春休み最後の一週間。 目を覚ますと、すでに正午を回っていた。 どうも家の中に人気が無いのでリビングまで出てみると、テーブルに置手紙があった。 なになに? 「としあきへ  お父さんの転勤先へ行ってきます。  一週間ほどで帰りますのでそれまでいい子で待っていてください。  それと、お昼ごろに親戚の子が来ると思いますので、  バス停まで迎えに行ってあげてください。 母より」 ・・・なぁにがいい子で待ってろ、だ。小学生じゃねっつの。 オヤジの転勤先に行くって話は前から聞いてたが、親戚が来るって話しは初耳だ。 オレから見てどの続柄の親戚が何しに来るんだよ。 詳しい時間も書いてないし。赤ペン先生なら添削だらけだぜ? とはいえ、待たせたりしても悪いからさっさと行かないとな。 だらしない寝間着姿から普段着に着替え、寝癖だけ直してサンダルを突っかける。 ガス、戸締りOK。一応財布とケータイ持った、と。 チャリ・・・は荷物持ちするかもだからやめとくか。 と言うわけでバス停までの道のりを、てくてく歩いていく。 三月も末ともなれば、すっかり春だ。 道沿いの桜のつぼみもほころび始めている。 程なくして、バス停へ到着する。 ベンチにはすでに先客が居た。 白いワンピースとおそろいの白い帽子に、ピンクのリボンがアクセントになっている。 しかし何より目を惹いたのは、風に揺れるプラチナの髪だった。 旅行者だろうか?小さなトランクを手に、座っている。 近くによると、彼女が寝ているのがわかった。 帽子に隠れて見えないが、口元は美人に見える。 ・・・って、見とれてる場合じゃないな。 さすがに、女の子がこんなところで寝ていたら色々と危ないぞ。 軽く肩をたたいてみる。 ・・・起きるそぶりは無い。 しょうがないので少々乱暴だが、肩をつかんで揺すってみよう。声もかける。 強くつかんだら可愛そうだな。そーっと・・・肩細っ。 「もしもーし、こんなところで寝てると風邪ひきますよー」 女の子が軽く身じろぎする。 さっきまで気が付かなかったが、トランクの取手を両手でつかんでるから、 胸が寄せられてやたらと強調されている。 スゲェ。さすが外国産。若い男の子にコレはヤバ過ぎる。 食べたい舐めたい危険地帯―ッ!! 桃源郷が目の前にッ!! いや、まじまじ見つめてたら桃源郷の前にくさい飯食わされるな。 「おーい!起きなってば!!」 乱暴にならない程度に揺すりつつ、さっきよりも声のトーンを上げる。 「ん、ふあ・・・」 うお、なんか色っぽい。 整った顔立ちだが、寝ぼけているせいでしまりが無く、子供っぽく見える。 しゃっきりしてれば美人なんだろうけど。 彼女はやおら立ち上がり、ぼんやりとした目でオレを見ると、 何事かつぶやきながら抱きついてきた。 というよりも、倒れこんできた。 女性を捕まえて重いというのは甚だ失礼なんだが、あえて言おう。 重い。 酔っ払いなんかを担ぐとわかるが、意識がしっかりしているのとそうでないのでは、 体感的な重さがかなり違う。 まして、170ちょいのオレの身長と大して変わらないのだ。 決して軽くは無い。 油断してたのもあって、オレは押し倒されてしまった。 ・・・とても柔らかいもので顔が圧迫されている。 イカン。コレはイカン。 楽園は、そこにある。 魅惑のアロマが鼻孔をくすぐり、触れている部分から彼女の体温が伝わってくる。 いや、こういう状況じゃなければ大歓迎なんだが。 むしろ、この状況下でなおも寝ているこの女の子は、かなり驚異的といえる。 むにむにと柔らかいものが顔に押し付けられている。 やべ、充血してきた・・・ 幸せだが、このままでは窒息死する。 とりあえず姿勢を変えないと! グッバイ、楽園。もう会うこともないだろう。 脚を突っ張り、寝技を返すような感じで姿勢を逆転する。 ちょうど彼女の上にのしかかるような姿勢になったところでエンジン音が聞こえてくる。 跳ね起きようにも彼女の腕が俺の頭をがっちりホールドしている。 セービングロールっ! 頭をよじるたびに頭の上から妙に色っぽい声が聞こえる。 ロールはぞろ目で失敗らしい。 グッバイ、人生。出来れば行かないでほしい。 スポーツ紙の三面記事の見出しみたいな、 『大学生白昼堂々痴漢で逮捕』 と言う単語が浮かぶ。ひねりが無い。 バスが停車するときに発する「プシーッ」という音が、悪魔の嘲笑に聞こえた。 「ああああんた達こんな真昼間っから往来でなんてこと!警察呼ばなくちゃ」 おばちゃんの引きつった声が聞こえる。というかちょっとテンパり過ぎだろ。 しかしコイツは不味いぜ・・・? 「あ!あ!あ!ちょっと待ってください!これはその、不慮の事故でして」 「そんなこと信じられるわけないじゃない!ああええと携帯はどこかしら・・・」 ははは、オレも信じられねーよ。 その時、頭上でもう一人が発言する。 「そうですよー。コレは、ふりょのじこ、ってやつですー」 まだ寝ぼけてやがるが、この際本人の言質が取れれば誤解は解きやすい。 「え・・・でも」 おばちゃんはなおも食い下がる。 「オレも信じられないんですがホントに不慮の事故なんですよ!」 「そうですよー。好きな人が目の前に現れたら誰でも抱きつきますよねー」 かみ合ってないし意味わかんないし! そもそも何故日本語なんだ。 「って、としあきっ?」 唐突に起き上がろうとするもんだから、オレは激しく鯖折られる。 「ぐぉ・・・抱えたまま起きるな・・・」 ・・・つーか、何故オレの名を? 「ああっ、ゴメンなさい、大丈夫ですか?」 ぱっと手を放し、オレの顔を覗き込む。 綺麗な緋色の瞳。 その瞬間、オレの中の疑問がすべて氷解した。 彼女も、オレの顔を改めて見て、何かを思い出したようだ。 「あーっ!」 見事にハモる。 「え?え?」 おばちゃん一人が付いていけず取り残されている。 結局、おばちゃんが納得するまで三十分を要した。 絶対にコレはお袋たちのせいだ。 ちゃんと説明してけばこんなことにはならなかったはずである。 帰ってきたら徹底的に抗議しよう。 それはさておき。 「怪我とかしてない?」 押し倒されたりひっくり返したり、彼女もどっかしらぶつけたかもしれないしな。 彼女は腕や足を軽く揺すったりして痛い所がないか確かめる。 そのたびに胸の二つの水蜜桃がゆさりゆさりと揺れるもんだから、非常に目の毒だ。 思わず、目をそらす。 「?・・・だいじょぶでしたよ。怪我はしてないみたいです」 オレが目をそらしたもんだからちょっと怪訝そうだ。 「そっか。よかった。とりあえず家行こうぜ」 「ハイ!」 うおっ、まぶしっ! 笑顔が眩し過ぎる。 寝ぼけた状態ですでに心臓どきどきしっぱなしだったというのに、 覚醒してから、その美貌は超威力を発揮している。 って書くとなんか超能力っぽいが、大体あってるから困る。 メロメロ(ド死語)なのだ。 そう、昔から。 「久しぶりだね、メイ」 「そうですね・・・曾おじい様のとき以来ですから、九年程でしょうか」 彼女―メイの曽祖父は、日本人だった。 第二次世界大戦時ロシアに出征した彼は、そのままロシアで終戦を向かえ、家庭を築いた。 そして死ぬ前にもう一度日本の土を踏みたい、そう思った彼の付き添いとして、 メイの一家が選ばれ、オレとメイは出会ったのである。 子供ならではの気軽さで、すっかり仲良くなったオレたちは、 『大人になったらお互いの国へ遊びに行く』 というのと、あと一つ、別の約束をして別れたのだった。 家の前に着いた。 結局あの後二人とも無言のまま歩き続けた。 微妙に気まずい沈黙を振り払うべく、明るめの声を出す。 「ほら、ここがオレん家。変わってないだろ?」 まあ、経年劣化は否めないが。 「ええ。ホントにあの時のまま。懐かしいです」 少しの間二人で見上げていたが、やがて、彼女がオレの方へ向き直る。 その真摯なまなざしに、オレはドキッとする。 「としあきさん。私、約束を果たしに来ました」 彼女は照れ隠しに苦笑しながら、付け加える。 「まだ大人というにはちょっと早いかもしれないですけど」 いや、十分大人だと思うぞ・・・ 「とりあえず中入ろうか。さすがにちょっと冷えてきたし」 彼女を家の中へ招きながらも、頭の中では『もう一つの約束』が渦を巻いていた。 『もう一つの約束』 それは― 『大人になってもまだお互いを好きでいたら、そのときは結婚しよう』 と言うものだった。 いまだにそんな約束を信じているわけじゃない。 大体向こうが覚えている保証はないし。 でも、心のどこかに引っかかってたのも事実だ。 まあ、あんな美少女忘れようったって、そうそう忘れられるモンでもないんだが。 一通り家の中を案内した後、早速風呂に入ってもらう。 オレはその間に料理だ。 ・・・そういえばバスタオルとか出してないな。 親戚の家に滞在するつもりなら持ってくる必要はあまり無い。 それに、あのあまり大きくないトランクには入れる余地はなさそうに思える。 いや、覗きに行くわけじゃないぞ? これはしょうがないんだ。 正直、風呂上りにマッパで出てこられてもその・・・困る。 そんなわけで。 脱衣所に潜入・・・成功。 ああ、なんかいつもと雰囲気が違う気がする。 すりガラスの向こうが肉親じゃないってだけで、こうも昂ぶるとは・・・ ふと、脱衣かごが目に入る。 生存本能が危険を報せている。 だが、牡の本能がそれに抗っている。 そぉっと、中を覗き込む。 白い布切れ・・・レェースッ! なんというかスメってしまいたい。ああ、スメるの活用ね。 きっと素敵な香りが・・・ というか、思いっきり頭にかぶって、 『それは私のおいなりさんだ!』 とか妄想してるオレどうかしてるもうダメだ。変態決定。 と、手前勝手な妄想をしていると、ガラスの向こうの気配が変わる。 「としあきさん?」 ―バレた。 コレはもう誤魔化すしかない。 「ババ、バスタオル、ココ、置いとくから、ネ」 くっ、またセービングロール失敗。 「クスッ。としあきさん、お風呂一緒に入りませんか・・・?」 な、なにぃ・・・? オレ、誘惑されてる? 見れば、ガラス戸が少し開いて隙間から緋色の瞳がこちらを伺っている。 すりガラスとはいえ、色は見えるわけで。 顔が覗いてる位置から逆算して、そのピンク色はひょっとしてそういうこと? ぶっちゃけさっきから息子さんは元気でしたが、そのピンク色で余計にハッスルです。 とても体を正面に向けられません。 親に見られたら死にたくなる光景ベスト10に入るね。 しかし、美少女と混浴とは・・・この甘美な誘い・・・釣られてしまいたい! さらに畳み掛けるかのようにオレの頭の中で悪魔がささやく。 『いいじゃねーか。どうせそのうちヤるつもりだったんだろう?』 その隣に現れた天使も負けじとささやく。 『約束を果たしに来たと言うのならなんら問題はないはずです!』 ダメじゃねーか天使。 ・・・そもそもオレは料理中だ。 火に掛けっぱなしじゃないが、長時間離れたら不味くなる。 悪魔も天使もシャットアウト。オレは悲しいかな、平安を求める人間だ。 少々リスキーすぎる。そんな予感がする。 「あー、そのお誘いは嬉しいけど、今料理中だから。また今度な」 メイはしょんぼりした様子で風呂場に引っ込んでいった。 脱衣所のドアを後ろ手に閉め、一息つく。 危ねー危ねー。 あの誘惑を振り切れるオレって強い精神力の持ち主か、よっぽどのヘタレだな。 たぶんヘタレだが。 夕飯が出来上がったところでメイが風呂から上がってくる。 なんだ、パジャマあるじゃないか・・・って! 胸元が凄いことになっている。 パジャマってのはゆったりした作りになっているものだが、それがぱっつんぱっつんだ。 というか押し広げられたパジャマの隙間から、 『ぶらじゃあ』 と言うものが見えない気がする。 ってぇか、見ちゃいけないのは分かってるんだが、少々歯止めが利かない。 なんだかんだでずっと好きだった子なんだぜ? 再会したらますます好きになっちまったしな。 とはいえ、いつまでも見とれているわけには行かない。 「夕飯出来てるから、そこす・・・」 座って、と言おうとして止める。 なんとなくキザっぽい事をしたくなって、彼女に座ってもらう椅子をそっと引いてみせた。 「どうぞ、お嬢さん」 イェア!我ながら思いっきり不自然だぜ! 「くすっ。ありがとうございます、としあきさん」 よく考えたら、欧米じゃこういうの当たり前なんじゃなかったっけ? と思っていたら、彼女はにっこり笑ってこう言った。 「日本ではこういう風習ないのに、わざわざしてくれたんですね。嬉しいです」 そこまで喜ばれると、なんだかこそばゆい。 「ははっ。そこまで意識的にやったわけじゃないから気にしないでよ」 そんなことより盛り付けだ! あんまり時間取れなかったから、大したものは用意できなかったんだよなぁ・・・ まずご飯。和食じゃなくても日本食としては外せない。 味噌汁。右に同じ。 納豆は結構抵抗感ありそうだから、しょっぱなから出すのも気が引ける。 その他、干物とかそういった和風っぽい物の買い置きも無かったので、 しょうがなく昨晩に下ごしらえしておいたハンバーグを焼いた。 ソースは和風おろしソースと万が一を考えてデミグラス(風)ソース。 付け合せにポテトサラダ。 「わぁ、おいしそうですね。これ、みんなとしあきさんが作ったんですか?」 自分じゃ大したもんじゃないと思ってたのに、メイは目をキラキラさせてる。 「うん、そうだよ。あ、でもゴメンね?純和食じゃなくて」 ご飯と味噌汁を除けばブルガリアどころか割とどこでも食べられる物だ。 「ううん、としあきさんと一緒にご飯が食べられるなんて幸せです」 彼女はさらに続ける。 「それに、しばらくはこちらに居ますから、和食はまたの機会にお願いします」 しばらくか・・・ 「日本にはどれくらい居られるの?」 口に指を当て、少し考え込む。 「そうですね・・・さしあたり、大学に通う間ですから、4年間ですか」 な・・・だ、え? 「だ、大学?」 メイは意外、と言う顔をする。 「え?おばさまから聞いてませんか?」 「迎えに行くまでメイが来ることすら知らなかったのですが」 そんな重要な話なのに聞いた覚えが無い。 そしてあの置手紙には必要な情報のほとんどが欠如している。 「ったく、かーさんの悪い癖だぜ・・・」 彼女が気を取り直すように明るい調子で言う。 「さ、としあきさん、食べましょ? せっかく作ってくださったのに冷めてしまいます」 いい子だ・・・少々目のやり場に困るが。 「うん、食べよう!」 もちろんソースの説明は忘れない。 夕食後、食器を洗おうと思ったら、メイが 「わたしがやります」 と言い出した。 「これから一緒に暮らすんですから、お客さん扱いじゃ寂しいですよ」 うん、確かにそうかも。 当番とか決めたほうがいいかなぁ・・・ 「としあきさん、洗い物終わりましたから、お風呂どうぞ」 「あいあい」 ウチの湯沸かし器ちょっと古いから、流しとお風呂同時に使うとパワーダウンするのよね。 脱衣所で服を脱ぎながらふと、新婚さんみたいだな、と思った。 風呂に入る間、「お背中流しに来ましたー」とか入ってこないかドキドキしていたが、 さすがに来なかった。 ちょっと期待してたのに・・・ イケナイことを想像して、またぞろ息子さんがハッスルする前に上がってしまおう。 風呂から上がり、さっさと寝巻き代わりのジャージに着替える。 牛乳を飲みながらふとリビングを見ると、テレビが点いていた。 何見てるのかと思ったら、試験電波画面だった。 さすがテレビ神奈川。ローカル局の夜は早い。 まだ音楽が掛かっているが、メイは寝てしまっているようだ。 これは、アレか。また起こすのか。 今度押し倒されると、高確率でテーブルが後頭部を直撃して流血沙汰になりかねない。 痛いのは嫌だ。 幸い今回は横になっている。 起こすより運んじゃったほうが手っ取り早いなこりゃ。 自分の意思の違いだろうか、羽根のように軽い。 とまでは行かないが、昼間のようには重く感じない。 ただ、余計なところを触らない最良な抱え方が、思いつく限りでお姫様抱っこだったので、 腕が疲れる。 歩き出すと、立ち上る良い香りにドキドキする。 というか、改めてみるとすげー格好してるなぁ・・・ 胸ははちきれんばかり、はだけたシャツの裾からはおへそが見えるし、 ちょっとズボンがずり下がっていて、おぱんつもちら見えである。 顔は・・・ホント、マジ超美人。 どんな女優やモデルよりずっと魅力的に思える。 はい、すみません、また愚息がハッスルしそうです。 客間のドアの前で、はたと気付く。 「どうやってドアを開ければいいんでしょうか・・・?」 両手はメイをホールドするので精一杯、足を上げようにもメイでつっかかる。 そもそも回転式のドアノブなので足ではなかなか開けられない。 と、ドアが開く。 「これでよかったですか?」 メイだ。 「起きたんならそういってくれれば・・・」 彼女は照れ笑いを浮かべ、 「お姫様抱っこなんて、嬉しくって、つい」 ・・・何も言えないじゃないか。 せっかくなので、ベッドまでちゃんと運ぶ。 「ありがとうございます。やっぱりとしあきさんは優しいです」 まあ、ある意味下心ありだしな。 「じゃ、おやすみ。メイ」 「あ、待ってください」 振り返ると、想像を絶する光景が待っていた。 「ちょっと、何で脱いでんのさ!」 メイが、パジャマの上着のボタンをプチプチと外していた。 「九年前には言えなかった秘密を、今、教えます」 それと裸が関係あるの? 上着を脱ぎ、胸を露出したメイは、恥ずかしそうだ。 ・・・昼の態度と違くない? 「えっと、その、なんだ。綺麗、だよ・・・?」 正直おっぱい。 いや、綺麗なおっぱいだが、特に変わった様子は無い。 母乳でも出るのだろうか・・・ 「ごくり」 「あ、あんまり見ないで・・・ください」 「ご、ゴメン」 いや、見ろってことじゃないのか? 目をそらすと、再び衣擦れの音が始まる。 下も?下もですか!? いよいよ持ってドキドキが加速する。 愚息はすでに大ハッスルです。 やがて、衣擦れがやみ、メイが声を掛けてくる。 「あの、見て、ください」 真っ赤な顔を伏せ、胸を両手で隠している。 そのまま下に目を移していくと、形の良いおへそが見えた。 なだらかな曲線を描くおなかのラインをたどって、さらに下を見る。 髪の毛と同じプラチナのアンダーヘア。 そして。 半立ち。 「は、半立ち?」 生えているのだ。男の子が。 「えっと、それって、おちんちん・・・?」 メイは真っ赤な顔をさらに赤くして、うなずく。 さして大きくなく、皮を被ったソレが呼応するように、 ぴこん と跳ねた。 不思議と、嫌悪感は無い。 むしろご褒美です。 なんてネタが出るくらいだから案外冷静なんだな。 ちんこが跳ねたついでにちらりとスリットが見える。 「あ、女の子も付いてるのね」 むしろ『も』は男の子のほうか。 「はい」 少しの沈黙。 「気持ち悪いですよね?こんな体」 そんなバカな。 「あー、その、なんだ?ビックリしただけで、気持ち悪いとか全然」 メイは声を荒げる。 「嘘は言わなくてもいいんですよ?気持ち悪いって正直に言って下さって結構ですっ」 「だから!気持ち悪くないってば!」 オレも負けじと大声を出す。 肩をつかむ。 「綺麗だって!大体付いてる位なんだよ!」 こっからはもう、勢いだった。 「ずっと、ずぅっと好きだったんだぞ!いまさら気持ちなんか変わるもんか!!」 抱きしめる。 「だから、気持ち悪いなんていうなよ・・・気にしないよ」 腕の中のメイが、オレを見上げる。 緋色の瞳が俺の目を見つめ、やがてそっと閉じた。 やわらかそうなその唇に吸い寄せられるように・・・ と、ポケットの中で有名映画の有名なテーマが流れる。 なんか偉い人が来て、誰かが目隠しされて連れて行かれそうなアレである。 「っち、もしもし?何だよ、かーさん?」 いいところだったのに。 気勢がそがれたので手振りでメイに服を着るように指示しながら、客間を出る。 「あー、メイちゃん、ちゃんと着いた?」 「ああ、ちゃんと着いたよ。つか手紙に誰が何時に何しに来るのかちゃんと書いとけっ」 「あー、ゴメンゴメン。話してなかったっけ?」 「聞いてねぇよ」 「まあいいじゃない。いまだにあの子の事好きなんでしょ?」 「んなこたどーでもいいだろう!ソレより用件言えよ」 「もー。あのね、かーさんしばらくそっち帰れなくなったから」 「はぁ?いつ帰んだよ?」 「大体一ヵ月後かなぁ」 一ヶ月!! 「長くね?」 「ま、コレをいい機会に自炊の経験積んでチョーダイ」 ・・・誰かさんのせいで昔から自炊スキルは結構高いぞ。 「ったくもー。用件コレだけかよ?」 「そうそう、メイちゃんあんたと同じ大学だからちゃんと面倒見てあげるのよ?」 な・・・ 「なんだってー!!」   続く