山 の科学 ・山 と川 (二)
理学博士 二、山のいろいろとその形
山の美しい形
すべて山の形とその
山の生い立ちによって、山の形をだいたいに区分してみますと、
(一)孤立 の山
孤立の山というのは、ただ一つの山が、ポツンとひとりぼっちでそびえているのをいうので、前にお (二)連山
以上、孤立の山も連山も、長い
なおここに、もう一つ注意すべきことは、山を
山へ行くと、よく
山をつくる岩
(一)岩とは何か
つきつめていえば、砂もつまり高い山をつくっている
むずかしくいえば、岩石とは
(二)岩の区別
いま、お(イ)
火山が
(ロ)
(ハ)
水成岩 の山
(一)地層 とは何 か
水成岩はおもに砂やその
(二)地層 のしわ
海底やこのほか、わたくしどもは
(三)化石
地層を作るみなさんが
化石は、貝や木の葉のような小さいものばかりでなく、外国では、
火成岩 の山
(一)二 とおりの火成岩
地球内部の(イ)
また火山岩は、
(ロ)
深造岩は土地の下でゆっくり
よく、大きなビルディングなどの入り口の
日本には花崗岩からなりたっている山がひじょうに多く、ことに中国地方から
花崗岩からできた山では、むかしから
(二)火成岩 のひび
火成岩には、深造岩にできる節理はあまり
前にお
ところが火山岩になると、
材木岩の
火山岩には、また、たまには
(三)岩脈
火成岩がつまり岩脈は通常、岩の中を
とくに、あら
鬼御影にはこのほかに
岩脈には、あるときは
変成岩 の山
(一)岩の変質
岩が圧力やしかし、なんといっても
片麻岩と結晶片岩も、どちらもたいへん固い岩で、打ちくだくと
そして結晶片岩には、そのふくんでいる
(二)秩父 の長瀞
この地方は、前にお
日本じゅうで、結晶片岩からできた山は秩父地方ばかりでなく、四国
山の寿命
(一)地貌 の輪廻
山もはじめは生まれ出たものであることはすでにおこういうふうに陸地のデコボコである山が生まれ、成長し、
(二)地球の年齢
かりにそれをもっとも
ともかく、地球のこれまでの
そこでつぎには、山が生まれてからだんだんけずり
山の彫刻 と破壊
山を
それでは、そういうふうに山をけずりこわしていく
空気は地球のまわりを、
空気中の水分は雨となって
また、植物や動物が岩を
(一)空気の働 き
(イ)こんなふうに固い岩が毎日多少ずつでもふくれたり、
ちょっとだれでも、
しかし、夜に入ればそれが
岩が太陽の
(ロ)
ですから、鉱脈を見つけるのには、まずその赤焼けをさがしだすことが
水蒸気や
(二)水の働 き
(イ)雨の(ロ)地下水の
しかし、石灰岩地方でおもしろいものは、なんといっても
(ハ)
(ニ)
雪は
こうしてその
また、氷河はすべりおちる途中、両岸の
(三)生物の働 き
(イ)植物の植物の根がこのように岩をくだくのは、一つの根が大きく生長するその力にもよりますが、いま
植物が
「天狗の麦飯」は、このカビが
(ロ)動物の
ミミズは小さな動物ですが、
こうして、壊された岩くずは、水のために山の
してみると、川はわれわれ人間にたいせつな
(つづく)
底本:
1982(昭和57)年6月20日発行
親本:
1927(昭和2)年10月3日発行
入力:しだひろし
校正:
xxxx年xx月xx日作成
青空文庫作成ファイル:
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山の科學・山と河(二)
理學博士 今井半次郎-------------------------------------------------------
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)山《やま》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)明治《めいじ》四三|年《ねん》一一|月《がつ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)人々《ひと/″\》
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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二、山《やま》のいろ/\とその形《かたち》
山《やま》の美《うつく》しい形《かたち》
平地《へいち》にばかり住《す》んでゐて、たまにひろいところへ出《で》て、高《たか》い山《やま》を遠《とほ》くに仰《あふ》いで見《み》ますと、まったく、青《あを》い空《そら》からくっきり[#「くっきり」に傍点]と浮《う》き出《で》た、その輪廓《りんかく》や、紫色《むらさきいろ》にはえ輝《かゞや》いてゐるその色《いろ》どりの美《うつく》しさに打《う》たれ、大自然《だいしぜん》のたっとさを感《かん》じます。
すべて山《やま》の形《かたち》とその曲線美《きよくせんび》とは、よく調和《ちようわ》して、自然《しぜん》の妙律《みようりつ》を傳《つた》へてゐるものですが、その山々《やま/\》が千態《せんたい》萬樣《ばんよう》の形《かたち》を取《と》つてゐるのにはいろ/\の原因《げんいん》があるのです。むろん、大體《だいたい》の形《かたち》は、前《まへ》にお話《はなし》した山《やま》の生《お》ひ立《た》ち、つまり山《やま》の出來方《できかた》によつてきまるのですが、しかしまた、山《やま》を形造《かたちづく》つてゐる岩《いは》の種類《しゆるい》や、山《やま》が出來《でき》た後《のち》に、受《う》けたいろ/\の自然《しぜん》の働《はたら》きによることも、かなり多《おほ》いのです。
山《やま》の生《お》ひ立《た》ちによつて、山《やま》の形《かたち》を大體《だいたい》に區分《くぶん》して見《み》ますと、孤立《こりつ》の山《やま》と、連山《れんざん》との二《ふた》つになります。
(一)孤立《こりつ》の山《やま》
孤立《こりつ》の山《やま》といふのは、たゞ一《ひと》つの山《やま》が、ぽつんと獨《ひと》りぼっちでそびえてゐるのをいふので、前《まへ》にお話《はなし》した、堆《つ》み上《あ》げ山《やま》、噴《ふ》き出《だ》した山《やま》、すなはち、火山《かざん》、及《およ》び押《お》し上《あ》げ山《やま》、といつたものが、よくこの形《かたち》をとつてゐます。ことに火山《かざん》は孤立《こりつ》した圓錐形《えんすいけい》の美《うつく》しい形《かたち》をしてゐるものが多《おほ》く、富士山《ふじさん》はいふまでもなく、三河《みかは》の鳳來寺山《ほうらいじさん》、伯耆《はうき》の大山《たいせん》などは、その標本的《ひようほんてき》なものです。孤立《こりつ》の山《やま》も時《とき》には數個《すうこ》集《あつま》つて、筍《たけのこ》が、むらがり生《は》えたように『山群《さんぐん》』または『山彙《さんい》』を作《つく》ることがあります。日光《につこう》の男體山《なんたいさん》、女貌山《によほうさん》、赤薙山《あかなぎさん》、眞名子山《まなごさん》、月山《げつさん》、太郎山《たろうさん》などが、並《なら》び立《た》つて日光《につこう》火山彙《かざんい》となつてゐるごときは、その一例《いちれい》です。
(二)連山《れんざん》
連山《れんざん》といふのは馬《うま》や駱駝《らくだ》の脊《せ》を見《み》るように、高低《たかひく》の峯《みね》がえん/\と連《つらな》つてゐるもので、孤立《こりつ》の山《やま》のやさしい姿《すがた》にくらべると、これはいかにも雄大《ゆうだい》な男性的《だんせいてき》な光景《こうけい》です。
以上《いじよう》、孤立《こりつ》の山《やま》も連山《れんざん》も、長《なが》い年月間《ねんげつかん》の風《かぜ》や雨《あめ》には抵抗《ていこう》しがたく、次第《しだい》に表面《ひようめん》が削《けづ》り取《と》られるとともに、大小《だいしよう》の谷《たに》によつて深《ふか》く彫《きざ》みこまれて來《き》ます。それは恰《あたか》も彫刻師《ちようこくし》が鑿《のみ》と鎚《つち》とを以《もつ》つて[#送りがなの「つて」は底本のまま]大理石材《だいりせきざい》を彫刻《ちようこく》するのと變《かは》りはありません。空氣《くうき》と水《みづ》は、まったく自然界《しぜんかい》の偉大《いだい》な彫刻家《ちようこくか》であると云《い》つてもいゝわけです。その結果《けつか》として山《やま》はすっかり容貌《ようぼう》をかへ單調《たんちよう》から複雜《ふくざつ》に、角《つの》ばつたものから圓《まる》みを帶《お》びたものに、不調和《ふちようわ》なものから調和《ちようわ》したものにと、だん/\形《かたち》を整《とゝの》へて來《き》ます。だからこれは山《やま》の美《うつく》しさを加《くは》へた大《おほ》きな原因《げんいん》でもありますが、また一方《いつぽう》から考《かんが》へると山《やま》の美《び》を破壞《はかい》する原因《げんいん》にもなつてゐます。
なほ、こゝに、もう一《ひと》つ注意《ちゆうい》すべきことは、山《やま》を形造《かたちづく》つてゐる岩《いは》のことです。その岩《いは》には硬《かた》いのと軟《やはらか》いものとがあり、目《め》があらくて水《みづ》をよく通《とほ》すものと、反對《はんたい》に通《とほ》さないものまた水《みづ》に溶《と》け易《やす》いものと、溶《と》けにくいものもあつて、その性質《せいしつ》はさま/″\です。それに一《ひと》つの山《やま》が一種類《いつしゆるい》の岩《いは》からなりたつてゐるといふことはほとんどなく、通例《つうれい》は、以上《いじよう》のいろいろ變《かは》つたたち[#「たち」に傍点]の岩《いは》が互《たがひ》に入《い》り亂《みだ》れてゐます。そして、そのうちの一種類《いつしゆるい》の岩《いは》でも、またところにより硬《かた》さが違《ちが》つたりしてゐますから、空氣《くうき》や水《みづ》がそれらを彫刻《ちようこく》する際《さい》にも自然《しぜん》と手《て》ごたへが違《ちが》つて來《く》るわけです。ですから軟《やはらか》いところは早《はや》く削《けづ》られ、硬《かた》いところは、とり殘《のこ》されて、後《あと》にまはされます。
山《やま》へいくと、よく奇怪《きかい》な形《かたち》をした面白《おもしろ》い岩《いは》を見《み》かけることがあります。蝋燭岩《ろうそくいは》だの、天狗岩《てんぐいは》だのと名《な》づけられてゐるようなものは、大抵《たいてい》の山《やま》には一《ひと》つや二《ふた》つはあります。また山《やま》全體《ぜんたい》の形《かたち》からいつても鋸《のこぎり》の齒《は》のような形《かたち》をしてゐる鋸山《のこぎりやま》だの、烏帽子《えぼし》の形《かたち》に似《に》てゐる烏帽子山《えぼしやま》などいふものも方々《ほう/″\》にあります。山《やま》がさういふ變《かは》つた形《かたち》をとるのは、つまりその岩《いは》の性質《せいしつ》と、その岩《いは》に働《はたら》く自然《しぜん》の彫刻《ちようこく》作用《さよう》との二《ふた》つの釣《つ》り合《あ》ひから起《おこ》るのだといふことが、もうおわかりになつたと思《おも》ひます。
[#図版(12.png)、集塊岩から出來た蝋燭岩]
それで、つぎには、山《やま》を形造《かたちづく》る、その岩《いは》とはどんなものか、それがどうして出來《でき》たものか、また、山《やま》の彫刻《ちようこく》作用《さよう》はどんな手段《しゆだん》で行《おこな》はれるものであるかといふことを、少《すこ》しくはしくお話《はなし》して見《み》ませう。
山《やま》を造《つく》る岩《いは》
(一)岩《いは》とは何《なに》か
つきつめていへば、砂《すな》も粘土《ねんど》も一《ひと》つの岩石《がんせき》です。われ/\は日常《にちじよう》、石《いし》といふ言葉《ことば》と岩《いは》といふ言葉《ことば》を區別《くべつ》したように使《つか》ひますが、それらは學問上《がくもんじよう》ではひっくるめて岩石《がんせき》といひます。岩石《がんせき》といへば、すべて、さも硬《かた》いものゝようにひゞきますが、實際《じつさい》は硬《かた》いものでも、軟《やはらか》いものでも、すべて地球《ちきゆう》の外皮《そとがは》、すなはち地殼《ちかく》を作《つく》つてゐるものは、こと/″\く岩石《がんせき》と名《な》づけていゝのです。
つまり高《たか》い山《やま》を造《つく》つてゐる硬《かた》い岩《いは》はもとより、河《かは》の中《なか》を流《なが》れてゐる礫《こいし》の集《あつま》りや、砂《すな》や、沼《ぬま》の中《なか》にある泥土《でいど》や、平地《へいち》を形作《かたちづく》つてゐる粘土《ねんど》や、土壤《どじよう》も、みんな岩石《がんせき》です。また、雨水《あまみづ》が凍《こほ》つて出來《でき》た氷《こほり》や雪《ゆき》も、動物《どうぶつ》や植物《しよくぶつ》の作《つく》つた石炭《せきたん》や石油《せきゆ》も、やはり岩石《がんせき》の中《なか》へ入《い》れてよいのです。
むづかしくいへば、岩石《がんせき》とは鑛物《こうぶつ》のより集《あつま》つて出來《でき》たものといふのが適當《てきとう》です。鑛物《こうぶつ》には液體状《えきたいじよう》のものも固體状《こたいじよう》のものもあり、動物質《どうぶつしつ》からできたものと植物質《しよくぶつしつ》からできたものとがあります。ですから廣《ひろ》い意味《いみ》でいへば岩石《がんせき》には流動體《りゆうどうたい》のものも固體《こたい》のものも、軟《やはらか》いものもあるわけです。しかし、通常《つうじよう》は硬《かた》いもののみを岩石《がんせき》と考《かんが》へてもさし支《つか》へないでせう。
(二)岩《いは》の區別《くべつ》
今《いま》お話《はなし》したように岩《いは》は種類《しゆるい》からいつても性質《せいしつ》からいつても、ひどく複雜《ふくざつ》なものですが、しかし、これを地球《ちきゆう》全體《ぜんたい》について見渡《みわた》すと、大體《だいたい》三通《みとほ》りに大別《たいべつ》することができます。水成岩《すいせいがん》、火成岩《かせいがん》、變成岩《へんせいがん》がそれです。
(イ)水成岩《すいせいがん》。 水成岩《すいせいがん》は、主《しゆ》として水《みづ》で運《はこ》ばれた土砂《どしや》や、礫《こいし》や、水《みづ》に溶《と》けた物質《ぶつしつ》が水中《すいちゆう》に沈積《ちんせき》して生《しよう》じた岩《いは》で、今《いま》でも海《うみ》や湖水《こすい》の底《そこ》にできつゝあるものです。ちがつた物《もの》が次《つ》ぎから次《つ》ぎへと積《つ》み重《かさ》なるのですから、でき上《あが》つたものを見《み》ると、ちょうど疊《たゝみ》を何枚《なんまい》も積《つ》み重《かさ》ねたように、層《そう》と層《そう》とが重《かさ》なりあつてゐます。ですから水成岩《すいせいがん》のことをまた『層状岩《そうじようがん》』といふこともあります。地球上《ちきゆうじよう》の岩《いは》は水成岩《すいせいがん》がいちばん多《おほ》く、全體《ぜんたい》のおよそ五分《ごぶん》の四《し》を占《し》めてゐます。
火山《かざん》が爆發《ばくはつ》して噴《ふ》き飛《と》ばして細《こま》かい火山灰《かざんばい》や、沙漠《さばく》地方《ちほう》の砂《すな》などが風《かぜ》に吹《ふ》かれて遠方《えんぽう》に飛《と》び、陸上《りくじよう》に積《つ》み重《かさ》なつた場合《ばあひ》にも、やはり層状《そうじよう》の岩《いは》ができます。それは、事實《じじつ》水《みづ》の中《なか》で沈積《ちんせき》したものでないので、少《すこ》し變《へん》ですが、やはり便宜上《べんぎじよう》水成岩《すいせいがん》の仲間《なかま》に入《い》れられてゐます。とにかく、水成岩《すいせいがん》は空氣中《くうきちゆう》または水中《すいちゆう》に沈澱《ちんでん》して出來《でき》たものだと思《おも》へば間違《まちが》ひありません。東京《とうきよう》附近《ふきん》の高臺《たかだい》を作《つく》つてゐる赤土《あかつち》の層《そう》は、火山灰《かざんばひ》が陸上《りくじよう》に積《つ》み重《かさ》なつて出來《でき》たものだといはれてゐます。
(ロ)火成岩《くわせいがん》。 火成岩《かせいがん》は前《まへ》のとは大變《たいへん》ちがつて、地球《ちきゆう》の内部《ないぶ》の熔《と》けた岩《いは》が地殼《ちかく》の割《わ》れ目《め》を傳《つた》はつて表面《ひようめん》に流《なが》れ出《で》て固《かた》まつたり、または出《で》てくる途中《とちゆう》で、深《ふか》い地《ち》の底《そこ》で冷《ひ》え固《かた》まつてできたものです。ですから、かなくそ[#「かなくそ」に傍点]の固《かた》まつたのと同《おな》じく、きまつた形《かたち》がなく、さま/″\の不規則《ふきそく》な塊状《かいじよう》をしてゐます。それで火成岩《かせいがん》のことをまた『塊状岩《かいじようがん》』とも云《い》ひます。
(ハ)變成岩《へんせいがん》。 變成岩《へんせいがん》は水成岩《すいせいがん》または火成岩《かせいがん》が、さらに熱《ねつ》や壓力《あつりよく》や水《みづ》や瓦斯《がす》などによる、いろ/\の外面《がいめん》からの働《はたら》きによつて、その持《も》ちまへの性質《せいしつ》をすっかり變《か》へてしまひ、新《あたら》しくでき上《あが》つたものをいふのです。中《なか》には水成岩《すいせいがん》に似《に》て薄《うす》く剥《は》げる性質《せいしつ》をもつたものもありますが、石《いし》の質《たち》を見《み》ますとむしろ火成岩《かせいがん》に似《に》てゐます。
水成岩《すいせいがん》の山《やま》
(一)地層《ちそう》とは何《なに》か
水成岩《すいせいがん》は主《おも》に砂《すな》や粘土《ねんど》や小石《こいし》のような岩《いは》のかけら[#「かけら」に傍点]が水中《すいちゆう》に沈澱《ちんでん》堆積《たいせき》して生《しよう》じたものであることは今《いま》お話《はなし》しました。それでは、その原料《げんりよう》、つまり砂《すな》、粘土《ねんど》等《など》はどこから來《き》たものかといひますと、それはみんな、やはり地殼《ちかく》を作《つく》つてゐた岩《いは》がこはれて河《かは》の水《みづ》に運《はこ》ばれて來《き》たものなのです。それが湖水《こすい》や海《うみ》にはひるとだん/\底《そこ》に沈《しづ》んで堆積《たいせき》します。永《なが》い年月《ねんげつ》の間《あひだ》には積《つも》り積《つも》つて、つひには厚《あつ》さが百尺《ひやくしやく》にも千尺《せんじやく》にもまた一萬尺《いちまんじやく》以上《いじよう》にもなります。
その積《つも》り重《かさ》なつた層《そう》を見《み》ると、定規《じようぎ》で引《ひ》いた線《せん》のように眞平《まつたひら》で、大抵《たいてい》は砂《すな》ばかりのところや、粘土《ねんど》ばかりのところや、また礫《こいし》を多《おほ》く交《まじ》へた層《そう》といふ風《ふう》に、たがひちがひに規則《きそく》正《たゞ》しく重《かさ》なつてゐます。かうして出來《でき》た層《そう》を『地層《ちそう》』と名《な》づけます。
[#図版(13.png)、水成岩から出來た地層]
地層《ちそう》は出來立《できた》ての若《わか》いものは軟《やはらか》ですが、永《なが》い年月《ねんげつ》を經《へ》ると、強《つよ》い壓力《あつりよく》のために非常《ひじよう》に堅《かた》くなつて普通《ふつう》に見《み》る水成岩《すいせいがん》となります。その砂《すな》の層《そう》の固《かた》まつたものを砂岩《さがん》、粘土《ねんど》の層《そう》の固《かた》まつたのを粘板岩《ねんばんがん》、礫《こいし》の層《そう》の固《かた》まつたのを礫岩《れきがん》と名《な》づけます、また火山灰《かざんばひ》が水《みづ》の中《なか》で固《かた》まつたものは凝灰岩《ぎようかいがん》とよんでゐます。
(二)地層《ちそう》の皺《しわ》
海底《かいてい》や湖底《こてい》に出來《でき》た地層《ちそう》は、いつもそのまゝぢっとしてはゐません。前《まへ》にお話《はなし》した桑滄《そうそう》の變《へん》が起《おこ》つて、地層《ちそう》はだんだん持《も》ち上《あ》げられてくると共《とも》に、横壓力《おうあつりよく》によつて曲《まが》つて皺《しわ》が出來《でき》ます。そのために皺《しわ》の山《やま》(褶曲山《しゆうきよくざん》)が出來《でき》ることはすでにお話《はなし》したとほりです。
[#図版(14.png)、地層の皺]
しかし、こゝで注意《ちゆうい》すべきは、横壓力《おうあつりよく》によつて出來《でき》た褶曲山《しゆうきよくざん》の皺《しわ》と、地層《ちそう》の皺《しわ》とは、いつも一致《いつち》してゐないといふことです。今日《こんにち》の褶曲《しゆうきよく》山脈《さんみやく》を見《み》ますと、多《おほ》くの場合《ばあひ》、高《たか》くなつてゐなければならないはずの、皺《しわ》の脊《せ》に當《あた》るところが、かへつて低《ひく》い谷《たに》になつてきて、低《ひく》かるべき鞍《くら》の部分《ぶぶん》がかへつて高《たか》い山《やま》の頂《いたゞ》きとなつてゐます。それは、ちょうど細《ほそ》い竹《たけ》を曲《ま》げると、曲《まが》つた外側《そとがは》の方《ほう》がはち[#「はち」に傍点]切《き》れそうになるのと同《おな》じ理窟《りくつ》で、皺《しわ》の脊《せ》は弱《よわ》くて崩《くづ》れやすいために、早《はや》く雨《あめ》や風《かぜ》のために削《けづ》り去《さ》られるからです。
このほか、私《わたくし》どもは鐵道《てつどう》の切《き》り割《わ》りや山《やま》の崖《がけ》などに、ずいぶん細《こま》かく亂《みだ》れた地層《ちそう》の皺《しわ》を見《み》かけることがしば/\あります。
(三)化石《かせき》
地層《ちそう》を作《つく》る水成岩《すいせいがん》が水中《すいちゆう》や陸上《りくじよう》に堆積《たいせき》する際《さい》に、その當時《とうじ》水中《すいちゆう》や陸上《りくじよう》に生活《せいかつ》してゐた動物《どうぶつ》や植物《しよくぶつ》をその中《なか》にとぢこめて、今日《こんにち》までそのまゝはっきり[#「はっきり」に傍点]とその形《かたち》を殘《のこ》してゐることがあります。これを『化石《かせき》』といひます。
みなさんが山登《やまのぼ》りをされた時《とき》、貝《かひ》だの木《き》の葉《は》だのが岩《いは》についてゐるのを、お見《み》かけになることがありませう。かういふ化石《かせき》は、たゞ拾《ひろ》つてみるだけでも面白《おもしろ》いものですが、又《また》それによつて、その土地《とち》がもと海《うみ》であつたか、湖水《こすい》であつたかといふ變遷《へんせん》のあり樣《さま》をも知《し》ることが出來《でき》、また動物《どうぶつ》や植物《しよくぶつ》は大昔《おほむかし》から今日《こんにち》までに、だん/\と進化《しんか》したものですから、化石《かせき》の種類《しゆるい》によつて、その土地《とち》そのものが出來《でき》た時代《じだい》もわかつて來《き》ます。ですから化石《かせき》の研究《けんきゆう》は土地《とち》についての學問《がくもん》の上《うへ》では大變《たいへん》大切《たいせつ》なものになつてゐます。
化石《かせき》は貝《かひ》や木《き》の葉《は》のような小《ちひ》さいものばかりでなく、外國《がいこく》では、今日《こんにち》の象《ぞう》の三倍《さんばい》もあるような、大《おほ》きな動物《どうぶつ》も發掘《はつくつ》されてゐます。以前《いぜん》、東京《とうきよう》附近《ふきん》の赤土《あかつち》の中《なか》から、象《ぞう》の牙《きば》が發見《はつけん》されたことがありました。それで見《み》ると、その赤土《あかつち》の出來《でき》た昔《むかし》の時代《じだい》には、日本《につぽん》にも象《ぞう》が野生《やせい》してゐたと云《い》はれるものです。
石炭《せきたん》は、植物《しよくぶつ》が澤山《たくさん》地層《ちそう》の中《なか》に堆積《たいせき》して化石《かせき》になつたものです。九州《きゆうしゆう》や北海道《ほつかいどう》や常磐《じようばん》地方《ちほう》には、澤山《たくさん》の石炭層《せきたんそう》があつて、われ/\に必要《ひつよう》な燃料《ねんりよう》を供給《きようきゆう》してゐることは、すでにご存《ぞん》じでせう。
水成岩《すいせいがん》にはまた海岸《かいがん》でよく見《み》る漣《さゞなみ》のあとや、動物《どうぶつ》の踏《ふ》んだ足形《あしがた》や、雨滴《あまだれ》のあとなどが立派《りつぱ》に殘《のこ》つてゐることがあります。これも、しひて言《い》へば、波《なみ》の化石《かせき》、足跡《あしあと》の化石《かせき》といへないこともありますまい。
火成岩《かせいがん》の山《やま》
(一)二《ふた》とほりの火成岩《かせいがん》
地球《ちきゆう》内部《ないぶ》の熔《と》けた岩《いは》が地表《ちひよう》に流《なが》れ出《だ》して冷《ひ》え固《かた》まつたものと、全《まつた》く外《そと》に出切《でき》らないで途中《とちゆう》で冷《ひ》え固《かた》まつたものとでは、出來上《できあが》つた岩《いは》の質《しつ》が大變《たいへん》違《ちが》つて來《き》ます。そこでこの點《てん》から火成岩《かせいがん》を二《ふた》つに區分《くぶん》して、前《まへ》のものを、『火山岩《かざんがん》』後《のち》のものを『深造岩《しんぞうがん》』(又《また》は深成岩《しんせいがん》)といひます。もつとも區分《くわ》けは兩極端《りようきよくたん》をとつたので、その間《あひだ》にはいづれともつかないものもあるわけです。
(イ)火山岩《かざんがん》。 火山岩《かざんがん》は地表《ちひよう》に出《で》たために、冷《ひ》え方《かた》が早《はや》く、從《したが》つてその中《なか》に含《ふく》んでゐた鑛物《こうぶつ》が、ゆっくり結晶《けつしよう》するひま[#「ひま」に傍点]がないので、がらす[#「がらす」に傍点]質《しつ》を多《おほ》く生《しよう》じ、飴《あめ》の固《かた》まつたような形《かたち》をしてゐます。中《なか》にはほとんど、びーる瓶《びん》のこはれたような、全《まつた》くがらす[#「がらす」に傍点]質《しつ》ばかりから出來《でき》たものもあります。これは『黒曜石《こくようせき》』といひ、北海道《ほつかいどう》の十勝岳《とかちだけ》から澤山《たくさん》出《で》るので、十勝石《とかちいし》ともよび、印材《いんざい》などによく用《もち》ひられます。
また火山岩《かざんがん》は、地表《ちひよう》を流《なが》れながら、瓦斯《がす》や水蒸氣《すいじようき》を吹《ふ》き出《だ》すため、固《かた》まつた後《のち》は、ちょうどかなくそ[#「かなくそ」に傍点]を見《み》るように、蜂《はち》の巣《す》のように澤山《たくさん》の小《ちひ》さな孔《あな》が出來《でき》てゐることがあります。富士山《ふじさん》その他《た》の火山《かざん》で見《み》る『安山岩《あんざんがん》』(富士岩《ふじいは》ともいふ)や、『玄武岩《げんぶがん》』はこの類《るい》です。
火口《かこう》から流《なが》れ出《で》る冷《ひ》え固《かた》まつた火山岩《かざんがん》は、ひっくるめて『熔岩《ようがん》』といひます。しかし火口《かこう》の附近《ふきん》には、また熔岩《ようがん》のこはれた大小《だいしよう》の岩屑《いはくず》や、火山灰《かざんばひ》などが一《いつ》しよに固《かた》まつて出來《でき》た岩《いは》もあります。これには特《とく》に『集塊岩《しゆうかいがん》』と云《い》ふ名《な》がつけられてゐます。火山《かざん》は多《おほ》く、熔岩《ようがん》と集塊岩《しゆうかいがん》とから成《な》り立《た》つてゐるもので、富士形《ふじがた》の綺麗《きれい》な斜面《しやめん》や、裾野《すその》などは、多《おほ》く熔岩《ようがん》から出來《でき》てゐるようです。
(ロ)深造岩《しんぞうがん》。 これははじめ地下《ちか》の深《ふか》いところで冷《ひ》え固《かた》まつて出來《でき》たものですから、そのまゝでゐれば、いつまでもわれ/\の眼《め》に觸《ふ》れるわけはないはずです。ところが、前《まへ》にいく度《たび》もお話《はなし》した陸地《りくち》の變動《へんどう》のため、すなはち、皺《しわ》の山《やま》が出來《でき》、その上《うへ》の部分《ぶぶん》が雨《あめ》や風《かぜ》のため削《けづ》り取《と》られると――深造岩《しんぞうがん》も地表《ちひよう》に顏《かほ》を出《だ》すことになります。
深造岩《しんぞうがん》は土地《とち》の下《した》で、ゆっくり冷《ひ》え固《かた》まつたのですから、その中《なか》に含《ふく》まれてゐる鑛物《こうぶつ》は、みんな結晶《けつしよう》して、互《たがひ》にぎっしりくっつきあつてゐます。
よく大《おほ》きなびるぢんぐ[#「びるぢんぐ」に傍点]などの、入《い》り口《ぐち》の石段《いしだん》や腰《こし》のところや窓枠《まどわく》なぞに花崗岩《かこうがん》がつかつてあります。住宅《じゆうたく》の門柱《もんちゆう》や銅像《どうぞう》の臺石《だいいし》などにもよく見《み》うけます。大體《だいたい》白《しろ》っぽい石《いし》ですが、よく見《み》ると黒《くろ》い胡麻《ごま》をふつたような斑點《はんてん》があり、また多少《たしよう》淡紅色《うすあかいろ》の斑《まだら》のはひつたのもあります。花崗岩《かこうがん》は深造岩《しんぞうがん》の中《なか》の最《もつと》も普通《ふつう》なもので、その白《しろ》っぽく見《み》える地肌《じはだ》は水晶《すいしよう》と同《おな》じ石英《せきえい》と、長石《ちようせき》といふ二《ふた》つの鑛物《こうぶつ》の小《ちひ》さい結晶《けつしよう》の粒《つぶ》の寄《よ》り集《あつま》つたもので、黒《くろ》い點々《てん/\》はその間《あひだ》にはさまつてゐる黒雲母《くろうんも》または角閃石《かくせんせき》といふ結晶《けつしよう》の粒《つぶ》です。白《しろ》い長石《ちようせき》が、とき/″\淡紅色《うすあかいろ》になると、きれいな斑《まだら》が出來《でき》ます。
日本《につぽん》には花崗岩《かこうがん》から成《な》り立《た》つてゐる山《やま》が非常《ひじよう》に多《おほ》く、ことに中國《ちゆうごく》地方《ちほう》から瀬戸内海《せとないかい》の島島《しまじま》を經《へ》て、朝鮮《ちようせん》半島《はんとう》にかけてはほとんど花崗岩《かこうがん》の山《やま》ばかりといつてもいゝくらゐです。そのほか、本州《ほんしゆう》では、赤石《あかいし》山脈《さんみやく》、飛彈《ひだ》[#「飛彈」は底本のまま]山脈《さんみやく》、阿武隈《あぶくま》山脈《さんみやく》、北上《きたかみ》山脈《さんみやく》、北海道《ほつかいどう》では夕張《ゆふばり》山脈《さんみやく》などは大部分《だいぶぶん》花崗岩《かこうがん》から出來《でき》てゐます。
花崗岩《かこうがん》から出來《でき》た山《やま》では、昔《むかし》から景色《けしき》のよい名高《なだか》いところが少《すくな》くありません。關東《かんとう》平野《へいや》の空《そら》に紫色《むらさきいろ》をしてそびえてゐる筑波山《つくばさん》、大和《やまと》の笠置山《かさぎやま》、海岸《かいがん》の荒波《あらなみ》に洗《あら》はれて一層《いつそう》風致《ふうち》を増《ま》してゐる陸前《りくぜん》牡鹿《をじか》半島《はんとう》沖《おき》の金華山《きんかざん》、安藝《あき》の嚴島《いつくしま》などは、その主《おも》なものです。甲斐《かひ》の國《くに》御嶽《おんたけ》街道《かいどう》の昇仙峽《しようせんきよう》、信州《しんしゆう》木曾川《きそがは》沿岸《えんがん》の寢覺《ねざめ》の床《とこ》、同《おな》じ信州《しんしゆう》の天龍川《てんりゆうがわ》にある天龍峽《てんりゆうきよう》、美濃《みの》の國《くに》中津川《なかつがは》附近《ふきん》の木曾川《きそがは》峽谷《きようこく》などは、いづれも花崗岩《かこうがん》の山地《さんち》をうがつた深《ふか》い谷川《たにがは》で、兩岸《りようがん》に奇岩《きがん》怪石《かいせき》がそばだち、風景《ふうけい》の美《び》を加《くは》へてゐます。
(二)火成岩《かせいがん》のひゞ[#「ひゞ」に傍点]
火成岩《かせいがん》には、深造岩《しんぞうがん》でも、火山岩《かざんがん》でも、わりあひ規則《きそく》正《たゞ》しいひゞ[#「ひゞ」に傍点](割《わ》れ目《め》)が出來《でき》ることがあります。これを『節理《せつり》』と、となへてゐます。
深造岩《しんぞうがん》に出來《でき》る節理《せつり》は、あまり目立《めだ》たないようですが、花崗岩《かこうがん》では、ほゞひゞ[#「ひゞ」に傍点]が三方《さんぽう》に長《なが》く走《はし》つて、岩《いは》全體《ぜんたい》を四角《しかく》な賽《さい》ころを積《つ》んだように幾《いく》つもの小片《こぎ》れに分《わ》けてゐることが、しば/\あります。また稀《まれ》にはたゞ一方《いつぽう》のみに平行《へいこう》した割《わ》れ目《め》が出來《でき》て、ちょうど菱餅《ひしもち》を重《かさ》ねたようになることもあります。
前《まへ》にお話《はなし》した昇仙峽《しようせんきよう》や寢覺《ねざめ》の床《とこ》に、重箱岩《じゆうばこいは》、硯岩《すゞりいは》、爼岩《まないたいは》、腰掛岩《こしかけいは》などの大體《だいたい》四角《しかく》で、平坦《へいたん》ないろ/\面白《おもしろ》い岩《いは》が出來《でき》てゐるのも、また谷《たに》の兩岸《りようがん》が直立《ちよくりつ》してゐる、屏風岩《びようぶいは》などゝ呼《よ》ばれるけはしい崖《がけ》が出來《でき》たのもそのためです。
ところが、火山岩《かざんがん》になると、節理《せつり》の大變《たいへん》よく發達《はつたつ》するものがあつて、その特《とく》に著《いちじる》しいものは『材木岩《ざいもくいは》』といふ不思議《ふしぎ》な形《かたち》の岩《いは》を作《つく》ります。それは六角《ろつかく》、五角《ごかく》又《また》は四角《しかく》などの柱《はしら》を束《たば》ねたような形《かたち》で、まるで材木屋《ざいもくや》の店頭《みせさき》でも見《み》るようです。ですから、かういふ割《わ》れ目《め》を『柱状《ちゆうじよう》節理《せつり》』と、呼《よ》んでゐます。
[#図版(15.png)、材木岩]
この材木岩《ざいもくいは》は火山岩《かざんがん》の中《なか》でも特《とく》に色《いろ》の黒《くろ》っぽい玄武岩《げんぶがん》といふ種類《しゆるい》に出來《でき》ることが多《おほ》いのですが、しかし、灰色《はひいろ》をした安山岩《あんざんがん》に出來《でき》ることも、しば/\あります。少《すこ》しぐらゐ材木状《ざいもくじよう》になつた火山岩《かざんがん》は、日本《につぽん》には非常《ひじよう》に多《おほ》く、いたるところ見《み》ることが出來《でき》ます。
材木岩《ざいもくいは》の勝地《しようち》として昔《むかし》から有名《ゆうめい》なところは但馬《たぢま》の城《き》の崎《さき》温泉《おんせん》の近《ちか》くにある玄武洞《げんぶどう》、筑前《ちくぜん》の志摩《しま》半島《はんとう》の海岸《かいがん》にあつて、玄海灘《げんかいなだ》に臨《のぞ》んでゐる、芥屋《けや》の大門《おほと》、そのすぐ西方《せいほう》、十里《じゆうり》離《はな》れた肥前《ひぜん》の唐津灣《からつわん》の七《なゝ》つ釜《がま》の三箇所《さんかしよ》で、いづれも玄武岩《げんぶいは》[#「げんぶいは」は底本のまま]に出來《でき》た柱状《ちゆうじよう》節理《せつり》です。殊《こと》に玄武洞《げんぶどう》及《およ》び七《なゝ》つ釜《がま》には大《おほ》きな洞穴《ほらあな》があつて、その天井《てんじよう》も壁《かべ》もこと/″\く六角《ろくかく》の石柱《せきちゆう》で出來《でき》てをり、天井《てんじよう》はまるで大《おほ》きな蜂《はち》の巣《す》を見《み》るように見事《みごと》です。
安山岩《あんざんがん》に出來《でき》た材木岩《ざいもくいは》で、かなり知《し》られてゐるのは越前《えちぜん》の三國《みくに》の海岸《かいがん》にある東尋坊《とうじんぼう》、筑前《ちくぜん》、豐前《ぶぜん》の國境《こつきよう》に跨《またが》る英彦山《えいひこさん》(彦山《ひこさん》)の頂上《ちようじよう》にある材木岩《ざいもくいは》、陸中《りくちゆう》十和田《とわだ》湖岸《こがん》の材木岩《ざいもくいは》、越後《えちご》の七不思議《なゝふしぎ》の一《ひと》つになぞらへてゐる田代《たしろ》附近《ふきん》の七《なゝ》つ釜《がま》、信濃《しなの》の澁峠《しぶたうげ》の幕石《まくいし》、磐城《いはき》の白石町《しろいしまち》の近《ちか》くにある小原《をはら》温泉《おんせん》の材木岩《ざいもくいは》などです。
火山岩《かざんがん》には、又《また》、たまには平《ひら》ったい板状《いたじよう》に割《わ》れるものがあります。これを『板状《はんじよう》[#「はんじよう」は底本のまま]節理《せつり》』と名《な》づけてゐます。信州《しんしゆう》の諏訪《すは》地方《ちほう》にある鐵平石《てつぺいせき》、陸奧《むつ》の岩木山《いはきさん》の兼平石《かねひらいし》などはそのいゝ例《れい》で、これは格別《かくべつ》景色《けしき》をよくするには役立《やくだ》ちませんが、取《と》つて石材《せきざい》としていろ/\のところに使《つか》はれてゐます。
(三)岩脈《がんみやく》
火成岩《かせいがん》が水成岩《すいせいがん》や、すでに前《まへ》に出來《でき》てゐるほかの火成岩《かせいがん》のひゞ[#「ひゞ」に傍点]割《わ》れを傳《つた》はつて、細長《ほそなが》い枝《えだ》を出《だ》して固《かた》まつたものを、『岩脈《がんみやく》』といひます。
つまり岩脈《がんみやく》は通常岩《つうじよういは》の中《なか》を不規則《ふきそく》に走《はし》つてゐますが、たまには水成岩《すいせいがん》の層《そう》と層《そう》との間《あひだ》に流《なが》れこんで平《たひら》な疊《たゝみ》を敷《し》いたようになつてゐることもあります。この場合《ばあひ》には特《とく》にこれを『岩床《がんしよう》』と名《な》づけてゐます。
[#図版(16.png)、水成岩の間に出た岩脈(イ)と岩床(ロ)]
特《とく》にあら目《め》のものには鬼御影《おにみかげ》(ぺぐまたいと)と、いふのがあつて、それには石英《せきえい》(水晶《すいしよう》)や長石《ちようせき》や雲母《うんも》のようなものが非常《ひじよう》に大《おほ》きく發達《はつたつ》し、水晶《すいしよう》は稀《まれ》に四五寸《しごすん》から一尺《いつしやく》にも及《およ》ぶ透明《とうめい》な見事《みごと》な六角柱《ろつかくちゆう》となつて出《で》てくることがあります。
鬼御影《おにみかげ》にはこのほかに寳石《ほうせき》に用《もち》ひる黄玉《こうぎよく》、紅玉《るびー》、青玉《さふあいあー》、緑柱石《りよくちゆうせき》、電氣石《でんきせき》のようなものや、らぢぅむ[#「らぢぅむ」に傍点]を含《ふく》むいろ/\の珍《めづ》らしい鑛物《こうぶつ》や、錫《すゞ》や、重石《じゆうせき》(たんぐすてん)のような金屬《きんぞく》などを含《ふく》んでゐることがしば/\あります。
岩脈《がんみやく》には、ある時《とき》は金《きん》や、銀《ぎん》や、銅《どう》のような有用《ゆうよう》鑛物《こうぶつ》を澤山《たくさん》含《ふく》んでゐることもあります。このようにわれ/\に有用《ゆうよう》ないろ/\の鑛物《こうぶつ》を含《ふく》んでゐる岩脈《がんみやく》は特《とく》にこれを『鑛脈《こうみやく》』と、となへ、鑛業家《こうぎようか》がどん/\採掘《さいくつ》します。北海道《ほつかいどう》の鴻《こう》の舞《まひ》金山《きんざん》、本州《ほんしゆう》の佐渡《さど》金山《きんざん》、荒川《あらかは》銅山《どうざん》、足尾《あしを》銅山《どうざん》、九州《きゆうしゆう》の馬上《ばじよう》金山《きんざん》、鯛生《たひお》金山《きんざん》などでは、みな鑛脈《こうみやく》から金《きん》、銀《ぎん》、銅《どう》をとつてゐるのです。
變成岩《へんせいがん》の山《やま》
(一)岩《いは》の變質《へんしつ》
岩《いは》が壓力《あつりよく》や熱《ねつ》や水《みづ》や瓦斯《がす》の働《はたら》きを受《う》けると、今《いま》までとは全《まつた》く似《に》てもつかない別《べつ》の岩《いは》に變《かは》つてしまふことがあります。この働《はたら》きを『變質《へんしつ》作用《さよう》』と、いひます。火成岩《かせいがん》がふき出《だ》すとその高《たか》い熱《ねつ》でまはりの岩《いは》を變化《へんか》して、俗《ぞく》にいふ硬《かた》いかん/\石《いし》とか燧石《ひうちいし》のようなものを作《つく》ります。
石灰《いしばひ》を燒《や》いたりせめんと[#「せめんと」に傍点]を造《つく》つたりする石灰岩《せつかいがん》は熱《ねつ》や壓力《あつりよく》のために美《うつく》しい大理石《だいりせき》に變《かは》ります。陶器《とうき》の原料《げんりよう》となる陶土《とうど》は長石《ちようせき》が水《みづ》のために變質《へんしつ》して出來《でき》たものです。
しかし、なんと云《い》つても、岩石《がんせき》を廣《ひろ》い範圍《はんい》にわたつて變質《へんしつ》さす働《はたら》きは前《まへ》にお話《はなし》した、皺《しわ》の山《やま》の出來《でき》る原因《げんいん》――横壓《おうあつ》作用《さよう》に優《まさ》るものはありません。古《ふる》い岩《いは》ほどこの壓力《あつりよく》を受《う》けた度合《どあひ》が大《おほ》きいのですから、日本《につぽん》で一《いち》ばん古《ふる》く出來《でき》たといはれる岩石《がんせき》は、みんな、この變質岩《へんしつがん》のたぐひにはひるので、その重《おも》なものには『片麻岩《へんまがん》』と『結晶《けつしよう》片岩《へんがん》』と、いふのがあります。
片麻岩《へんまがん》と結晶《けつしよう》片岩《へんがん》も、どちらも大變《たいへん》硬《かた》い岩《いは》で、打《う》ち碎《くだ》くと板《いた》のようにへら/\と剥《は》げる性質《せいしつ》をもつてゐます。
そして結晶《けつしよう》片岩《へんがん》にはその含《ふく》んでゐる鑛物《こうぶつ》の性質《せいしつ》により、きら/\と銀紙《ぎんがみ》のように光《ひか》る絹雲母《きぬうんも》片岩《へんがん》だの、あをい草餅《くさもち》のような色《いろ》をした緑泥《りよくでい》片岩《へんがん》だの、あかい紅葉《もみぢ》のような紅簾《こうれん》片岩《へんがん》だの、黒《くろ》い墨《すみ》のような石墨《せきぼく》片岩《へんがん》だのと、云《い》ふいろ/\の種類《しゆるい》があつて、いづれも鮮《あざや》かな美《うつく》しい色《いろ》をしてゐます。これが谷川《たにがは》に臨《のぞ》んだ山《やま》を作《つく》つてゐるところでは、大變《たいへん》美《うつく》しい風景《ふうけい》を見《み》せてゐます。
(二)秩父《ちゝぶ》の長瀞《ながとろ》
武藏《むさし》の秩父《ちゝぶ》鐵道《てつどう》の寄居驛《よりゐえき》附近《ふきん》から秩父驛《ちゝぶえき》に至《いた》る間《あひだ》の、荒川《あらかは》の谷《たに》に沿《そ》ふ約五里《やくごり》の地方《ちほう》は、景色《けしき》のいゝ勝地《しようち》として有名《ゆうめい》です。その中《うち》でも親鼻橋《おやはなばし》附近《ふきん》、長瀞《ながとろ》附近《ふきん》、象《ぞう》が鼻《はな》附近《ふきん》は最《もつと》も勝《すぐ》れたところで、特《とく》に長瀞《ながとろ》はそのうちの代表者《だいひようしや》となつてゐます。
[#図版(17.png)、秩父長瀞の景色]
この地方《ちほう》は、前《まへ》にお話《はなし》した紅《あか》、緑《みどり》、黒《くろ》に白《しろ》い絹色《きぬいろ》をした結晶《けつしよう》片岩《へんがん》から出來《でき》てゐて、それが廣《ひろ》い河《かは》一面《いちめん》に階段《かいだん》のような層状《そうじよう》になつてあらはれてをり、あるところでは百尺《ひやくしやく》の懸崖《けんがい》となつて聳《そび》え立《た》ち、流《なが》れが、それにさへぎられて、深《ふか》い紺碧《こんぺき》の淵《ふち》となつてゐます。美《うつく》しい岩《いは》の色《いろ》は、しば/\薄《うす》い縞模樣《しまもよう》を呈《てい》してをり、その縞《しま》はまた細《こま》かい複雜《ふくざつ》な褶曲《しゆうきよく》をしてゐることもあります。それへ四季《しき》とり/″\に移《うつ》り變《かは》る樹木《じゆもく》の色《いろ》がとりあはされるので、その景色《けしき》はいよ/\引《ひ》き立《た》つて來《き》ます。長瀞峽《ながとろきよう》はかういふ絶景《ぜつけい》の勝地《しようち》ですから、大正《たいしよう》十三年《じゆうさんねん》の秋《あき》、内務省《ないむしよう》から『名勝《めいしよう》天然《てんねん》記念物《きねんぶつ》』に指定《してい》され、その美《うつく》しい岩《いは》と景色《けしき》とを永久《えいきゆう》に保護《ほご》されることになりました。
日本中《につぽんじゆう》で、結晶《けつしよう》片岩《へんがん》から出來《でき》た山《やま》は秩父《ちゝぶ》地方《ちほう》ばかりでなく、四國《しこく》山系《さんけい》の北側《きたがは》、瀬戸内海《せとないかい》に臨《のぞ》んでゐる佐田岬《さだみさき》から、別子《べつし》銅山《どうざん》附近《ふきん》を經《へ》て徳島《とくしま》の南《みなみ》にいたる一帶《いつたい》の地方《ちほう》、紀州《きしゆう》半島《はんとう》の中《うち》、和歌《わか》の浦《うら》から高野山《こうやさん》の北側《きたがは》にいたる附近《ふきん》、阿武隈《あぶくま》山脈《さんみやく》、赤石《あかいし》山脈《さんみやく》の一部《いちぶ》の天龍川《てんりゆうがは》に沿《そ》うた地方《ちほう》、九州《きゆうしゆう》では佐賀《さが》の關《せき》附近《ふきん》などにも見《み》ることが出來《でき》ます。ことに四國《しこく》では伊豫《いよ》の東部《とうぶ》、中山川《なかやまがは》に沿《そ》うた櫻三里《さくらさんり》の千羽《せんば》が岳《たけ》には、血《ち》のように紅《あか》い紅簾《こうれん》片岩《へんがん》が澤山《たくさん》あらはれて、名高《なだか》い景勝地《けいしようち》となつてゐます。
山《やま》の壽命《じゆみよう》
(一)地貌《ちぼう》の輪廻《りんね》
山《やま》もはじめは生《うま》れ出《で》たものであることはすでにお話《はなし》したとほりで、ちょうど動物《どうぶつ》や植物《しよくぶつ》が生《うま》れてから、だん/\發育《はついく》生長《せいちよう》し、やがて極點《きよくてん》に達《たつ》すると今度《こんど》は老衰《ろうすい》しはじめ、つひには死《し》んだり、枯《か》れたりするのですが、山《やま》でもそのとほり、生《うま》れてはつひに死滅《しめつ》し、また、新《あたら》しいものが生《うま》れるといふ風《ふう》に生死《せいし》を繰《く》りかへすのです。たゞ山《やま》は動物《どうぶつ》や植物《しよくぶつ》に比《くら》べて命《いのち》がずっと長《なが》いといふだけです。
かういふ風《ふう》に陸地《りくち》のでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]である山《やま》が生《うま》れ、成長《せいちよう》し、老衰《ろうすい》して、とう/\消《き》えてなくなる、それを順々《じゆん/\》に繰《く》りかへすことを、『地貌《ちぼう》の輪廻《りんね》』と名《な》づけてゐます。ですから、つまりは山《やま》にも、われ/\人間《にんげん》と同《おな》じように年齡《ねんれい》があるわけです。
(二)地球《ちきゆう》の年齡《ねんれい》
元來《がんらい》地球《ちきゆう》が出來《でき》てから今日《こんにち》までどのくらゐの年月《ねんげつ》がたつてゐるかといふことは、だれでもがよく疑問《ぎもん》にしますが、實際《じつさい》にはその計算《けいさん》は大變《たいへん》むづかしいのです。しかしいろ/\事實《じじつ》から推定《すいてい》して、ある人《ひと》は凡《およ》そ三千《さんぜん》萬年《まんねん》ぐらゐであるといひ、人《ひと》によつては一億年《いちおくねん》ぐらゐだとも又《また》は數億年《すうおくねん》だとも言《い》つてゐます。
かりにそれを最《もつと》も少《すくな》い三千《さんぜん》萬年《まんねん》としても、日本《につぽん》三千年《さんぜんねん》の歴史《れきし》に比《くら》べると一萬倍《いちまんばい》です。われ/\人間《にんげん》の一生《いつしよう》に比《くら》べてみればどのくらゐ長《なが》いかは想像《そうぞう》出來《でき》るでせう。しかも今後《こんご》地球《ちきゆう》の命《いのち》はまだどのくらゐ續《つゞ》くか知《し》れません。それを合《あは》せ考《かんが》へると、地球《ちきゆう》の年齡《ねんれい》の長《なが》いことは全《まつた》くおどろくよりほかありません。
ともかく、地球《ちきゆう》のこれまでの年齡《ねんれい》も、はっきり數字《すうじ》にあげることは出來《でき》ないので便宜上《べんぎじよう》だいたい四《よつ》つの大《おほ》きな時代《じだい》に分《わか》ち、そのおの/\をさらに細《こま》かく區別《くわ》けして研究《けんきゆう》します。第一《だいいち》の、四《よつ》つの大《おほ》きな時代《じだい》の區分《くぶん》を古《ふる》いものからあげて見《み》ますと太古代《たいこだい》(始原代《しげんだい》)、古生代《こせいだい》、中生代《ちゆうせいだい》、近生代《きんせいだい》といふ順序《じゆんじよ》になります。日本《につぽん》の歴史《れきし》を鎌倉《かまくら》時代《じだい》とか、徳川《とくがは》時代《じだい》とかいふ風《ふう》に分《わ》けるのと同《おな》じことです。
今日《こんにち》地球上《ちきゆうじよう》で見《み》る、前《まへ》にお話《はなし》した大《おほ》きな褶曲《しゆうきよく》山脈《さんみやく》や、そのほかの高《たか》い火山《かざん》は、大抵《たいてい》はみんな近生代《きんせいだい》に生《うま》れ出《で》たもので、地球《ちきゆう》の歴史《れきし》からいふとわりあひに新《あたら》しいものなのです。もちろんその前《まへ》の古《ふる》い時代《じだい》に出來《でき》たものも澤山《たくさん》あつたのでせうが、すでにお話《はなし》したように、その多《おほ》くのものはだん/\に死滅《しめつ》してあとかたもなくなつてしまつたわけです。
そこで、つぎには、山《やま》が、生《うま》れてからだん/\削《けづ》り崩《くづ》されて衰《おとろ》へほろびていく順序《じゆんじよ》や仕方《しかた》について、もう少《すこ》し詳《くは》しくお話《はなし》して見《み》ませう。
山《やま》の彫刻《ちようこく》と破壞《はかい》
山《やま》を形造《かたちづく》つてゐる岩《いは》は、普通《ふつう》は非常《ひじよう》に堅《かた》いものですが、それでも長《なが》い間《あひだ》にはだん/\にやすりでするように、すりへらされ、石工《いしく》が石《いし》を刻《きざ》むように彫刻《ちようこく》され、しまひには、表面《ひようめん》から壞《こは》れはじめます。壞《こは》れてとれた部分《ぶぶん》は次《つ》ぎから次《つ》ぎへと雨《あめ》のために洗《あら》ひ流《なが》され、河《かは》から海《うみ》へと運《はこ》ばれて沈澱《ちんでん》堆積《たいせき》し、地層《ちそう》を作《つく》ります。そのことは前《まへ》にもお話《はなし》しました。
それでは、さういふ風《ふう》に山《やま》を削《けづ》りこはしていく働《はたら》きをするものはなんであるかといひますと、だいたい(1)空氣《くうき》の働《はたら》き、(2)水《みづ》の働《はたら》き、そして今一《いまひと》つは(3)生物《せいぶつ》の働《はたら》きです。
空氣《くうき》は地球《ちきゆう》のまはりを、約《やく》百《ひやく》まいる[#「まいる」に傍点]の厚《あつ》さに取《と》り卷《ま》いてゐる輕《かる》い瓦斯體《がすたい》です。その空氣《くうき》が太陽《たいよう》の熱《ねつ》を受《う》けると暖《あたゝ》かくなり、それがすぐに、ふれてゐる陸地《りくち》に影響《えいきよう》します。空氣《くうき》が動《うご》くと風《かぜ》になります。その働《はたら》きはなか/\馬鹿《ばか》になりません。空氣《くうき》の中《なか》に含《ふく》まれてゐる酸素《さんそ》や炭酸《たんさん》瓦斯《がす》も、やはり眼《め》に見《み》えないうちに岩《いは》をこはします。
空氣中《くうきちゆう》の水分《すいぶん》は雨《あめ》となつて降《ふ》つて來《き》ます。それが岩《いは》の目《め》に浸《し》みこんで、恐《おそ》ろしい働《はたら》きをします。その降《ふ》つた雨《あめ》が凍《こほ》つて氷《こほり》となると、なほのことです。氷《こほり》は山《やま》の斜面《しやめん》を流《なが》れると、いよ/\ひどく岩《いは》をこはします。このように雨《あめ》や風《かぜ》によつて岩《いは》が直接《ちよくせつ》削《けづ》り取《と》られる働《はたら》きを特《とく》に『浸蝕《しんしよく》作用《さよう》』と名《な》づけます。また雨《あめ》や風《かぜ》によつて岩《いは》がぼろ/\にこはされることを『風化《ふうか》作用《さよう》』といひます。
また植物《しよくぶつ》や動物《どうぶつ》が岩《いは》を壞《こは》すことも、かなりひどいものですが、しかしそれは浸蝕《しんしよく》作用《さよう》や風化《ふうか》作用《さよう》には到底《とうてい》かなひません。以上《いじよう》の一《ひと》つ/\のはたらきについて、お話《はなし》をしませう。
(一)空氣《くうき》の働《はたら》き
(イ)寒暑《かんしよ》の變化《へんか》。 強《つよ》く熱《ねつ》したがらす[#「がらす」に傍点]瓶《びん》を急《きゆう》に水《みづ》の中《なか》に入《い》れると、ひゞがはひつてこはれるのは、だれでも知《し》つてゐます。これと同《おな》じ理窟《りくつ》で、岩《いは》が日中《につちゆう》、太陽《たいよう》の熱《ねつ》を受《う》けると、幾分《いくぶん》膨脹《ぼうちよう》します。しかし、岩《いは》はあまりよく熱《ねつ》を導《みちび》かないものですから、主《おも》にその表面《ひようめん》の部分《ぶぶん》だけが熱《あつ》くなります。反對《はんたい》に夜《よる》になると、岩《いは》の表面《ひようめん》は冷《ひ》えて收縮《しゆうしゆく》します。
こんな風《ふう》に堅《かた》い岩《いは》が毎日《まいにち》多少《たしよう》づゝでも膨《ふく》れたり、縮《ちゞ》んだりしてゐると、長《なが》い間《あひだ》にはその表面《ひようめん》に細《こま》かいひゞ[#「ひゞ」に傍点]がいつて、こはれはじめます。ことに乾燥《かんそう》した沙漠《さばく》地方《ちほう》や、温度《おんど》の高《たか》い熱帶《ねつたい》地方《ちほう》や、または高《たか》い山《やま》の頂上《ちようじよう》とかでは、晝夜《ちゆうや》の寒暑《かんしよ》の差《さ》が一《いつ》そうはげしいので岩《いは》にひゞがはひる働《はたら》きもなほはげしくなります。
ちよっと、だれでも、海拔《かいばつ》二萬尺《にまんじやく》以上《いじよう》もある高山《こうざん》の頂上《ちようじよう》には、年中《ねんじゆう》雪《ゆき》が積《つも》つてゐて、たえず寒《さむ》いものと思《おも》ふかも知《し》れませんが、實際《じつさい》はさうではなく、日中《につちゆう》日向《ひなた》のところでは温度《をんど》が華氏《かし》の二百度《にひやくど》にも昇《のぼ》つて、やけるように暑《あつ》く、また太陽《たいよう》の直射熱《ちよくしやねつ》や反射熱《はんしやねつ》で耐へがたいほど苦《くる》しく、頭痛《づつう》や目《め》まひが起《おこ》り、顏《かほ》や手《て》が火《ひ》ぶくれになるくらゐだと云《い》はれてゐます。
しかし、夜《よる》にはひればそれが急《きゆう》に零度《れいど》以下《いか》十何度《じゆうなんど》といふ寒《さむ》さになります。これは高《たか》い山《やま》の上《うへ》では空氣《くうき》が稀薄《きはく》で濕氣《しつき》が少《すくな》いために、太陽《たいよう》の直射《ちよくしや》光線《こうせん》がそんなに強《つよ》いかはりに、そのくせ雪《ゆき》や氷《こほり》はその直《す》ぐ側《そば》の日陰《ひかげ》に凍《こほ》りついてゐるといふ不思議《ふしぎ》な光景《こうけい》をもつてゐるからです。
岩《いは》が太陽《たいよう》の光線《こうせん》で熱《ねつ》せられる度合《どあひ》は、又《また》、その岩《いは》の色《いろ》や、岩《いは》を造《つく》る物質《ぶつしつ》が均一《きんいつ》であるかどうか、それが細《こま》かいかあらっぽいかといふようなことでも違《ちが》つて來《き》ます。白《しろ》っぽい岩《いは》は黒《くろ》い岩《いは》より熱《ねつ》を吸《す》ふ力《ちから》が少《すくな》いことは、われ/\が夏《なつ》になると白《しろ》い浴衣《ゆかた》や洋服《ようふく》を着《き》る方《ほう》が涼《すゞ》しいのでもわかるでせう。細《こま》かい質《たち》の岩《いは》は、あらいものよりも熱《ねつ》をよく導《みちび》きますから、暖《あたゝ》まり方《かた》が遲《おそ》くつよいわけです。
(ロ)酸素《さんそ》の働《はたら》き。 空氣中《くうきちゆう》に含《ふく》まれてゐる酸素《さんそ》は、火《ひ》が燃《も》えるのをたすけるばかりでなくまた岩《いは》を形造《かたちづく》つてゐるさま/″\の鑛物《こうぶつ》と化合《かごう》し(酸化《さんか》して)、岩《いは》を壞《こは》すことがあります。ことに鐵《てつ》は大抵《たいてい》な岩《いは》の中《なか》に廣《ひろ》く含《ふく》まれてをり、そして酸化《さんか》し易《やす》いものですから、その結果《けつか》酸化鐵《さんかてつ》、すなはち俗《ぞく》にいふ赤錆《あかさび》を生《しよう》じます。山《やま》にいくと、大抵《たいてい》な岩《いは》はさうした赤黒《あかぐろ》い錆《さび》で被《おほ》はれ、ほんとうの地色《じいろ》を現《あらは》してゐることは少《すくな》いくらゐです。有用《ゆうよう》鑛物《こうぶつ》を澤山《たくさん》含《ふく》んでゐる鑛脈《こうみやく》は、とくによく酸化《さんか》して赤燒《あかや》けとなつてゐます。
ですから、鑛脈《こうみやく》を見《み》つけるのには、まづその赤燒《あかや》けをさがし出《だ》すことが肝要《かんよう》となつてゐます。岩《いは》が酸化《さんか》すると、前《まへ》よりももろく、よりぼろぼろになつて、だん/″\に壞《こは》れはじめます。
水蒸氣《すいじようき》や炭酸《たんさん》瓦斯《がす》も岩《いは》にふれると、その中《なか》のある成分《せいぶん》と化合《かごう》して、岩《いは》をこはす場合《ばあひ》があります。ことに炭酸《たんさん》瓦斯《がす》は水《みづ》に溶《と》けると一層《いつそう》力《ちから》が強《つよ》くなつて、岩石《がんせき》を溶解《ようかい》したり、分解《ぶんかい》したりします。このことは後《のち》に水《みづ》の働《はたら》きのところでお話《はなし》します。
[#図版(18.png)、風蝕で出來た釣り合ひ岩]
(ハ)風《かぜ》の力《ちから》。 風《かぜ》が強《つよ》く吹《ふ》くと、家《いへ》や塀《へい》をこはし、屋根瓦《やねがはら》を吹《ふ》き飛《と》ばし、雨戸《あまど》を空中《くうちゆう》に卷《ま》き上《あ》げるなど、われ/\におそろしい損害《そんがい》をかけることは、たれでも經驗《けいけん》してゐます。龍卷《たつま》きのように、渦《うづ》を卷《ま》いた強《つよ》い風《かぜ》が岩《いは》の表面《ひようめん》をこすると、岩《いは》がだん/\すれへつていくことは想像《そうぞう》がつきます。しかし、それよりも、もつと著《いちじる》しいのは、風《かぜ》が砂《すな》や礫《つぶて》を強《つよ》い勢《いきほひ》で岩《いは》の表面《ひようめん》に吹《ふ》きつけることです。これも長《なが》い間《あひだ》くりかへし/\行《おこな》はれると、つひには岩《いは》をすりへらして、いろんな面白《おもしろ》い形《かたち》にしたりすることになります。このことを水《みづ》の浸蝕《しんしよく》に對《たい》して『風蝕《ふうしよく》』といひます。
[#図版(19.png)、風蝕で出來た蜂巣岩]
風蝕《ふうしよく》が盛《さか》んに行《おこな》はれるのは、氣候《きこう》の乾燥《かんそう》した地方《ちほう》、ことに沙漠《さばく》のようなところに最《もつと》も多《おほ》いのです。水成岩《すいせいがん》や集塊岩《しゆうかいがん》のように、硬《かた》い岩《いは》と軟《やはら》かい岩《いは》とが入《い》り交《まじ》つて出來《でき》てゐると、軟《やはら》かい部分《ぶぶん》の方《ほう》が、多《おほ》く風蝕《ふうしよく》を受《う》けて、蕈状《きのこじよう》になつたり、蜂巣状《はちのすじよう》になつたりします。北米《ほくべい》コロラド州《しゆう》の記念《きねん》公園《こうえん》にある釣《つ》り合《あ》ひ岩《いは》や、蕈岩《きのこいは》の如《ごと》きは、根《ね》もとの軟《やはら》かい部分《ぶぶん》が風《かぜ》のために多《おほ》く浸蝕《しんしよく》を受《う》けて出來《でき》たのです。このほか、北米《ほくべい》の西部《せいぶ》地方《ちほう》にある大砂原《だいさげん》には、岩《いは》の頂上《ちようじよう》が風《かぜ》のために三角形《さんかつけい》に削《けづ》られてゐたり、たまにはその上《うへ》に硬《かた》い塊《かたまり》を殘《のこ》して記念塔《きねんとう》のようになつたものも見受《みう》けられます。
[#図版(20.png)、風蝕で出來た蕈岩]
(二)水《みづ》の働《はたら》き
(イ)雨《あめ》の浸蝕《しんしよく》。 雨《あめ》が地表《ちひよう》に降《ふ》り注《そゝ》ぐと、多《おほ》くの場合《ばあひ》、およそ三分《さんぶん》の一《いち》ぐらゐは岩《いは》の割《わ》れ目《め》や粒《つぶ》の間《あひだ》にしみこみ、殘《のこ》りの三分《さんぶん》の二《に》ぐらゐが地表《ちひよう》を流《なが》れて、川《かは》にはひつたり、蒸發《じようはつ》したりします。軟《やはらか》い岩《いは》、例《たと》へば粘土《ねんど》や、砂《すな》や、凝灰岩《ぎようかいがん》のようなものから出來《でき》た山《やま》ですと、雨《あめ》が降《ふ》り注《そゝ》いだだけでもつて、すぐに水《みづ》で飽和《ほうわ》され(水《みづ》を吸《す》ひこみ得《う》るだけ吸《す》ひこんで)一層《いつそう》軟《やはらか》になり、つひに山崩《やまくづ》れや崖崩《がけくづ》れをおこし、山《やま》を壞《こは》すことは、みなさんも、たび/\見《み》たり聞《き》いたりしておいでゞせう。
[#図版(21.png)、土柱]
日本《につぽん》は外國《がいこく》にくらべると、一般《いつぱん》に雨量《うりよう》が多《おほ》い方《ほう》ですから、從《したが》つて山崩《やまくづ》れや崖崩《がけくづ》れも多《おほ》く、あまりたび/\は見《み》ない例《れい》ですが、たまには面白《おもしろ》い土柱《どちゆう》といふものが出來《でき》ることがあります。これは軟《やはらか》い岩《いは》の上《うへ》に堅《かた》い岩《いは》がのつてゐると、その硬《かた》いところだけは浸蝕《しんしよく》され方《かた》が遲《おそ》いために、しまひには、硬《かた》い岩《いは》の塊《かたまり》をのせた、軟《やはらか》い岩《いは》の柱《はしら》が出來《でき》るのです。外國《がいこく》には土柱《どちゆう》のたいそう大《おほ》きなのがあつて、奇景《きけい》となつてゐるのがあります。小《ちひ》さい形《かたち》のものでなら、雨降《あめふ》りあがりに小石《こいし》まじりの赤土《あかつち》の崖《がけ》などで、しば/\見《み》うけられます。
[#図版(22.png)、妙義山の奇勝]
火山《かざん》の噴出《ふんしゆつ》で出來《でき》た集塊岩《しゆうかいがん》といふ岩《いは》は、火山岩《かざんがん》や火山灰《かざんばひ》の固《かた》まつたものですから、その質《しつ》は硬《かた》いところと軟《やはらか》いところとが不同《ふどう》で、澤山《たくさん》の割《わ》れ目《め》があります。ですから、それが雨水《うすい》の浸蝕《しんしよく》にあふと、硬《かた》い部分《ぶぶん》のみが殘《のこ》つて、種々《しゆ/″\》樣々《さま/″\》な珍《めづら》しい形《かたち》の岩《いは》になることがあります。有名《ゆうめい》な妙義山《みようぎさん》や、耶馬溪《やばけい》も、みんなかうして出來《でき》たもので、その奇怪《きかい》な岩々《いは/\》は、形《かたち》によつて大砲岩《たいほういは》、筆岩《ふでいは》、蝋燭岩《ろうそくいは》、鉾岩《ほこいは》などといふ名《な》がつけられてをり、また浸蝕《しんしよく》によつて穿《うが》たれた天然《てんねん》の石門《せきもん》などもあります。花崗岩《かこうがん》も、その規則《きそく》たゞしい割《わ》れ目《め》に雨水《うすい》がしみこんで、さま/″\に浸蝕《しんしよく》され、前《まへ》にお話《はなし》した釣《つ》り合《あ》ひ岩《いは》に似《に》た笠置山《かさぎやま》の搖《ゆる》ぎ石《いし》のようなものが出來《でき》たりします。
降雨《こうう》が地表《ちひよう》を浸蝕《しんしよく》することは實《じつ》にはげしいもので、その彫刻《ちようこく》の巧《たく》みなことも驚《おどろ》くばかりです。例《れい》の有名《ゆうめい》なエジプトのピラミッドやスフィンクスが、數千年《すうせんねん》の今日《こんにち》、なほそのまゝ殘《のこ》つてゐるのも、沙漠《さばく》地方《ちほう》で降雨《こうう》に犯《おか》されることが少《すくな》いためでせう。もしそれが日本《につぽん》などにあつたとしたら、最早《もはや》とくの昔《むかし》に破滅《はめつ》してゐたかも知《し》れません。
(ロ)地下水《ちかすい》の彫刻《ちようこく》。 雨水《うすい》が地下《ちか》にしみこむと、地下水《ちかすい》になります。水《みづ》はそのまゝでも多少《たしよう》は岩石《がんせき》を溶解《ようかい》する力《ちから》がありますが、ことに炭酸《たんさん》瓦斯《がす》を溶《と》かしてゐる水《みづ》は、その力《ちから》が一層《いつそう》大《おほ》きくなります。雨水《うすい》はいつも空氣中《くうきちゆう》の炭酸《たんさん》瓦斯《がす》を溶《と》かしてもつてゐますから、それが岩《いは》の間《あひだ》を傳《つた》はつて、流《なが》れうごく間《あひだ》にはいろ/\の溶《と》けやすい鑛物《こうぶつ》成分《せいぶん》をどっさり溶《とか》しこんで、不純《ふじゆん》な水《みづ》になることがあります。これを『硬水《こうすい》』と名《な》づけます。しかし、溶《と》けにくい岩《いは》の間《あひだ》を流《なが》れる水《みづ》は、わりあひ純粹《じゆんすい》に近《ちか》いものですから、これを『軟水《なんすい》』といひます。この方《ほう》が飮料《いんりよう》に適《てき》してゐるのはいふまでもありません。
炭酸《たんさん》を含《ふく》む水《みづ》は、最《もつと》もよく石灰岩《せつかいがん》を溶解《ようかい》しますから、石灰岩《せつかいがん》で出來《でき》た地方《ちほう》は、その浸蝕《しんしよく》のために大層《たいそう》變《かは》つた珍《めづら》しい地貌《ちぼう》を現《あらは》すことがあります。石灰岩《せつかいがん》の山《やま》が高《たか》い場合《ばあひ》には、その表面《ひようめん》は犬《いぬ》の齒《は》を連《つら》ねたように光《ひか》つた、さま/″\の面白《おもしろ》いでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]を作《つく》ります。
しかし、石灰岩《せつかいがん》地方《ちほう》で面白《おもしろ》いものは、なんといつても石灰洞《せつかいどう》、又《また》は鐘乳洞《しようにゆうどう》といはれる洞穴《ほらあな》でせう。これは、はじめ石灰岩《せつかいがん》に出來《でき》た割《わ》れ目《め》からしみこんだ雨水《うすい》が、だん/″\と岩《いは》の内部《ないぶ》を溶解《ようかい》して作《つく》つたとんねる[#「とんねる」に傍点]で、中《なか》は曲《まが》りくねつた幾《いく》つもの室《しつ》に分《わか》たれ、廣《ひろ》いのになると二百疊《にひやくじよう》もしけるものがあり、高《たか》さも數十間《すうじつけん》に達《たつ》して、見《み》あげるようなものもあります。又《また》あるところでは、水《みづ》を湛《たゝ》へて地下《ちか》の湖《みづうみ》をつくり、また深《ふか》い急流《きゆうりゆう》が流《なが》れたり、瀧《たき》がかゝつたりしたところもあります。天井《てんじよう》からは鐘乳石《しようにゆうせき》といふ乳房《ちぶさ》のような石《いし》がぶら下《さが》り、下《した》からは石筍《せきじゆん》が筍《たけのこ》のようにつったつてゐるものもあり、その二《ふた》つが上下《うへした》から合《がつ》して石柱《せきちゆう》となつてゐるものもあります。洞穴《ほらあな》の形《かたち》は實《じつ》に種々《しゆ/″\》さま/″\で、いち/\口《くち》ではいへません。鐘乳石《しようにゆうせき》や石筍《せきじゆん》は、石灰《いしばひ》を溶《と》かした水《みづ》が天井《てんじよう》から滴《したゝ》るときに水分《すいぶん》が蒸發《じようはつ》して殘《のこ》つたものです。
[#図版(23.png)、鐘乳洞内の石筍]
なほ石灰岩《せつかいがん》地方《ちほう》が、もと/\わりあひに平《たひら》な高臺《たかだい》になつてゐた場合《ばあひ》には、地表《ちひよう》の割《わ》れ目《め》から水《みづ》が流《なが》れこんで地下《ちか》に洞穴《ほらあな》が出來《でき》るばかりでなく、地表《ちひよう》には摺《す》り鉢《ばち》の形《かたち》をした穴《あな》や、天然《てんねん》井戸《ゐど》が出來《でき》たり、地下《ちか》を流《なが》れる川《かは》が再《ふたゝ》び地表《ちひよう》に流《なが》れ出《だ》して瀧穴《たきあな》を作《つく》つたり、さらに地中《ちちゆう》に入《い》りこんで歸《かへ》り水《みづ》をつくつたりして、針《はり》の山《やま》とも見《み》るべきでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]の岩面《がんめん》を作《つく》り出《だ》します。かういふ地方《ちほう》は、土地《とち》は痩《や》せ、荒《あ》れて、一種《いつしゆ》特別《とくべつ》な寂《さび》しい地貌《ちぼう》を呈《てい》します。それで、特《とく》に名《な》づけて『かるすと地貌《ちぼう》』といつてゐます。
長門《ながと》の秋吉臺《あきよしだい》は、かるすと地貌《ちぼう》で名高《なだか》いところですが、鐘乳洞《しようにゆうどう》で有名《ゆうめい》なところは日本《につぽん》の到《いた》るところにかなり多《おほ》いようです。その中《なか》でも武藏《むさし》多摩川《たまがは》の上流《じようりゆう》にある日原《につぱら》鐘乳洞《しようにゆうどう》、それとあまり遠《とほ》くない秩父《ちゝぶ》影森《かげもり》の岩窟《がんくつ》、下野《しもつけ》の大日窟《だいにちくつ》、三河《みかは》の白雲洞《はくうんどう》、豐後《ぶんご》の小半《をながら》の鐘乳洞《しようにゆうどう》などは特《とく》に有名《ゆうめい》なものです。
(ハ)氷《こほり》の力《ちから》。 山《やま》をこはすもととなるもので、いちばん見《み》のがすことの出來《でき》ないものは氷《こほり》の力《ちから》です。水《みづ》は液體《えきたい》として岩《いは》の割《わ》れ目《め》にしみこみますが、それが寒《さむ》さのひどい時季《じき》になると氷《こほり》となります。氷《こほり》は水《みづ》の時《とき》よりもかさ[#「かさ」に傍点]が大《おほ》きくなりますから、岩《いは》の内部《ないぶ》をおしつけます。そのために、岩《いは》はぼろ/\に壞《こは》れるのです。冬《ふゆ》の寒《さむ》い朝《あさ》、水道《すいどう》の鐵管《てつかん》の中《なか》の水《みづ》が凍《こほ》つて、あの堅《かた》い鐵管《てつかん》が破裂《はれつ》するのを見《み》ても想像《そうぞう》がつくでせう。
春先《はるさき》、暖《あたゝ》かくなつてから、山《やま》の急《きゆう》な斜面《しやめん》の麓《ふもと》や崖下《がけした》などにいつて見《み》ると、大小《だいしよう》の角《かど》ばつたごろ[#「ごろ」に傍点]石《いし》が新《あたら》しく積《つ》みかさなつてゐるのを見《み》ることがあります。これはみんな冬《ふゆ》の間《あひだ》に氷《こほり》で壞《こは》されたのが、おちて出來《でき》たのです。
[#図版(24.png)、氷のために破壞された高山頂上の尖峯]
高山《こうざん》の頂上《ちようじよう》にあらはれてゐる岩《いは》は、特《とく》によく氷《こほり》で破壞《はかい》されるもので、その峯《みね》はたいてい鋭《するど》くつき立《た》つた尖塔状《せんとうじよう》をしてゐます。アルプス山脈《さんみやく》のモン・ブラン(白山《はくさん》)の西北《せいほく》にあるシャモニの尖峯《せんぽう》などは、そのいゝ例《れい》です。日本《につぽん》アルプスの頂上《ちようじよう》にも、ところ/″\犬《いぬ》の牙《きば》のように尖《とが》つたところがあります。
(ニ)氷河《ひようが》。 寒氣《かんき》の非常《ひじよう》にきびしい極地《きよくち》や、非常《ひじよう》に高《たか》い山《やま》の頂《いたゞ》きでは、降《ふ》つた雪《ゆき》が年中《ねんじゆう》とけないで溜《たま》つてゐます。これを『萬年雪《まんねんゆき》』といひます。
雪《ゆき》は降《ふ》つたはじめは、輕《かる》いあらっぽいものですが、萬年雪《まんねんゆき》となつて、しだいに堆積《たいせき》するとその重《おも》さのためおし固《かた》められ、しまひには堅《かた》い青《あを》い色《いろ》をした氷《こほり》となつてすき透《とほ》つて來《き》ます。これがだん/\に積《つ》み重《かさ》なると水成岩《すいせいがん》のうに[#「のうに」は底本のまま]層《そう》を作《つく》つてくることがあります。
かうしてその全《ぜん》たいの厚《あつ》さが何百尺《なんびやくしやく》にもなつてくると、つひには自分《じぶん》自身《じしん》の重《おも》さとその上《うへ》に積《つ》んだ雪《ゆき》の壓《お》す力《ちから》とで、次第《しだい》々々《/\》に谷《たに》の斜面《しやめん》に沿《そ》うて滑《すべ》りおちはじめます。そのあり樣《さま》はちょうど河《かは》の流《なが》れのようですから、『氷河《ひようが》』と名《な》づけてゐます。しかし氷河《ひようが》の歩《あゆ》み方《かた》は水《みづ》に比《くら》べると非常《ひじよう》にゆっくりしたもので、一年《いちねん》かゝつてやうやく三百尺《さんびやくしやく》から千尺《せんじやく》、一日《いちにち》になほして僅《わづか》に一寸《いつすん》から四尺《ししやく》ぐらゐしか滑《すべ》りません。ですから、ちよつと見《み》ただけでは動《うご》いてゐるのかゐないのかわかりません。
氷河《ひようが》は日本《につぽん》では見《み》たくてもありませんが、ヨーロッパや北《きた》アメリカの高山《こうざん》にはたくさんあります。そこには大昔《おほむかし》には氷河《ひようが》時代《じだい》といつて、氷河《ひようが》が陸地《りくち》の非常《ひじよう》に廣《ひろ》い部分《ぶぶん》をおほうてゐたことがありますから、その遺跡《いせき》も到《いた》るところに見《み》られます。それゆゑ、そこでは、氷河《ひようが》と陸地《りくち》表面《ひようめん》のでこぼこ[#「でこぼこ」に傍点]とは切《き》つても切《き》れない深《ふか》い關係《かんけい》があつて、小《ちひ》さい子供《こども》でも皆《みんな》そのことをよく知《し》つてゐます。
[#図版(25.png)、氷石[#「氷石」は底本のまま]の堆石]
氷河《ひようが》が靜《しづ》かに谷《たに》を下《くだ》つて行《ゆ》く際《さい》には、その河底《かてい》や兩岸《りようがん》をどん/\ゑぐり取《と》ります。しかしその彫刻《ちようこく》の仕方《しかた》は、谷川《たにがは》の水《みづ》の働《はたら》きとはすっかり違《ちが》つてゐます。谷川《たにがは》の流《なが》れは底《そこ》の方《ほう》を深《ふか》く切《き》り込《こ》んで、だいたいV字形《ぶいじがた》の谷《たに》を作《つく》り、その川筋《かはすぢ》も、うね/\曲《まが》るのが常《つね》ですが、氷河《ひようが》は圓鑿《まるのみ》で底《そこ》をゑぐつたようにU字形《ゆうじがた》の谷《たに》を作《つく》り、その兩岸《りようがん》はけはしい崖《がけ》となり、川筋《かはすぢ》も急《きゆう》に曲《まが》るようなことはなくその上《うへ》、兩岸《りようがん》の角《かど》ばつた岩《いは》は圓《まる》く、すりへらされて滑《なめら》かな面《めん》となり、ところどころにひっかき傷《きづ》(掻《か》き痕《きづ》)を殘《のこ》していきます。
また、氷河《ひようが》は滑《すべ》りおちる途中《とちゆう》、兩岸《りようがん》の崖岩《がけいは》を壞《こは》して運《はこ》んで行《ゆ》きます。そしてつひに麓《ふもと》の暖《あたゝ》かいところまで來《く》ると、氷《こほり》は次第《しだい》にとけて、運《はこ》んで來《き》た石《いし》だけをそこに殘《のこ》し、土砂《どしや》は泥水《どろみづ》となつて流《なが》れ去《さ》ります。この氷河《ひようが》に運《はこ》ばれて來《き》た石《いし》を『堆石《たいせき》』といひます。堆石《たいせき》は大抵《たいてい》その角《かど》が磨《す》り潰《つぶ》されて圓味《まるみ》を持《も》ち掻《か》き痕《きづ》をもつてゐるのが特徴《とくちよう》です。
(三)生物《せいぶつ》の働《はたら》き
(イ)植物《しよくぶつ》の破壞《はかい》作用《さよう》。 植物《しよくぶつ》が岩《いは》の上《うへ》に育《そだ》つと、その根《ね》は岩《いは》の小《ちひ》さな割《わ》れ目《め》に食《く》ひこみ、莖《くき》や根《ね》が大《おほ》きく生長《せいちよう》するに從《したが》ひ、終《つひ》にはその岩《いは》を壓《お》し割《わ》つて行《ゆ》くことは、だれも山登《やまのぼ》りの時《とき》などに度々《たび/\》見《み》うけることです。
植物《しよくぶつ》の根《ね》がこのように岩《いは》を碎《くだ》くのは、一《ひと》つの根《ね》が大《おほ》きく生長《せいちよう》するその力《ちから》にもよりますが、今一《いまひと》つは根《ね》の先《さき》から岩《いは》を溶《と》かす酸液《さんえき》を出《だ》すにもよるもので、この後《のち》の方《ほう》の破壞力《はかいりよく》も中々《なか/\》馬鹿《ばか》にはなりません。盛岡《もりをか》市役所《しやくしよ》の庭前《にはまへ》にある石割《いしわ》り櫻《ざくら》といふのは、花崗岩《かこうがん》の上《うへ》に根《ね》を下《おろ》した櫻《さくら》が、その岩《いは》を割《わ》つて生長《せいちよう》したもので、名高《なだか》い名物《めいぶつ》となつてゐます。
植物《しよくぶつ》が枯死《こし》すると、また、腐植酸《ふしよくさん》といふ一種《いつしゆ》の酸液《さんえき》を生《しよう》じそれが岩《いは》に働《はたら》いて、崩《くづ》して行《ゆ》くこともあります。
淺間山《あさまやま》には『天狗《てんぐ》の麥飯《むぎめし》』といふ不思議《ふしぎ》なものがあります。また信州《しんしゆう》の小諸町《こもろまち》附近《ふきん》の味塚山《みづかやま》には『長者《ちようじや》味噌《みそ》』といふ變《かは》つたものがあります。これらは餅《もち》に生《は》えた『かび』の一種《いつしゆ》が、火山岩《かざんがん》に生《しよう》じて、それを分解《ぶんかい》しながら繁殖《はんしよく》してゐるのです。
『天狗《てんぐ》の麥飯《むぎめし》』はこの『かび』が安山岩《あんざんがん》をぼろ/\に分解《ぶんかい》したもので、乾《かわ》けば麥粒《むぎつぶ》の如《ごと》く、水氣《すいき》を含《ふく》めば麥飯《むぎめし》のようになるから名《な》づけられたもので、『長者《ちようじや》味噌《みそ》』も同《おな》じようにして、浮石《かるいし》を分解《ぶんかい》したものです。味噌塚《みそづか》は内務省《ないむしよう》から天然《てんねん》記念物《きねんぶつ》として保護《ほご》を受《う》けてゐます。
(ロ)動物《どうぶつ》の破壞《はかい》作用《さよう》。 私《わたし》ども人間《にんげん》も動物《どうぶつ》の一族《いちぞく》として考《かんが》へれば、陸地《りくち》表面《ひようめん》の破壞《はかい》にはずいぶん深《ふか》い關係《かんけい》をもつてゐることは、だれでも日常《にちじよう》觀察《かんさつ》し得《う》ることで、たとへば大仕掛《おおじか》けの運河《うんが》を通《つう》じたり、大《おほ》きな溜池《ためいけ》を作《つく》つたり、山《やま》を壞《こは》してとんねる[#「とんねる」に傍点]をうがつたり、港《みなと》を築《きづ》いたりして、天然《てんねん》の地形《ちけい》を見違《みちが》へるように變《か》へてゆきますが、こゝには人間《にんげん》は別《べつ》としてそれ以外《いがい》の動物《どうぶつ》についてお話《はなし》します。
蚯蚓《みゝず》は小《ちひ》さな動物《どうぶつ》ですが、終日《しゆうじつ》休《やす》みなく地下《ちか》の深《ふか》いところの土《つち》を食《く》つては、糞《ふん》にして地表《ちひよう》に運《はこ》び出《だ》します。かうして言《い》はゞ土地《とち》を耕《たがや》すのと同時《どうじ》に、川《かは》の堤防《ていぼう》などをも、弛《ゆる》めて崩《くづ》すことがあります。しかし蚯蚓《みゝず》はどちらかと云《い》へば益蟲《えきちゆう》で、泥土《でいど》を細《こま》かく碎《くだ》いてくれ、土地《とち》を耕《たがや》してくれる方《ほう》が多《おほ》いのです。
土龍《むぐらもち》は地表《ちひよう》に穴《あな》をあけて、土地《とち》をこはします。蟻《あり》も澤山《たくさん》寄《よ》り集《あつま》ると、地表《ちひよう》にも地下《ちか》にも、かなり大《おほ》きな孔《あな》をあけることがあります。ことにアフリカ地方《ちほう》に住《す》んでゐる蟻《あり》の一種《いつしゆ》は、人《ひと》の背丈《せたけ》以上《いじよう》もある蟻塚《ありづか》といふ巣《す》を作《つく》り、その害《がい》も中々《なか/\》大《おほ》きいものです。
[#図版(26.png)、蟻の作つた巣(蟻塚)]
(ハ)土壤《どじよう》。 今《いま》までお話《はなし》した、岩《いは》を壞《こは》すいろ/\の働《はたら》きは、その一《ひと》つ/\が別々《べつ/\》に働《はたら》くのではなく、いつも、その幾《いく》つかゞ一《いつ》しよになつて働《はたら》くのですから、自然《しぜん》壞《こは》れ方《かた》も大《おほ》きく、山《やま》の削《けづ》り取《と》られる速《はや》さも、一《いち》そう早《はや》いわけです。
かうして、壞《こは》された岩屑《いはくず》は、水《みづ》のために山《やま》の斜面《しやめん》から洗《あら》ひ流《なが》され、ある部分《ぶぶん》は山《やま》の麓《ふもと》に、ある部分《ぶぶん》は河《かは》の中《なか》に運《はこ》ばれて、しまひに湖水《こすい》や海中《かいちゆう》に堆積《たいせき》します。
土壤《どじよう》は、つまり岩《いは》の壞《こは》れて細《こま》かくなつたもので、多《おほ》く河《かは》の水《みづ》に運《はこ》ばれ、平野《へいや》に來《き》て堆積《たいせき》したものです。その中《なか》に含《ふく》んでゐる、作物《さくもつ》を養《やしな》ふに必要《ひつよう》な養分《ようぶん》も、多《おほ》くは岩《いは》を形造《かたちづく》つてゐた鑛物《こうぶつ》が分解《ぶんかい》して出來《でき》たものです。
してみると、河《かは》はわれ/\人間《にんげん》に大切《たいせつ》な農作地《のうさくち》の土壤《どじよう》を運《はこ》んでくれるばかりでなく、その水《みづ》の力《ちから》は水力《すいりよく》電氣《でんき》を起《おこ》すもとともなり、交通《こうつう》運搬《うんぱん》の便宜《べんぎ》にもなつてくれたり、水道《すいどう》の水《みづ》をも供給《きようきゆう》してくれたり、そのほか數《かぞ》へきれないほど、さま/″\の效用《こうよう》をします。なほ一方《いつぽう》から考《かんが》へると、河《かは》は山《やま》の風景《ふうけい》の美《び》を増《ま》すにも無《な》くてはならぬものです。しかし時《とき》には洪水《こうずい》を起《おこ》して大損害《だいそんがい》を與《あた》へることもあります。河《かは》が一《いつ》ときの休《やす》みもなく、はげしい力《ちから》で岸《きし》を噛《か》み岩《いは》を削《けづ》つて、土地《とち》を壞《こは》すのはいふまでもありません。
(つづく)
※ 底本中の「鐘乳洞」「鐘乳石」はそのままにした。
底本:『山の科学 No.47』復刻版 日本児童文庫、名著普及会
1982(昭和57)年6月20日発行
親本:『山の科學』日本兒童文庫、アルス
1927(昭和2)年10月3日発行
入力:しだひろし
校正:
xxxx年xx月xx日作成
青空文庫作成ファイル:
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*地名
(※ 市町村名は、平成の大合併以前の表記のまま。一般的な国名・地名などは解説省略。- [北海道]
- 十勝岳 とかちだけ 北海道中央部の活火山。十勝・石狩の境上にそびえ、標高2077m。複式火山。頂上は外輪山の溶岩円頂丘。
- 夕張山脈 ゆうばり さんみゃく → 夕張山地
- 夕張山地 ゆうばり さんち 北海道中央部に南北に連なる山地。東側の富良野盆地を挟んで大雪・十勝火山群と日高山脈とに対する。最高峰は芦別岳で標高1726m。
- 鴻の舞金山 こうのまい きんざん → 鴻之舞鉱山
- 鴻之舞鉱山 こうのまい こうざん 北海道北東部、北見地方紋別市にあった鉱山。金・銀を産した。1915年(大正4)発見、73年閉山。
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- 東北地方:
- [青森県]
- 陸奥 むつ 旧国名。1869年(明治元年12月)磐城・岩代・陸前・陸中・陸奥に分割。分割後の陸奥は、大部分は今の青森県、一部は岩手県に属する。
- 十和田湖 とわだこ 青森・秋田両県の境にあるカルデラ湖。奥入瀬川の水源。湖面標高400m。最大深度327m。面積61平方km。周辺は美林に蔽われる。
- 岩木山 いわきさん 青森県弘前市の北西にそびえる円錐状の二重式火山。標高1625m。南東麓に岩木山神社があり、江戸時代建立の社殿は壮麗。津軽富士。
- 兼平石 かねひらいし
- [岩手県]
- 陸中 りくちゅう 旧国名。1869年(明治元年12月)陸奥(むつ)国を分割して設置。大部分は今の岩手県、一部は秋田県に属する。
- 盛岡 もりおか 岩手県中部、北上盆地の北部にある市。県庁所在地。もと南部氏の城下町。北上川と中津川・雫石(しずくいし)川との合流点に位置する。鋳物・鉄器を産する。また古来南部馬の産地で、牛馬の市が開かれた。人口30万1千。
- 盛岡市役所 もりおか しやくしょ
- 石割り桜 いしわり ざくら 岩手県盛岡市の盛岡地方裁判所構内にある巨大な花崗岩の割れ目に根を張った白色の彼岸桜。天然記念物。
- 北上山脈 きたかみ さんみゃく → 北上高地
- 北上高地 きたかみ こうち 主として岩手県の東部を南北に連なる、割合に山頂のそろったなだらかな山地。地形学的には隆起準平原。最高峰は早池峰山(標高1917m)。北上山地。
- [宮城県]
- 陸前 りくぜん 旧国名。1869年(明治元年12月)陸奥(むつ)国を分割して設置。大部分は今の宮城県、一部は岩手県に属する。
- 牡鹿半島 おじか/おしか はんとう 宮城県北東部に突出する半島。太平洋に臨む。先端の沖合に金華山がある。北上高地の南端、石巻湾の東を限る。
- 金華山 きんかざん 宮城県牡鹿半島の南東先端にある島。面積9平方km、標高445m。山頂に大海祇神社、山腹に黄金山神社がある。古称、陸奥山。
- 白石町 しろいしまち? 現、宮城県白石市。昭和29(1945)白石町ほか六村が合併し市政施行。
- 小原温泉 おばら おんせん 宮城県白石市にある温泉。泉質は単純泉、硫黄泉。眼病、外傷、胃腸病にきく。
- [秋田県]
- 荒川銅山 あらかわ どうざん → 荒川鉱山
- 荒川鉱山 あらかわ こうざん 現、秋田県仙北郡協和町荒川。開坑当初の位置は荒川に沿って上り、繋川の合流点を越えて長者山の北東部にあったと推定される。慶長年間(1596-1615)銀山として開発されたと推定される。昭和初期まで活況を呈したが、しだいに産銅量も減少し、同10年(1935)には規模も縮小され、同15年休山。
- [福島県]
- 磐城 いわき (1) 旧国名。1869年(明治元年12月)陸奥国を分割して設置。一部は今の福島県の東部、一部は宮城県の南部に属する。磐州。(2) (
「いわき」と書く) 福島県南東部の市。平市・磐城市など旧石城郡の14市町村が合併して1966年発足。平地区はもと安藤氏5万石の城下町で商業の中心地。小名浜地区は港湾をもち、化学・金属工業が発達し、漁業根拠地。人口35万4千。 - 阿武隈山脈 あぶくま さんみゃく → 阿武隈高地
- 阿武隈高地 あぶくま こうち 宮城県南部より福島県東部を経て茨城県北部に至る、南北に連なる高原状山地。高さ500〜800mの隆起準平原で、大滝根山(1192m)などが残丘としてそびえる。阿武隈山地。
- 常磐 じょうばん (1) 常陸国と磐城国の併称。(2) もと福島県南東部の市。現在、いわき市の一部。
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- 関東地方:
- [茨城県]
- 関東平野 かんとう へいや 関東地方の大部分を占める日本最大の平野。
- 筑波山 つくばさん 茨城県南西部にある山。標高877m。峰は二つに分かれ西を男体、東を女体という。
「西の富士、東の筑波」と称せられ、風土記や万葉集の�歌の記事などに名高く、古来の歌枕。農業神として信仰登山が盛ん。筑波嶺。 - [栃木県]
- 下野 しもつけ (シモツケノ(下毛野)の略) 旧国名。今の栃木県。野州(やしゅう)。
- 日光 にっこう 栃木県北西部の市。奈良末期、勝道上人によって開かれ、江戸時代以後、東照宮の門前町として発達。日光国立公園の中心をなす観光都市。二荒山神社・東照宮・輪王寺の建造物群と周辺は「日光の社寺」として世界遺産。人口9万4千。
- 男体山 なんたいさん 栃木県北西部、日光山地にある円錐状成層火山。標高2486m。中腹に中宮祠、山麓に中禅寺湖、山上に二荒山神社奥宮がある。日光国立公園の一部。日光富士。二荒山。黒髪山。
- 女貌山 にょほうさん 女峰山。現、日光市。帝釈山の東方に連なり、塩谷郡栗山村との境にある。如宝山・女貌山とも記される。標高2463.5m。東隣の赤薙山と一体をなす。日光火山群のなかでは最古の火山。古来男体山に対する女体山として信仰された。
- 赤薙山 あかなぎさん 現、日光市。女峰山の東部に続き、日光市・今市市・塩谷郡栗山村境に位置する。標高2010.3m。東はキスゲ平を経て霧降高原。女峰山と一体を形成する成層火山で、古くはこの二山をもって男体山に対して女体山と考えられていた。中腹以上には薙(浸食された涸谷)がみられる。
- 女峰山・赤薙山 → 女峰・赤薙火山。日光火山群東部の開析の進んだ成層火山。女峰山(標高2363.5m)および赤薙山は東西に連なる尾根上のピークで、山体としては単一と考えられる。
(地学) - 真名子山 まなごさん → 大真名子山・小真名子山か
- 大真名子山 おおまなごさん 男体山の北東にあり日光火山群のうち表日光連山の一。山容は円錐形で標高2375.4m。山名は大きな愛児の意味で男体山と女峰山の神の間に生まれた子供という。太郎山と男体山の間の道筋にあたる。
- 小真名子山 こまなごさん 大真名子山の北に続き、塩谷郡栗山村境にある。標高2322.9mの溶岩円頂丘火山。日光修験の補陀洛夏峰と惣禅頂の行場。
- 月山 げつさん
- 月山 がっさん 栃木県日光市にある。標高1287m。がっさん。
- 太郎山 たろうさん 現、日光市。男体山北方、大真名子山・小真名子山の西方にあり、塩谷郡栗山村との境に位置する。標高2367.5mの溶岩円頂丘火山。古くから日光三社権現の一つ本宮神社の神体山とされる。日光修験の入峰の行場の一つ。南山腹に月山権現を勧請したので月山ともよばれると記す。
- 足尾銅山 あしお どうざん 栃木県足尾町にある鉱山。慶長15(1610)発見、江戸時代には幕府直轄の銅山で、延宝元(1673)から15年間、
「足尾千軒」といわれる最盛期を呈した。銅、亜鉛硫化鉄を産出。昭和48(1973)閉山。足尾鉱山。 - 足尾 あしお 栃木県日光市の地名。1610年(慶長15)発見の銅山があり、初め幕府直轄、明治以後民営、1973年採掘中止。
- 大日窟 だいにちくつ
- [群馬県]
- 妙義山 みょうぎさん 群馬県南西部、富岡市・安中市・甘楽郡にまたがる山。上毛三山の一つ。奇岩怪石で名高い。標高1104m。
- 渋峠 しぶとうげ 群馬県。上信越国境の横手山(2304.9m)東南鞍部の標高2172mにある峠。尾根続きで南は白根山(2138m)。古くは草津・入山方面と信州を結ぶ最短の交易道として利用された。
- 幕石 まくいし
- 浅間山 あさまやま 長野・群馬両県にまたがる三重式の活火山。標高2568m。しばしば噴火、1783年(天明3)には大爆発し死者約2000人を出した。斜面は酪農や高冷地野菜栽培に利用され、南麓に避暑地の軽井沢高原が展開。浅間岳。
- [埼玉県]
- 武蔵 むさし (古くはムザシ) 旧国名。大部分は今の東京都・埼玉県、一部は神奈川県に属する。武州。
- 秩父 ちちぶ 埼玉県西端の市。東部の市街地は秩父盆地の中心をなし、荒川上流の形成する河岸段丘上に発達。秩父銘仙を産する。セメント工業が盛ん。人口7万1千。
- 秩父鉄道 ちちぶ てつどう 埼玉県羽生市と秩父市とを結ぶ私鉄。昭和5(1930)全通。東武伊勢崎線羽生駅を起点とし熊谷駅で上越新幹線・高崎線、寄居駅で八高線・東武東上線、お花畑駅で西武秩父線と連絡し、三峰口駅に至る。全長71.7km。
- 寄居 よりい 現、埼玉県大里郡寄居町寄居。大里郡は埼玉県北部、寄居町は大里郡の南西端に位置。
- 荒川 あらかわ 関東平野を流れる川。奥秩父の西部、甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)に発し、秩父盆地を流れて関東平野に出て、埼玉県の中部を貫き、下流は荒川放水路(荒川本流)
・隅田川となって東京湾に注ぐ。長さ173km。 - 親鼻橋 おやはなばし 現、秩父郡皆野町。
- 長瀞 ながとろ 埼玉県秩父郡北東部の名勝地。荒川の渓谷に沿い、灰緑色の結晶片岩の板状節理が水食によってあらわれ、独特の峡谷美を形成。
- 長瀞 ながとろ 埼玉県西部、荒川中流の峡谷。外秩父山地を浸食してできたもので、河岸段丘の一部は平坦な結晶片岩が露出して岩畳と呼ばれ、対岸の断層の岸壁は秩父赤壁と呼ばれる。大正13(1924)国の名勝・天然記念物指定。
- 象が鼻 ぞうがはな
- 長瀞峡 ながとろきょう
- 影森の岩窟 かげもりの がんくつ 現、埼玉県秩父市上影森。秩父札所二八番、馬頭観音堂の裏手は65mのそそり立つ岩場で、下手には岩窟(橋立鍾乳洞、県指定天然記念物)があり、体内潜りがおこなわれて名勝となっていた。
- [東京都]
- 多摩川 たまがわ 多摩川・玉川。山梨県北東部、秩父山地の笠取山に発源し、南東へ流れ、東京都と神奈川県の境で東京湾に注ぐ川。下流を六郷川という。上流は東京都の上水道の水源、奥多摩の景勝がある。長さ138km。
- 日原鍾乳洞 にっぱら しょうにゅうどう 現、東京都西多摩郡奥多摩町日原。日原川流域の山間の村で、西境に雲取山がそびえる。日原鍾乳洞は、日原川の支流小川谷流域にある。江戸時代には一石山権現と称されて信仰されてきた。都指定天然記念物。
「風土記稿」には高さ数百尋、窟中数百歩なれどことごとく一石なればこの名ありなどと記す。本宮窟・新宮窟・胎内窟・愛染窟などさまざまの名の洞窟がある。現在も地元では鍾乳洞を「お穴」とよぶ。 - -----------------------------------
- 中部地方:
- [新潟県]
- 越後 えちご 旧国名。今の新潟県の大部分。古名、こしのみちのしり。
- 佐渡金山 さど きんざん → 佐渡鉱山
- 佐渡鉱山 さど こうざん 新潟県佐渡島西部、佐渡郡相川町(現、佐渡市)にあった鉱山。江戸初期から金・銀を産出し、幕府直轄。1869年(明治2)以降官営となり、96年に払下げ。1989年閉山。相川金山。
- 田代 たしろ 現、新潟県中魚沼郡中里村田代。中里村は郡の東に位置する。田代は釜川の上流。
- [福井県]
- 越前 えちぜん 旧国名。今の福井県の東部。古名、こしのみちのくち。
- 三国 みくに (1) 福井県北部の地名。九頭龍川の河口に臨む。古来、北陸道の要港で日本海三津七港の一つに数えられ、江戸時代には日本海西回り航路の寄港地として繁栄。現在は漁業根拠地・石油基地。東尋坊がある。(2) 越前国(福井県)にあった古国。九頭龍川・日野川・足羽川の下流域を占めていた。
- 東尋坊 とうじんぼう 福井県北部、九頭竜川河口北側にある景勝地。安山岩の柱状節理から成る険しい海食崖。
- [山梨県]
- 甲斐の国 かいのくに 旧国名。いまの山梨県。甲州。
- 御岳街道 おんたけ かいどう
- 昇仙峡 しょうせんきょう 山梨県甲府市北方にある峡谷。笛吹川の支流荒川の浸食により奇岩・滝が多く、紅葉の名所。秩父多摩甲斐国立公園の一部。別称、御岳昇仙峡。
- 日本アルプス にほん アルプス 中部地方の飛騨・木曾・赤石の3山脈の総称。ヨーロッパのアルプスに因んで1881年(明治14)英人ゴーランドが命名。のち小島烏水が3部に区分し、飛騨山脈を北アルプス、木曾山脈の駒ヶ岳連峰を中央アルプス、赤石山脈を南アルプスとした。
- [長野県]
- 信州 しんしゅう 信濃(しなの)国の別称。
- 飛騨山脈 ひだ さんみゃく 本州中央部、新潟・長野・富山・岐阜4県の境に連なる山脈。山頂近くにカールが残る。立山・剣岳・白馬岳・槍ヶ岳・乗鞍岳などを含み、最高峰は奥穂高岳(3190m)。大部分、中部山岳国立公園に入る。北アルプス。
- 天狗の麦飯 てんぐの むぎめし 信州(長野県)などの山地の地表や地中に産する径数mmから1cm、黄褐色、膠状の塊状物。藍藻・細菌・菌類の複合体といわれる。長者味噌。謙信味噌。
- 小諸町 こもろまち
- 小諸 こもろ 長野県東部、浅間山南西麓の市。もと牧野氏1万5000石の城下町、北国街道の宿駅。城址は懐古園という。島崎藤村の「千曲川旅情の歌」で名高い。人口4万5千。
- 味塚山 みずかやま
- 長者味噌 ちょうじゃ みそ
- 味噌塚 みそづか
- 木曽川 きそがわ 木曾川。長野県の中部、鉢盛山に発源、長野・岐阜・愛知・三重の4県を流れる川。王滝川・飛騨川などの支流を合し伊勢湾に注ぐ。長さ227km。
- 寝覚の床 ねざめの とこ 長野県南西部、木曾郡上松町にある木曾街道の一名勝。木曾川の急流に沿い、花崗岩の柱状節理が両岸・河中に起伏する。
- 天竜川 てんりゅうがわ 中部地方南部を流れる川。源を長野県諏訪湖の北西端に発し、南下して静岡県浜松市東部で遠州灘に注ぐ。長さ213km。
- 天竜峡 てんりゅうきょう 長野県飯田市にある天竜川中流の峡谷。風景絶佳の名勝で舟下りが有名。
- 諏訪 すわ 長野県中部の市。諏訪湖に臨み、もと諏訪氏3万石の城下町(高島城)。時計など精密機械工業が盛ん。近くに上諏訪温泉や霧ヶ峰がある。人口5万3千。
- 鉄平石 てっぺいせき 長野県の佐久・諏訪地方に局地的に産する板状節理の発達した輝石安山岩。屋根瓦、敷石、張り石などに用いる。へげ石。ひら石。
- [岐阜県]
- 美濃の国 みののくに 旧国名。今の岐阜県の南部。濃州。
- 中津川 なかつがわ 岐阜県南東部の市。もと中山道の宿駅で、木曾谷の入口。電気機械・金属・製紙などの工業が発達。人口8万4千。
- 木曽川峡谷 きそがわ きょうこく
- [静岡県]
- 富士山 ふじさん (不二山・不尽山とも書く) 静岡・山梨両県の境にそびえる日本第一の高山。富士火山帯にある典型的な円錐状成層火山で、美しい裾野を引き、頂上には深さ220mほどの火口があり、火口壁上では剣ヶ峰が最も高く3776m。史上たびたび噴火し、1707年(宝永4)爆裂して宝永山を南東中腹につくってから静止。箱根・伊豆を含んで国立公園に指定。立山・白山と共に日本三霊山の一つ。芙蓉峰(ふようほう)。富士。
- 赤石山脈 あかいし さんみゃく 中部地方の南部にある山脈。長野・山梨・静岡の3県にわたり、南アルプス国立公園をなす。最高峰は北岳(3193m)。
- 天竜川 てんりゅうがわ 中部地方南部を流れる川。源を長野県諏訪湖の北西端に発し、南下して静岡県浜松市東部で遠州灘に注ぐ。長さ213km。
- [愛知県]
- 三河 みかわ 旧国名。今の愛知県の東部。三州(さんしゅう)。参州。
- 白雲洞 はくうんどう 現、愛知県渥美郡田原町白谷。衣笠山の北面丘陵に集落を持ち、渥美湾にのぞむ。大正9(1920)白谷コダマの石灰岩採掘山で鍾乳洞が発見され、白雲洞と名付けられた。当時は採石の必要上破壊されたが、昭和54(1979)大小5洞が連なり、総延長275m、約200万年前後のものの残存が確認された。
- 鳳来寺山 ほうらいじさん 愛知県東部にある火山。標高695m。山頂付近に真言宗鳳来寺がある。コノハズクの生息地としても知られる。
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- 近畿地方:
- [三重県]
- 志摩半島 しま はんとう 三重県東部、太平洋に突出する半島。リアス海岸が多く、伊勢志摩国立公園をなす。
- [京都府]
- 大和 やまと 旧国名。今の奈良県の管轄。もと、天理市付近の地名から起こる。初め「倭」と書いたが、元明天皇のとき国名に2字を用いることが定められ、
「倭」に通じる「和」に「大」の字を冠して大和とし、また「大倭」とも書いた。和州。 - 笠置山 かさぎやま 京都府南端部、笠置山脈北端の山。標高324m。木津川に臨み、山上の笠置城は要害の城郭で、後醍醐天皇の行在所が置かれた笠置寺がある。
- ゆるぎ石
- [兵庫県]
- 但馬 たじま 旧国名。今の兵庫県の北部。但州。
- 城の崎温泉 きのさき おんせん → 城崎温泉
- 城崎温泉 きのさき おんせん 兵庫県豊岡市城崎町にある温泉。無色・無臭の塩化物泉で、720年(養老4)僧道智の霊験により発見されたと伝える。
- 玄武洞 げんぶどう 兵庫県北部、豊岡市赤石にある、玄武岩から成る洞窟。長さ70m、3室に分かれる。天然記念物に指定。
- [和歌山県]
- 紀州半島 きしゅう はんとう → 紀伊半島か
- 紀伊半島 きい はんとう 近畿地方南部を占める日本最大の半島。東は熊野灘、西部は紀伊水道に面し、黒潮の影響が大。大部分が山地で占められ、雨量の多い吉野・熊野地方は林業が盛ん。
- 和歌の浦 わかのうら 和歌山市南部にある湾岸一帯の地。湾の北西隅に妹背山、東に名草山がそびえ、古来の景勝地。玉津島神社がある。若の浦。明光浦。
- 高野山 こうやさん 和歌山県北東部にある、千m前後の山に囲まれた真言宗の霊地。816年(弘仁7)空海が真言密教の根本道場として下賜を受け、のち真言宗の総本山金剛峯寺を創建。
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- 中国地方:
- 瀬戸内海 せとないかい 本州と四国・九州とに囲まれた内海。沖積世初期に中央構造線の北縁に沿う陥没帯が海となったもの。友ヶ島水道(紀淡海峡)
・鳴門海峡・豊予海峡・関門海峡によってわずかに外洋に通じ、大小約3000の島々が散在し、天然の美観に恵まれ、国立公園に指定されている。沿岸には良港が多く、古くから海上交通が盛ん。 - [鳥取県]
- 伯耆 ほうき 旧国名。今の鳥取県の西部。伯州。
- 大山 たいせん/だいせん 鳥取県西部にある複式火山。中国地方第一の高峰。標高1729m。大神岳。伯耆富士。
- [広島県]
- 安芸 あき 旧国名。今の広島県の西部。芸州。
- 厳島 いつくしま 広島湾南西部の島。日本三景の一つ。面積約30平方km。その最高所は、標高530mの弥山。廿日市市に属し島全体が原始林で覆われる。北岸に厳島神社と門前町がある。伊都岐島。宮島。
- [山口県]
- 長門 ながと 旧国名。今の山口県の西部・北部。古くは穴門(あなと)。長州。
- 秋吉台 あきよしだい 山口県西部、秋芳町一帯の石灰岩台地。鍾乳洞・ドリーネなどのカルスト地形が発達。
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- 四国地方:
- [徳島県]
- 徳島 とくしま (1) 四国地方東部の県。阿波国の全域。面積4145平方km。人口81万。全8市。(2) 徳島県北東部の市。県庁所在地。吉野川河口南岸にある。もと蜂須賀氏26万石の城下町。古くは藍(あい)の集散地。
「阿波踊り」は有名。人口26万8千。 - [愛媛県]
- 伊予 いよ 旧国名。今の愛媛県。伊余。伊与。予州。
- 中山川 なかやまがわ 現、愛媛県周桑郡第一の大川。温泉郡川内町の海上(かいしょう)に発して北流する滑川が周桑郡との郡境付近で中山川となり、周桑郡の南西端から東北に貫流、西条市氷見で燧灘に流入する。支流に鞍瀬川・関屋川などがある。全長は、当郡に流入する落出橋あたりから河口まで29.66キロ。
- 桜三里 さくらさんり 現、愛媛県周桑郡。中山越の名勝。中山越は道前と道後の間の山越道で、久米郡と周布郡を結ぶ。道はおおむね中山川の渓流に沿っており、金比羅道としてもにぎわった。/桜の名所。松瀬川の小檜皮峠から土屋(現川内町)
、周布郡の千原(現丹原町)を経て落合の間をさし、今は国道11号からはずれる。貞享4(1687)松山藩士矢野五郎左衛門が囚人を使役し、8240本の桜樹を植えたとされる。 - 千羽が岳 せんばがたけ 現、愛媛県周桑郡。標高413m。中山川の北西岸にある絶壁。
- 四国山系 さんけい → 四国山地か
- 四国山地 しこく さんち 四国の中央を東西に走る山地。中央構造線以南の石鎚山脈、剣山地などから構成され、石鎚山をはじめ急峻な山が多い。
- 佐田岬 さだみさき 愛媛県の西端、八幡浜市から西に突出する佐田岬半島の先端の岬。豊予海峡を隔てて大分県佐賀関半島の関崎と対する。
- 別子銅山 べっし どうざん 愛媛県新居浜市別子山の銅山。1690年(元禄3)の発見。含銅硫化鉄鉱を産出したが、1973年閉山。
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- 九州地方:
- [福岡県]
- 筑前 ちくぜん 旧国名。今の福岡県の北西部。
- 玄海灘 げんかいなだ → 玄界灘
- 玄界灘 げんかいなだ 福岡県の北西方の海。東は響灘、西は対馬海峡・壱岐水道に連なり、冬季風波の激しさで名高く、洋中に沖ノ島・大島・小呂島・烏帽子島・姫島・玄界島などがある。玄海灘。
- 芥屋の大門 けやの おおと 現、福岡県糸島郡志摩町芥屋。糸島半島の西端にある。北端に芥屋の大門がある。玄武岩が柱状節理をなして玄界灘にそそり立ち、浸食によって内部に大規模な洞窟が形成されている。国指定天然記念物。
- 豊前 ぶぜん 旧国名。今の福岡県東部と大分県北部。
- 英彦山 えいひこさん 彦山(ひこさん)。
- 英彦山・彦山 ひこさん 福岡県と大分県にまたがる山。標高1200m。古く、修験道の大道場。えひこさん。えいげんさん。
- [佐賀県]
- 肥前 ひぜん 旧国名。一部は今の佐賀県、一部は長崎県。
- 唐津湾 からつわん 玄界灘に面して北西に突出した東松浦半島と、東の福岡県糸島半島との間にある。古代は奥深い入江で、河川による沖積作用により潟を形成していた。
- 七つ釜 ななつがま 七ツ釜。現、佐賀県唐津市屋形石。屋形石の北東部神崎の小岬、瓦器崎(一名、土器崎)にある。岬は玄武岩の柱状結晶からなり、海岸はすべて断崖絶壁をなしていて、玄界灘の波濤をまともに受けて浸食がいちじるしい。東側の断崖は深く入り込み、七つの横穴が並列して、あたかも竈を並べたような形状をなし、深い穴は100mに達する。この穴には満潮時だけは小舟の出入りが可能。天然記念物。
- [大分県]
- 豊後 ぶんご 旧国名。今の大分県の大部分を占める。
- 馬上金山 ばじょう きんざん → 馬上鉱山
- 馬上鉱山 ばじょう こうざん 大分県速見郡山香町にあった浅熱水性鉱脈型金銀鉱床。主に白亜紀花崗岩中に胚胎し、それをおおう新第三世紀のプロピライト化した安山岩質凝灰角礫岩中では劣化。主脈は桜\(ひ)。石英脈中にエレクトラム・濃紅銀鉱・脆銀鉱・輝銀鉱・黄銅鉱・テトラヘドライト・黄鉄鉱・硫砒鉄鉱・輝安鉱・ベルチエ鉱を含む。17世紀発見、1911〜50年閉山までの推定産出量は粗鉱45万t、Au 11t、Ag 70〜80t。周辺には小規模な金鉱床が多数分布。
(地学) - 鯛生金山 たいお きんざん → 鯛生鉱山
- 鯛生鉱山 たいお こうざん 大分県日田郡中津江村にあった浅熱水性鉱脈型金銀鉱床。三郡変成岩類をおおう新第三紀のプロピライト化した安山岩類中に胚胎。約20条の鉱脈のうち、主脈の3号・4号脈は走向延長1700m、傾斜延長600m。鉱石は方解石・アデュラリア・石英脈中に、エレクトラム・輝銀鉱・ポリバス鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱・黄銅鉱・黄鉄鉱を含む。1894年発見、1970年閉山までの産出粗鉱量587万t、Au 37t、Ag 160t。閉山後は観光坑道として利用。
(地学) - 佐賀の関 さがのせき → 佐賀関
- 佐賀関 さがのせき 現、大分県北海部郡佐賀関町。佐賀関半島に立地する。半島の北東は豊予海峡(速吹瀬戸)をはさんで愛媛県の佐田岬。
- 耶馬渓 やばけい 大分県北西部、山国川の上流・中流沿岸約50kmの景勝地。本耶馬渓(青の洞門および羅漢寺付近から柿坂付近に至る一帯の峡谷)
・深耶馬渓・裏耶馬渓・奥耶馬渓などがある。安山岩質集塊岩の上に熔岩がかぶさり、特に集塊岩は奇観を呈する。頼山陽の命名。耶馬日田英彦山国定公園の一部。 - 大砲岩 たいほういわ
- 筆岩 ふでいわ
- ロウソク岩 -いわ
- 鉾岩 ほこいわ
- 小半鍾乳洞 おながら しょうにゅうどう 現、大分県南海部郡本匠村小半。冠岳南麓、米花山北麓の山間村。番匠川の北岸沿いに北東から南西にわたる石灰岩脈があって、小半鍾乳洞は明治32(1899)発見。国指定天然記念物。
- [朝鮮]
- 朝鮮半島 ちょうせん はんとう アジア大陸の東部にある半島。黄海と日本海とを分ける。朝鮮海峡を隔てて日本と対する。
- [ヨーロッパ]
- アルプス山脈 Alps ヨーロッパの中央南部に横たわる山脈。イタリア・フランス・スイス・ドイツ・オーストリア各国境に連なる。最高峰モンブラン(4807m)をはじめマッターホルン・ユングフラウ・アイガーなどの高峰がそびえ、氷河がある。
- モン・ブラン Mont Blanc (
「白い山」の意) アルプス山脈中の最高峰。標高4807m。フランス・イタリア両国の国境にそびえる。万年雪に覆われて多くの氷河が流下。山麓に登山基地シャモニの町がある。イタリア語名モンテ‐ビアンコ。 - シャモニ Chamonix フランス南東部、アルプス山間部の町。モンブラン登山基地、冬季スポーツの要地。
- [北米]
- コロラド州 -しゅう Colorado アメリカ合衆国西部の州。鉱物資源に富み、近年はハイテク産業が立地。州都デンヴァー。
- 記念公園
- 北米の西部地方にある大砂原
- [アフリカ]
- [エジプト]
- ピラミッド pyramid 石や煉瓦で造られた方錐形建造物の遺跡。特に有名なのは、エジプトのナイル川左岸、カイロ西方のメンフィスにあるもので、約80基現存。前2700〜2500年代に国王・王族などの墓として建造。現存中最大規模はギザにあるクフ王のもので、底辺の1辺230m、高さ137m。中南米に見られるものは主に神殿の基層で、頂部が平坦。金字塔。
- スフィンクス Sphinx (1) 古代エジプトやアッシリアなどで、支配者の象徴として王宮・神殿・墳墓などの入口に設けた人面獅身の石像。(2) ギリシア神話で、女面獅身の怪物。テーベ付近の岩の上で、行人に「朝は4脚、昼は2脚、夕は3脚のものは何か」となぞをかけ、解き得ない者を殺していたが、オイディプスに「それは人間である」と答えられて、海に身を投じて死んだという。
◇参照:Wikipedia、
*人物一覧
(人名、および組織・団体名・神名)- 内務省 ないむしょう 警察・地方行政・選挙その他内務行政を管轄した中央官庁。1873年(明治6)設置、1947年廃止。
◇参照:
*難字、求めよ
- 妙律 みょうりつ
- 千態万様 せんたい ばんよう → 千態万状
- 千態万状 せんたい ばんじょう いろいろさまざまな状態。千態万様。
- 山群 さんぐん ひとあつまりになった山。山のむれ。連峰。山系。山彙。
- 山彙 さんい 山系または山脈をなさず、孤立している山岳の集まり。山群。
- 火山彙 かざんい
- 連山 れんざん (1) つらなった山々。連峰。
- 連峰 れんぽう つらなりつづいた峰。連山。
- 角ばった つのばった
- かくばる 角張る (1) 四角く、かどが出る。かど張る。
- 集塊岩 しゅうかいがん 粗い火山噴出物を主体とする岩石。浸食に対する抵抗力が部分によって異なるので種々の奇景を作る。妙義山・耶馬渓・寒霞渓は集塊岩の形成した奇景として名高い。
- ロウソク岩 -いわ
- 天狗岩 てんぐいわ
- 烏帽子 えぼし (烏の羽のように黒く塗った帽子の意) 元服した男子が略装につける袋形のかぶりもの。奈良時代以来、結髪の一般化につれて広く庶民の間にも用いられた。貴族の間では平常に用い、階級・年齢などによって形と塗り様とを異にした。もと羅や紗で作ったが、後世は紙で作り、漆で塗り固めた。立烏帽子・風折烏帽子・侍烏帽子・引立烏帽子・揉烏帽子などがある。
- 岩石 がんせき 岩や石。地殻やマントルを構成する物質。通常、数種の鉱物の集合体で、ガラス質物質を含むこともある。成因上、火成岩・堆積岩・変成岩およびマントル物質に分類される。
- 地球 ちきゅう (earth) われわれ人類の住んでいる天体。太陽系の惑星の一つ。形はほぼ回転楕円体で、赤道半径は6378km、極半径は6357km。太陽からの距離は平均1億4960万kmで、365日強で太陽を1周し、24時間で1自転する。地殻・マントル・核の3部分から成り、平均密度は1立方cm当り5.52グラム。表面は大気によって囲まれる。
- 地殻 ちかく 地球の最外層。その下のマントルとはモホロヴィチッチ不連続面で境をなす。モホロヴィチッチ不連続面の深さは、大陸域で地表から30〜60km、海洋域で海底から約7km。地殻はマントルに比べて地震波の伝播が遅く、密度が小。海洋地殻は主に玄武岩質岩石から成り、大陸地殻の上部は主に花崗岩質岩石から成る。地皮。
- 土壌 どじょう (1) 陸地の表面にあって、光・温度・降水など外囲の条件が整えば植物の生育を支えることができるもの。岩石の風化物やそれが水や風により運ばれ堆積したものを母材とし、気候・生物(人為を含む)
・地形などの因子とのある時間にわたる相互作用によって生成される。生態系の要にあり、植物を初めとする陸上生物を養うとともに、落葉や動物の遺体などを分解して元素の正常な生物地球化学的循環を司る。大気・水とともに環境構成要素の一つ。つち。(2) 比喩的に、物事を生ずる環境・条件。 - 鉱物 こうぶつ 地殻・隕石などを構成する天然の均質な無機物。多くは、固体で一定の原子配列を有し、一定の化学組成をもつ。石英・長石・黄鉄鉱の類。
- 水成岩 すいせいがん 堆積岩の一種。岩石の砕けた砕屑粒子や粘土、生物の遺骸などが水によって運ばれ、または水中に堆積し生成したもの。堆積岩の大部分を占めるので、それとほぼ同義。
- 火成岩 かせいがん 地下の溶融したマグマが地表または地下で固結してできた岩石。火山岩と深成岩とがある。石英・長石・雲母・輝石・角閃石・橄欖石などの組合せの違いでさまざまな岩石種がある。一般に、層をなさないで塊状を成す。花崗岩・安山岩の類。
- 変成岩 へんせいがん 堆積岩または火成岩が地下深い所で温度・圧力の変化または化学的作用を受け、鉱物の種類や組織が変化して生じた岩石。
- 層状岩 そうじょうがん
- 火山灰 かざんばい 火山から噴出する灰のような物質で、溶岩の砕片の微細なもの。火山塵。
- 砂漠・沙漠 さばく 乾燥気候のため、植物がほとんど生育せず、岩石や砂礫からなる荒野。ゴビ・サハラ・アラビアの砂漠の類。
- 赤土 あかつち 赤土・赭土 (1) 鉄分を含み、赤く黄ばんだ粘土。赤色土。黄色土。赭土。(2) 赤黒色の絵具。
- かなくそ 金屎 (1) 鉄のさび。(2) 鉄を焼いて鍛えるとき、はがれて落ちるくず。(3) スラグ(鉱滓)の俗称。
- 塊状岩 かいじょうがん (1) 火成岩に同じ。(2) 構成鉱物が特定な配列を示すことのない岩石。
- 地層 ちそう 泥・砂・礫・火山灰、生物の遺骸などが、海底や陸上で水平に広がって沈積した層状のもの。普通は固まって堆積岩・火山砕屑岩となっている。
- 砂岩 さがん (sandstone) 堆積岩の一種。砂が固まってできた岩石。建築・土木用の石材、砥石の材料とする。しゃがん。
- 粘板岩 ねんばんがん 堆積岩の一種。泥(特に粘土)が固結して生じた暗灰ないし黒色緻密の岩石が弱変成したもので、薄く剥げやすい。スレート・石盤・硯石などに用いる。
- 礫岩 れきがん 堆積岩の一種。礫が河川あるいは浅海に堆積して、砂などとともに膠着・固結したもの。
- 凝灰岩 ぎょうかいがん (tuff) 火山砕屑岩の一種。火山灰・火山砂・火山礫などの火山噴出物が、水中または地上に降下して集積・凝結してできた灰白または灰黒色の岩石。質はもろいが加工しやすく、建築・土木の石材に用いる。
- 桑滄の変 そうそうのへん → 滄桑の変
- 滄桑の変 そうそうのへん 桑田変じて滄海となるような大変化。世の変遷のはげしいことにいう。
- 横圧力 おうあつりょく 褶曲山脈の生成などの地殻変動の原因となる地殻内に水平に働く圧縮力。
- 褶曲山 しゅうきょくざん → 褶曲山地
- 褶曲山地 しゅうきょく さんち fold mountains 造山運動によってできる山地を H.Still が形態(内部の)によって分類したとき、まず褶曲山地と地塊山地とに二大別し、さらに前者をナップ山地と狭義の褶曲山地とに区分。狭義の褶曲山地はその内部構造が褶曲によって特徴づけられるもので、ナップ構造はないか、またはあったとしても著しくないもの。
(地学) - 褶曲山脈 しゅうきょく さんみゃく 地殻変動によって地層が褶曲している山脈。ヒマラヤ・アルプスなど陸上の大山脈はすべてこれに属する。
- 切り割り きりわり (1) 切って割ること。(2) 山や丘などの一部を切りくずして開いた道路。
- 化石 かせき (1) (fossil) 地質時代の生命の記録の総称。生物の遺骸あるいはその一部(体化石)
、および足あと、這いあと、巣穴、糞などの生活の痕跡(生痕化石)を指す。一般に硬い部分が残り、石化することが多いが、石化していなくても(氷づけのマンモスなど)化石と呼ぶ。(2) 比喩的に、現在に残る古い物や制度。 - 堆積 たいせき (1) うずたかく積むこと。つみ重ねること。また、つみ重なること。累積。(2) 岩石の砕片や生物の遺骸などが、ある場所に集積すること。堆積作用。
- 石炭層 せきたんそう 石炭の地層。
- 火山岩 かざんがん 火成岩の一種。微細粒の部分やガラスを含み、一般に斑状の岩石。地下深所にある高温のマグマが地表に流出し、冷却固結してできる。玄武岩・安山岩・デイサイト・流紋岩などの類。噴出岩。
- 深造岩 しんぞうがん 深成岩に同じ。
- 深成岩 しんせいがん 火成岩の一種。マグマが地下の深所で冷却固結して生じたもの。結晶化し、粒状組織をなす。花崗岩・閃緑岩・斑糲岩の類。深造岩。
- 結晶 けっしょう (1) 原子が規則正しく周期的に配列してつくられている固体。日常的には単結晶を意味することが多い。
- ガラス質 -しつ (1) ガラス状態の物質。非結晶で無定形の固体。凝固点以下に冷やした時、結晶しないで固体のようになったもので、過冷却液体ともいわれる。結晶質に対していう。(2) 岩石学で、等方非結晶質からなる岩石をいう。火成岩のうち火山岩にみられる。黒曜石はその代表例。
- ガラス glas 硝子。(室町末期、長崎に渡来したオランダ人が製法を伝えた) (1) 石英・炭酸ナトリウム・石灰石などを原料として、高温度に熱して溶融し、冷却して製した硬く脆く透明な物質。着色には金属の酸化物を混ぜる。用途が多く、種々の器具・建材に製する。玻璃。(2) 広義には、融点以上の高温で溶融した物体を急冷・固化させた等方性無定形物質。
- 黒曜石 こくようせき 火山岩の一種。灰色ないし黒色で、半透明、ガラス光沢に富む。断口は貝殻状。流紋岩質のものが多い。石器の材料。装飾用・印材・文鎮・硯などとする。黒曜岩。
- 十勝石 とかちいし 十勝地方に産出する黒色の光沢の強い黒曜石。飾り石に用いる。
- 印材 いんざい 印を作る素材。石・木・ゴム・牙・角・竹・金属など。
- 安山岩 あんざんがん (もとアンデス山系で発見され、andesiteに由来する) 火山岩の一種。暗灰色で緻密。斜長石・角閃石・黒雲母・輝石などを含み、板状・柱状等の節理がある。造山帯に産出。広く土木・建築に使用。
- 富士岩 ふじいわ/ふじがん 安山岩の異称。
- 玄武岩 げんぶがん (basalt) 細粒・緻密で塩基性の火山岩。斜長石・輝石・橄欖石・磁鉄鉱などから成り、暗灰色から黒色。しばしば柱状節理をなし、多くの石柱を立てたような壮観をなす。命名は兵庫県の玄武洞に由来。
- 火口 かこう (1) (crater) 火山の噴出物を地表に出す漏斗状の開口部。下方は火道に連なり、活動休止期は溶岩・火山噴出物で閉ざされる。噴火口。
- 溶岩 ようがん 溶岩・熔岩
〔地〕(lava) マグマが溶融体または半溶融体として地表に噴出したもの、また、それが冷却固結して生じた岩石。 - 集塊岩 しゅうかいがん 粗い火山噴出物を主体とする岩石。浸食に対する抵抗力が部分によって異なるので種々の奇景を作る。妙義山・耶馬渓・寒霞渓は集塊岩の形成した奇景として名高い。
- 花崗岩 かこうがん (granite) 深成岩の一種。石英・正長石・斜長石・雲母などを主成分とする大陸地殻の代表的岩石。完晶質粒状の組織をなし、堅牢・美麗なので建築・土木用材として賞用、また、分解したものは陶器製造の材料。御影石。グラニット。
- 石英 せきえい (quartz) ケイ酸から成る鉱物の一種。三方晶系に属し、ガラス光沢をもつ粒状・塊状の集合。錐面をもつ六角柱状結晶は水晶と呼ばれる。硬度7。花崗岩や流紋岩などの中に多量に含まれる。また、変成岩・堆積岩の多くに含まれる。ガラス・陶磁器の材料。
- 長石 ちょうせき アルミニウム・ナトリウム・カルシウム・カリウムなどを含む珪酸塩鉱物の一群。多くは単斜晶系または三斜晶系に属し、ガラス光沢をもち、色は白または灰・淡紅・淡褐・緑など。火成岩の主要成分の一つ。アルカリ分とケイ酸の一部を失い、水分を吸収して陶土になるから窯業原料として利用される。
- 黒雲母 くろうんも 黒・濃褐・暗緑色など濃色の雲母の通称。マグネシウムが多いものは金雲母、鉄が多いものは鉄雲母という。火成岩・変成岩の主成分として多量に産出する。
- 角閃石 かくせんせき 鉄・マグネシウム・アルミニウムなどから成るケイ酸塩鉱物の一群。単斜晶系または斜方晶系。普通、褐黒色または緑黒色柱状で、ガラス光沢がある。火成岩・変成岩中に多く存在し、造岩鉱物として重要。
- 奇巌・奇岩 きがん めずらしい形の大岩。
- 怪石 かいせき 形の変わった石。
- 節理 せつり (1) 物の表面のあや。きめ。(2) 物事のすじみち。(3) 岩石、特に火成岩に見られるやや規則的な割れ目。マグマが冷却固結した結果生じたもので、板状・柱状・球状などの種類がある。
- 重箱岩 じゅうばこいわ
- 硯岩 すずりいわ
- まないた岩 -いわ
- 腰かけ岩 こしかけいわ
- 屏風岩 びょうぶいわ 屏風のようにまっすぐに切り立った岩。
- 材木岩 ざいもくいわ 柱状節理をなして露出し、材木を並列したようなさまをなす岩石。安山岩・玄武岩に多く、兵庫県の玄武洞や栃木県那須塩原の福渡などにある。材木石。
- 材木岩 ざいもくいわ 現、宮城県白石市小原。国道113号沿いの下戸沢と刈田郡七ヶ宿渡瀬の間にある天然の奇岩。国指定天然記念物。高さ100m以上に及ぶ六角柱状の石が角材を並べたように白石川左岸にそびえたつ。
- 柱状節理 ちゅうじょう せつり マグマが冷却固結する時に生じる柱状の割れ目。多く岩脈・岩床・溶岩などに生じる。兵庫県玄武洞・福井県東尋坊などは火山岩に生じた柱状節理のためにできた奇勝。
- 勝地 しょうち (1) けしきのよい土地。名勝。名所。(2) 何かを行うのに適した土地。
- 板状節理 ばんじょう せつり 火山岩などに見られる板状の規則的な割れ目。鉄平石・根府川石などに著しい。
- 鉄平石 てっぺいせき 長野県諏訪市福沢山一帯から産出する輝石安山岩。板状の節理がよく発達し、容易に薄板状石材を得られる。化粧石・敷石などに用いる。へげ石。ひら石。
- 兼平石 かねひらいし
- 岩脈 がんみゃく マグマが岩石の割れ目に入って固結し、板状の火成岩となったもの。
- 岩床 がんしょう マグマが地層の間にほぼ平行に入りこんで板状に拡がり固結したもの。
- 鬼御影 おにみかげ 粗粒の御影石(花崗岩)。
- ペグマタイト pegmatite 主に長石と石英の巨大な結晶から成る岩石。構成鉱物は花崗岩に似ているが、もっと粒が粗い。種々の岩石が固結・分化した残りのマグマが固結したもので、希元素などの鉱物を含むものがある。巨晶花崗岩。
- 石英 せきえい (quartz) ケイ酸から成る鉱物の一種。三方晶系に属し、ガラス光沢をもつ粒状・塊状の集合。錐面をもつ六角柱状結晶は水晶と呼ばれる。硬度7。花崗岩や流紋岩などの中に多量に含まれる。また、変成岩・堆積岩の多くに含まれる。ガラス・陶磁器の材料。
- 水晶 すいしょう 大きく結晶した石英。ふつうは無色透明、六方柱状の結晶。化学成分は二酸化ケイ素。微量の他元素や不純物が混ざったものに黒・紫・草入水晶などがある。印材・光学器械・装飾品などに用いる。水玉。
- 雲母 うんも 単斜晶系、六角板状の結晶をなすケイ酸塩鉱物。真珠光沢をもつ。硬度2.5〜3。はがれやすい。白雲母・金雲母などの種類がある。耐火性が強く、また電気の絶縁に用いる。きら。きらら。うんぼ。マイカ。
- 黄玉 こうぎょく/おうぎょく フッ素を含むアルミニウムのケイ酸塩鉱物。斜方晶系の柱状の結晶で、柱面に、縦に平行な条線があり、直角方向に劈開が発達する。質硬く脆く、透明または半透明で、諸色あるが、黄色のものは宝石として用いる。硬度8。トパーズ。
- ルビー ruby (1) 鋼玉の一変種。紅色を帯びた透明または透明に近い宝石。ミャンマーなどから産出。紅玉。
- サファイア sapphire (1) 鋼玉の一種。ガラス光沢をもち青藍色透明、時には淡い緑黄色のものもある。装飾に用いる宝石の一つ。青玉。(2) 青玉色。碧色。
- 緑柱石 りょくちゅうせき ベリリウムとアルミニウムとを主成分とするケイ酸塩鉱物。六方晶系、六角柱状の結晶。塊状・粒状でも産出。純粋のものは無色。多くは緑色または淡青色で、やや透明、ガラス光沢がある。深緑色のエメラルド、青色のアクアマリンはその一種。ペグマタイトや黒雲母片岩などに産する。
- 電気石 でんきせき ホウ素・アルミニウムなどを含むケイ酸塩鉱物の一群。三方晶系、柱状結晶で、柱面に著しく縦の条線がある。色は化学組成によって異なり、ガラス光沢ないし樹脂光沢をもち不透明ないし半透明。透明で美しいものは宝石となる。トルマリン。
- ラジウム radium (ラテン語で光線の意のradiusから) アルカリ土類金属元素の一種。元素記号Ra 原子番号88。ピッチブレンド中にウランと共存する。1898年キュリー夫妻が発見。銀白色の金属。天然に産する最長寿命の同位体は質量数226、アルファ線を放射して半減期1602年でラドンに変化する。医療などに用いる。
- 錫 すず (1) (tin) 金属元素の一種。元素記号Sn 原子番号50。原子量118.7。銀白色で金属光沢をもち、延性・展性に富み、錆を生じず、大気中で強く熱すれば酸化されるが、常温では光沢を失わない。主要な鉱石は錫石。錫箔として包装に用い、また、鉄板の表面にめっきしてブリキを製造し、また、チューブなどにする。合金に、はんだ・活字金・青銅などがある。
- 重石 じゅうせき 灰重石・マンガン重石・鉄重石などのタングステンを主成分とする鉱物の総称。
- タングステン tungsten (原義はスウェーデン語「重い石」) 金属元素の一種。元素記号W 原子番号74。原子量183.9。灰白色のきわめて硬い金属。融点は炭素に次いで高く、セ氏3400度位。化学的にも安定。主要な鉱石は鉄マンガン重石・灰重石など。タングステン鋼などの合金や電球・熱電子管のフィラメントなどに用いる。ウォルフラム。
- 金属 きんぞく (metal) 固体状態で金属光沢・展性・延性をもち、種々の機械的工作を施すことができ、かつ電気および熱の良導体であるなどの性質をもつ物質の総称。常温・常圧の下で不透明な固体(水銀のみ液体)。比重4〜5より重いものを重金属、軽いものを軽金属という。
- 金 きん (呉音はコン) (1) (gold) 金属元素の一種。元素記号Au 原子番号79。原子量197.0。石英鉱脈の中または川の砂中に単体として産し、銅鉱・鉛鉱などにも含まれる。黄色の光輝ある金属。重く軟らかで、延性および展性に富み、空気中で錆びず、普通の酸に侵されず、王水に溶ける。比重は19.3。産出の少ないこと、光輝の美麗なことで貴金属の随一とされ、貨幣・装飾品・歯科治療材・電子工業部品に用いる。南アフリカ・カナダ・ロシアなどに多く産出。こがね。おうごん。
- 銀 ぎん (1) (silver) 金属元素の一種。元素記号Ag 原子番号47。原子量107.9。金よりやや軽く、白色の美麗な光沢をもつ金属。空気中では酸化しないが、硫黄の化合物にあうと黒色に変わる。熱および電気の最もよい導体。メキシコ・アメリカ・カナダ・ペルーに多く産し、貨幣・装飾品・感光材の原料に用いる。しろがね。
- 銅 どう (1) (copper) 金属元素の一種。元素記号Cu 原子番号29。原子量63.55。自然銅としても産出するが、主要な鉱石は黄銅鉱・輝銅鉱など。赤色の金属で、展性・延性に富む。銀に次ぐ電気および熱の良導体。湿った空気中では緑青を生じる。硝酸・熱濃硫酸に溶ける。電線・器具・貨幣などの製造に用い、銅合金(青銅・黄銅など)や銅化合物の原料とする。あかがね。
- 鉱脈 こうみゃく 岩石中の割れ目を充填して生成した板状の鉱床。有用鉱物成分を含有する熱水溶液が、岩石の割れ目に浸入してその含有成分を沈殿させることによって生じたもの。割目(裂罅)充填鉱床。
- 鉱業家 こうぎょうか
- 鉱業 こうぎょう (mining industry) 地下資源の探査・採掘並びにこれに付属する選鉱・選炭・製錬などの諸作業を営む産業。
- 採掘 さいくつ 土や岩石を掘って、その中の有価鉱物などをとること。
- 変質作用 へんしつ さよう 地表あるいは地殻内で岩石と溶液が反応して岩石・鉱物に起こる変化。一般に鉱物の分解・生成・化学成分の変化・組織の変化をもたらす。脱色による白色化や鉄の酸化による褐色化、あるいは同位体組成の変化なども含む。関与する溶液の違いにより、風化作用・続成作用・熱水変質作用に区別される。
(地学) - カンカン石 かんかんいし 讃岐岩の別称。
- 燧石 ひうちいし 火打石・燧石。石英の一種。玉髄に似て不透明、灰白色・黒色・褐色で、これに鉄片を打ち合わせれば火を発する。古来、火打道具として用いた。フリント。
- 石灰 いしばい 生石灰、または消石灰の称。
- 石灰 せっかい (lime) 生石灰(酸化カルシウム)
、およびこれを水和して得る消石灰(水酸化カルシウム)の通称。広義には石灰石(炭酸カルシウム)を含む。いしばい。 - セメント cement 石灰石・粘土・酸化鉄を焼成・粉砕した灰白色の粉末。コンクリートやモルタルを作る際の主原料で、水で練ると速やかに凝結・固化する。また広くは硬化性を示す無機材料のことで、歯科用充填材、接着剤などをいう。セメン。
- 石灰岩 せっかいがん 堆積岩の一種。炭酸カルシウムから成る動物の殻や骨格などが水底に積もって生じる。主に方解石から成り、混在する鉱物の種類によって各種の色を呈する。建築用材または石灰およびセメント製造の原料。石灰石。
- 大理石 だいりせき (大理(中国、雲南省北西部にある都市)に多く産出するからいう) 接触変成岩の一種。石灰岩が変成作用を受け、方解石の集合塊となって粗粒になった結晶質岩石。普通は白色、佳麗な色彩・斑紋をもつ。結晶質でなくても、美しい石灰岩のことを大理石と呼ぶこともある。建築・彫刻・装飾などに用い、イタリア産が著名。日本では岐阜・山口・茨城などに産する。マーブル。
- 陶器 とうき (1) 土器のさらに進歩した焼物で、素地が十分焼き締まらず吸水性があり、不透明で、その上に光沢のある釉薬を用いたもの。粟田焼・薩摩焼の類。(2) 陶磁器の総称。やきもの。せともの。
- 陶土 とうど 陶磁器の素地に用いる粘土類。カオリン・木節粘土・蛙目粘土など。磁器に用いるものは磁土ともいう。陶石。
- 変質岩 へんしつがん 火成岩または水成岩が温度・圧力などの影響を受けて、石理、構造、鉱物成分にも変化をおこして、元来の性質を消失したもの。変成岩。
- 片麻岩 へんまがん 変成岩の一種。葉片状ないし縞状を呈し、見かけは花崗岩によく似ていて、主として長石・石英・雲母・角閃石などから成るもの。
- 結晶片岩 けっしょう へんがん 変成岩の一種。結晶質で、鱗片状鉱物や長柱状鉱物が平行に発達するために特有な剥離性を示す。片岩。
- 絹雲母片岩 きぬうんも へんがん 片理面上にセリサイト(微細な白雲母)が並んで、きらきら輝いて見える結晶片岩。白雲母泥質片岩の場合と白雲母石英片岩の場合がある。いずれの場合にも、低変成度で再結晶の程度が弱く、構成鉱物は細粒で片理は著しい。
(地学) - 絹雲母 きぬうんも 微細な鱗片状白雲母の総称。陶土として利用。
- 緑泥片岩 りょくでい へんがん 緑泥石を主成分とする緑色結晶片岩。剥離性に富み、しばしば角閃石・緑簾石・曹長石・磁鉄鉱などを含む。庭石に用いる。
- 紅簾片岩 こうれん へんがん 紅簾石・白雲母・石英から成り、暗紫色または深紅色を呈する結晶片岩。秩父地方その他にあり、日本特産の美しい岩石。
- 石墨片岩 せきぼく へんがん 黒色片状で、時に著しい光輝を呈する変成岩。多量の石墨のほか、石英・長石・絹雲母などを含む。
- 懸崖 けんがい (1) 切り立ったようながけ。きりぎし。
- 名勝天然記念物 めいしょう てんねん きねんぶつ → 天然記念物
- 天然記念物 てんねん きねんぶつ 学術上価値の高い動物・植物・地質鉱物(それらの存する地域を含む)で、その保護保存を主務官庁から指定されたもの。1919年(大正8)に史蹟名勝天然紀念物保存法が公布され、50年に文化財保護法が制定された。
- 地貌 ちぼう 地表面の形状、すなわち高低・起伏・斜面などの状態。
- 太古代 たいこだい 始生代に同じ。
- 始生代 しせいだい (Archaeozoic Era)地質年代中の最古の時代。25億年以前を指す。原生代と併せて先カンブリア時代と呼ぶ。この時代の地質体は主に花崗岩や片麻岩などから成るが、堆積岩も分布し、藍藻・細菌の化石も見出される。太古代。
- 始原代 しげんだい 始生代と原生代との総称。先カンブリア時代。
- 古生代 こせいだい (Pal(a)eozoic Era) 地質年代中、原生代の後、中生代の前の時代。約5億4000万年前から2億5000万年前までの時代。カンブリア紀・オルドビス紀・シルル紀・デボン紀・石炭紀・ペルム紀に分ける。この時代には植物は主に隠花植物(藻類・シダ類など)
、動物は主に海生の無脊椎動物(筆石・珊瑚類・海百合・腕足類など)が栄えた。古生代中頃のシルル紀末に、生物は初めて陸上に進出。 - 中生代 ちゅうせいだい (Mesozoic Era) 地質年代の一つ。古生代の後、新生代の前の時代で、約2億5000万年前から6500万年前まで。三畳紀・ジュラ紀・白亜紀に分ける。激烈な地殻変動がなく、陸上ではソテツ類・松柏類・シダ類が発展し、巨大な爬虫類が栄え、鳥類・哺乳類が現れた。海中ではアンモナイト・二枚貝類の発展が著しい。
- 近生代 きんせいだい
- 新生代 しんせいだい (Cenozoic Era) 地質年代の一つ。最も新しい時代で、約6500万年前から現在に至る。哺乳類・顕花植物が最も著しい発達を遂げ、アルプス・ヒマラヤ・アンデスなどの大山脈が形成された。
- 空気 くうき (1) (air) 地球を包んでいる無色透明の気体。地上から高度80kmまでの水蒸気を除いた組成はほぼ一定で、体積比で酸素20.93、窒素78.10、アルゴン0.93、二酸化炭素0.03のほかに、ネオン・ヘリウム・クリプトン・水素・キセノンなどを微量に含んでいる。大気。
- 酸素 さんそ (oxygen) 非金属元素の一種。元素記号O 原子番号8。原子量16.00。水の質量の9分の8、空気の体積の5分の1、地殻の質量の約半分を占める。塩素酸カリウムを二酸化マンガンとともに熱して製する。工業的には液体空気の分留により製する。無色・無臭の気体。大部分の元素とよく化合し、しばしばその際に熱および光を生じる。物の燃焼や動物の呼吸作用に関与する。
- 炭酸ガス たんさん ガス 二酸化炭素の気体の通称。
- 二酸化炭素 にさんか‐たんそ 分子式CO(2) 気体の通称は炭酸ガス。大気中に0.03%含まれる。工業的には石灰石を強熱してつくる。炭素の完全燃焼により生ずる。無色無臭の気体。密度は空気の1.5倍。水に少し溶けて微弱な酸性を示す。生物の呼吸により体外に放出され、同化作用により植物体内に取り入れられる。炭素化合物の原料。消火剤。清涼飲料水・ドライアイス・炭酸ナトリウムなどの製造に利用。無水炭酸。
- 浸食作用 しんしょく さよう
- 浸食・浸蝕 しんしょく
〔地〕流水・氷河・波浪・風などが地表面を掘り削る作用。 - 風化作用 ふうか さよう → 風化
- 風化 ふうか (1) 徳によって教化すること。(2) 地表およびその近くの岩石が、空気・水などの物理的・化学的作用で次第にくずされること。岩石が土に変わる変化の過程。比喩的に、心にきざまれたものが弱くなって行くこと。(3) 硫酸ナトリウムの十水和物、炭酸ナトリウムの十水和物などのように結晶水を含んだ結晶が、空気中で漸次水分を失って、粉末状の物質に変わる現象。風解。
- 化合 かごう (combination) 2種以上の元素が化学的に結合して一つの純物質をつくること。酸素と水素とが結合して水になる類。
- 酸化 さんか (oxidation) 物質が酸素と化合すること。広い意味では、物質から電子が奪われる変化を総称する。←
→還元。 - 鉄 てつ (1) (iron) 金属元素の一種。元素記号Fe 原子番号26。原子量55.85。比重7.86。遊離して存在することは隕石を除いて稀であるが、化合物として土壌・岩石・鉱物中に存在し、特に磁鉄鉱・赤鉄鉱・褐鉄鉱・菱鉄鉱・黄鉄鉱などとして産する。硬質で、延性・展性に富み、強磁性あり、赤熱すれば軟性となり、白熱すれば溶融する。色は白色で光輝あり、湿った空気中では錆を生じやすい。実用の鉄は少量の炭素を含み、その含量によって鋳鉄から鋼に至るさまざまな特性を発揮する。産額多く価も安いから、用途が広く金属中最も有用。くろがね。
- 酸化鉄 さんかてつ (1) 酸化鉄(II)
(酸化第一鉄)。化学式FeO 空気を絶って蓚(しゅう)酸鉄(II)を熱分解して得られる黒色粉末。不安定。(2) 酸化鉄(III) (酸化第二鉄)。化学式Fe(2)O(3) 天然に赤鉄鉱として産し鉄冶金の原料となる。水酸化鉄(III)を焼くと赤色粉末として得られる。これを弁柄(ベンガラ)ともいい、宝石の研磨や顔料に用いる。三酸化二鉄。(3) 酸化二鉄(III)鉄(II)。化学式Fe(3)O(4) 天然に磁鉄鉱(マグネタイト)として産出。赤熱した鉄に水蒸気を作用させて得られる。黒色粉末。強磁性体。四酸化三鉄。 - つりあい岩
- すれへって
- 風食・風蝕 ふうしょく 風の浸食作用。風が砂を吹き払ったり、砂を岩石面に吹きつけて岩石を磨りへらし、地表面を低下させること。
- 蜂巣岩
- 飽和 ほうわ (1) 最大限度まで満たされている状態。ある状態量を増加させる要因を増してもその状態量が一定限度に止まり、それ以上ふえない状態。
- 土柱 どちゅう (earth pillar) 雨水の浸食のために生じた、岩石を戴く柱状の土の柱。
- 奇景 きけい めずらしく、美しい景色。絶景。奇勝。
- 奇勝 きしょう (2) 珍しく、すばらしい景色。
- 石門 せきもん (1) 石材で造った門。(2) 岩石が自然に門のさまをしたもの。
- 地下水 ちかすい 地層・岩石のすき間や割れ目に存在し、重力の作用によって流動する水。飲料・灌漑・工業用水などに利用。
- 溶解 ようかい (1) とけること。とかすこと。(2) 物質が液体中にとけて均一な液体となる現象。
- 石灰洞 せっかいどう 鍾乳洞に同じ。
- 鍾乳洞 しょうにゅうどう 雨水または地下水の溶解浸食を受けて石灰岩地に生じた空洞。天井には鍾乳石が垂下し、床下に石筍が林立する。石灰洞。
- 鐘乳石 しょうにゅうせき → 鍾乳石
- 鍾乳石 しょうにゅうせき (
「鍾乳」は「鐘乳」に同じで、つりがねの表面の突起の意) (stalactite) 石灰洞の天井から垂下した円錐状ないし円筒状の石灰質沈殿物。普通は白色または灰色。中心に穴があり、断面に成長を示す同心円模様が見える。石灰岩の割れ目を雨水が通過し、炭酸カルシウムを溶かして流れ、滴り落ちる時に沈殿したもの。いわつらら。氷柱石。石鍾乳。 - 石筍 せきじゅん 鍾乳洞の床上に水が滴下し、含まれている炭酸カルシウムが沈殿・堆積して生じた筍状の突起物。
- 帰り水 かえりみず
- カルスト地貌 -ちぼう → カルスト地形
- カルスト地形 カルスト ちけい (Karst ドイツ スロヴェニアのカルスト地方に見られることから) 石灰岩台地で、カレンフェルト(鋸歯状の地形)
・ドリーネ(擂鉢状の窪地) ・石灰洞などが発達する特有な地形。石灰岩の表面が溶解浸食を受けやすいこと、雨水は主に割れ目に沿ってしみ込み、周囲の岩石を溶解しやすいことなどが原因となってできる。山口県の秋吉台はその好例。 - ゴロ石
- 尖峰 せんぽう 槍の穂先のようにとがった峰。
- 尖塔状 せんとうじょう
- 尖塔 せんとう 頂上がとがって高く突き出た建物。西洋ではゴシック建築の塔形に始まる。
- 氷河 ひょうが 高山の雪線以上のところで凝固した万年雪が、上層の積雪の圧力の増加につれて、氷塊となり、低地に向かって流れ下るもの。流速は、山岳氷河では一般に年50〜400m、海に流れ出る氷河では年1000mを超えるものもある。
- 万年雪 まんねんゆき 山地で雪線以上の所に年々降り積もる雪が、その重みによる圧縮その他の原因により、性質が変化して次第に粒状構造の氷塊になったもの。
- 氷河時代 ひょうが じだい 地球上の気候が非常に寒冷となる氷期と、現在のような温暖な間氷期とが何万年かの周期で繰り返される時代。先カンブリア時代には8億年前〜6億年前に全地球凍結があり、古生代後期にはゴンドワナ大陸に氷河が発達した。最近の氷河時代は寒暖の変化がはっきりとなった260万年前以降。大陸上に氷床が急速に発達したり急速に衰退したりするのが特徴。
- 氷河期 ひょうがき 通常は氷期のこと。時には氷期と間氷期との繰り返された氷河時代を指すこともある。
- 氷石 こおりいし (凍ったつららのさまに似ているからいう) 水晶の異称。
- 堆石 たいせき (1) 石をうずたかく積むこと。また、その堆積した石。(2) (moraine) 氷河によって運搬され堆積した岩屑。また、その集積。氷堆石。モレーン。
- 枯死 こし 草や木が枯れ果てること。
- 腐植酸 ふしょくさん
- 浮石 かるいし → 軽石
- 軽石 かるいし 火山から噴出した溶岩が急冷する際に、含有ガスが逸出して多孔質海綿状となった岩石。質はもろく小孔があり、水に浮く。あかすりに用いる。うきいし。倭名類聚鈔1「浮石、和名加留以之」
- ミミズ 蚯蚓。ミミズ綱(貧毛類)の環形動物の総称。釣餌。漢方生薬名を地竜といい、解熱・鎮痙・利尿・解毒薬。赤竜。
- 益虫 えきちゅう 有用物質を生産し、または、害虫に対する寄生・捕食、植物の受粉の媒介など直接間接に人間生活に利益を与える、虫類。蚕・蜜蜂・蜂・カマキリの類。
- 土竜 むぐらもち 「もぐら」に同じ
- モグラ 土竜・�鼠 広くは哺乳綱モグラ目(食虫類)
、また、そのうちモグラ科の総称。十数属約30種を含み、日本には4属8種がいる。代表的な種は東日本ではアズマモグラ、西日本ではコウベモグラで、前者は体長10〜16cm余り。後者はそれよりはやや大きい。毛色は黒褐色。手は外を向いて、手のひらは大きく、頑丈。眼は退化している。地中にトンネルを作り、ミミズや昆虫の幼虫を食べ、土を隆起させ、農作物に害を与える。むぐら。うぐら。もぐらもち。うごろもち。田鼠。 - アリ 蟻。(1) ハチ目アリ科の昆虫の総称。胸腹間に甚だしいくびれがある。触角は「く」の字形に屈曲。地中または朽木の中に巣をつくる。雌である女王と、雄と働き蟻(生殖能力のない雌)とがあり、多数で社会生活を営む。新しく羽化した女王と雄には翅があり(羽蟻)
、交尾後に翅を失う。 - アリ塚 ありづか 蟻塚・垤。アリが地中に巣を作るために地表に持ち出した土砂でできた山。また、土や落葉を塚のように積み上げて作ったアリ・シロアリの巣。蟻の塔。蟻封。丘垤。蟻垤。ぎちょう。
◇参照:
*後記(工作員 日記)
「
しかし、夜にはひればそれが急に零度以下十何度といふ寒さになります。
華氏は水の沸点が212度だから、
山田 順『出版・新聞 絶望未来』
「あと10年ぐらいで紙という媒体はほぼなくなってしまう可能性も否定できない」
とくに、
- 1.電子書籍のタイトル数が少なすぎること。
- 2.「Kindle」のような電子書籍専用端末、
「iPad」のようなタブレット端末が普及していないこと。 - 3.著作権処理が煩雑で手間がかかりすぎること。
- 4.出版社側に著作隣接権がないこと。
- 5.紙と電子で流通・販売制度が違うことで、出版社が消極的にならざるをえないこと。
(価格決定権の問題) - 6.フォーマットが乱立し電子書店ごとに異なること。
- 7.流通を阻害している厳しいDRM規制があること。
*次週予告
第五巻 第二九号
山の科学・山と河(三) 今井半次郎
第五巻 第二九号は、
二〇一三年二月九日(土)発行予定です。
定価:200円
T-Time マガジン 週刊ミルクティー* 第五巻 第二八号
山の科学・山と河
発行:二〇一三年二月二日(土)
編集:しだひろし / PoorBook G3'99
http://www33.atwiki.jp/asterisk99/
出版:*99 出版
〒994-0024 山形県天童市鎌田2丁目
アパートメント山口A−202
販売:DL-MARKET
※ T-Timeは(株)ボイジャーの商標・製品です。
- T-Time マガジン 週刊ミルクティー* *99 出版
- バックナンバー
※ おわびと訂正
長らく、創刊号と第一巻第六号の url 記述が誤っていたことに気がつきませんでした。アクセスを試みてくださったみなさま、申しわけありませんでした。(しょぼーん)/2012.3.2 しだ
- 第一巻
- 創刊号 竹取物語 和田万吉
- 第二号 竹取物語小論 島津久基(210円)
- 第三号 竹取物語の再検討(一)橘 純一(210円)
- 第四号 竹取物語の再検討(二)橘 純一(210円)
「絵合」 『源氏物語』より 紫式部・与謝野晶子(訳) - 第五号
『国文学の新考察』より 島津久基(210円)- 昔物語と歌物語 / 古代・中世の「作り物語」/
- 平安朝文学の弾力 / 散逸物語三つ
- 第六号 特集 コロボックル考 石器時代総論要領 / コロボックル北海道に住みしなるべし 坪井正五郎 マナイタのばけた話 小熊秀雄 親しく見聞したアイヌの生活 / 風に乗って来るコロポックル 宮本百合子
- 第七号 コロボックル風俗考(一〜三)坪井正五郎(210円)
- シペ物語 / カナメの跡 工藤梅次郎
- 第八号 コロボックル風俗考(四〜六)坪井正五郎(210円)
- 第九号 コロボックル風俗考(七〜十)坪井正五郎(210円)
- 第十号 特集 コロボックル考 喜田貞吉
- 日本太古の民族について / 日本民族概論 / 土蜘蛛種族論につきて
- 第十一号 特集 コロボックル考 喜田貞吉
- 東北民族研究序論 / 猪名部と佐伯部 / 吉野の国巣と国樔部
- 第十二号 日高見国の研究 喜田貞吉
- 第十三号 夷俘・俘囚の考 喜田貞吉
- 第十四号 東人考 喜田貞吉
- 第十五号 奥州における御館藤原氏 喜田貞吉
- 第十六号 考古学と古代史 喜田貞吉
- 第十七号 特集 考古学 喜田貞吉
- 遺物・遺蹟と歴史研究 / 日本における史前時代の歴史研究について / 奥羽北部の石器時代文化における古代シナ文化の影響について
- 第十八号 特集 考古学 喜田貞吉
- 日本石器時代の終末期について /「あばた」も「えくぼ」、
「えくぼ」も「あばた」― ―日本石器時代終末期― ― - 第十九号 特集 考古学 喜田貞吉
- 本邦における一種の古代文明 ―
―銅鐸に関する管見― ― / - 銅鐸民族研究の一断片
- 第二〇号 特集 考古学 喜田貞吉
「鐵」の字の古体と古代の文化 / 石上神宮の神宝七枝刀 / - 八坂瓊之曲玉考
- 第二一号 博物館(一)浜田青陵
- 第二二号 博物館(二)浜田青陵
- 第二三号 博物館(三)浜田青陵
- 第二四号 博物館(四)浜田青陵
- 第二五号 博物館(五)浜田青陵
- 第二六号 墨子(一)幸田露伴
- 第二七号 墨子(二)幸田露伴
- 第二八号 墨子(三)幸田露伴
- 第二九号 道教について(一)幸田露伴
- 第三〇号 道教について(二)幸田露伴
- 第三一号 道教について(三)幸田露伴
- 第三二号 光をかかぐる人々(一)徳永 直
- 第三三号 光をかかぐる人々(二)徳永 直
- 第三四号 東洋人の発明 桑原隲蔵
- 第三五号 堤中納言物語(一)池田亀鑑(訳)
- 第三六号 堤中納言物語(二)池田亀鑑(訳)
- 第三七号 堤中納言物語(三)池田亀鑑(訳)
- 第三八号 歌の話(一)折口信夫
- 第三九号 歌の話(二)折口信夫
- 第四〇号 歌の話(三)
・花の話 折口信夫- 第四一号 枕詞と序詞(一)福井久蔵
- 第四二号 枕詞と序詞(二)福井久蔵
- 第四三号 本朝変態葬礼史 / 死体と民俗 中山太郎
- 第四四号 特集 おっぱい接吻
- 乳房の室 / 女の情欲を笑う 小熊秀雄
- 女体 芥川龍之介
- 接吻 / 接吻の後 北原白秋
- 接吻 斎藤茂吉
- 第四五号 幕末志士の歌 森 繁夫
- 第四六号 特集 フィクション・サムライ 愛国歌小観 / 愛国百人一首に関連して / 愛国百人一首評釈 斎藤茂吉
- 第四七号
「侍」字訓義考 / 多賀祢考 安藤正次- 第四八号 幣束から旗さし物へ / ゴロツキの話 折口信夫
- 第四九号 平将門 幸田露伴
- 第五〇号 光をかかぐる人々(三)徳永 直
- 第五一号 光をかかぐる人々(四)徳永 直
- 第五二号
「印刷文化」について 徳永 直- 書籍の風俗 恩地孝四郎
- 第二巻
- 第一号 奇巌城(一)モーリス・ルブラン
- 第二号 奇巌城(二)モーリス・ルブラン
- 第三号 美し姫と怪獣 / 長ぐつをはいた猫 楠山正雄(訳)
- 第四号 毒と迷信 / 若水の話 / 麻薬・自殺・宗教 小酒井不木 / 折口信夫 / 坂口安吾
- 第五号 空襲警報 / 水の女 / 支流 海野十三 / 折口信夫 / 斎藤茂吉
- 第六号 新羅人の武士的精神について 池内 宏
- 第七号 新羅の花郎について 池内 宏
- 第八号 震災日誌 / 震災後記 喜田貞吉
- 第九号 セロ弾きのゴーシュ / なめとこ山の熊 宮沢賢治
- 第一〇号 風の又三郎 宮沢賢治
- 第一一号 能久親王事跡(一)森 林太郎
- 第一二号 能久親王事跡(二)森 林太郎
- 第一三号 能久親王事跡(三)森 林太郎
- 第一四号 能久親王事跡(四)森 林太郎
- 第一五号 能久親王事跡(五)森 林太郎
- 第一六号 能久親王事跡(六)森 林太郎
- 第一七号 赤毛連盟 コナン・ドイル
- 第一八号 ボヘミアの醜聞 コナン・ドイル
- 第一九号 グロリア・スコット号 コナン・ドイル
- 第二〇号 暗号舞踏人の謎 コナン・ドイル
- 第二一号 蝦夷とコロボックルとの異同を論ず 喜田貞吉
- 第二二号 コロポックル説の誤謬を論ず 上・下 河野常吉
- 第二三号 慶長年間の朝日連峰通路について 佐藤栄太
- 第二四号 まれびとの歴史 /「とこよ」と「まれびと」と 折口信夫
- 第二五号 払田柵跡について二、三の考察 / 山形県本楯発見の柵跡について 喜田貞吉
- 第二六号 日本天変地異記 田中貢太郎
- 第二七号 種山ヶ原 / イギリス海岸 宮沢賢治
- 第二八号 翁の発生 / 鬼の話 折口信夫
- 第二九号 生物の歴史(一)石川千代松
- 第三〇号 生物の歴史(二)石川千代松
- 第三一号 生物の歴史(三)石川千代松
- 第三二号 生物の歴史(四)石川千代松
- 第三三号 特集 ひなまつり
- 雛 芥川龍之介 / 雛がたり 泉鏡花 / ひなまつりの話 折口信夫
- 第三四号 特集 ひなまつり
- 人形の話 / 偶人信仰の民俗化並びに伝説化せる道 折口信夫
- 第三五号 右大臣実朝(一)太宰 治
- 第三六号 右大臣実朝(二)太宰 治
- 第三七号 右大臣実朝(三)太宰 治
- 第三八号 清河八郎(一)大川周明
- 第三九号 清河八郎(二)大川周明
- 第四〇号 清河八郎(三)大川周明
- 第四一号 清河八郎(四)大川周明
- 第四二号 清河八郎(五)大川周明
- 第四三号 清河八郎(六)大川周明
- 第四四号 道鏡皇胤論について 喜田貞吉
- 第四五号 火葬と大蔵 / 人身御供と人柱 喜田貞吉
- 第四六号 手長と足長 / くぐつ名義考 喜田貞吉
- 第四七号
「日本民族」とは何ぞや / 本州における蝦夷の末路 喜田貞吉- 第四八号 若草物語(一)L.M. オルコット
- 第四九号 若草物語(二)L.M. オルコット
- 第五〇号 若草物語(三)L.M. オルコット
- 第五一号 若草物語(四)L.M. オルコット
- 第五二号 若草物語(五)L.M. オルコット
- 第五三号 二人の女歌人 / 東北の家 片山広子
- 第三巻
- 第一号 星と空の話(一)山本一清
- 第二号 星と空の話(二)山本一清
- 第三号 星と空の話(三)山本一清
- 第四号 獅子舞雑考 / 穀神としての牛に関する民俗 中山太郎
- 第五号 鹿踊りのはじまり 宮沢賢治 / 奥羽地方のシシ踊りと鹿供養 喜田貞吉
- 第六号 魏志倭人伝 / 後漢書倭伝 / 宋書倭国伝 / 隋書倭国伝
- 第七号 卑弥呼考(一)内藤湖南
- 第八号 卑弥呼考(二)内藤湖南
- 第九号 卑弥呼考(三)内藤湖南
- 第一〇号 最古日本の女性生活の根底 / 稲むらの陰にて 折口信夫
- 第一一号 瀬戸内海の潮と潮流(他三編)寺田寅彦
- 瀬戸内海の潮と潮流 / コーヒー哲学序説 /
- 神話と地球物理学 / ウジの効用
- 第一二号 日本人の自然観 / 天文と俳句 寺田寅彦
- 第一三号 倭女王卑弥呼考(一)白鳥庫吉
- 第一四号 倭女王卑弥呼考(二)白鳥庫吉
- 第一五号 倭奴国および邪馬台国に関する誤解 他 喜田貞吉
- 倭奴国と倭面土国および倭国とについて稲葉君の反問に答う /
- 倭奴国および邪馬台国に関する誤解
- 第一六号 初雪 モーパッサン 秋田 滋(訳)
- 第一七号 高山の雪 小島烏水
- 第一八号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(一)徳永 直
- 第一九号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(二)徳永 直
- 第二〇号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(三)徳永 直
- 第二一号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(四)徳永 直
- 第二二号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(五)徳永 直
- 第二三号 銀河鉄道の夜(一)宮沢賢治
- 第二四号 銀河鉄道の夜(二)宮沢賢治
- 第二五号 ドングリと山猫 / 雪渡り 宮沢賢治
- 第二六号 光をかかぐる人々 続『世界文化』連載分(六)徳永 直
- 第二七号 特集 黒川能・春日若宮御祭 折口信夫
- 黒川能・観点の置き所 / 村で見た黒川能
- 能舞台の解説 / 春日若宮御祭の研究
- 第二八号 面とペルソナ / 人物埴輪の眼 他 和辻哲郎
- 面とペルソナ / 文楽座の人形芝居
- 能面の様式 / 人物埴輪の眼
- 第二九号 火山の話 今村明恒
- 第三〇号 現代語訳『古事記』
(一)上巻(前編) 武田祐吉(訳)- 第三一号 現代語訳『古事記』
(二)上巻(後編) 武田祐吉(訳)- 第三二号 現代語訳『古事記』
(三)中巻(前編) 武田祐吉(訳)- 第三三号 現代語訳『古事記』
(四)中巻(後編) 武田祐吉(訳)- 第三四号 山椒大夫 森 鴎外
- 第三五号 地震の話(一)今村明恒
- 第三六号 地震の話(二)今村明恒
- 第三七号 津波と人間 / 天災と国防 / 災難雑考 寺田寅彦
- 第三八号 春雪の出羽路の三日 喜田貞吉
- 第三九号 キュリー夫人 / はるかな道(他)宮本百合子
- 第四〇号 大正十二年九月一日よりの東京・横浜間 大震火災についての記録 / 私の覚え書 宮本百合子
- 第四一号 グスコーブドリの伝記 宮沢賢治
- 第四二号 ラジウムの雁 / シグナルとシグナレス(他)宮沢賢治
- 第四三号 智恵子抄(一)高村光太郎
- 第四四号 智恵子抄(二)高村光太郎
- 第四五号 ヴェスヴィオ山 / 日本大地震(他)斎藤茂吉
- 第四六号 上代肉食考 / 青屋考 喜田貞吉
- 第四七号 地震雑感 / 静岡地震被害見学記(他)寺田寅彦
- 第四八号 自然現象の予報 / 火山の名について 寺田寅彦
- 第四九号 地震の国(一)今村明恒
- 第五〇号 地震の国(二)今村明恒
- 第五一号 現代語訳『古事記』
(五)下巻(前編) 武田祐吉(訳)- 第五二号 現代語訳『古事記』
(六)下巻(後編) 武田祐吉(訳)
- 第四巻
- 第一号 日本昔話集 沖縄編(一)伊波普猷・前川千帆(絵)
- 第二号 日本昔話集 沖縄編(二)伊波普猷
- 第三号 アインシュタイン(一)寺田寅彦
- 物質とエネルギー / 科学上における権威の価値と弊害 /
- アインシュタインの教育観
- 第四号 アインシュタイン(二)寺田寅彦
- アインシュタイン / 相対性原理側面観
- 第五号 作家のみた科学者の文学的活動 / 科学の常識のため 宮本百合子
- 第六号 地震の国(三)今村明恒
- 第七号 地震の国(四)今村明恒
- 第八号 地震の国(五)今村明恒
- 第九号 地震の国(六)今村明恒
- 第一〇号 土神と狐 / フランドン農学校の豚 宮沢賢治
- 第一一号 地震学の角度から見た城輪柵趾 今村明恒
- 第一二号 庄内と日高見(一)喜田貞吉
- 第一三号 庄内と日高見(二)喜田貞吉
- 第一四号 庄内と日高見(三)喜田貞吉
- 第一五号 私は海をだきしめてゐたい / 安吾巷談・ストリップ罵倒 坂口安吾
- 第一六号 三筋町界隈 / 孫 斎藤茂吉
- 第一七号 原子力の管理(他)仁科芳雄
- 原子力の管理 / 日本再建と科学 / 国民の人格向上と科学技術 /
- ユネスコと科学
- 第一八号 J・J・トムソン伝(他)長岡半太郎
- J・J・トムソン伝 / アインシュタイン博士のこと
- 第一九号 原子核探求の思い出(他)長岡半太郎
- 総合研究の必要 / 基礎研究とその応用 / 原子核探求の思い出
- 第二〇号 蒲生氏郷(一)幸田露伴
- 第二一号 蒲生氏郷(二)幸田露伴
- 第二二号 蒲生氏郷(三)幸田露伴
- 第二三号 科学の不思議(一)アンリ・ファーブル
- 第二四号 科学の不思議(二)アンリ・ファーブル
- 第二五号 ラザフォード卿を憶う(他)長岡半太郎
- ラザフォード卿を憶う / ノーベル小伝とノーベル賞 / 湯川博士の受賞を祝す
- 第二六号 追遠記 / わたしの子ども時分 伊波普猷
- 第二七号 ユタの歴史的研究 伊波普猷
- 第二八号 科学の不思議(三)アンリ・ファーブル
- 第二九号 南島の黥 / 琉球女人の被服 伊波普猷
- 第三〇号
『古事記』解説 / 上代人の民族信仰 武田祐吉・宇野円空 - 第三一号 科学の不思議(四)アンリ・ファーブル
- 第三二号 科学の不思議(五)アンリ・ファーブル
- 第三三号 厄年と etc. / 断水の日 / 塵埃と光 寺田寅彦
- 第三四号 石油ランプ / 流言蜚語 / 時事雑感 寺田寅彦
- 第三五号 火事教育 / 函館の大火について 寺田寅彦
- 第三六号 台風雑俎 / 震災日記より 寺田寅彦
- 第三七号 火事とポチ / 水害雑録 有島武郎・伊藤左千夫
- 第三八号 特集・安達が原の黒塚 楠山正雄・喜田貞吉・中山太郎
- 第三九号 大地震調査日記(一)今村明恒
- 第四〇号 大地震調査日記(二)今村明恒
- 第四一号 大地震調査日記(続)今村明恒
- 第四二号 科学の不思議(六)アンリ・ファーブル
- 第四三号 科学の不思議(七)アンリ・ファーブル
- 第四四号 震災の記 / 指輪一つ 岡本綺堂
- 第四五号 仙台五色筆 / ランス紀行 岡本綺堂
- 第四六号 東洋歴史物語(一)藤田豊八
- 第四七号 東洋歴史物語(二)藤田豊八
- 第四八号 東洋歴史物語(三)藤田豊八
- 第四九号 東洋歴史物語(四)藤田豊八
- 第五〇号 東洋歴史物語(五)藤田豊八
- 第五一号 科学の不思議(八)アンリ・ファーブル
- 第五二号 科学の不思議(九)アンリ・ファーブル
- 第五巻
- 第一号 校註『古事記』
(一) 武田祐吉- 第二号 校註『古事記』
(二) 武田祐吉- 第三号 校註『古事記』
(三) 武田祐吉- 第四号 兜 / 島原の夢 / 昔の小学生より / 三崎町の原 岡本綺堂
- 第五号 新旧東京雑題 / 人形の趣味(他)岡本綺堂
- 第六号 大震火災記 鈴木三重吉
- 第七号 校註『古事記』
(四) 武田祐吉- 第八号 校註『古事記』
(五) 武田祐吉- 第九号 校註『古事記』
(六) 武田祐吉- 第一〇号 校註『古事記』
(七) 武田祐吉- 第一一号 大正十二年九月一日の大震に際して(他)芥川龍之介
- オウム―
―大震覚え書きの一つ― ― - 第一二号 日本歴史物語〈上〉
(一) 喜田貞吉- 第一三号 日本歴史物語〈上〉
(二) 喜田貞吉- 第一四号 日本歴史物語〈上〉
(三) 喜田貞吉- 第一五号 日本歴史物語〈上〉
(四) 喜田貞吉- 第一六号 校註『古事記』
(八) 武田祐吉- 第一七号 校註『古事記』
(九) 武田祐吉- 第一八号 校註『古事記』
(一〇) 武田祐吉- 第一九号 校註『古事記』
(一一) 武田祐吉- 語句索引 / 歌謡各句索引
- 第二〇号 日本歴史物語〈上〉
(五) 喜田貞吉- 第二一号 日本歴史物語〈上〉
(六) 喜田貞吉- 第二二号 日本歴史物語〈上〉索引 喜田貞吉
- 語句索引 / 人名索引 / 地名一覧
- 第五巻 第二三号 クリスマスの贈り物/街の子/少年・春 竹久夢二
- 「い」とあなたがいうと
- 「それから」と母(かあ)さまはおっしゃった。
- 「ろ」
- 「それから」
- 「は」
- あなたは母さまのひざに抱(だ)っこされていた。外では凩(こがらし)がおそろしくほえ狂(くる)うので、地上のありとあらゆる草も木も悲しげに泣(な)きさけんでいる。
- そのときあなたは慄(ふる)えながら、母さまの首へしっかりとしがみつくのでした。
- 凩(こがらし)がすさまじくほえ狂(くる)うと、ランプの光が明るくなって、テーブルの上のリンゴはいよいよ紅(あか)く、暖炉(だんろ)の火はだんだん暖かくなった。
- あなたのひざの上には絵本が置かれ、悲しい話のところが開かれてあった。それを母さまは読んでくださる。―
―それは、もうまえに百ぺんも読んでくださった物語であった。― ―そのときの母さまの顔色の眼はしずんで、声は低く悲しかった。あなたは呼吸をころして一心(いっしん)に聞き入るのでした。 - 誰(た)ぞ、コマドリを殺せしは?
- スズメはいいぬ、われこそ! と
- わがこの弓と矢をもちて
- わがコマドリを殺しけり。
- (
「少年・春」より)
- 第五巻 第二四号 風立ちぬ(一)堀 辰雄
- それらの夏の日々、一面に薄(すすき)の生いしげった草原の中で、おまえが立ったまま熱心に絵を描いていると、わたしはいつもそのかたわらの一本の白樺の木陰に身をよこたえていたものだった。そうして夕方になって、おまえが仕事をすませてわたしのそばにくると、それからしばらくわたしたちは肩に手をかけあったまま、はるか彼方の、縁だけ茜色をおびた入道雲のむくむくした塊りにおおわれている地平線のほうをながめやっていたものだった。ようやく暮れようとしかけているその地平線から、反対になにものかが生まれて来つつあるかのように……
- そんな日のある午後、
(それはもう秋近い日だった)わたしたちは、おまえの描きかけの絵を画架に立てかけたまま、その白樺の木陰に寝そべって果物をかじっていた。砂のような雲が空をサラサラと流れていた。そのとき不意に、どこからともなく風が立った。わたしたちの頭の上では、木の葉の間からチラッとのぞいている藍色が伸びたり縮んだりした。それとほとんど同時に、草むらの中に何かがバッタリと倒れる物音をわたしたちは耳にした。それはわたしたちがそこに置きっぱなしにしてあった絵が、画架とともに、倒れた音らしかった。すぐ立ち上がって行こうとするおまえを、わたしは、いまの一瞬のなにものをも失うまいとするかのように無理にひきとめて、わたしのそばから離さないでいた。おまえはわたしのするがままにさせていた。 - 風立ちぬ、いざ生きめやも。
( 「序曲」より)
- 第五巻 第二五号 風立ちぬ(二)堀 辰雄
- その危機は、しかし、一週間ばかりで立ち退(の)いた。
- ある朝、看護婦がやっと病室から日覆(ひおおい)を取り除(の)けて、窓の一部を開け放して行った。窓からさしこんでくる秋らしい日光をまぶしそうにしながら、
- 「気持ちがいいわ」と病人はベッドの中からよみがえったように言った。
- 彼女の枕元で新聞をひろげていたわたしは、人間に大きな衝動をあたえる出来事なんぞというものは、かえってそれが過ぎ去った跡はなんだかまるで他所(よそ)のことのように見えるものだなあと思いながら、そういう彼女のほうをチラリと見やって、おもわず揶揄(やゆ)するような調子で言った。
- 「もうお父さんがきたって、あんなに興奮しないほうがいいよ」
- 彼女は顔を心持ち赧(あか)らめながら、そんなわたしの揶揄(やゆ)をすなおに受け入れた。
- 「こんどはお父さまがいらっしたって、知らん顔をしていてやるわ」
- 「それがおまえにできるんならねえ……」
- そんなふうに冗談でも言い合うように、わたしたちはお互いに相手の気持ちをいたわり合うようにしながら、いっしょになって子どもらしく、すべての責任を彼女の父におしつけ合ったりした。
- そうしてわたしたちはすこしもわざとらしくなく、この一週間の出来事がほんの何かの間違いにすぎなかったような、気軽な気分になりながら、いましがたまでわたしたちを肉体的ばかりでなく、精神的にも襲いかかっているように見えた危機を、こともなげに切り抜け出していた。少なくとも、わたしたちにはそう見えた。
……
- 第五巻 第二六号 風立ちぬ(三)堀 辰雄
- 十一月二十日(略)
- 「なにを考えているの?」とうとう彼女が口を切った。
- わたしは、それにはすぐ返事をしないでいた。それから急に彼女のほうへふり向いて、不確かなように笑いながら、
- 「おまえにはわかっているだろう?」と問い返した。
- 彼女はなにか罠(わな)でも恐れるかのように、注意深くわたしを見た。それを見て、わたしは、
- 「オレの仕事のことを考えているのじゃないか」と、ゆっくり言い出した。
「オレにはどうしてもいい結末が思い浮かばないのだ。オレはオレたちが無駄に生きていたようには、それを終わらせたくはないのだ。どうだ、ひとつおまえもそれをオレといっしょに考えてくれないか?」 - 彼女はわたしに微笑んで見せた。しかし、その微笑みはどこかまだ不安そうであった。
- 「だって、どんなことをお書きになったんだかも知らないじゃないの」彼女はやっと小声で言った。
- 「そうだっけなあ……」とわたしはもう一度、不確かなように笑いながら言った。
「それじゃあ、そのうちにひとつ、おまえにも読んで聞かせるかな。しかしまだ、最初のほうだって人に読んで聞かせるほどまとまっちゃいないんだからね」 - わたしたちは部屋の中へもどった。わたしがふたたび明かりのそばに腰をおろして、そこにほうりだしてあるノートをもう一度手に取り上げて見ていると、彼女はそんなわたしの背後に立ったまま、わたしの肩にそっと手をかけながら、それを肩ごしにのぞきこむようにしていた。(略)
- 十一月二十六日(略)
- 節子はもう目を覚ましていた。しかし、立ち戻ったわたしを認めても、わたしのほうへは物憂げにチラッと目をあげたきりだった。そして、さっき寝ていたときよりもいっそう蒼いような顔色をしていた。わたしが枕もとに近づいて、髪をいじりながら額に接吻しようとすると、彼女は弱々しく首をふった。わたしはなんにも訊かずに、悲しそうに彼女を見ていた。が、彼女はそんなわたしをというよりも、むしろ、そんなわたしの悲しみを見まいとするかのように、ぼんやりした目つきで空(くう)を見入っていた。
- 第五巻 第二七号 山の科学・山と川(一)今井半次郎
- 一、山の生まれるまで
- 山の力と人の力
- 地球の誕生
- 山のできたわけ
- (一)地殻のしわ
- (二)しわの山
- 地球の表面
- (一)水の世界と陸の世界
- (二)桑滄(そうそう)の変
- (三)陸地の表面の形
- (四)平原
- (五)高原
- (六)盆地
- (七)段丘
- (八)斜面と崖
- 二、山のいろいろとその形
- 山のいろいろ
- (一)生まれ出た山
- (二)こわれ残った山
- (三)山の高さ
- (四)山の形をあらわす図面
- (ニ)しわの山。 これはすでに前にお話しした、横圧力でできた褶曲山のことです。世界の大きな山脈はたいてい、この褶曲山であることも、ちゃんとおぼえておいでのことと思います。
- (ホ)断層の山。 ところが、地殻のしわも、だんだん強くなると、ついにはそこに割れ目や裂け目のひびができます。青竹を力いっぱい曲げてみると、はじめのうちはだんだん曲がって山ができますが、後にはそのいちばんはりつめた山の頂上のところにひびができ、しまいには竹が折れます。これと同じ理屈で土地もしまいにはその裂け目に沿うて折れて、一方がすべり落ちて食いちがいの形になることがあります。これを「断層」ができたといいます。そして裂け目のところを「断層線」といいます。
- 断層で一方の土地がすべり落ちると、そこは谷となり、残った一方の土地は山となります。これが断層の山です。断層は、ときにいくつもいくつも互いに平行しておこることがあります。このばあいは、階段を平らにしてみたときのように、あるいはレンガ畳の道路がこわれてデコボコになったときのように、いくつもの平行した断層の谷と山とができあがります。
- 断層でできた山は、日本にも外国にも例が多いようです。外国の例でよくひきあいに出されるのは、北アメリカ合衆国にあるシエラネバダ大山脈です。これは比較的たいらな土地におこった断層で、いっぽうが持ちあがり、いっぽうがすべり落ちてできたもので、断層のできたほうはけわしい崖となり、その反対の側はしだいにサクラメント平原にむかって、ゆるやかな傾斜を作っています。
( 「二、山のいろいろとその形(一)生まれ出た山」より)
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