【ブルガリアからきた危機】 双葉としあきは双葉家の財産を食いつぶす 今をときめくニートである。 そこにやってきたのは日系の白人らしい 中学生ぐらいと思われる女の子だ。 ゴミ溜めのような家に悪態を隠さぬ女の子に としあきはまだ「恥じらう」程の常識があった。 「あの・・・君は?」 「遠い親戚だ。貴様の今までの莫大な 生活費は貴様の母方のクローヴィス家から捻出されていた。」 女の子は着くなりかなり強い語勢でとしあきを罵倒した。 「最も我が家にしてみれば他愛無いことだったがね。」 サングラスの後ろに冷たい侮蔑の表情を感じた。 「クローヴィス家?」 「としあき。お前は自分の母方の親戚も知らないのか? 貴様の道楽な母親のためにうちがどれだけの 金を注いでやったか?最も極普通に暮らす分には 十分だったようだけどな。」 としあきの母、はるかの親である ジョージ・クローヴィスは”とし”という日本人妻を迎えて はるかを儲けていた。 そして次に条治(ジョージ)2世に家督をゆずった。 双葉条治は養子ではるかの夫としてクローヴィスに婿養子になった。 はるかは日本の普通の女子大生でとしあきには クローゼの財産を手出しさせないためにも 知らされずに育った。 このメイジという女の子はメイジ・双葉・クローヴィスというらしい。 クローヴィス家はとしあきには財産の数十万分の一を与えていたに過ぎない。 今迄、としあきを養っていたのは正体不明の親戚だったが としあきは疑問にいだかず育った。 「つまり貴様の生活はクローヴィス家の財産が負担していた。 下らないポルノ・ビデオ・ゲームや ”卑猥な”まくらや壁紙にだッ!」 メイジはかなり起こっているようだ。 「それが・・・あの?」 「私の仕事は簡単だ。私はクローヴィスの直系の血筋ではない。 私も貴様同様にクローヴィスなど知らなかった。」 メイジは握りこぶしを治めた。 「私は今迄はヴァレンチーノといった。 イタリア南部の貧村の出だか知らないが 両親は私が大きくなった頃にはブルガリアに移住していた」 「・・・?」 としあきにはイタリアの地図が浮かばなかった あの小さな半島に南部とか北部だとか言う 分割があったのかと考えてローマとか 都市の南部分だと思った。 なるほど、ローマも貧困街(スラム)があるんだな。 としあきは納得した。 「トルコ系移民と一緒にドイツに流れ住んだのが クローヴィスとの再会だよ。 父の古い友人がね、母を紹介したんだよ。 イタリアに移住したクローヴィスの没落分家の血を次ぐ 母の子である私はクローヴィスに拾われたのさ。 父はクローヴィスとは無関係だったから・・・ その後は知らない・・・。」 メイジはいっそうにつらそうだ。 「・・・父の家が今ほど仕事を欲しがって各地を 転々としたのは母の家の借金を返すためだったらしい。」 としあきは今までのメイジの言っていたことが分からなかった。 でも、これだけは分かった。 彼女の父は必死に母とこの子を守ろうとして 最後に行き着いたのがクローヴィス家そして・・・ 「私は直系のクローヴィスではないからね。 日本の親戚を頼れと・・・。」 少女の荷物はうさぎのぬいぐるみと麻薬と拳銃。 怨嗟と後悔を残して・・・ 「じゃあ、これからどうするの?」 「クローヴィス家はキレイな家じゃない。 麻薬を捌けって・・・素人の子供と この働かず、学ばずのガイキチインポ野郎と、で!」 メイジはバックの中の白い粉を投げようとして 留まった。 大きく振りかぶって薄汚いアジアの最も汚らわしい 一室の一つに数えられる部屋にうなだれて倒れた。 すすり泣く声が聞こえる。 そんな中でもとしあきの目は必死にメイジの 股間とまだ小さなお尻に視線は注がれていた。 「メイジ・・・ちゃん? なんとかなるよ。おれ、なんとかなってきたもん」 「なんとか?」 メイジの目はマジだ。 としあきの話など必死に生きてきた人間に通じるはずが無い。 所詮、としあきには分からないのだ。 「実家だって、おれに仕送りくれたんだろ?」 「・・・お前の父親の条治は死んだ。」 メイジの言葉にとしあきは驚いた。 それは肉親の死ではない。 仕送りの事実上の中止を驚く表情だった。 「ちょ・・・ちょっと待てよ!」 「残念だったね・・・。」 メイジの冷たい視線が部屋を支配する。 メイジは立ち上がるとおもむろにスカートに手を着ける。 「お、おい?」 「ここに居るのは欧州最大のマフィア・クローヴィスの 血を引く二人の・・・クソ豚。」 セミの鳴き声が二人の間から消えた。 暗くよどんだ世界でメイジととしあきの 互いの視線が交差する。 「ここからは・・・」 スカート、シャツ、ブラが次々と床に落ちる。 「実家(クローヴィス)は係わらない。 私とお前は実家から送られる麻薬を 捌く・・・んだよ。」 パンツが落ちるとそこには見慣れた光景。 「ちょ・・・お前の体・・・ まさか・・・!」 「そうだよ。」 メイジの口端がゆがむ。 「ふ・・・ふたなりか!?」 としあきの汗がぶわっと吹き出る。 メイジの表情が一気に高騰して 顔が真っ赤になる。 次の瞬間にはとしあきは小学校以来に めちゃくちゃに殴り倒されて 何倍も小さな体に部屋の一番くらいところに 押し込められた。 「はあ・・・はあ・・・!」 「お前、一体何なんだよぉ!」 としあきは必死にメイジに殴られながら 抵抗して声を上げる。 「よく聞け、豚野郎。 おれはな・・・1億だ。 1億集められなきゃ、二度と もう男に戻れねえ・・・!」 肩を上下させながら涙をこぼした。 「胸のシリコン抜いて、 体を元に戻して欲しかったら・・・ クローヴィスに戻りたいなら 麻薬を捌けって・・・」 としあきの上にメイジが倒れこんだ。 「この体なら・・・死んでも かまわねえよ・・・って・・・」 少年の荷物は発信機と麻薬と拳銃。 そして怨嗟と後悔。