≪注意:このSSには凌辱や死などハードな内容が含まれています≫ ------------------------------------------------------------------------------------------------    「ネイキッドフェアリー」その③ CIA支部内は件の一件であわただしく動いているが、マイペースに働いている部門があった。鑑識部門 である。当初ミズコントロールの持ち込んだ資料を開封し写真コピーを取りその他指紋などの検出作業 を行った後は通常業務を行っている。 つまり、今なら手がすいているかもしれない。  カーフのお目当ての人物は休憩所の前でコーヒーを啜っていた。 「やあ!暇してる?シープ女史」陽気な声で目の前のメガネをかけた女性に声をかける。 「・・・そう言うあなたは徹夜明け?酷い顔しているわよ?」シープと呼ばれた女性は軽口で返す。 いや実際に今のカーフはシャツもよれよれ、ボサボサ頭に目の下には隈がついたいかにも不健康な風体 である。カーフは自分の風体を省みて、 「いや、徹夜で胸糞の悪い動画を徹夜で見たら嫌でもこうなるさ。」 「キッズポルノの検分だっけ?うちの部門の男性職員も駆り出されてたわね。2時間でギブアップして昨 日は定時に帰ってたわ。」 "何ソレそいつムカつく!" そう叫びそうになるのを飲み込み、カーフは話を切り出す。 「実はその言いにくいんだが・・・」 「"一緒にキッズポルノを鑑賞してください"と言いたいのかしら?」  カーフは唖然とする。 「只の検分なら男性職員に声をかけるでしょうし、とても申し訳なさそうな顔で私の前に立った時に察 してるわ。つまり私に依頼したい特殊な事柄を頼みに来た。暗号解読の類、もしくは特殊信号の類を動 画内で発見したと言うところかしら?」  カーフは言いたかった事を全部言い当てられ、"ああ・・・やっぱ腕の立つエリート組は頭のつくりが 違うんだなぁ・・・"と軽く落ち込み低い声で返事をする。 「・・・Exactly.《その通りでございます。》」 「答えはYES。まぁ仕事だし良いわ。モノを見せて。」 "うわぁ・・・この人すっごいビジネスライク" とカーフは少し引いた。 10分後、先ほどの視聴ブースで2人肩を寄せ合って動画を再生していた。 "ああ・・・これが小粋なドラマを2人で見る状況なら歓迎したんだが・・" と悪態をつきながらシープ に事のあらましを説明しつつかいつまんでフェアリーヨグのそれまでの動画を倍速で見せる。 「確かに胸が悪くなるくらい悪趣味な動画ね・・・」そう呟いただけで、件の出産ショー動画の解析に 入る。 まず、最初の"かわいらしいステップ"から順に見ていく。 「珍しいわね、ダンスシグナルだわ!」素っ頓狂な声でシープは目を見開く。 「えーと、なんでしょうか?それ?」申し訳なさそうに問いかけるカーフ 「第2次世界大戦中ドイツ占領下に置かれたフランスでレジスタンスの踊り子たちがドイツ兵に潜入し た仲間に情報を伝えるために使われたステップよ。足の拍子で数字変換して更にアルファベットに変換 できるの。ちょっと待って変換するわ!」 シープは喜々として動画を見直しながら、数字の羅列をメモに書き出す。そして2分ほど手持ちのノー トパソコンと睨めっこして一連の文章を書き出す。 "マイアミ" "AR-xxx" "Dr" 「おい、これって!」とっさにミズコントロールの資料のコピーを取り出す。 「闇医者の使ってる車のナンバーじゃないか!」 "情報をもたらしたのはヨグ" 嫌なカンが当たってしまった・・・頭を抱えるカーフにそっとシープは 呟く。 「子供を諜報員に仕立てるのは国際法違反・・・彼女の身柄を確保されては諜報機関そのものの弱みに なる。そんな爆弾を馬鹿正直に別の諜報機関の手の内に放り込むように情報を流すものかしら?」 「MI6とミズコントロールは名乗ったがそれは100%フェイクだろうよ。こんな手の込んだ事するなんざ 一体どこの諜報機関だ?何が目的だ?」 はき捨てるように叫ぶカーフ。 "このままミズコントロールのもたらした情報を鵜呑みにして事を進めていいものか?" 無論、他のメンバーたちも無能じゃない。数々の情報の裏を取っているだろうが、情報をもたらした相手 が不気味すぎる・・・・疑心暗鬼に陥り閉口するカーフを横目にシープは声をかける。 「とりあえず、残りの信号も解読するわね・・・。」  次の"淫靡な指使い"の解読内容は幹部来訪の情報、その間にもカーフの見逃した暗号も幾つか見つけ出 し書き連ねる。件の出産シーンに至るまでには、ミズコントロールのもたらした情報の出所だと思わせ る内容だった。  これは出所だけならともかく、この動画がUPされてからこちらに持ち込まれる前にこれほどの情報 の肉付けが出来ている事はミズコントロールがかなりの情報収集能力を持った機関に属する事を示して いた。  悩みまくったカーフは最後の出産シーンを見ているシープに声をかける。 「シープさん、この件だが一旦捕縛計画の中止を上に進言するべきだ・・・って?えッ??」 話途中で突然・・・シープは泣き出していた。 「あの?シープさん?大丈夫です?おおう!」カーフは何かマズイ事でも言ったかと思い凍りつく。対す るシープは泣きながらヨグの最後のダブルピースシーンを指差していた・・・ 「私はこの子達を・・・救いたい・・・ミズコントロールの良心を信じたい・・・」 うめく様に答えたシープの手元にあるメモの内容が目に入った時カーフは全てを理解した・・・・ ------------------------------------------------------------------- 同時刻マイアミ郊外・・・表向きはしがない開業医である闇医者ジョンは自宅兼病院に戻っていた。先 ほどまで人身売買組織の商品の定期検査を終えて疲れていた彼は一息つこうとリビングに入る。 ジョ ンはふと辺りを見回す。おかしい。誰も居ない?  普段は仕事するに当たり"商品"の管理を任している共犯者の看護師が同居しているのだが・・・(ジャ ンキーってだけで他は至極全うなヤツだが)何処かに出かけたか? "2匹"の面倒を見とけと言って置いたのに、無責任な・・・そう思いリビングのソファーの足元に目をや ると同時にジョンは氷ついた 直後、後頭部に硬い何かが当てられた。 「あー振り向くな?Drジョンだっけ?ちょっとドライブしないか?」 刺すような男の声。ソファーの下には頭が半分吹っ飛んだ看護師が転がっていた・・・・  ・・・その④に続く