≪注意:このSSには凌辱や死などハードな内容が含まれています≫ ------------------------------------------------------------------------------------------------    「ネイキッドフェアリー」その⑤ ヨグが保護されてた際、彼女は産後の大量出血のせいで衰弱状態にあったが、輸血はされていないもの の適切な処置を受けていたので命に別状の無い状態だったそうだ。 CIAの保護下に入ってから彼女は 自分の子供の保護を求めるために取引を職員に持ちかけ自身の所属、潜入目的、潜入中の状況などを洗 いざらい話してしまったらしい。  彼女からもたらされた情報から所属は既に無くなったかと思われていたEU圏の共同諜報機関「暗黙の 共同運営体」の諜報員と断定されCIAの監視保護下に即座に置かれた。  だが3日としないうちに彼女には残酷な情報がもたらされる。 実は拘束したキッズMの構成員の証言から闇医者ジョンの下に赤子が引き取られていると言う情報は直 ぐに得ていたため彼の行方を追っていたのだが  程なく闇医者ジョンの死体が河川敷に射殺体で流れ着いているのが見つかったのだ。 川の上流には彼の車が焼け焦げた状態で見つかっており、その中には簡易保育器の残骸も残っていたた め、調査員の結論としては共に殺害された可能性が高いと言うものであった。一応付近の捜索は行った ものの、遺体や乳幼児が何処かに預けられた情報なども得られず、川に流された可能性が高いと言うも のであった。  その情報を聞いたヨグはひとしきり泣いた後、"抜け殻になった"。 そして、俺はミズコントロールの情報を引き出すと言う名目で彼女との面会を希望し今に至る。 流石に男性一人では威圧的であろうと、カウンセリングの資格ももつシープも自ら名乗り出て共に会う ことになった。  初めて実物の彼女に会ったときの印象は虚無だった。それはそれで人形のようで外見はとても愛らし いが俺は彼女がどれほどの責め苦を味わったか知っているため、彼女を目の前にして言葉が即座に出な かった。  しばらくして最初に口を開いたのはシープの方だった。 「あなたは良くやったわ。」 その言葉はヨグににとどいたのか、視線は合わないまま 「マミアも守れなかった・・・赤ちゃんも守れなかった・・・・・・なにも、なにも、どうしようも守 れなかった・・・・マミアも守れなかった・・・赤ちゃんも守れなかった・・・・・・マミアも守れな かった・・・赤ちゃんも守れなかった・・・・・・」 壊れたトーキー人形のようにか細く同じ台詞を繰り返すヨグにシープは続ける 「あなたは"みんな"と頑張って命をつないだの。だからここにアナタがいる。」 「私なんていらない!あの子達が!居なきゃいけないの!私は要らない!」  途端ヨグは半狂乱で叫び暴れだした。俺は慌ててヨグを取り押さえようと身を乗り出したがそれより も早くシープは無言で彼女を抱いた。そのまま鎮静剤を持った看護師が駆けつけるまで彼女は叫び続け ていた・・・その日はそのまま退却と言う運びになった。  帰り道ふとシープは語りだす、 「あの子、絶望しても自傷行為に及んでいないし、治療も拒否していない。昔所属していた機関にそう 教育されたのか、自身の生きる力なのか・・・」 「それはつまりわざと彼女を刺激したのか・・・」 少し申し訳なさそうな目で彼女は「ごめんなさい」とだけ呟いた。 「なぁ、シープ、彼女の赤子の事はどこまで話す・・・」  拘束した構成員の話からヨグは動画のあの笑顔を見せた後、無痛分娩だったとはいえ出血による貧血 で失神していたそうだ。彼女が昏倒した状態で後産が始まったが、胎盤と共に心肺停止状態の未熟児が 共に分娩されたそうだ。  死産と認定された未熟児の処理は闇医者が行う運びとなり、ヨグが二人子供を産んだ事はショックを 受けるのでとの配慮で彼女には伏せられていたそうだ。 「今の彼女に追い討ちをかけるのは止しましょう。時が来たら話すわ。」  その後シープはほぼ毎日彼女の元に見舞いに行くようになった。  そして数日後、ミズコントロールと落ち合う予定の日、俺はいつものカフェで待っていたが結局姿を 現さなかった。彼女を調べるため各所に職員を配置していたが、それに気が付いての事か・・・予想通 りの結果だった  それから半年、いつしかシープと付き合い始めていた俺は2人でヨグの元に向かう際突然 "ミズコン トロール" が俺たちの前に現れた。  以前着ていたスーツとは異なり、地味な黒いコートを羽織った姿の老婦人といった格好だったが、間 違いない。俺たちに情報をもたらした女だ。 「ミスター・ムリャコ。先日は約束を破って申し訳ないな。」 その口調は以前とは異なったものだった。 ・・・その⑥に続く