第2回:「サウンドのお仕事〜中期〜」 うえぽん

長らくお待たせしました。今回はゲーム開発中盤のお話になります。

■ゲーム開発中盤

ゲーム開発中盤頃というのは、ゲーム開発が始まってから半年位、ゲーム完成まで後半年位ですね。この頃になると、ゲームの方向性は固まっていて、ひたすら作業をこなしていくような日々が続きます。序盤に比べ、企画からくる仕様書なんかもさほど来なくなるし、ミーティングも殆どありません。この時期にくると、自分が次に何をすべきか、何を作っていくかを自分で見極めてやっていかなければなりません。

曲やSEにとって必要な情報と言うのは、仕様書から得られるものよりも、実際にゲーム画面から得られる情報の方が大きいです。誰に言われるでもなく、プログラマやCGスタッフのもとへ足を運ぶと言う作業も必要です。

 
■ 降って沸いてくる仕事

稀に今やっている仕事と全く別の仕事が降ってくる事があります。今回の「お仕事コラム」の執筆が遅れたのもこの影響だったりします。
実はこの1ヶ月、逆転裁判のサントラ制作をやってました。サントラ制作というと、皆さんどんな仕事内容を想像するでしょう? ゲーム中の音楽を録音して終わり? 実際にはもっと沢山の作業工程を経て商品化されているのです。

まずはゲーム中の音楽やSEを録音する所から始まります。製品版からだと、効率良く録音する事ができないので、開発用の機材から録音する事になります。曲数は約100曲。1曲につき3分程度録音するとして300分、凡そ5時間もの間ノイズが混入しないか、レベルオーバー録音しないか、気を付けながら作業に望むわけです。単調だけど辛い仕事。

で、ここからが本番です。今回はゲームボーイアドバンスからの録音だったので、いつもよりも作業工程が多くなります。ヘッドホンで聴きながらプレイした事がある人だったら分かると思いますが、結構ノイズが酷いです。加えて元素材(曲・SE)のサンプリングレート(音質)が低いこともあり、次世代機はもちろんスーパーファミコン等よりも音質が悪いのです。このままでは商品として出せない(出したくない)のです。

1曲づつ、特殊なソフトウェアを使って、ノイズリダクション(雑音取り)、コンプレッサ(音圧補正)、イコライザ(音質補正)、リバーブ(残響付加)、リミッタ(音量引き上げ)等の処理を原曲の雰囲気を損なわないように行っていく訳です。
後は曲順を考えたり、曲名を考えたり、曲間の秒数を調整したり、曲ごとの音量バランスを取ったり、フェードアウトの秒数を調整したり、という作業になります。今回の曲順と曲名は企画の方に考えて頂きましたが、作曲者が行う事もあります。ここまでの作業で2週間程かかりました。

今回はアレンジ曲も作る事になったので(というか、自分からやりたいと申し出た)、その作業も結構大変でした。こちらも2週間程かけてやったんですが、見積もりが甘かったせいかCDマスタリングのスタジオに行く日の朝になっても曲が完成せず、数時間遅れで持ち込む事になってしまいました。久々の修羅場でした。
最近のゲームのサントラにアレンジ曲があまり収録されていないのは、作業的に大変だからというのと、オリジナルの曲がしっかり作りこまれててアレンジの必要があまり無く、音質も良い、と言うのが理由だと思いますね。
 
 
■ 予期せぬ事

ゲーム開発中盤になると色々な予期せぬ事が起こります。先程のサントラ制作の仕事もそうですが、他にプロモーションビデオの制作等もあります。他のゲームのプロモーションビデオに音をあてるといった事もあります。少人数でやっているので、結構こういうことがあるんですね。これで1〜2週間予定がくるったりする訳で、そのしわ寄せが当然あるのですが、埋め合わせは自分でどうにかする場合が殆どです。
 
 
■ ようやく本格始動!?


私が今携わっているゲームは、完全新規タイトルで、開発が始まってから既に半年程経ちました。この間20曲程作りましたが、実際にゲームに乗っかっているのは4曲程でしょうか。他は完全にボツかというとそうでも無いのですが。ゲームがまだ1割位しか出来ていないのです。それに、ゲームの仕様が2転3転したので、その度グラフィックはやり直しをしていたので、音を当てようにも当てられない状況が続きました。 もちろん序盤から本腰でやってますが、音の制作は中盤からが本格的に忙しくなっていくような感じです。残り半年、さらに残り3ヶ月ともなれば凄まじく忙しくなってきます。結構体力勝負な所もあります。自前のお泊りセットを用意してる人も結構いると思います。この辺の事はまた次の機会に。

今回はここまでです。マニアックな質問も大募集!
 
 

 

うえぽん(上田雅美)
     
バイオハザード1〜3、デビルメイクライ等のBGMを担当。 「うえぽん」は会社でのあだ名。ちなみに、男。 小学生時代のあだ名は、「ハサミ」「マサミン」。今思うと何か切ない。 中学生の頃まで、「大人になったら絶対に名前を変えてやる!」と思ってたけど、 人というのは不思議な事に、名前が似合うよう成長するもんだなーと納得し、 今に至っている。 自宅の猫に「ふさーっ」とするのが日課。

 
第1回:「サウンドのお仕事 〜初期〜」
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