メイジおいしい牛乳~Hard day's night 中編~ 「女の子だったのかよっ!?」 驚く敏明と対照的にノブは冷ややかだ。 淡々と体を拭きながら、予想される質問に先行で答える。 「仕事、しやすいんですよ。男の子のフリしてると」 着替えに袖を通しながら続ける。 「そういう趣味のお偉いさんのところへ呼ばれていって、体を見せる。その隙に」 「もういい。悪かった」 見れば、敏明は沈痛な面持ちをしていた。 「嫌なこと、思い出させちまったな。すまない」 ノブは、何か言おうとして、その言葉を飲み込んだ。 敏明が、手を伸ばしてくる。 思わず身構えたノブの頬に、敏明の大きな手が触れる。 「男の子だろうが女の子だろうが、ノブはノブだ」 そのまま額を撫で、しっとりと濡れたプラチナの髪を梳く。 その感触はかつて、あの地獄の日々の中で味わった安らぎに似ていた。 「目を閉じて」 ささやく敏明に戸惑いつつ、ノブは従った。 敏明の気配が濃くなる。 睫毛に息がかかる。 胸の動悸が止まらない。 今までキスをされることなど、ざらにあった。 いつもはなんともなかったのに。 胸が、高鳴る。 ちゅっ。 少しカサついた唇が額に触れた。 「えー・・・」 目を開くと、敏明が悪戯っぽく微笑むのが見えた。 「ははっ。唇だと思ったか?ホントの初めては好きな人に取っときな」 ノブはちょっと残念に思ったが、胸の奥の熱さは消えなかった。 「おはようございまーす」 守衛さんに挨拶。 メイジが横で会釈する。 「おはようさん。その子がメイジ君、いや、メイジちゃんか」 どうやら、説明の必要はないみたい。 課長も興味ないフリして、根回しいいなぁ・・・ 「それじゃ、ビジターカードの写真取るからちょっと、そこに立ってくれる?」 メイジは愛想良く返事をすると言われた場所に立つ。 「はい、じゃ撮るよー。はい、チーズ」 懐から取り出したデジカメで、ぱちり。 撮影された画像をその場で確認して、首をかしげる。 「あれ?・・・まあいいか。うまく写らなかったから、もう一度撮るねー」 はい、チーズ。 新しい画像を確認してまた、首をかしげた。 「うーん・・・もう一度いいかな?」 なんか、おかしい気がする。 「あ、ちょっといいですか?」 デジカメの画像を確認すると、どういうわけかメイジの顔だけ、ブレて写っている。 こ、これはもしかして・・・"前に居た所"で仕込まれた技、なのかな。 「メイジ、ちょっとおいで」 とてとてと駆け寄って来た彼女に耳打ちする。 「反射的にやっちゃうのかもしれないけど、我慢して。一緒に会社に入れなくなっちゃうから。ね?」 こくん、とうなずくメイジ。 「いいですか?」 守衛さんが不思議そうな顔をしているので、メイジに戻るよう促す。 「じゃ、改めて撮りますよー。はい、チーズ」 ぱちり。 また画面を確認する守衛さん。 どうやら今度は大丈夫だったらしい。 「じゃ、カード作りますんでちょっと待っててください」 カメラからメモリスティックを抜き出すと、プリンタに差込む。 少しして、ビジターカードが出来上がった。 意外としっかりしたつくりで、プリントされたカードをラミネートしたものに、クリップと首にかけるストラップがついている。 「はい、これが身分証になるから見えるところに付けといてね」 手渡されたカードをメイジに掛けてあげる。 なんだか、誇らしげ。 運動会のメダルを思い出してちょっと笑ってしまった。 ―某社近傍の路上にて。 「亜希さんたちが出社しちゃうとやることないんだよねー、俺たち」 それにまたダルそうに自衛官が答える。 「あー。うん。ゲームやるか」 懐から何かを取り出す。 「DSか。うし、対戦しようぜ!」 警察官も負けじと懐からゲーム機を取り出す。 「そりゃ難しいな」 出てきたのはPSPだった。 「ふうん、そう。下がっていいわ・・・にしても」 黒ベースに白いフリル満載の服・・・ゴスロリに身を包んだ金髪の少女が鷹揚にうなずく。 「平和ボケ、っていうかほぼド素人よね。これなら楽勝だわ」 その口元に嘲笑が浮かぶ。 「お姉さま。失礼とは存じますが、侮りは時に命にかかわりますわ」 同じようにゴスロリに金髪の少女―こちらは先の少女よりも少し幼い―が進言する。 と、お姉さまと呼ばれた少女の顔から表情がふっと、消える。 「ディセンバー。私に意見するなんて、生意気よ」 ディセンバーと呼ばれた少女は、背筋を凍らせる。 「ふふふ、どうやら、お仕置きが必要みたいね」 ディセンバーは、長いスカートの裾を、自ら持ち上げる。 白いレースをふんだんに用いたショーツは、一部分が盛り上がっていた。 「いけない子ね・・・お仕置きを期待してたの?」 妖艶な笑みを浮かべ、ゆっくりと歩み寄る。 「女の子の格好して、こんな所膨らませて。恥ずかしくないのかしら?」 彼は顔を赤らめ、俯く。 "お姉さま"はディセンバーに触れずに、周りを回りながら、罵倒する。 「変態ね。救いようがない変態だわ!」 しかし、その顔に浮かぶのは嫌悪ではなく、嘲笑でもなく、劣情に身を焦がす女の顔だった。 再び前に回ってきた"お姉さま"はいきなり彼の股間のふくらみをつかむ。 実を言うと、ディセンバーは趣味で女装をしているのではない。 彼はノブの正逆、すなわち少女趣味者を対象とする暗殺者だ。 お姉さま―名をジューンという―と一緒に日本に来るまでは、自分が変態だという意識は全くなかった。 お姉さまはすぐメディアに感化される。 とはいえ、彼はジューンのそういうところが嫌いではなかった。 彼女は、彼の剛直をつかんだまま、乱暴にこすりあげる。 「あぁっ、ジューン姉さまっ、そんなにしたらぁ!」 ビクッと身を硬直させるディセンバー。 ジューンは絶妙なタイミングで、竿を握り締める。 その力は、ねじ切らんばかりである。 「ダメよ、ディセンバー。お仕置き、なのよ?」 ギリギリと締め上げる痛みにディセンバーは苦悶の表情を浮かべ、脂汗を流す。 「ほら、いつもみたいにおねだりなさい。さあ」 「わ、私の変態おちんちんを、お姉さまの指でごしごし、して、イカせて、くださいぃ」 ジューンはぱっと手を離す。 「え、お姉さま?」 痛めつけられたモノがジンジンと疼く。 ジューンは、ふと妖艶に笑った。 「ふふふ・・・今日は気分がいいから、中でイカせてあげる。おいで、ディセ」 誘惑は、温厚な彼を獣に変えた。 ベッドへ押し倒しながら、半ば引きちぎるように下着を脱がすと一気に、貫く。 「んはぁああっ、すご、あっ」 一心不乱に突き上げる。 テクニックもへったくれもない、本能のままの動き。 彼の端正な顔は汗にまみれ、快楽に歪む。 ジューンは、それを見るのが好きだった。 「ん、ほらっ、どう、した、ら、あっ、もっと、ん、よく、なるん、はっ、だっけ?」 彼は言われ、二人が繋がっている場所へ手を伸ばすと、何かを、握った。 「そう、そうよ。それ、うぁ、こす、って」 それは手の中で熱く脈打っている。 いつも自分のものを擦るよりも激しく、扱きあげる。 ワンストロークするごとに膣内が締め付け、うごめき、吸い付く。 「あひ、あっ、あっ、おね、さまっ、もっ、もう!」 ディセはもはやがくがくと腰を振るのが精一杯の状態だ。 結合部は二人の愛液でぐじゅぐじゅに溶けている。 「んぁっ、あっ、ディセ!来て!中、いっぱい、出してぇっ、一緒にっ、一緒にっ!!」 「あ、あっ、お姉さまっ!お姉さまぁっ!!ああああああああ!!!!」 ディセの手の中でジューンのモノが跳ね回り、黒いドレスに白濁液を撒き散らしていく。 結合部からは収まりきらなかった大量の精液が溢れ出していた。 小さく呻いて胸に倒れこんで来たディセを優しく抱きとめ、ジューンは艶然と微笑み、つぶやいた。 「愛しているわ、ディセ。誰よりも・・・」