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復刻版『らりるれろ探偵団』
1復刻版『らりるれろ探偵団』 投稿者:リリー  投稿日:2008年05月04日(日)01時06分37秒
過去ログが読めないままなので、もう一度更新したいと思います

↓ここまでは読めるので、この続きから始めたいと思います
http://221.254.11.189/log/tentele/070923205005a.html
2
☆レス650までを見る☆
651投稿者:リリー  投稿日:2008年12月26日(金)22時43分48秒
白い肌が美しい女。
一瞬、ジャスミンかと思ったが、そうではない。
栗色の髪の毛は、頭頂部で括られ、簪が差し込まれている。
オレンジ色の、ピチピチの小さなTシャツの中、豊満な胸がはちきれそうに収まっている。
そして、尻の割れ目が見えてしまいそうなぐらいの、ローライズのジーンズ…。
田舎には、こんな刺激的な風体の女は、まずいない。
(うわぁ…)
千秋は、その女の姿に軽く退いた。
その女は、自販機を叩く手を、平手から拳に変えた。
先ほどの音よりも、重い音が響く。
(え…?)
千秋は、それだけでも仰天した。
しかし、女は拳の殴打から、蹴りへと攻撃を移す。
ドガン、ドガンと激しく自販機は揺れた。
(え…?ええ…?な、何…?何してんの?この人…)
千秋は、関わり合いになりたくない、と思いながらも、その女の行動に釘付けになった。
652投稿者:リリー  投稿日:2008年12月26日(金)22時44分07秒
その女は、自販機に向かって、乱暴に悪態をついた。
「何で私が、ネスカフェみてぇな大企業に募金してやんなきゃならねぇんだよ!!コーヒー出さねぇんなら金返せ!コンチクショウ!!」
千秋は、ハッとした。
この女の声…聞いたことがある…?
そして、この女…千秋に真後ろを見せていたにも関わらず、その視線に気が付いたかのように、顔をコチラに向けた。
細い、黒いサングラスをかけている。
「あ…う…」
千秋は、たじろいだ。
「あん?」
その女は、サングラスをとる。
外国人…?
充分、美人に分類される顔立ちなのだが、目、鼻、口…それぞれのパーツが大きく、それらが強烈に自己主張している。
それが、とてつもなく攻撃的な…好戦的な印象を与える…そんな顔だった。
しかも…ケンカでもしてきたのだろうか…所々、赤く腫れている…。
「何だぁ?コラ!!なんか、私に用か?」
眉間にシワを寄せながら、その女は、千秋に詰め寄って来た。
「あ…あ…あ…あの…も、もしかして…ダーさん…ですか…?」
653投稿者:リリー  投稿日:2008年12月26日(金)22時44分39秒
「お!?」
その女は、歩みを止めた…かと思うと、ズンズンと大股で、その歩みを加速させる。
「何で、私の名前、知ってんだ!?」
「あ…!や、やっぱり…」
「ああ!?」
「ぼ、僕です!!千秋です!!」
「千秋?」
「はい!!千秋レイシーです!!」
その女は、静止画像のようにピクリとも動かなくなった。
「…あ…あの…。は、初めまして…」
千秋は、ギクシャクと会釈した。
そして…。
「おおおおお〜〜〜〜〜!!!!!」
女の絶叫が、病院内に響き渡った。
「お、おまえ!!ギョーザか!?ギョーザなのか!?」
「…は、はい…。その…ギョーザ…です…」
やはり…この女は、ダーブロウ有紗だった…。
654投稿者:リリー  投稿日:2008年12月26日(金)22時44分50秒
(こんな人だったんだ…。いや…想像通りだ…)
「ギャハハハ!!そうか、そうか!!おまえが、ギョーザか!!ギャハハハハ!!!」
何がそんなに面白いのかわからないが、ダーブロウ有紗は、千秋の背中をバシバシと叩いた。
口から内臓が出てしまうのかと、千秋は思った。
少なくとも、自販機の時よりも激しく叩いている。
655投稿者:リリー  投稿日:2008年12月26日(金)22時45分08秒
「い…痛いです!!ダーさん!!」
千秋は、身をよじらせて、ダーブロウ有紗から逃れようとする。
「ギャハハ!!いいじゃねぇか!!会いたかったぜ!!ギョーザ!!思ったより、イイ男じゃねぇか!!全然、メガネ(洸太)と似てねぇな?」
ダーブロウ有紗は、ヘッドロック気味に、千秋と肩を組んだ。
「おい、あれから、デコッパチとはヤッタのか!?え?おい!!」
ダーブロウ有紗は、千秋の股間を鷲掴みにする。
今度は、口から睾丸が出てしまうのかと思った。
「ちょ、ちょっと!!痛いですって!!ダーさん!!」
「コノ野郎!!白状しやがれ!!え?コラ!!」
「や、やってませんよ!!だって、梨生奈ちゃん、酷い怪我で…ダーさんも知ってるでしょ?」
「何言ってやがる!!デコッパチ、今は動けねぇんだろ?やりたい放題じゃん!!」
「ダ、ダーさんこそ、何言ってるんですか!!そんなこと、できるわけないじゃないですか!!」
「てめぇ、ジェントルマン気取ってんじゃねぇ!!途中で漏らしたクセに…!!」
「そ、そ、そういうこと、病院内で言わない!!」
「いいから、ヤッテこい!!私が許す!!さっさとアイツのヴァージン、奪ってこい!!」
「だ、だから、できないんですよぉ!!ぼ、僕達…もう、終ったから…!!」
「終わった?何だ、それぐらい………え?」
ダーブロウ有紗の大きな目は、更に大きく見開かれた。
656投稿者:リリー  投稿日:2008年12月26日(金)22時45分26秒
「終わった…?どういうこと…?」
「だから…僕と梨生奈ちゃんの間は…もう…」
千秋が言い終わらないうちに、ダーブロウ有紗は、流れるような美しい動きで、卍固めを仕掛けてきた。
「終わっただと〜〜〜!?」
完璧に決まる、卍固め…。
千秋の全身の骨が、激しく軋む。
「ぎゃあああああ〜〜〜〜〜!!!」
今度は、千秋の絶叫が病院内に響く。
「てめぇ、コンチクショウ!!ギョーザの分際で!!よくも、うちのデコッパチを振りやがったな!!」
「ち、ち、ち、違いますよぉ!!誤解ですって!!僕が振ったんじゃなくて…」
「あん!?」
「ぼ、僕が…振られたんです…!!」
卍固めが、僅かに緩む。
657投稿者:リリー  投稿日:2008年12月26日(金)22時45分44秒
「振られた…?おまえが…?」
「は…はい…。つい、さっき…」
「で…おまえ…そのまま引き下がったのか?」
「…はい…」
再び卍固めが、千秋を襲う。
「ぎゃあああああ〜〜〜〜〜!!!」
「てめぇ、それでも男かぁ!!何で食い下がらねぇ!!何でそのまま振られちまうんだよ!!」
「だ、だって…これには…複雑な事情が…」
「複雑!?何が複雑だ!!もっとシンプルなもんだろうがよ!!恋愛なんて!!告って、キスして、セックスして、はい一丁上がり!!だろ!?」
「そ、それは違うと思い…ぎゃあああああ〜〜〜!!!」
「私に意見すんじゃねぇ!!てめぇ、あだ名を『ギョーザ』から『水ギョーザ』にするぞ?」
「す、水ギョーザって…意味がわかんないですよ!!」
「フニャフニャ野郎ってことだよ!!コンチクショウ!!」
658投稿者:リリー  投稿日:2008年12月26日(金)22時46分04秒
すると、長い廊下の彼方から、猛烈な勢いで走ってくる者がいる。
看護士長の、清水ミチコである。
「コラァ!!あんた達!!病院で騒ぐんじゃないよ!!摘み出すよ!?」
ミチコは、青筋を立てて怒鳴り散らした。
「あん?」
ダーブロウ有紗は、千秋から卍固めを解いた。
(ヤ…ヤバイ…!!)
千秋は青くなった。
ダーブロウ有紗が暴れだしたら、この病院が崩壊してしまうかもしれない…実際に彼女に会った時間は短いが、千秋はそう確信した。
ダーブロウ有紗は、ミチコの前に、ズイっと歩み出る。
「ダ、ダーさん…ここは…素直に…」
千秋は、オロオロと彼女の腕を引っ張った。
そして、ダーブロウ有紗は…。
「すみませんでした…」
と、しおらしく、シュンと頭を下げた。
(な…何なんだろう…この人は…)
千秋は、大量の汗を掻きながら、ペタンと、床に腰を降ろした。
659投稿者:リリー  投稿日:2008年12月26日(金)22時46分18秒
では、おちます
660投稿者:あげ  投稿日:2008年12月27日(土)12時48分49秒
ダーさん凄すぎる・・・・・・(笑)
661投稿者:age  投稿日:2008年12月27日(土)14時46分49秒
>しかも…ケンカでもしてきたのだろうか…所々、赤く腫れている…。

これはグラスラで恵と戦ったときにできた傷だろうか?
この時点でグラスラを書いてたのか?
662投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時30分22秒
久々のコメント、嬉しいです
660さん
ダーさんと千秋のこのシーン、今読み返しても好きな部分です
661さん
この時点で『グラスラ』は書いてましたが、ダーさんと恵さんが戦うところまでは考えてませんでした
難田門司を捕まえる時にスッタモンダがあったのだろう…という軽い考えで書きました

では、更新します
663投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時31分34秒
ノックの音。
梨生奈の返事を待たずに、ドアが開く。
「よ!デコッパチ!」
ダーブロウ有紗が、顔だけをドアの隙間から入れてきた。
「ダーさん…いらっしゃい…」
梨生奈は、静かに微笑んで迎えた。
「あれ?何だ?そのクールなリアクション…」
ダーブロウ有紗は、心底ガッカリしているようだ。
「誰かから聞いたのか?私が見舞いに来るって…」
「ううん…。だっていろいろ聞こえてきたもん…。ダーさんの笑い声とか、怒鳴り声とか…」
「あ、そ…」
ダーブロウ有紗は、つまらなさそうに病室に入って来た。
「それから…千秋君の悲鳴も…。ダーさん…千秋君を、いじめたでしょ?」
「あ?ああ…だってよ…アイツが…て、言うか、いいのかよ?デコッパチ!!」
「え?な、何が?」
「ギョーザのやつ、振っちまって…」
「…話しは…?」
「聞いたよ…。まったく…。これが、おまえの『強くなる恋』だってのか?」
「…はい…」
梨生奈は、小さく返事をした。
664投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時32分13秒
ダーブロウ有紗は、頭を掻いた。
「まいったなぁ…。変なこと言っちまったかも…。もっとお互いが、頼ってもよかったんだよな…」
梨生奈は、慌てて首を横に振る。
「いいんです!だって…頼り合いの恋をしていたら…きっとモニークには勝てなかったから…」
モニークの名を聞いた途端、ダーブロウ有紗の表情は曇る。
「モニークか…。今頃、あいつはどこで何をやってるんだろうな…」
「ええ…」
会話が続かない…。
「…で…おまえは、その瑠璃とかいう…私達の後輩に…ギョーザを譲った…てことか?」
「譲ったって…そういうわけじゃないです…。でも、瑠璃がいなければ、羅夢は死んでました…」
「そうだってな…」
「で…千秋君がいなければ…瑠璃は死にます…」
「ダッチャを救った…せめてもの礼ってことか?」
「お礼なんて…。ただ、人は一人では生きていけないって…改めて、そう感じたんです」
「一人では、生きていけない?」
「はい…。自分を強くすることができる人ってのは…そう何人もなくて…。生きているうちに一人でも見つかれば、それは奇跡なんです」
「瑠璃にとって…それはギョーザだと?」
「…はい…」
「おまえにとっては?」
「…わたしは…たくさんいる…。羅夢でしょ?レッドさんでしょ?それに…ダーさん…」
梨生奈は、穏やかな笑顔を、ダーブロウ有紗に向ける。
665投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時32分34秒
「私?私はいいよ!」
ダーブロウ有紗は、うっとおしそうに手を振った。
「ふふ…。それに、千秋君まで取っちゃったら…それは欲張りってもんです…」
梨生奈の伏せた目に、一瞬、光るものが見えた。
ダーブロウ有紗は、見て見ぬフリをする。
「…ま、そうおまえが決めたんなら、私がとやかく言うことはねぇな…」
「…初恋は実らない…」
「あん?」
「いや…。レッドさんも、たまには正しいことを言うんだなって…」
「アホか!!実った果実を、瑠璃にやっちまったんだよ!!おめぇは!!」
「そう…ですね…。あ、ダーさん、教えて下さい!!」
「何を?」
「どうして…ダーさんは、躍起になって、私と千秋君の初恋を実らせようとしたんですか?」
ダーブロウ有紗は、その梨生奈の問いに、しばらく腕組みをして考える。
そして、ゆっくりと口を開く。
「…初恋は実らない…だっけ?」
「…え?」
「たまには見てみたかったんだよ…。初恋が実るところ…。そんな言葉、クソ喰らえって…言ってやりたかったんだ…」
沈黙が続く…。
666投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時32分53秒
しかし、梨生奈は、ハッと気が付く。
「…て、ことは…ダーさんも…初恋は実らなかったんですか?」
「…?あ…?な、何言ってやがる!!何でそういうことになるんだよ!?」
「ねぇ…ダーさん!教えて下さい!ダーさんの初恋…。どうだったんですか?」
「…は?」
一瞬、マヌケな顔を見せてしまったと、ダーブロウ有紗は後悔した。
「どんな人に恋をしたんですか?」
「ええい!!うるせぇ!!うるせぇ!!本当のこと、言ってやらあ!!面白ぇじゃねぇか!!あの堅物のデコッパチが、恋をした…なんて…!覗き趣味でけしかけたんだよ!!」
「またまた…そんな憎まれ口叩いて!!ダーさんって、可愛い!」
「コンチクショウ!!『可愛い』なんて、随分久しぶりに言われたぞ!!」
そう言いながら…ダーブロウ有紗は思い出した。
そう…こんな自分を『可愛い』と言ってくれた人のことを…。
自分の初恋を…。
667投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時33分12秒
「ダーさん?」
思わず遠い目をしたダーブロウ有紗に、梨生奈は不思議そうに尋ねた。
「…あ?そ、そうだ!!デコッパチ!!オデコ出せ!!」
「え?オ、オデコ…?」
「お仕置きのデコピンだ!!」
「ええ!?デコピン?な、何で?」
「私のミッションをしくじっただろ?ギョーザとの初体験!!」
「…う…!?」
梨生奈の顔が、ぼっと熱くなる。
「さあ、オデコ出しな!!」
「ダ、ダーさん…。私、重傷患者なんですけど…」
「あ?オデコは怪我してねぇじゃん!!さ、お仕置き、いくぜ!!」
もう、こうなったら、ダーブロウ有紗は聞かない…。
(しまった…。からかいすぎた…。ダーさんのデコピン…本当に痛いんだもん…)
梨生奈は、目を瞑り、恐る恐る額を前に出す。
至近距離から、ゴム管でパチンコ玉を打ち込まれたようなデコピン…。
下手すりゃ、出血することもある…。
668投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時33分29秒
梨生奈は、随分長い間、目を瞑って額を出している。
(…?何やってるの?ダーさん…。やるなら、はやく…)
チュ…。
(…え…?)
今、額に触れたのは、ダーブロウ有紗の指ではなく、唇?
梨生奈は、目を開けた。
ダーブロウ有紗の…優しい…穏やかな笑顔…。
「ダーさん…?」
「いいから…。デコッパチ…」
「な、何が…ですか?」
「泣いちゃえよ…」
「…え?」
「初恋だったんだろ?大切な恋だったんだろ?悲しくないわけねぇじゃねぇか…」
「で…でも…」
「いいんだよ…。泣くってのは…弱いってことじゃない…。それだけ、一生懸命だったって証だろ?」
「…そ、そう…だけど…」
「ごまかしたら、弱くなるぞ!ギョーザとの恋が…おまえを弱くしちまうんだぞ?」
「…う…う…」
「おまえは…強い子だ…。梨生奈…」
669投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時33分48秒
目を伏せて、唇を震わせる梨生奈…。
「ひ…酷いよ…。ダーさん…」
「ん?」
「こういう時…優しくしないで…」
梨生奈は、涙を落とした。
両腕がギプスで固められているため、涙を拭くことができない。
「優しくされると…余計に…泣けちゃうじゃないですか…」
「へへへ…。だから言っただろ?お仕置きだって…」
ダーブロウ有紗は、梨生奈の頭に手を置いて、自分の胸に引き寄せた。
そして、優しく頭を撫でた。
梨生奈は泣いた。
千秋の前では見せなかった涙を…次々と流していく。
初恋は実らない…。
もし、誰かが初恋に悩んでいたら…今度は自分が覆してやろう…。
誰かの初恋を…見事に実らせてあげよう…。
梨生奈は、そう誓った。
670投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時34分16秒
ダーブロウ有紗は、病室から出る。
すると、ドアの側の壁に、羅夢が寄りかかっていた。
「お…?ダッチャ、いたのか?」
羅夢は、ダーブロウ有紗を、ジロリと睨む。
「ん?何だ?その目は…。泣かしてほしいの?」
ダーブロウ有紗の脅しを軽く受け流し、羅夢は眉間にシワを寄せて、彼女を見上げた。
「デカアリ…てめぇ…。よくもアタイを差し置いて、梨生奈を慰めやがったな?」
「何だよ?おまえ、自分で慰めたかったのか?」
「ったりめぇだろうがよ!!アタイは、パートナーだぞ!?」
671投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時34分37秒
ダーブロウ有紗は、怒鳴る羅夢の唇を、指で抓って閉じさせた。
「ふむぐぅ…!むぐげげ…!!」
「静かにしろ!!また、恐いオバちゃんが怒りに来るんだからよ!!」
そう言うと彼女は、辺りをキョロキョロ窺う。
「それに…デコッパチを慰めるのは、おまえの役目じゃねぇだろ?」
「んぐぅ?」
「おまえの役目は…デコッパチを強くすること…」
「む…」
「いつまでもメソメソしてんじゃねぇ!って…ハッパかけてやるのが…おまえの役目だ…」
ダーブロウ有紗は、羅夢の唇から指を離す。
672投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時35分10秒
「ハッパ…?それが…アタイの役目だって言うのかよ?」
「ああ…。慰めの言葉なんて、誰でもできるんだ。でもな、それを敢えて厳しく言うヤツは、何人もいない…」
「アタイがそれか?」
「そうだ…。おまえしかいない…」
「そ、そうか…2人が別れたのは、アタイのせいだからな…。千秋君より、アタイを選んだ結果だから…」
ダーブロウ有紗は、羅夢の頬を、結構、思いっきり引っ叩いた。
「いて!!な、何すんだよ!!」
「自惚れんな!!おまえに、人の恋を壊すほどの力量があるかよ!!」
「あ?何だよ!?そりゃ!!」
「デコッパチは、おまえを『選んだ』んじゃねぇ!!『守った』んだよ!!」
「ア…アタイを…守った…?」
673投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時35分30秒
「デコッパチとギョーザがくっついたら、瑠璃とおまえが宙に浮く。そして、また裏の世界の勧誘が、おまえ達に忍び寄るかもしれない…」
「ア、アタイは、もう、裏の世界なんかに…」
「わからねぇぞ…。もし、本当に、裏の世界が自分のことを必要としてくれるんなら…そこに自分の価値を置いてしまう時がくる…」
「う…」
羅夢は、結局はモニークの拷問に屈してしまい、彼女の仲間になってしまったことを思い出す。
あれは、苦痛に負けたのではない。
モニークが、ああまでして、自分を必要としてくれたから…。
梨生奈と千秋の間に、自分が入り込む余地がない…と、感じたから。
もし、梨生奈が自分だけを見てくれていたら、決して拷問には屈しなかったはずだ。
ダーブロウ有紗は、言葉を続ける。
「それにな…この私だって…自信があるわけじゃないんだ…。裏の世界の勧誘に…」
「…え?どどういうことだ?そりゃ…」
「ふん!質問ばっかりするんじゃねぇ!!子供電話相談室のお姉さんじゃねぇんだよ!私は!!」
ダーブロウ有紗は、羅夢の頭を、ポンポンと軽く叩くと、その場から立ち去ろうとする。
「ど、どこに行くんだ!デカアリ!!」
「レッドさんの所…。業務連絡とか、事務引継ぎとか、いろいろ面倒な話もしなきゃならないの!大人はね!」
ダーブロウ有紗は、羅夢の方を振り返ることなく、右手だけを振って、吉田の病室へと向かう。
674投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時36分04秒
ダーブロウ有紗は、吉田の病室のドアをノックする。
「どうぞ」
吉田の声ではない。…ジャスミン・アレンの声だ。
「何だ?ジャスミン、いたのか?」
ダーブロウ有紗は病室に入った途端、この部屋の雰囲気がどことなくぎこちないことを察した。
吉田の表情に、元気がない。
確かに、全治3ヶ月の重傷で入院しているのだから、元気はないだろう。
でも、その見舞いに来たジャスミンも、何故かテンションが低い。
675投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時36分15秒
しかし、とりあえずダーブロウ有紗は、吉田の労をねぎらう事にした。
「レッドさん、お疲れ。今回は災難だったな」
「ああ、おおきに。ダーさん…」
吉田は、何とか笑顔をつくる。
「ジャスミンも、お疲れ!!」
ジャスミンは、笑顔で軽く頷いた。
「レッドさん、象に蹴っ飛ばされたんだって?」
「ああ…。さすがのダーさんも、象に蹴っ飛ばされた経験はないやろ?」
「象?たしかにないな。でも、犀に脇腹を突っつかれたことはある」
「…それも、えげつないな…」
吉田の笑顔が引きつった。
「しかし、ジャスミンは瑠璃のことを覚えてたって言うから、やっぱりジャスミンを行かせれば、モニークなんかに翻弄されることはなかったんだよな…」
「ちょっと!物理的に不可能でしょ?私は失踪した議員秘書の行方を追うために、名古屋にいたんだから!」
ジャスミンは、呆れながらも抗議をする。
676投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時36分40秒
「しかしなぁ…。今回の事件も、やっぱり過去を清算できへんかったツケを払わされたようなもんやったな…」
吉田は、しみじみと呟いた。
「そうだな…。簡単に清算できる代物じゃねぇよな…。『TTK』…」
ダーブロウ有紗は、憎々しげに言った。
「モニーク…。あいつは、その過去に囚われ、どこまで、いつまで、もがくつもりなんだ…。たった一人で…」
その言葉を受けて、ジャスミンが重い口を開く。
「その…過去を清算できずに、囚われの身になってもがいてる人間が…もう一人増えるわ…」
「あん?何言ってんだ?おまえ…」
「あのね…有紗…」
「おお、そうだ!ジャスミン!仕事だ!」
「え?」
「て、いうか、残業!!」
「残業!?」
「その、モニークを探してこい!!私はまだ諦めてないからな?モニークのスカウト…」
「ス、スカウト?あなた…まだ…」
「てめぇ、見事に任務を失敗しやがって…!デコッパチもダッチャも、そして私も出っ歯ちゃんも、今回の任務は果たしたんだぞ?おまえだけだ!失敗しやがったのは!!」
「わ、私だって、議員秘書を…」
「貧相なメガネオヤジをとっ捕まえただけで、何言ってやがる!!画竜点睛を欠くとは、このことだ!!今度こそモニークを見つけて連れて来い!!」
そう言いながらも、ジャスミンが顔を真っ赤にして詰め寄ることを予想したダーブロウ有紗だったが、その通りにはならなかった。
677投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時36分59秒
ジャスミンは、ダーブロウ有紗の命令に対し、何度も首を頷かせる。
「言われなくても…私はモニークを探しに行くわ…。いや、探しに行きたい…!」
「ん…?そうか…。ま、元チームメイトだもんな…。心配なのはわかる…」
「でもね、有紗…。私、モニークを見つけるけど、連れてくることはしないわ」
「あん?何だ?そりゃ…」
「…で…私…そのことで、社長のレッドさんにも、お話ししたんだけど…」
ダーブロウ有紗は、レッドの顔を見る。
病室に入った時に見た、あの元気のない表情に戻っている…。
「お暇を頂こうかと思って…。『R&G探偵社』を…」
ダーブロウ有紗は、しばらくジャスミンを無言で見詰める。
そして、ようやく口を開く。
「…つまり…やめるのか?『R&G』を…」
「…ええ…」
678投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時37分21秒
その言葉を聞いたダーブロウ有紗は、深い溜息をつき、吉田の方を向く。
「『やつら』の所に行くのか?」
「まさか…それは絶対にないわ!!」
レッドは、2人が何を言っているのかわからなかった。
「な、何の話や?」
「いや…何でもない…。で…レッドさんは…何て?」
「当然、引き止めたよ!ジャスミンに去られたら、会社にとって、大きな痛手や!」
吉田の元気のなさは、これが理由だったのだ。
「ダーさんからも、言ってぇな!!会社に残ってくれって…」
吉田の声は、悲痛だった。
679投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時37分40秒
髪を掻き、目を瞑るダーブロウ有紗。
「…とにかく…話しを聞こうか…。ジャスミン…」
ジャスミンにとっても、この彼女のリアクションは予想外だった。
烈火の如く怒り狂うだろう、彼女の猛攻に備えていたからだ。
「シンプルな話しよ…。モニークを…放ってはおけない…。以上…」
「ふふん…。ほんと、シンプルだな…」
ダーブロウ有紗は、力なく笑った。
「結局、デコッパチも、ギョーザも、この一言に尽きるんだよな…」
「え…?何?」
「いや…。何でもねぇ…。好きにしなよ…」
「え…?今、何て…?」
「ちょ、ちょっと!!ダーさん!!」
ジャスミンと吉田の声が、重なった。
「そうなんだよな…。ジャスミンも、強くなんなきゃいけねぇし…何より、今回の件で最も『弱虫』なモニークを強くしてやれるのも…ジャスミン…おまえだけなんだよな」
「ど、どうしちゃったの…?有紗…」
ジャスミンは、怪訝な顔で、ダーブロウ有紗の顔を覗き込む。
680投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時38分08秒
「へへ…。どうしちゃったんだろうねぇ…。ほんと…」
そう言いながら、ダーブロウ有紗は、ジャスミンの胸座を掴んだ。
「…!?」
一瞬に、緊張感が病室に走る。
「そうと決まったら、さっさとモニークを探しに行け!!コンチクショウ!!」
「…え?そ、それって、今すぐ行けってこと?」
「おうよ!!私の気が変らない内に、行っちまった方がいいぜ?」
「だったら、まず一度会社に戻って…」
「ダメだ!!今すぐだ!!てめぇのツラは、もう見たくねぇ!!二度と私の前に姿見せんなよ!?」
「…わかったわ…。私の退社を認めてくれて、感謝するわ…」
「退社!?ざけんな、コラ!!クビだ!!退職金もビタ一文払わねぇからな!!」
そう言うと、乱暴にジャスミンを突き放す。
「落ち着いたら連絡しろ!!私物はその時に送ってやらあ!!」
「…相変わらず…いや、最後の最後まで、あなたは無茶苦茶ね…」
「ふん!涙流して『元気でね〜。手紙書くからね〜』なんて、期待してたのか?」
「まさか…!!鳥肌立っちゃった…」
2人は睨み合うと、ニヤリと笑った。
681投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時38分29秒
「じゃあ…。長い付き合いだったけど…あなたのこと、大嫌いだったわ…」
「ケ…!今更言うんじゃねぇよ!!」
吉田は、2人のやりとりを、オロオロしながら眺めている。
「な、なあ…ジャスミン…。ほ、ほんまに、『R&G』、やめるん?」
ジャスミンは姿勢を正し、吉田の方を向く。
「レッドさん…。一年間…私を置いてくれてありがとう。そして、他の子達も引き取ってくれて…」
「そ、そないなこと…。コッチかて、助かったんやし…。お互い様やん…。でも…ほんまにやめるん?」
「梨生奈や羅夢にも、よろしく…。あ、あと、ジョアンのことだけど…」
そう…。つい最近まで『チームJ』としてパートナーを組んでいた、ジョアン・ヤマザキ…彼女のことが、心残りだった。
「私なんかより、今は、ちひろを信頼してしっかりやれって…そう伝えて下さい。今のパートナーは、ちひろなんですから…」
「ああ…。ええけど…。ほんまにやめるん?」
吉田は、どうやら目の前の現実を受け止められないようだ。
「はい…。ほんまに、やめさせてもらいます…」
外国人訛りの関西弁で、ジャスミンは答えた。
そして、深々と頭を下げた。
682投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時38分50秒
「じゃあ、私、これで失礼します…」
ジャスミンは、病室から出て行こうとする。
「ちょっと、待て!ジャスミン!」
ダーブロウ有紗は、ジャスミンを引き止めた。
ゆっくりと、振り返るジャスミン。
「何…?有紗…」
ダーブロウ有紗は、何も言わずに右手を差し出す。
ふ…と笑って、ジャスミンはその差し出された右手を握ろうとする。
パチーン!!…ジャスミンの右手が、叩かれた。
「違うだろ!?」
「へ…?」
ヒリヒリする右手を擦りながら、ワケがわからないと言いたげなジャスミンの顔…。
683投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時39分19秒
「返せ!!」
「な、何を…?」
「ポルシェの鍵!!」
「ポルシェ?」
「あれは、会社の車だ!!」
「…ああ…。あれ、記念に貰っておこうと思ってたのに…」
「言ったはずだぜ?退職金は、ビタ一文払わねぇって…!!」
ジャスミンは、本当にがっかりした…という風に、ポルシェの鍵をダーブロウ有紗に渡す。
結局、最後の最後まで罵り合いを続け、ジャスミンは病室を…そして、『R&G探偵社』を去って行った。
「はぁ…。ほんまに行ってもうた…。ジャスミン…」
吉田は、力なく、ベッドに横たわった。
「………」
ダーブロウ有紗は、下を向いて、小刻みに震えている。
「…ん?ダ、ダーさん?」
泣いている…?まさか…。
その時だった。
「クソッタレ〜〜〜!!!」
彼女は、力の限り叫んだ。
「ああ…。怒りに震えていたわけやね…」
吉田は納得した。
684投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時39分41秒
「モニークのヤツ、やってくれたぜ!!デコッパチを半年も使いモンにならなくしただけじゃあきたらず、ジャスミンまでかっさらっていきやがった!!」
そう言いながら、地団駄を踏む、ダーブロウ有紗。
「ジャスミンがいなくなったら…また、私に仕事のツケが回ってきちまう…!!『チームR』は当分出動できねぇし!!いくら私でも過労死するぞ!!」
そして、その怒りの矛先は、吉田に向かう。
「レッドさんも、何で引き止めねぇんだよ!?社長だろうがよ!!」
「せ、せやから、引き止めたやん!!せやのに、ダーさんが…」
「力づくでも止めろよ!!」
「無茶言うな!!」
その時、病室のドアが勢いよく開いた。
そう…看護士長の清水ミチコである。
「ちょっと!!また、あんたなの!?これ以上うるさくすると、本当に叩き出すからね!!」
彼女の怒鳴り声も、負けずと響き渡る。
「…ごめんなさい…」
ダーブロウ有紗は、またもや素直に頭を下げた。
どうやらダーブロウ有紗には、「叱られたい願望」があるようだ。
「ねぇ…清水さん…。探偵になる気、ない?」
吉田は思わず『ダーブロウ有紗対策』として、ミチコをスカウトした。
685投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時40分01秒
梨生奈の病室。
ベッドから動けない梨生奈と、その横で椅子に座ったまま動かない羅夢。
2人の間には、羅夢が病室に帰ってきてから十数分会話をしていない。
羅夢は、ダーブロウ有紗から言われたことを、必死に考えていた。
慰めの言葉なら誰でもできる。
しかし、はっぱをかけるのは、自分しかいない。
(でもなぁ…。ほんと、何て言ったらいいんだよ…)
慰めの言葉なら、いくつも思い浮かぶのに…。
「羅夢…。私ね…」
「…え…?」
会話を切り出した梨生奈に、思わず羅夢は顔を上げた。
「千秋君とのこと…後悔してないよ」
「…梨生奈…?」
「千秋君と出逢えたこと…。千秋君と恋ができたこと…。凄く、幸せなことだって思う…」
梨生奈の笑顔は、爽やかだった。
「…そ、そうか…」
梨生奈は、完全にふっ切れている?
羅夢には、そうは思えなかった。
そう…梨生奈に言っておかなければならない言葉がある。
686投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時40分23秒
「梨生奈…。アタイな…」
「うん?」
「デカアリに、自惚れんなって言われちまったけど…梨生奈と千秋君が別れた原因は…アタイにあったんだと思う」
「そ、そんなこと…」
「そうだよ…」
「違うったら…!」
「いや!!絶対、そうなんだよ!」
「…もう!ほんと、自惚れないでよ!!」
梨生奈はピシャリと怒鳴った。
「違うのよ…。私と千秋君とのことは…羅夢とは、関係ないわ…」
「ざけんな!!」
しかし、今度は羅夢が怒鳴った。
「羅夢…?」
「アタイは関係ない、だと!?そんなこと言うなよ!!」
羅夢は立ち上がった。
目には涙が溜まっている。
「だって…アタイ…心のどこかで…梨生奈と千秋君が…別れてくれたらいいのにって…そう思ってた!!」
「羅夢…」
「梨生奈、凄く嬉しそうなのに…幸せそうなのに…いつも冷静な梨生奈が…舞い上がっちまってるのに…」
ポロポロと、涙がこぼれた。
687投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時40分42秒
「梨生奈は…今まで…ずっと…ずっと…アタイのこと…考えてくれてたのに…思ってくれてたのに…」
手の平で、涙を拭う羅夢。
嗚咽しながらも、懸命に言葉にして伝えようとしている。
「それなのに…アタイは…梨生奈の…幸せを…祈ってやれなかった…。応援してやれなかった…」
梨生奈は、そんな羅夢をじっと見詰める。
「私だけの梨生奈にしたかった…。でも…。でも…」
羅夢は、完全に両手で顔を覆った。
「梨生奈…あんなに…泣くなんて…」
指の間からも、涙の雫が落ちる。
「あんなに…梨生奈が…悲しむ姿を…アタイは…願ってた…」
膝を床に落とす。
「アタイ…梨生奈のこと…大好きなのに…。大好きなのに…!」
「羅夢…」
梨生奈は、ギプスで固められた腕を懸命に伸ばそうとする。
羅夢の頭に触れたい…。
自分の手で、羅夢に触れたい…。
自分の体温を…羅夢に伝えたい…。
梨生奈は泣き崩れる羅夢を見て、自分の身体が動けないことを、心の底から悔やんだ。
688投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時41分06秒
羅夢は、自分が何をしているのかわからなかった。
梨生奈を慰める…いや、はっぱをかける為に戻ってきたのに…。
何で、自分が号泣しているのだろう?
とにかく、このままではいられない。
羅夢は顔を覆ったまま立ち上がると、病室を逃げるように去ろうとする。
すると…バタ…と、背後で音がした。
羅夢は、思わず振り返る。
両手、両足をギプスで固め、身体もコルセットで締め付けられている梨生奈が、床に倒れている。
「り、梨生奈!!」
羅夢は、梨生奈のもとに駆け寄った。
「な、何やってんだよ!!」
そしてそのまま抱き起こす。
「ふふ…。羅夢…これで、あなたに触れられた…」
梨生奈は、ピンと伸ばされた右手で、羅夢の頭をぎこちなく撫でた。
「り…梨生奈…」
羅夢の唇が小刻みに震え、次の言葉が出てこない。
「わかってるよ…。羅夢が、私のこと大好きだってこと…わかってるからね…」
そして、唯一自由に動く首を駆使して、自分の額を羅夢の額にコツンと当てた。
「羅夢…。私も、あなたのこと…大好きだから…」
689投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時41分29秒
羅夢は、梨生奈に抱きついた。
「梨生奈…。アタイ…強くなるよ…」
搾り出すように、言葉を紡ぐ。
「おまえの幸せを…自分の事のように…感じられるぐらい…。強く…」
「いいよ…。羅夢はこのままで…」
「ダメだよ…!こんな、ワガママで…甘えん坊で…寂しがり屋で…素直じゃなくて…」
「私ね、羅夢のそういうところが好き…」
「イヤだ!!アタイは嫌いだ!!」
「私は…大好き…」
「それなら、アタイだって…梨生奈の説教臭いところ…大好きだ!」
「私だって、羅夢のガサツなところ…大好き…」
「アタイだって、梨生奈の…クソ真面目で石頭なところ…大好きだ…」
「私だって、羅夢の…短気で単細胞なところ…大好き…」
「梨生奈のぺチャパイ、大好きだ…」
「羅夢の大根足、大好き…」
690投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時41分46秒
そんな悪口の応酬を、ダーブロウ有紗はドア越しに聞いていた。
「まったく…。仲が良いんだか、悪いんだか…。………いや…良いんだろうな…」
そして、穏やかに笑みを浮かべると、部屋に入ることなく、長い廊下を歩いていく。
「ま…ゆっくり休めよ、『チームR』…。原村は…本当に良いところだから…」
ダーブロウ有紗は、虹守町に帰る。
また、あの目まぐるしい程の激務と戦うために…。

第二話『不気味な神隠し事件』………終わり
691投稿者:リリー  投稿日:2008年12月28日(日)01時44分08秒
おそらく、次回で復刻版『らりるれろ探偵団』は終わりです

もうすぐ『グラスラ』も再開しますので、その時はよろしくお願いします

では、おちます
692投稿者:リリー  投稿日:2008年12月29日(月)01時25分21秒
復刻版『らりるれろ探偵団』は、今回で終了です
長い間、放置していた期間もありましたが…
何とか終われてよかったです
来年から(もうすぐですが)『グラスラ』も再開しますので、そちらの方もよろしくお願いします

では、更新します
693投稿者:リリー  投稿日:2008年12月29日(月)01時26分37秒
エピローグ

長野県の八ヶ岳の西南部に、原村という小さな村がある。
人口は約7500人。
農業と畜産業が盛んな、のどかな村だ。
夏には避暑地として、冬にはスケートやスキーといったウィンタースポーツを楽しむ為、観光客が訪れることもあるが、一年を通して静かな村である。
今は9月下旬。
水田の稲穂の黄色と、空の鮮やかな青のコントラストが美しい。
694投稿者:リリー  投稿日:2008年12月29日(月)01時27分03秒
ペンション『ハセヤンズ・ハウス』を500メートル程、森の方へ移動した所にある雑木林…そこに小さな小屋があった。
木を切り倒し、根を掘り起こして開拓した土地に、廃材を掻き集めて作り上げた、手造りの家…。
家というよりは、掘っ建て小屋と言った方が適切だろう。
しかし、これは瑠璃と千秋が、夏からコツコツと時間をかけて造り上げたものである。
廃材の家造りを得意とするハセヤンの手助けがあったとは言え、小学生と中学生の2人でここまでできれば、充分立派である。
協力者は他にもいた。
夏休みの間、羅夢もせっせと木を切り倒した。
いや、切り倒したのではなく、ヌンチャクで叩き折った。
そして、梨生奈が所属している聖テレジア女子学園中等部の野球部の部員達も、この家造りに協力した。
梨生奈の見舞いがてら、ここ原村を合宿の地に選び、体力づくりの一環として汗を流したのだ。
その野球部員の大部分は、梨生奈や羅夢と同じ、『R&G探偵社』の探偵達だった。
藤本七海、中村有沙、ジョアン・ヤマザキ、近藤エマ、渡邊エリー…みな、美少女揃いだったが、一筋縄ではいかない個性派集団だった。
695投稿者:リリー  投稿日:2008年12月29日(月)01時27分27秒
中村有沙という少女は…後にダーブロウ有紗の妹だということがわかったが…全くと言っていいほど、手伝わなかった。
ジョアン・ヤマザキという少女は、随分テンションが低かった。
なんでも、ジャスミンが突然、探偵社を辞めてしまったことがショックだったようだ。
近藤エマと渡邊エリーも、田舎特有のやぶ蚊やブヨに対し、1分間に一言ずつ不平不満をぶちまけたが、それなりに良く働いてくれた。
そして…藤本七海には…羅夢に会うなり殴り合いを始めたことに、もっとも驚かされた。
しかし、一番働いてくれたのも彼女だった。
現場監督の様に仕切り出す七海に、羅夢はいちいちケンカを売った。
確かに、羅夢には梨生奈が必要なんだな…と、千秋は納得した。
瑠璃は、自分から『TTK』の話題は振らなかったし、かつての先輩達に、特別な挨拶もしなかった。
そう…やはり誰も、一『戦士候補生』の瑠璃を、覚えてはいなかった。
そんな彼女達の力もあり、2ヶ月の時間をかけ、ようやく千秋と瑠璃の『家』は完成した。
しかし、その完成した家を、その少女達は見ることはなかった。
野球部の者達はもちろん、梨生奈も、羅夢も、そして吉田も、夏休みが終わると同時に、原村を立ち去っていたからだ。
まだ完治していない吉田と梨生奈だが、虹守町の病院に移されることとなったのだ。
696投稿者:リリー  投稿日:2008年12月29日(月)01時27分50秒
「よし、これで完成だな…」
千秋は、感慨深げに完成したばかりの家を見上げて言った。
おかげで梨生奈との失恋の痛手を、随分紛らわせることができた。
そして、これから手を取り合って生きていくことになる、瑠璃との最初の共同作業。
「ねぇ、千秋君…。将来、私達の住む家も…こうやって2人で建てようね」
瑠璃は自分で言っておいて、顔を真っ赤にしながら、キャー、キャー騒いだ。
千秋は、そんな瑠璃を愛しそうに見詰めた。
そう…この瑠璃にとっても、千秋との家造りは、心の治療となったはずである。
随分、明るくなった。
そして段々、千秋にも馴染みのある、『表の世界の瑠璃』の笑顔が戻ってきていた。
「よし、瑠璃。中に入ろう。干草のベッドで昼寝でもしようか?」
「キャー!千秋君、エッチ!この私に何するつもり?」
「バカ!」
千秋は、軽く瑠璃の額を指で弾いた。
「グズグズしてるなら、僕が真っ先にベッドに飛び込んじゃうぞ?」
「ああん!待って!!ちょっと、待ってよ!まだ、完成じゃないんだから!!」
「え?」
瑠璃は、急ぎ足で、この場を走り去った。
697投稿者:リリー  投稿日:2008年12月29日(月)01時28分11秒
「おい、瑠璃?どこに行くんだ?」
千秋は、不思議そうに瑠璃の後姿を見送るが、すぐに完成させた家に視線を移す。
「はぁ…。ま、子供の作る秘密基地に毛の生えたようなもんだけど…梨生奈ちゃん達にも見せたかったな」
梨生奈達が虹守町へ帰って、一ヶ月が経った。
別れ際…2人はもう、至って普通の、仲の良い友達となっていた。
毎日のように病院へ見舞いに行き、いろいろな話しをした。
学校の事、勉強の事、将来の事、そして…恋の話し…。
「普通に話したなぁ…。ほんと、普通に…」
あの8月の一週間…いろいろなことがあった。
いろいろあり過ぎて…本当に、夢のようだった。
夢…そう、幸せな夢だった…。
未来へと、大きく、強く踏み出す力を与えてくれた、夢…。
千秋の夢…ここ、原村に残り、瑠璃といつまでも幸せに、のんびりと暮らすこと…。
もう、虹守町には帰らない。
梨生奈のいる、虹守町には…。
698投稿者:リリー  投稿日:2008年12月29日(月)01時28分29秒
そこに、瑠璃が大きな板を抱えて戻って来た。
「千秋君!これ!これ付けて!」
「…?何だ?それ…」
千秋は、その板に書かれた白ペンキの文字を読む。
「『らりるれろ探偵団』…?」
「そう!この家ね、『らりるれろ探偵団』の事務所にするの!」
「事務所って…。で、僕達は何をやるの?」
「ラジオ体操した神社の境内に、仔猫が捨てられてたの。まずは、その子達を飼ってくれる人を探すの」
「そ、それって、探偵の仕事?」
「そうだよ!動物の為の探偵団…それが『らりるれろ探偵団』!千秋君が言ったんでしょ?」
「う〜ん…。そうだけど…。随分、地味な仕事だよな…」
「千秋君、探偵ってのはね、テレビや映画みたいに、派手なもんでも、カッコいいもんでもないんだよ」
「それ…どこかで聞いたこと、ある…」
「うん。本物の探偵さんが言ってた言葉!」
瑠璃は、無邪気な笑顔を見せる。
千秋は、そんな瑠璃を見て、自分はもっと強くなろうと決める。
そうでなければ…梨生奈に会わせる顔がない…。
そう、またいつか、必ず会うのだ。
また…いつか…。
699投稿者:リリー  投稿日:2008年12月29日(月)01時28分47秒
そして、瑠璃にも、もう一度会いたい人がいる。
千秋によって、屋根の下に取り付けられた看板を見上げて思う。
『らりるれろ探偵団』…羅夢の『ら』、梨生奈の『り』、瑠璃の『る』、千秋レイシーの『れ』…そして…。
「モニーク先生…。あなたの帰る場所は…ここですよ…」
涼しげな風が、瑠璃の頬を優しく撫でた。

原村は、もうすぐ秋を迎える。

『らりるれろ探偵団』………おわり

700投稿者:リリー  投稿日:2008年12月29日(月)01時31分23秒
これで、復刻版『らりるれろ探偵団』終わりです
http://221.254.11.166/log/tentele/070923205005a.html

新年より、『グランドスラムの少女達』を再開します
来年のいつ頃になるかわかりませんが、早いうちに再開したいと思います

では、おちます
701投稿者:おつかれさまです  投稿日:2008年12月29日(月)12時12分06秒
グラスラも楽しみにしてますので
頑張ってください
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