とすのと同時に、右側から駆け寄ったブラックが背後から男の股間を蹴り上げた。 男は倒れた。 その後店主からビニール紐をもらい、男を縛った。 全てが終わると、私達は店主と向き合った。 **************** 3人の代表として、私は店主の正面に立つ。 店は胡散臭いが店主の身なりはそれなりに清潔そうだ。 ただ帽子を目深に被り、サングラスをかけているのは顔を晒したくないからだろう。 「あなたが密売人か」 「どうやら君らはただの子供じゃないみたいね…。そう、ウチは裏でヤバイもんも売買してる。本業はさしずめ、〈裏のリサイクルショップ〉ってとこかな」 「よかった。そういうルートを探していた」 「ふぅん…。じゃ何を取引したいの?言っとくけど、戦車とかヘリとかそんなデカいのは無理だよ。せいぜい俺が手で持って運べる範囲でね」 「今すぐ欲しい訳ではない。ただ、必要な時に武器弾薬を入手するルートを確保したい」 「武器弾薬ね。例えばどんなの?」 「9mmパラベラムを売っているのは知っている。45ACPは?」 「そんくらい余裕よ。ただ君ら、お金あんの?」 「これは幾らになる?」 私は手持ちの大麻の、ごく一部を店主に見せた。 「ほう、これはこれは…。ねえ、コレあとどんだけある?」 「kg単位」 **************** 「ふぅん…。まぁ、その話が本当なら、弾ぐらい売れるよ」 「ありがとう。ならば、その時が来たら頼む」 「こちらこそ…。今日は助けてもらったしね」 チラリと店主は床に転がる、縛られた男に目をやった。 「ねーねー、このおじさんどーするの~?」 ブラックが口を挟んできた。 「どうすっかな…。まあそれはこっちで考えるよ。君らは気にしなくていい」 店主がそう言うので、私は彼に任せることにした。 話はまとまっていたので、今日はもう引き上げよう。 店主に挨拶し、私達は店を出た。 「ルート、確保出来そうだね」 ノヴが嬉しそうに言う。 「あろえにお礼言わないとね~」 ブラックも嬉しそうだ。 私も少し安心したが、願わくば世話にならないことを祈る。 (終) ------------------------------------------------------------------------------------------------ 『めぐみが過ごす一人の休日(裏・あろえ編)』 「どうしたあろえ。何か気懸りなことでもあるのか?」 「ふえっ!?」 仕事に向かう移動の車中、急に父に尋ねられ思わず変な声が出た。 「そんなことないよ!ただちょっと、今日は刀がないのが気になるかなって…」 慌てて否定したが、かえって怪しい気がしてくる。 だが父は運転を続けながら、普段の調子で話を続けた。 「なるほど。だが、今回のような仕事もある。良い機会だから、銃にももっと慣れるんだ」 「ハイ!」 怪しまれてないでしょうね…? アレがバレたらとんでもないことになる。 幾ら友達の頼みとはいえ、まさか私達が武器弾薬を仕入れる〈店〉を他人に漏らしてしまうなんて。 頼むわよ、メイジさん達…秘密は絶対守って頂戴! 祈る資格など無い〈稼業〉だが、仕事の時より切実に祈りたくなった。 こんな状態で今日の仕事をやり遂げられるのかしら? 気持ちを切り替えようと、手の平で数度両頬を叩いた。 **************** 「行ってきます」 父の車を降りると、わたしは周囲を一度見渡した。 ここは住んでいる町から離れた、遠くの街だ。 これまで下調べに何度か訪れているが、念のため頭の中の地図を再確認する。 すぐにそれを済ますと、わたしは目指す場所へと歩き始める。 今日は休日だったのだが、ターゲットに逃亡の恐れあり、急遽仕事になった。 逃亡なんて絶対に許さない!必ず仕留めてみせる。 気負いそうになるのを抑えて歩き続ける。 途中、コンビニでトイレを借りて個室に入った。 ボディバッグを肩から下ろし、いつも携帯する〈本〉を取り出す。 今回は昼間というのもあって、刀は持ち歩けない。 〈本〉を開き、ワルサーP99を取り出す。 弾を確認後、今度はサイレンサーと水を入れたスプレー容器をバッグから出す。 サイレンサーの内部をスプレーで湿らせ、銃口に取り付ける。 準備完了。 **************** その後の移動も順調に進み、わたしはターゲットの住むマンションに到着した。 エントランスが見える位置にある植え込みのコンクリートに腰かけ、ターゲットが出てくるのを待つ。 銃を入れる本で読書するふりをしながら、それとなくエントランスを見張る。 ターゲットが海外に逃げようと、密かに身の回りのものをお金に変えたのは知っている。 自家用車まで売り払っているため、車で出てくることはまずない。 タクシーを拾うか、電車やバスを使うかだ。 裏口から出たところで、周辺の立地から見える範囲を通過する可能性は高い。 つまりここで見張れば、かなりの高確率でチャンスが訪れるということだ。 仮にこっちに来なくとも、反対側には父がいる。 防犯カメラの死角、人通りの死角も全て把握済み。 あとは出てくるのを待つだけ。 いつでも来なさい。 たとえ朝までだってここで張っている。 む、エントランスに動き。 来た…! **************** 静かに立ち上がると、本を読むふりを続けながら歩き始める。 顔は動かさず、ページに埋め込んだ鏡で密かに周囲を見渡す。 ここは静かな住宅地で、普段の人通りは少ない方だ。 窓から外を見る者や歩行者がいないことを確認。 銃は既に、顔の前に持った本の影に隠し持っている。 接近の方向は、ターゲットの前方からだ。 視線は本に向けているが、ターゲットがキャリーバッグを引く音が位置を知らせる。 このまま進むとぶつかるのは相手も分かるだろう。 ターゲットがわたしから見て右に逸れた。 わざと右によろけたふりをし、体をぶつけに行く。 避けようとした相手はバランスを崩した。 次の瞬間、開いた本で隠した左手の銃で相手の腹を撃つ。 すかさず倒れたターゲットの頭にもう1発、そして銃を再び本の影に。 歩きながら背中のボディバッグを体の前にずらし、本で隠しながら銃をバッグに入れる。 その後も防犯カメラの死角を通り、わたしは父と合流した。 **************** 家に帰る途中、父は車をファミレスに入れた。 「今日はよくやった。少し遅いが昼食にしよう」 確かに緊張が解けてきたのか、空腹を覚えていた。 さて何を頼もうかと思いつつ入店すると、他の客の会話が耳に入ってきた。 どうやら今日の仕事の結果が、もう報道されているようだ。 そのうち週刊誌やワイドショーなどが、ターゲットの人物像を報じ始めるのだろうか? だがそれはわたしにはどうでもいい。 和風おろしハンバーグを頼もう。 注文した料理が運ばれると、わたしと父は会話をやめ、無心に食べた。 体が資本のこの稼業、しっかり食べないとやっていけない。 食べている最中、携帯が鳴って父は一時席を外した。 しばらくして戻ってきた父は、黙って再び食べ始めた。 あの様子からすると仕事の電話だろうか? 気にはなったが、今は食べる時だ。 わたしも黙って食べ続けた。 **************** 食事を終え、再び車で走り出すと父は言った。 「〈いつもの店〉で、トラブルがあったそうだ」 「えええっ!!?」 「どうした、大声を出して」 「あ…だって、あそこに何かあったら大変だと思ってつい…」 まさかメイジさん達じゃないわよね…。 「まあそうだな。話を戻すと、バカをやった客がいて、そいつの処分を頼まれた」 メイジさん達ならそんなことしない筈…。 でも後で確かめておこう。 「急ぎの仕事だから、悪いがお前を途中で降ろして直行する」 「お父さんだけで行くの?」 「今からだと遅くなる。だからあろえ、夕食には間に合わないから、母さんにはお前から上手く言っておいてくれ…」 「分かった…」 「頼んだからな!」 お父さんってほんとお母さんには弱いなぁ…と、わたしは密かに思った。 (終)