さて、ヨーグルで胸焼けした翌日の晩である。 「さすがに俺のレパートリーも尽きてきたな」 「じゃあ、今晩は私が作りますね」 アパートのシンクはメイジには少し高いので風呂場の椅子を置いてやる。 としあきのエプロンを貸したがだぶだぶでかわいらしい。 鼻歌交じりにジャガイモの皮をむく姿は割と様になっていた。 「何作ってるんだ?」 「ムサカ」 「あっはっは、見ろ人がゴミのようだ!」 「それはムスカ」 「うん。・・・って何故知っている!?」 二人の夜は更けていく。 -------------------------------------------- 「ただいまーって、何やってんだメイジ」 「うん、なんかP3?って書いてありましたけど」 『テレッテッテー順平はレベルアップ!』 「なんかこの人ちょっとムカつきます」 「ははは」 こうしてメイジは徐々に染められていくのであった。 ----------------------------------------------- 薄暗い、湿った地下室にその少女は居た。 いや、果たして少女と呼べるのだろうか。 椅子に座らされている彼女は、 鎖につながれ、 四肢は無く、 虚ろな眼窩は光を受けるべき眼球を失っていて、 しかし、その股座には男根が、脈打ち熱くそそり立っていた。 薬物によって発狂することさえ許されず、理性を果てしなく蕩けさせられ、その少女は待っている。 としあきの、歪みきったその欲望に汚されることを。 ただ、待ち望んでいるのだ・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「いだだだだ痛いです!」 「え、マジ?」 「としあきさんの大きすぎです・・・」 「嘘だ・・・前にたまたまそういうふいんき(なぜか変換できない)になったときに・・・」 (あ、縮んできた) 「短小って言われて!それで・・・うわーん!!」 「ああっ、としあきさん!?」 その後彼の姿を見たものは居ない・・・ ---------------------------------------------------------- >前も言ったけど、これで捨てた場合の展開を誰か考えてSSにしてくれ ピーンポーン 呼び鈴が気の抜けた音でオレを呼ぶ。 徹夜明け+バイト終わりのこのオレをわざわざ呼ぶとはいい度胸だ。 「ぅるっせぇっ!ブッ殺すぞ!!」 手近にあった電話帳をドアに投げつけると、チャイムは止んだ。 これで眠れる。 「おやすみなさい・・・」 オレは誰にともなくつぶやいた。 翌朝になって初めて留守電にメッセージが入っているのに気付いたが、 その時はまだ重大な過ちを犯していたことに気が付いていなかった。 ***************************************************** 留守電の内容は、ブルガリアから親戚の女の子が何の因果かオレの許へやってくるというもので、 てっきり飛行機ででも来るものだと思っていた。 しょうがないのでメッセージを残した親戚に電話してみると、どうも要領を得ない。 ワケアリのようで、若干非合法な方法で渡航してくるらしかった。 そんなわけで、いつ来るとも知れない親戚の女の子とやらを待ち続ける羽目になった。 ところで、昨日から隣の奴が女でも連れ込んでいるのか、朝と言わず昼と言わず盛っている。 正直うっとうしいが、いざこざを起こしてアパートを追い出されるのも癪だから、ヘッドホンでもして聞き流すことにした。 しかし、数日の内は普通にお楽しみだったようだが、 そのうち聞こえてくる声に異常なものを感じるようになった。 隣の野郎がどんな性癖を持っていようが俺には関係なかったが、 本格的にやばくなりそうだったら踏み込むか通報しよう、位には思っていた。 だが、それでは遅すぎた。 *********************************************************** そう、遅かった。何もかもが。 オレが鼻歌交じりに夕食を作っていたときだった。 突然、何かが破裂するような音が連続して隣の部屋から聞こえ、やがて何の音もしなくなった。 嫌な予感、というか妙な焦燥感に駆られて、部屋を飛び出し、隣の部屋へなだれ込む。 鍵。ドアノブごと壊す。ドアを引きちぎるように開ける。 暗い部屋から、饐えた臭いと血なまぐさい空気が流れ出る。 良く見えないが、部屋の中央に醜悪な肉の塊と、それに埋もれる何かがあった。 オレは、崩れ落ちるように膝を付いた。 電話口の親戚の声と、目の前の光景が悲鳴を上げながら、噛み合っていく。 理解できない。理解したくない。 ************************************************************ 気が付いたときには、病院にいた。 ベッドの横にはスーツ姿の男が数人おり、オレの様子を伺っていたが、やがて、口を開いた。 案の定刑事だったが、聞かれたのは隣の野郎のことと、被害者と思しき少女のことだった。 後で聞かされた話では、隣の野郎はたびたび幼女を連れ去ってはいたずらを繰り返していたらしい。 もっとも拉致監禁とまでは行かなかったらしく、幼女はすぐに解放されていたせいもあって警察もなかなか尻尾をつかめなかったようだ。 また、少女は身元を示すものを持っておらず、名前すらも不明のまま無縁仏として葬られたそうだ。 親戚の少女がどういう子だったのか知るすべも無く、彼女の存在は宙に浮いたままだ。 あの日オレが追い返し、隣の男の毒牙にかかったのは親戚の女の子―メイジと言うらしい―だったのだろうか? それとも、どこかで幸せに暮らしているのだろうか? 時折、紅い瞳が押入れの隙間からオレを覗いている。 ---------------------------------------------------------