『としあきとブラック・メイジの出会い』 「ただいまー。うん?」 帰宅した俺は、玄関に見慣れない靴があるのに気付いた。 なんだこれは…まさか…。 俺はメイジがノヴを連れて帰ってきた日のことを思い出した。 慌ててリビングに駆け込む。 「おかえり」 「おかえりなさーい」 メイジとノヴが迎えてくれる。 そして。 「へ~、この人がとしあきか~」 「…ねえ、この子は誰かな? 教えてくれる?」 やっぱり3人目! この子も養うことになるんだろうか…。 **************** 「すまないが、私も彼女とは初めて会った。何者なのか全く知らない。だが私と関係はあるのかもしれない」 それがメイジの説明だった。 どういうことだよ。 ノヴが来た時は、自分の弟だとか、元々は2人で来る予定だったとか聞かされた。 なのに今回は全く分からないって…。 この子はどういう事情があるんだと考えつつ、じっと見ているうち思わず呟いた。 「よく似てるな…」 メイジとこの子、そっくりだ。 違うのは肌の色が褐色なくらいか? 「でしょ~」 褐色メイジ(仮)はニコニコしながら言った。 「名前はなんていうの?」 「ブラック・メイ」 **************** ブラック・メイ、名前もメイジっぽいな…。 そんなことを思いながら、続けて尋ねる。 「ええと、じゃあブラック・メイちゃんはどうしてウチに来たのかな?」 「〈ブラック〉でいいよー。あのねー、アタシはメイを追いかけたんだ~。なんだかー、すごく楽しそうなのが伝わってきたから~」 「伝わって…? さっきメイジは初めて会ったって言ってたけど」 「メイジって、メイのこと~?」 その時メイジが会話に割り込んできた。 「言おうと思って後回しになっていたが、私は〈メイジ〉だ。もうメイではない」 「あ、そうなのー? じゃ、アタシも〈ブラック・メイジ〉になる~」 おいおい、そんな簡単に名前を変えるのか? 「名前を変えてもいいのか?」 代わりにメイジが聞いてくれた。 **************** 「うん。同じメイだったんだからー、メイがメイジになるならアタシもメイジでいいと思うんだー」 「そうか…。まあ好きにすればいい」 メイジもそれでいいんだ…。 けどそれより今は彼女に聞きたいことがある。 「ねえ、さっきの質問だけど、なんでブラックちゃんは会ったことのないメイジの気持ちが分かったの?」 「んーとねー、アタシにはメイのことが分かるしー、メイにはアタシのことが分かるのー」 え、なんだそりゃ? さっぱり分からないので質問を切り替えた。 「ブラックちゃんはメイジとはどういう関係なのかな?」 「んーとねー、詳しくはよく分かんないけど~、アタシはメイの〈アナザー〉とか~…」 「アナザー? どういうこと?」 「ん~…なんだろー? よく分かんないんだ~」 んー…分からないのか…。 **************** 仕方がないのでまた質問を変え、一番重要なことを聞くことにした。 「じゃ大事なこと聞くよ。ブラックちゃんはこれからここでどうしたい?」 今までニコニコしていたブラックが初めて真剣な顔つきになった。 「アタシもここに居たい!」 「そっか…」 やっぱりな。 「分かった。じゃ、君がこれからここで暮らす準備をしないとね」 「ホントッ!? 嬉しい~! としあきありがと~!」 ブラックは大喜びだが、俺は内心ため息をつきたくなっていた。 突然子供を養うことになったと思ったら、あっという間にそれが3人に増えている。 (本当に死んだ後からも色々やってくれるよな…) 死んだ人を悪く言いたくないが、克明さん…クソ親父だけは別だ。 全てはアイツから始まっているのだから。 **************** そんなことを考えながら子供達を見ると、ブラックは大はしゃぎで2人に話しかけている。 「じゃ~メイもノヴもこれからよろしくねー」 「メイジだ」 メイジが訂正するが、ブラックは気にしていないようだ。 「いーじゃーん、同じメイジなんだからー、呼び方変えようよー」 ブラックにはメイジも初めて会ったというが、まあ悪い子じゃなさそうだ。 そこは安心していいか…と思っていると、不意にブラックが叫んだ。 「あっ、そうだメイ! アレは何なのー!? アタシにも教えてよ~」 「アレ…? アレとはなんだ?」 「アレだよアレ~。ほら、おちんちんがなんか凄いの! 教えてってばー!」 待って今おちんちんって言った? じゃやっぱりブラックも〈ふたなり〉!? 絶対この2人なんか関係あるって!! (終わり)