紺シナリオ第二部その2「この鮭の切り身やるから帰れ」 外はあいにくの雨。 昨日の給食の時間の話題が尾を引きずってか、 家では何ともなかったが、今日の給食の時間はどうにも空気が重く、 久しぶりにお互いの会話が無い。 ガララララララララララララ! 雨竜「この洗いを作ったのは誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 紺 「……………………」 紳士「……………………」 雨竜「あまりの無反応さに俺のhearts;(ハート)が物故割れそうなんだが」 雨音もかき消す勢いで豪快に給食室の扉を開けてずかずかと入り込んで来たのは、紺ちゃんと同い年の四年生、高根雨竜君だ。 紳士「どうしたの? 今日の給食で何かあった?」 ちなみに今日の給食に洗いは無く、今日の魚料理は鮭の炭火焼バター醤油風。 というか、給食で生魚の洗いを出したら、一発で保健所が飛んでくるんじゃないだろうか? 雨竜「んやあ、いっつも若い男女が真っ昼間から密室に篭りっきりで、    何してんのかなあと、タシーロにきたわけよwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 紳士「タシーロって何?」 雨竜「何だよ、兄ちゃんは2ch初心者か? 半年ROMってな!    それはそうと、このシャケうめえwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww    どうやって焼いたのか教えてくれ!」 紳士「うちの父さんがいい炭をいっぱいもらってきてね、    折角だから少しわけてもらったのを使って、炭火焼にしただけだよ」 雨竜「炭で焼いただけかよ! なのにうめえwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 紺 「ただ、焼いただけじゃないよね、お兄ちゃん?」 紳士「いや、ただ焼いただけだよ。炭火で余計な脂を落として、ざっとソースをかける。ただそれだけ」 雨竜「なーんだ、そんだけか。そんなら俺にも出来そう。うはwww俺、今日から天才料理人かwwwwwwwwwwwwww」 紺 「雨竜! お兄ちゃんはプロの料理人なんだからね。雨竜なんかにお兄ちゃんの真似が出来るわけないでしょ!」 驚いた……あの紺ちゃんが感情を露わにして、雨竜君に立ち向かっている。 いや、ひょっとしたらこれが紺ちゃんの本当の姿なのかもしれない…… 雨竜「やってみなきゃ分かんないぜ。今なら紳士さんよりクオリティの高い焼き鮭作っちゃうよ、俺wwwwwwwwwwww」 紳士「んじゃ、やってみる? 材料余ってるし、火消してそんなに時間経ってないから、すぐに点けられるし」 雨竜「よっしゃあ! やってやんよwwwwwwwwwwww」 ………… …………………… ……………………………… 雨竜「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ! 俺の鮭が丸焦げだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 怪我をしないよう、注意深く焼き方を教えてはみたが、 案の定というか何というか、鮭の切り身が丸焦げになってしまっていた。 紺 「ほら見なさい」 雨竜「く、くそう……今日の所は引き分けにしといてやんよ。    この丸焦げの鮭は、後でスタッフが美味しくいただいてやるかんな!」 雨竜君は絶叫を上げながら、廊下に駆け出していった。 紺 「何なの? あれ?」 紳士「いや、僕が聞きたいな。っていうか、彼は何でいつもあんなにテンション高いの?    芸人でも目指しているの?」 紺 「えっと、あいつのアレはお笑い系って言うよりは、    インターネットに影響されてっていうか……」 思わぬ闖入者ではあったが、思わぬ紺ちゃんの一面を伺えた事と、 何より紺ちゃんが僕や家族とは別人と会話が出来ていた事が、 僕にとっては何より嬉しかった。